響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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第11話

 ー音楽室ー

 

 オーディションの不満も全部ではないが晴れてきた

 

 今日も今日とて全体練習の音が音楽室に響き渡る

 

「トロンボーン23章節目セカンドだけで1度いただけますか?」

 

『はい』

 

「いや1人ずついきましょう。塚本くん」

 

「はい」

 

 1年生でトロンボーンの塚本 修一(つかもと しゅういち)くん。経験者で以前はホルンをやっていたらしい

 

 ♪〜

 

「…塚本くん、そこできるようになってくださいと先週から言っているはずです」

 

「はい…」

 

「こんなところを何度もやっている時間はありません。明日までにできるようになっておいてください」

 

「はい…」

 

 このように昇さんは包み隠さずダメなところは指摘してくる

 

「ではその次から全員で。3…」

 

 ♪〜

 

 この後何回か通して朝練は終わった

 

 

 

 

 

 ーお昼ー

 

「あっついな〜」

 

「…そうだね」

 

「みぞれは大丈夫か?」

 

「うん」

 

「水分はしっかり摂れよ?」

 

「わかってる」

 

 オレとみぞれはお昼を食べに外の木の木陰に来ている。この時期は校舎よりも外の方が涼しいかもしれないな

 

 ♪〜

 

 そこにトランペットの音が聴こえる

 

「やってるな」

 

「…」

 

「オレらも少し休んだらやろうか」

 

「…うん」

 

「…今、すっげぇ楽しそうな顔したな」

 

「…してない」

 

「素直じゃないなぁ」

 

「…」

 

 みぞれは黙ってしまった。でもこれは怒っているわけではなく照れているのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー放課後ー

 

 さて、いよいよ再オーディションの時間がやってきた。ホールを使うから楽器の運搬をやらなきゃいけない。こういうときに男手は必要なんだよなぁ

 

「では皆さん、準備を始めましょう」

 

「中世古さん、高坂さん。それと堺くんと鎧塚さん」

 

「「はい」」

 

「はい」

 

「…はい」

 

「あなた方は準備はいいのでオーディションの用意を」

 

「「はい」」

 

「わかりました。みぞれ行くぞ」

 

「うん」

 

 麗奈と中世古先輩はそれぞれ自分のトランペットを持ち2人違う場所へ向かう。オレ達はもちろん一緒にいるに決まってる

 

 

 

 

 

 

 ♪〜

 

「みぞれ調子はどうだ?」

 

「…うん、大丈夫」

 

「そっか。オレも大丈夫だ。まぁ今日は気楽に行こうぜ」

 

「うん」

 

「でも…」

 

 オレはそう言って隣にいるみぞれの肩に手をやり引き寄せる

 

「楽しもうぜ」

 

「…うん///」

 

 

 

 

 

 先にトランペットの再オーディションが行われることになった

 

「それではこれよりソロパート再オーディションを行います。両者が吹き終わった後全員の拍手で決めましょう。いいですね?中世古さん」

 

「はい」

 

「高坂さん」

 

「はい」

 

 2人ともいい目をしている

 

「では最初に中世古さん、お願いします」

 

「はい」

 

 ♪〜

 

 オレは目を閉じ聴覚だけに神経を研ぎ澄ます。うん、いい音だ

 

 

「ありがとうございました」

 

 演奏が終わると先輩はそう言って一礼する。そして拍手が起こる

 

 

「では次に高坂さん、お願いします」

 

「はい」

 

 ♪〜

 

 オレは先程と同じように目を閉じる。うん、さすが

 

 

「ありがとうございました」

 

 先輩と同じように一礼する。そして拍手は起きない

 

 

「それではソロを決定したいと思います。中世古さんがいいと思う人」

 

 \パチパチパチパチ/

 

 リボンが立ち上がり拍手する。でも…少ないな……

 

「はい。では高坂さんがいいと思う人」

 

 \パチパチパチパチ/

 

 こっちは黄前さんが立ち上がり拍手する。オレも麗奈の方がいいと思ったから拍手

 みんな拍手しねぇじゃん…

 

「はい。中世古さん」

 

「はい」

 

「あなたがソロを吹きますか?」

 

 意図がありありの質問をする

 

「…」

 

 

 

 少しの沈黙

 

 

 

 

「…吹かないです。吹けないです。ソロは高坂さんが吹くべきだと思います」

 

「せんぱい…うぅ……あぁぁぁ!!」

 

 優子は大声で泣きだす。あいつはそれほど中世古先輩のことを想っていたんだろう

 

「高坂さん」

 

「はい」

 

「あなたがソロです。中世古さんではなくあなたがソロを吹く。いいですか?」

 

「はい!」

 

 うん。いい目だ

 

 

 

「さて、次は堺くん、鎧塚さん。お願いします」

 

「わかりました。みぞれ」

 

「うん」

 

 オレ達は先の2人ともすれ違い壇上に上がる

 

「じゃあみぞれ、やるぞ!」

 

「...うん」

 

「オレはみぞれのために」

 

「私はハルのために」

 

「いい音奏でようぜ!」

 

「うん」

 

 もうこれはオレ達にとってのルーティンだな。同級生や先輩達はこの事をもう知っているので別に驚く顔もせずに見守ってくれている

 

「よろしいですか?」

 

「はい!」

 

「…はい」

 

「では、鎧塚さんからお願いします」

 

「…はい」

 

 ♪〜

 

 オレは目を閉じてみぞれの演奏を聴く。うん、綺麗だ

 

 

「(ペコリ)」

 

 演奏が終わるとオレは目を開け、そこには明らかに驚いているみんなの顔が目に入る。どうだ?オレの彼女凄いだろ?

 

 

「はい。では堺くん、お願いします」

 

「はい…ふぅ…いきます」

 

 ♪〜

 

 うん。良好良好

 

 

「ありがとうございました」

 

 一礼してみんなの顔を見てからみぞれの顔を見る。珍しくみんなの前でも笑っている

 

「はい、ありがとうございました。どうですか皆さん?私の決断は納得していただけましたか?」

 

『はい!』

 

 みんな元気良すぎ。来南先輩と美貴乃先輩は何で泣いてんの?

 

「先生、ちょっといいですか?」

 

「何ですか?」

 

「みぞれ、一緒にやろうぜ!」

 

「…うん!」

 

 オレとみぞれは同時に構えそして旋律を奏でる

 

 ♪〜♪〜

 

 ホールの舞台にオレとみぞれの2人きり。先生からのあの言葉。みぞれとの二重奏。最高だ!

 

「うわ〜」

 

「すごっ!」

 

「綺麗」

 

 みんな口に出てますことよ?まぁそう思ってもらえてこっちも嬉しいがな

 

 

「ありがとうございました」

 

「(ペコリ)」

 

 \パチパチパチパチ/

 

 全員が立ち上がって拍手喝采の嵐。それをオレとみぞれは受ける。うん、やっぱ最高だ!

 

「私からはもう言う必要はありませんね。さて皆さん!このお二人に負けないよう一層練習していきましょう」

 

『はい!』

 

 こうして再オーディション&オレとみぞれのソロ発表が終わった

 




そして、次の曲が始まる

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