響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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第21話

 ー翌々日ー

 

 案の定台風が直撃し翌日の学校は休みとなってしまった。この結果に喜んだ者は果たして何人いるんだろうか…

 

 さて、オレはというといつも通りみぞれと一緒に登校している

 

「鎧塚先輩、春希先輩」

 

「ん?」

 

「おはようございます」

 

「黄前さん、おはよう」

 

「おはよう」

 

 突然後ろから声をかけられ、その正体は黄前さんだった

 

「相変わらず早いですね」

 

「のぞみに笑われたくないし、昨日休みだった分もあるし」

 

「私は小テストがあったのでラッキーでしたけど」

 

「来週やるみたいだけど?」

 

「うわっ!麗奈」

 

 今度は麗奈登場

 

「いつもより早いのね」

 

「うん…なんか気が早まっちゃって」

 

「久美子ちゃ〜ん、麗奈ちゃ〜ん」

 

 今度は川島さんか

 

「おぉ、緑ちゃんも早練」

 

「えへへ」

 

「みんなここまで来たら全国でも金賞をってことなのかな?」

 

「当然」

 

「そうです!そうなんです!このままみんなでいっぱい練習してどんどん上手くなりましょう!」

 

「そしたら上手な新入生たくさん入ってくるかな」

 

「新入生?」

 

 気が早くないか?

 

「当たり前でしょ、滝先生がいるんだから。いい先生のところにはいい生徒が集まる」

 

「麗奈みたいな?」

 

「…否定はしない」

 

「オレはみぞれがいればどんな奴が来ても問題ないかなぁ」

 

「私も」

 

「相変わらずラブラブですね」

 

「もちのろんよ!」

 

「…///」

 

 だってみぞれいなきゃ楽しくねぇし…

 

「あ、あの花…」

 

「あぁ、イタリアンホワイトですね」

 

「イタリアンホワイト?」

 

「あの花がどうかしたの?」

 

「え、いや、綺麗だなーって…」

 

「わかります!緑も大好きです!花言葉もロマンチックですよね〜」

 

「花言葉?」

 

「あぁ、確か“あなたを思い続ける”だっけ?」

 

「はい!よくご存知ですね」

 

「たまたまな」

 

 昔みぞれの誕生日に花送ろうかなって思ったときがあって、そのときにいろいろ調べたんだよなぁ…

 

「私ね、滝先生が顧問でよかった」

 

「当然でしょう。行こっ!全国が待ってる」

 

「そうです!緑達には全国での活躍が待っているのです〜!」

 

 上手な新入生…確かにそうは思うけど、それと同時に3年生の引退がそこまで近づいて来ているのを意味していた

 オレはもう少しこのメンバーで吹奏楽やっていたいと思う

 

「ハル?」

 

「…あぁ、大丈夫。オレ達も行くぞ」

 

「うん」

 

 あれこれ考えるのは後だ。今は全国が最優先だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー学校(音楽室)ー

 

「それでは皆さん、合奏は予定表の二重丸のついた日に重点的に行います。よろしいですね?」

 

『はい』

 

「では今日はこれで終わります」

 

『ありがとうございました』

 

 今日もキツい練習が終わった。みんなは昇さんから今後の予定表を受け取りそれぞれ確認する

 

「駅ってあの吹き抜けのとこでしたよね?」

 

「うん。なんでコンクール前の大事な時期にこんなもの入れるのかなー」

 

「コンクールを優先させたいって声もあったみたいだけど、滝先生が演奏する機会は大切にしなさいって」

 

 そんな会話を来南先輩と美貴乃先輩としていると部長からお知らせがあった

 

「あとまだ秘密なんだけど、駅ビルコンサートにはセーラ女子高校も出場します」

 

「ウソ…」

 

「そんなにすごいの?」

 

 初心者で入った加藤さんはわかんないかー。まぁオレもそれがスゴいのかは知らんけど…

 

「当たり前です、葉月ちゃん!全国大会金の常連ですよ!緑、CDブルーレイ持ってます!」

 

 それはそれは…全教不足ですいません

 

 

 

 

 

 

 

 ー教室ー

 

「今回は全員で演奏できるから、のぞみも入れるんだってな」

 

「うん」

 

「よかったな」

 

「うん」

 

 みぞれは見るからに嬉しそうだ

 

「じゃあちょっとノート運びに職員室行ってくるな」

 

「…手伝う?」

 

「大丈夫大丈夫。んじゃ、行ってくるな」

 

「行ってらっしゃい」

 

 ん?なんか今のやりとり、新婚みたいじゃね?←頭の中おめでたバカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 職員室に行く途中で黄前さんに出くわした

 

「あれ、黄前さん」

 

「あ、春希先輩」

 

「黄前さんもノート係?」

 

「はい」

 

「じゃあ一緒に行こう」

 

「はい」

 

 別に目的地は一緒で、ここで別々に行く理由もないからいいでしょ

 

 

 ー職員室ー

 

「失礼します…」

 

「どう責任を取ってくれるんですか!?」

 

 職員室に入ろうとすると中から女の人の怒鳴り声が聞こえてきた。その人の隣にはあすか先輩がいる

 

「すみません…」

 

「どうしてあなたが謝るの!?誤ってもらうのはこっちでしょ!」

 

「大きな声出さないでお母さん」

 

 お母さん…?

 

「先生なら子供にとって今何が大切かわかりますよね?」

 

「えぇ…」

 

「部活動で推薦入学するならまだしも、うちの子は一般受験なんですよ?」

 

「お、お母様のおっしゃる通りです…」

 

「だったら!すぐに退部届を受理してください!!」

 

 た、退部!!?

 

「えぇしかし…今年の吹奏楽部は頑張っていましてですね……全国大会にも…」

 

「私は何があってもその退部届を受け取るつもりはありません」

 

「…どうしてです?サックスの3年生の退部は認めたと聞きましたけど?」

 

「斎藤さんは自分の意思で退部すると言ってきました。だから認めたのです。しかし今回は違います。その退部届はお母さんの意思で書かれたものではないですか」

 

「…それの何がいけないんですか?この子はここまで私1人で育ててきたんです。誰の手も借りずに1人で!だから娘の将来は私が決めます!部活はこの子にとって枷でしかありません!」

 

「えぇ、その気持ちはわかります。しかし…」

 

「私は本人の意思を尊重します。田中さんが望まない以上その届は受け取りません。何があってもです」

 

「滝先生…もう少し言い方を考えて」

 

「田中さんは副部長として立派に部をまとめてくれています。その悲願である全国大会に出れるのです。応援してあげることはできませんか?」

 

 副部長…このまま全国行かないまま終わっていいんですか!?

 

「…あすか、この場で退部すると言いなさい」

 

 あぁ!?

 

「え!?」

 

「言いなさい。今、辞めるの」

 

 おいおい、本人の意思は無視か!?

 

「…お母さん、私部活辞めたく…「パンッ!」」

 

 副部長が言おうとしたことはお母さんのビンタによって遮られた

 

「あっ!」

 

 これにはさすがの黄前さんも声が出る

 

「…なんで、なんで私の言うことが聞けないの!!!」

 

「お母さんちょっと…」

 

「あんな楽器吹いてるのも私への当てつけなんでしょ!!?そんなに私のこと苦しめたいの!?…はぁ…はぁ…あっ!あすか…あすか、ごめんなさい…私また…カッとしちゃって……」

 

 一旦冷静になって自分がやったことに気づいた副部長のお母さんは副部長の頰に手を差し伸べるがそれは副部長によって止められる

 

「…大丈夫」

 

「っ!ごめんなさい!」

 

「先生すみません。今日は母と一緒に帰りますので、部活休ませてもらっていいいですか?」

 

「…わかりました」

 

 副部長は一度礼をしてお母さんの手を取り、オレ達の横を通って職員室を出た。そのときの副部長の顔はとても冷たい表情となっていた

 

 その事件の話は瞬く間に広がり、吹奏楽部にも動揺が広がっていた

 




そして、次の曲が始まる

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