響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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第19話

 ♪〜♪〜♪〜

 

「ホルン、Lの前音符もう少しください!」

 

『はい!』

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

「トロンボーン、バッキングの縦気をつけてください!」

 

『はい!』

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

「ユーフォ、前も言ったようにFの音は高めにとってください」

 

「「はい!」」

 

「あとは…黄前さん」

 

「はい」

 

「今の演奏を忘れないように」

 

「…はい!」

 

「では今の点を注意してもう一度最初からいきます。本番を意識してください。もう一度言います、本番です!」

 

 みんなほとんど完成に近づいてきた気がする。そして関西大会は明日に迫っている

 

 

 

 最後の練習が終わり、昇さんが最後の言葉を投げかける

 

「いいですか?皆さん。明日の本番も難しくは考えないでください。我々が明日するのは練習でやってきたことをそのまま出す。それだけです」

 

『はい!』

 

「んっ!それから夏休みの間コーチをお願いしていた橋本先生と新山先生は本日が最後となります」

 

『えー!』

 

「最後に一言お願いします」

 

 そっか、2人は今日が最後か…

 

「約3週間、短い間でしたが確実に皆さんの演奏は良くなったと思います。その真面目な姿勢は私も見習うべきものがたくさんありました。明日の関西大会、胸を張って楽しんできてください」

 

 新山先生、ありがとうございました…

 

「えーと、僕はこんな性格なので正直に言います。今の北宇治の演奏は関西のどの高校にも劣っていません!自信を持っていい!!この3週間で表現が実に豊かになりました!特に、鎧塚さんと堺くん!」

 

「…はい」

 

「はい」

 

「前から表現力があったけど新たな表現力が加わった感じだ!何かいいことあった〜?」

 

「…はい!」

 

「まぁ…」

 

 みぞれはのぞみとの仲が解消されて、それを見てオレはより一層みぞれのために吹こうと思ったくらいかな…

 

「おぉ!いいねー!今の2人のように明日は素直に自分達の演奏をやりきってください!期待してるよ!!」

 

 \パチパチパチパチ/

 

 橋本先生、ありがとうございました…

 

「起立、ありがとうございました!」

 

『ありがとうございました!!』

 

 先生達からの言葉を受け取り、オレはみぞれと一緒に帰路についた

 

 

 

 

 

 

 オレ達は少し公園のベンチに寄っている

 

「ハル…今までありがとう」

 

「どうしたんだ、急に」

 

「ハルがいてくれたからここまでやってこれた」

 

「…そっか」

 

「そのおかげでのぞみとも仲直りできた」

 

 それはみぞれが頑張ったからだよ。じゃあもうオレは用済み…ってことかな……

 

「・・でもやっぱり隣はハルにいてほしい」

 

「…」

 

 オレはその言葉に何も言えず固まってしまった

 

「だから…」

 

 そう聞いた瞬間頰に柔らかい感触を感じる

 

「だから…///これからも、側にいてほしい…///」

 

「…当たり前だ!」

 

 オレはみぞれの両頬に手をやる

 

「オレはこれからもお前のパートナーだ!部活でも生活でもだ!!」

 

「…うん」

 

「…のぞみのことは、もう少し時間をくれ」

 

「ふふっ」

 

 オレはみぞれの顔から手を離し、みぞれはオレの言ったことに笑う

 

「これからもよろしくな!みぞれ!!」

 

「うん!こちらこそ」

 

 オレはその答えを聞いてみぞれの顔に自分のを近づけ、キスをした

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー関西大会会場ー

 

 大会は既に午前の部を終え結果が出ようとしているところだ

 

「先輩、見てきました!」

 

「どうだった!?」

 

「東照を含めた3校が金でした!それから、立華高校は銀だったみたいです…」

 

「えっ!」

 

「ウソ!?」

 

「はぁ、もう吐きそう…」

 

 立華が銀…立華ってどこだ?

 

「ほらほら、私達に他の学校を気にしいてる余裕なんてないよ。今は演奏のことに集中して」

 

 そうだ、他の学校は関係ない。オレ達はオレ達だ!

 

 

 

 

 

 

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

 全員でチューニングの時間

 

「はい止めて。では1回だけ深呼吸をしましょうか。大きく息を吸って〜」

 

『スゥ〜』

 

「吐いて〜」

 

『はー』

 

「吐いて〜、吐いて〜。気持ちを楽にして。笑顔で」

 

『ははー』

 

「私からは以上です」

 

 ですよねー

 

「部長、何かありますか?」

 

「えっ!」

 

「先生!」

 

「はい、田中さん」

 

 副部長?珍しいな

 

「部長の前に少しだけ」

 

 そう言って副部長は楽器を置き立ち上がった

 

「去年の今頃、私達が今日ここにいるのを想像できた人は1人もいないと思う。2年と3年はいろいろあったから特にね。それが半年足らずでここまでくることができた、これは紛れもなく滝先生の指導のおかげです!」

 

 そうですね。全くもってその通り

 

「その感謝の気持ちも込めて、今日の演奏は精一杯楽しもう!」

 

『はい!』

 

「…それから今の私の気持ちを正直に言うと、私はここで負けたくない。関西に来れてよかった、で終わりにしたくない。ここまできた以上なんとしてでも全国に進んで、北宇治の音を全国に響かせたい!」

 

 副部長…

 

「だからみんな…これまでの練習の成果を今日全部出し切って!!」

 

『はい!!!』

 

「じゃあ部長、例のやつを」

 

「えっ!あっ、はい!」

 

 部長慌てすぎ

 

「ではみんなご唱和ください。北宇治〜ファイトー!」

 

『おー!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 ー舞台裏ー

 

 今、みぞれはのぞみと一緒にいた。そこにオレはまだ入れない…

 

 緊張はしてる。でもいい感じで気分が高揚している。これなら大丈夫だ

 

「ハル…」

 

「ん?もういいのか?」

 

「…うん」

 

 1人で集中しているとみぞれがやってきた

 

「のぞみといなくて大丈夫なのか?」

 

「…ハルと一緒にいたかったから」

 

「さようで…」

 

「…嫌だった?」

 

 オレは悲しい顔をするみぞれの頭に手を乗せる

 

「んなわけねぇだろ」

 

「よかった」

 

 みぞれは笑顔になってくれた

 

「用意はいいか?みぞれ」

 

「うん、大丈夫」

 

「OKだ」

 

「ハル」

 

「ん?」

 

「ソロ、頑張ってね」

 

 それはみぞれからの激励の言葉だった。やべぇ、テンションあがるなー!!!

 

「任せろ!出場したやつの中で一番の音聴かせてやる!!」

 

「うん!」

 

 そろそろかな…

 

「みぞれ」

 

「っ!」

 

 オレはみぞれを抱き寄せ額同士をくっつける

 

「いくぞ!」

 

「うん!」

 

「オレはみぞれのために」

 

「私はハルのために」

 

「今日も最高の音奏でようぜ!!」

 

「うん!」

 

 そして前の学校の演奏が終わり、オレ達の番が回ってきた

 

『プログラム16番、北宇治高等学校吹奏楽部』

 

 アナウンスによりオレ達の紹介がされ、昇さんが観客席の方に一礼する。指揮台に乗りこちらを向いて一間開けて構える

 

 さぁ、いってみよう!

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

 

 

 

 

 

 課題曲が終わり、次に自由曲

 

 オレはもう一度心の中で気合を入れなおす

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

 

 

 

 

 そして、オレのソロがやってきた

 

 オレは入る前にみぞれの方に目をやると、こっちを見てきたみぞれと目が合った

 

 ♪〜

 

 これまでにないような音が場内に響き渡った

 

 

 

 

 

 

 そして流れるような演奏が続き、トランペットのソロ

 

 ♪〜

 

 うん、完璧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレ達は全てを出し切ったと思う。少なくともオレはそうだ

 

 今、北宇治の結果を待っている。隣の人の手を握り合い、みんな下を向いて必死に祈っている

 

『プログラム15番、大阪府代表明星工科高等学校、ゴールド金賞』

 

 次…

 

『プログラム16番、京都府代表北宇治高等学校、ゴールド金賞』

 

『うぉー!!!』

 

「やったな、みぞれ」

 

「うん!」

 

 よし!とりあえず金はいった!!!問題は…

 

 

 

 

 

 

『続きまして関西から全国に行く3校を発表します』

 

 いよいよか…

 

『プログラム3番、大阪府代表大阪東照高等学校』

 

 \パチパチパチパチ/

 

『プログラム15番、明星工科高等学校』

 

『やったー!』

 

 \パチパチパチパチ/

 

 残るは1つ…

 

『最後に…プログラム16番、京都府代表北宇治高等学校』

 

「やったー!」

 

「よっしゃー!!」

 

 みんなは立ち上がって肩を組み喜んだり、泣いて立ち上がれなかったりだ

 

「みぞれ!」

 

「…うん!やったね、ハル!!」

 

 みぞれは涙を浮かべているが笑顔でオレにそう言ってきた

 

 今度は全国にオレらの音聴かせてやる!!

 

 

 

 

 こうして北宇治高等学校は全国の切符を手にした

 





そして、次の曲が始まる

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