響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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第14話

「賞状誰か持ってー」

 

「私はいいよ…」

 

 コンクールが終了し、その熱が冷めないうちに記念撮影をするべくみんなは集まっている

 未だに実感が湧かない。オレ達北宇治高校が“全国”なんて…

 

「じゃあいきます!こっち向いて何かポーズとって!」

 

 カメラマンさんの指示に従い各々今の嬉しさを存分に体で表した

 

 オレ達北宇治高校吹奏楽部はコンクールで金賞を取り、さらに全国行きを決めたのだ。そしてここからまた新たな一歩を踏み始める…

 

 

 

 

 

 

「はーい、みんな集まってー」

 

 部長の声かけにみんなが集まる

 

「お願いします」

 

「えーと、こういうのは初めてなのでなんて言ったらいいのかわからないのですが…皆さん、おめでとうございます!」

 

「いえ!むしろ感謝するのはこっちの方です!」

 

 全くもってその通りですね。昇さんには感謝しても仕切れないでしょう

 

「みんな!せーの!」

 

『ありがとうございました!』

 

「…あ、はい。ありがとうございます」

 

 あっさりだな…

 

「私達はたった今から代表です。それに恥じないようにさらに演奏に磨きをかけていかなければいけません。今この場からその覚悟を持ってください」

 

『はい!』

 

 そうだ。これからオレ達は代表で演奏するんだ

 

「では移動しまーす」

 

 

 

 

 

 ーバス内ー

 

「今日の最高だったぞみぞれ」

 

「…ありがと///」

 

 来るとき同様隣同士に座りみぞれに声をかける

 

「次はハルの番」

 

「おう!」

 

「期待してる」

 

「任せろ!」

 

 みぞれはそう言い終えて疲れたのかオレの肩に寄っかかって寝てしまった

 

 

 

 

 

 

 

 ー学校(音楽室)ー

 

 学校に着くと運搬係と一緒に楽器を音楽室に運ぶ

 運び終わったら音楽室に全員集まり今後の予定表が配られた

 

「全員行き渡りましたか?」

 

『はい』

 

 予定表には空白の方が多いが何も書いてなくても練習するのが当たり前だ。この予定表にはこの後も本当の夏休みとは程遠いことを意味していた

 

「8月の17、18、19の三日間、近くの施設を借りて合宿を行います。今日帰ったらご家族にきちんと話してください」

 

 合宿かぁ…楽しみだ!

 

「その前の15と16に休みって書いてあるのは…」

 

 ん?ホントだ

 

「そのままの意味です」

 

『えー!』

 

「練習したいのはやまやまなんですがその期間は必ず休まなければならないと学校で決まっているらしくって」

 

「自主練もダメなんですか?」

 

「学校を閉めるらしいんですよ」

 

 意識の高さがよくわかる。みんなそれだけ大会にかけているんだろう。関西に行けたという事実が全国を夢から現実のものにしていた

 

「とにかく残された時間は限られています。3年生はもちろん、2年生、1年生も来年あるなんて思わずこのチャンスを必ずものにしましょう」

 

『はい!』

 

「では練習に移りますが、その前に…」

 

 昇さんがそう言うと入口のドアが開かれた。入ってきたのはサブメンバーのチームモナカだ。しかも楽器を持っている

 

「えーと、皆さん関西大会出場おめでとうございます」

 

「私達チームモナカは関西大会に向けてこれまで同様みんなを支え一緒にこの部を盛り上げていきたいと思っています」

 

「おめでとうの気持ちを込めて演奏するので聞いてください!」

 

「では!」

 

「行くよ!」

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

 合図と同時にチームモナカによる学園天国が演奏された。そして終わりには…

 

『Congraturation!!』

 

 \パチパチパチパチ/

 

「ありがとうございました…グスッ!」

 

 部長泣いてるよ!

 

「みんな…本当に…うぇぇ…」

 

「もー!こういうときは景気良くいかないとダメでしょ!じゃあいくよー!北宇治ファイトー!」

 

『おー!!!』

 

「それ私の~」

 

 こうして北宇治高校吹奏楽部の新たなスタートが切られた

 

 

 

 

 

 

 

 ー翌日ー

 

 今日も朝練のためにいつもの電車のいつもの席に座っている。だが昨日はなかなか興奮が収まらなくって全然寝られなかった。だから今すんげぇ眠い…

 

「ハルおはよ」

 

「…おぉみぞれ、おはよ」

 

 いかんいかん。少し寝てしまっていたみたいだ…

 

「眠いの?」

 

「んー?昨日寝れなくってな」

 

「そうなんだ」

 

 みぞれはそう言ってオレ頭に手をやる

 

「…寝癖」

 

「あぁ、わりー。寝ぼけてたから」

 

 学校までにはちゃんと目を覚まさないとな

 

 

 

 

 

 

 ー学校ー

 

 今日もオレらは1番だった。いつも通り職員室に音楽室の鍵を借りに行く

 

 コンコン

「失礼します」

 

「おや、お二人ともいつも早いですね」

 

「いえいえ、音楽室の鍵…」

 

「はいどうぞ」

 

「ありがとうございます。失礼しました」

 

 オレは鍵を受け取り職員室を出る

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー音楽室ー

 

 今日はなぜか音楽室でやることになった。なんでかはわからん…

 

 ♪〜

 

「どうだ?」

 

「…大丈夫」

 

「じゃあ始めますか」

 

「…うん」

 

 チューニングも終わりオレ達は演奏を開始した

 

 

 

 

 

 ♪〜

 

 ガラガラ

 

 どれぐらい経った頃だろうか、音楽室のドアが開いた

 

「おはようございます」

 

「ん?麗奈か、おはよう」

 

「(ペコッ)」

 

 ん?今日は黄前さんもいるじゃん

 

「珍しいね。今日は2人?」

 

「はい、今日は2人です」

 

「そう…」

 

 みぞれから話しかけるなんてこっちもまた珍しいな

 

「あのー、先輩方はいつもこんな早くに来てるんですか?」

 

「…うん、来てる」

 

「まぁもう慣れたな」

 

「練習好きなんですね」

 

「…ハルがいるから」

 

「オレもみぞれがいるからかな」

 

「…そうですか」

 

 なんか引かれたな、なんでだ?

 

「そうだ麗奈、昨日のソロよかったぞ」

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

「れ、麗奈?」

 

 いきなりの麗奈の豹変ぷりに驚いている黄前さん

 

「黄前さんはもう少しで例のところできそうだな」

 

「え、あ、そうですかね…」

 

「あぁ、焦らずじっくりな」

 

「…はい!」

 

 おぉおぉ、元気があっていいねぇ若いのは

 

 その後中世古先輩やリボンが来たりと続々と集まり出した

 

「みぞれは夏休みの宿題どれくらい終わった?」

 

 いきなりリボンがきた

 

「…ほとんど終わった」

 

「えー!いいなぁ!ねぇお盆暇?一緒にやらない?」

 

「…ハルが一緒だけどそれでもいいなら」

 

「…」

 

 リボンはいわゆるジト目でオレの方を見て来た

 

「まぁいいか」

 

「なんだよ?」

 

「あんたもたまには彼氏離れしたら?」

 

「…?なんで?」

 

「はぁ、はいはい、私が悪かったわよ」

 

 なんでかわかんないが諦めたリボン。だがオレとみぞれの2人っきりの時間を壊したお前は万死に値する!どうしてくれようか!!

 




そして、次の曲が始まる

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