響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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第18話

 合宿が終わり今関西大会のことのついて集められた

 

「関西大会の順番が決まった」

 

 ザワザワ…

 

「静かにしろ!それで北宇治高校は…16番目の演奏になる」

 

 23組中の16番か…悪くないな

 

「あのー他の高校は…?」

 

「ん!」

 

 

 なぜか松本先生に睨まれる…先生目つき怖っ!

 

「主な強豪校ですが大阪東照は午前の部の3番目、秀大付属は12番目、そして明星工科は私達の前の15番目になります。」

 

『えー!』

 

「明星の次なんて〜」

 

 強豪校の次に演奏することになったんだ。そういうリアクションは当然か…

 

「なにー?強豪の次だからってビビってんの?」

 

「そりゃー、ねー?」

 

「うん…」

 

「関係ない関係ない。関西大会なんてどこも強豪校なんだから」

 

「橋本先生の言う通りです。気にすることはありません。私達はいつもと同じように演奏するだけです」

 

『はい!』

 

 関西大会まであと10日を切っている。ここからは演奏もそうだけど体調にも気を配っておく必要があるな

 

 

 

 

 

「鎧塚さん、堺くん」

 

「?はい」

 

「はい…」

 

 練習が終わるとオレとみぞれのもとに新山先生がやってきた

 

「今回の大会、私はあなた達が全国への鍵だと思っています」

 

「…はぁ」

 

「お二人とも以前から上手いと思っていたけどこの少しの期間でまだ成長しています。でも堺くん…」

 

「はい?」

 

「合宿のときもそうだったけどたまにあなたらしくない演奏がありました。鎧塚さんもそれに気づいてつられてしまっていました」

 

「…」

 

 オレは黙ったままだがその原因はなんなのかはわかっている

 

「…」

 

 みぞれも黙ったままオレの方を見ている

 

「あなた達の演奏は素晴らしいけど、そのときの演奏を聴くとなんだか苦しくなるの」

 

「すみません…」

 

「何があったかは聞かないけれど、私はあなた達に最高の演奏をしてもらいたいの」

 

「はい」

 

「…」

 

 話はそれで終わりオレはみぞれと帰宅した

 

 

 

 

 

 

 ー翌日ー

 

 ♪〜♪〜

 

 朝練でオレはいろんな感情を持ちながらひたすら吹いていた

 

「…ル、ハル」

 

「…あっ!どうした?」

 

「…今日のハル変」

 

 みぞれはオレの音でそれを察したのか、演奏を中断して話しかけてきた

 

「…ハル」

 

「ん?」

 

「昨日のこと気にしてる?」

 

「…そだな」

 

「…気にしなくていいと思う」

 

「みぞれ?」

 

「私はハルのために」

 

「っ!オレはみぞれのために」

 

「私はこれだけで十分」

 

 …ははっ、まさかみぞれに励まされる日が来るとはなぁ

 

「そうだな、うん!そうだった!」

 

「…ハル?」

 

「ありがとみぞれ!」

 

「…うん」

 

 オレの何かが変わったのかみぞれに笑顔が見れた

 

 ♪〜♪〜

 

 その後のオレが出す音は自分でもわかる通りこれまでの音とは全然違った。みぞれのおかげだ!

 

 

 

 

 

 しかし、この状況は長くは続かなかった…

 

 

 

 

 

 いつも通りパート練を2人でやっているとき事態は起こった

 

 ♪〜♪〜

 

 いい感じだ

 

「なんか久しぶりだね」

 

 っ!この声!!

 

 オレは顔を上げその声の主を見る。

 

「みぞれ、春希」

 

 それはオレ達の気持ちなんて全くわかってない、完全に友達に会うときの笑顔でいるのぞみだった

 

 その顔を見た瞬間、みぞれは楽譜を置いている台を倒して逃げるように走り去る

 

「みぞれ待って!みぞれ!」

 

 最悪だ!

 

 オレはみぞれを追いかけようとするのぞみの前に立ちはだかり

 

「やめろ」

 

 オレは殴りたい衝動を必死に抑えそれだけ言ってみぞれのあとを追いかける

 

 

 

 

 

 

「みぞれ!」

 

 オレはみぞれが入って行った教室に入り、膝を抱え蹲っているみぞれを優しく抱きしめる

 

「ハル…」

 

「大丈夫だ」

 

 オレは優しく語りかける

 

 その後に黄前さんがやってきた

 

「先輩…」

 

「黄前さん」

 

「あの、何かあったんですか…?えっと、のぞみ先輩のこと嫌いなんですか…?」

 

「…黄前さん、今その話は……」

 

「嫌いじゃない。そうじゃない」

 

 黄前さんが聞いてくることを止めようとするオレに被せてみぞれが言った

 

「じゃあ何か嫌なこと言われたとか…」

 

「違う!違う、のぞみは悪くない。悪いのは全部私…私がのぞみに会うのが、怖いから…」

 

「どうしてですか…?」

 

「…わかっちゃうから。現実を…」

 

「現実…」

 

 オレは今すぐにでもこの話を止めたかった。でもなぜ止めないで聞いてたのかはオレにもわからない…

 

「のぞみは特別…大切な友達……私、人が苦手。性格暗いし。友達もいなくて、ずっと1人だった…のぞみはそんな私と仲良くしてくれた。のぞみが誘ってくれたから吹奏楽部に入った。嬉しかった…毎日が楽しくって。」

 

 みぞれは顔をオレから離す

 

「でものぞみにとって私は友達の1人、たくさんいる中の1人だった」

 

「そんなこと…」

 

「だから!部活辞めるのだって知らなかった。私だけ知らなかった…」

 

 みぞれのオレを抱きしめる力が強くなったのがわかった

 

「相談1つないんだって、私はそんな存在なんだって、知るのが…怖かった……わからない、私はどうしていいか…わからない……」

 

 そこへリボンがやってきた。走ってきたのだろう、汗をかき肩が上下している

 

「はぁ…はぁ…みぞれ…」

 

「優子先輩…」

 

「優子…」

 

 オレはみぞれを離し、立ち上がる

 優子はみぞれに駆け寄る

 

「何心配させてんのよ!」

 

「ごめん…」

 

「まだのぞみと話すの怖い…?」

 

「(コクッ)」

 

 優子の問いかけにみぞれは頷く

 

「だって、のぞみは私の…拒絶されたら……」

 

「なんでそんなこと言うの!?だったら私はみぞれの何!?私はみぞれの何なのよ!?」

 

「…優子は、私が可哀想だから…優しくしてくた。同情してくれた…」

 

 その言葉に優子は涙を流す

 

「ふざけんなっ!!!」

 

「っ!ハル…?」

 

「優子が同情?ホントにそんなこと思ってんのか!嫌いな奴とここまで親しくするわけないだろ!!お前はこいつを友達と思ってなかったのか!?」

 

 オレはさっきの言葉にキレた

 

「じゃあオレはなんだ!!みぞれはオレも同情で付き合ってるとでも思ってたのか!!!?」

 

「っ!ちが…」

 

 オレは1度ふぅっと息を吐き自分を落ち着かせる

 

「そう思ってるなら私もいい加減キレるよ!?」

 

 オレに変わって優子が続ける

 

「部活だってそうよ!ホントのぞみのためだけに部活続けてきたの!?あんだけ練習してコンクール目指してホントに何もなかった!?府大会で関西行き決まって嬉しくなかった!?私は嬉しかった!!頑張ってきてよかった、努力は無駄じゃなかった。中学から引きずってきたものからやっと解放された気がした!」

 

 優子はみぞれを押し倒す

 

「みぞれは違う!?何も思わなかった!?ねぇ!!」

 

 みぞれは目を瞑り顔を横に振る

 

「嬉しかった…でも、でも…それと同じくらい辞めていった子に申し訳なかった……喜んでいいのかなって…」

 

「「いいにきまってんだろ(る)!!!!」」

 

 オレと優子の声が重なった

 

 優子はみぞれの腕を引っ張って起こす

 

「いいに決まってんじゃん…だから、彼氏の前だけじゃなくて笑ってよ…」

 

 みぞれはその言葉を聞いて泣きだす

 

「ちょっ!みぞれ!」

 

 そうやって辞めってったやつのことを考えるのはみぞれのいいところだな

 

 そしてまた教室に誰かが入ってきた。夏紀と、それに続いてのぞみが…みぞれのオーボエを持って…

 

「のぞみ先輩…」

 

「…」

 

「のぞみ…ちゃんと話したら…?」

 

 みぞれは立ち上がりゆっくりとのぞみの前に行く

 

「あすか先輩がこれ持ってけって…」

 

 のぞみがオーボエを渡してくる

 

「私、何か気に触るようなことしちゃったな…?私バカだからさ、心当たりがないんだけど…」

 

「…どうして」

 

 みぞれが口を開く

 

「どうして、話してくれなかったの…?」

 

「え?」

 

「部活、辞めたとき…」

 

「だって、必要なかったから…」

 

「え…」

 

「だって、みぞれ頑張ってたじゃん。私が腐ってたときも、誰も練習してなくても練習してた。そんな人に一緒に辞めようとか、言えるわけないじゃん」

 

「…だから言わなかったの?」

 

「うん…もしかして、仲間外れにされたと思ってた…?」

 

「…うぅ……」

 

「え、なんで、違う!」

 

 また泣き出したみぞれに駆け寄るのぞみ

 

「待って、違うの!ホントそんなつもりじゃ!みぞれごめん、ごめんね!」

 

「…ごめん」

 

「どうしてみぞれが謝るの?」

 

「私ずっと避けてた…勝手に思い込んで……怖くて…ごめんなさい!」

 

「ねぇ、みぞれ…私府大会見に行ったんだよ?みんなキラキラしてた。聴いたよ?みぞれのソロ。カッコよかった!」

 

「ホント…?」

 

「ホントに決まってんじゃん!私さ、中学の頃からみぞれのオーボエ好きだったんだよ」

 

 その言葉と共に持っているオーボエを前に出す。みぞれはそれを受け取る

 

「なんかさ、キューンてしてさ!聴きたいな、みぞれのオーボエ!」

 

「…」

 

「みぞれ…」

 

「うん…私も聴いてほしい」

 

 みぞれは泣きながらだが笑顔になる

 みぞれ、お前はホントに優しいよ…オレは……

 

 オレはその様子を後ろに教室を出ようとする

 

「…ハル?」

 

 それに気づいたみぞれが声をかけてくる

 

「みぞれはホントに優しいよ。すまないがオレはまだみぞれを置いて逃げ出したそいつを許すことはできない…」

 

「っ!それはちが…!」

 

「あぁ、違うのかもしれない。お前にそんな気なかったかもしれない。だが実際お前がみぞれを置いて部活を辞めた。みぞれはそれで凄く悲しんだ。それは事実だ」

 

「…」

 

 オレの言葉に黙り込むのぞみ

 

「だがみぞれはお前を想い続けた。みぞれがもう大丈夫なら、オレはそれを止めることはしない。お前がいてみぞれが大丈夫なら“オレが部を離れる”」

 

『っ!』

 

「こんな気持ちのまま大会に臨んだらいけない…部長達にはオレから言っとく」

 

 オレはそう言って教室を出ようとする

 

「待って!」

 

 しかしみぞれが駆け寄りオレの背中に抱きついた

 

「確かにのぞみは友達!でもハルが隣にいないのはもっと嫌!!」

 

「みぞれ…」

 

「ハルがいたから部活が楽しかった!ハルがいたからいい音出せた!ハルがいなかったら、私は…」

 

 みぞれはオレの背中に顔を押し付けて泣いている

 

「ハル…お願い……隣にいて…」

 

 はぁ…またみぞれを泣かしてしまった

 

 オレはみぞれに向き直りみぞれの肩に手を置く

 

「…当分のぞみとは仲良くできないぞ?」

 

「(コクッ)」

 

「…迷惑かけるかもしれないぞ」

 

「(コクッ)」

 

 涙を流しながらオレの目を見て「行かないで!」と訴えてくる

 

「…はぁ、わかった。お前の隣はこれからもオレだ」

 

「…うん!」

 

 みぞれ…ありがとう

 




そして、次の曲が始まる

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