やはり俺がカフェの店長なのはまちがっている。   作:ステツイ

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むう。最近書くペースがあがらん..,


第24話「八幡だって寂しいのさ」

『alone』店内

 

今日の店内は思っている以上に空いている。それは天候が関係している。残念ながらの雨模様でいつ雨が降るかわからない状況だ。だからと、言って相模や他の店員は家に帰らせた。俺は家と近いから多少外に出る位なら良いのだ。最悪泊まるし。ーーなんだろう出不精な俺が改変されている気がする。

 

「・・・静かってのは良いもんだ」

 

1人でぼそりと呟く。確かに相模がバイトとして来てから、いや、カフェで働いている事がバレてしまってからなんだか煩かった。しかしそんな騒がしい空気が嫌いではなかった。むしろ慣れてしまい心淋しいと感じ始めてしまっている。

 

ポツ...ポツ...

 

寂しがっている俺の心を表すかのように雨が降り始める。雨音が激しくなってきた。

 

「こりゃあもう店仕舞いかな」

 

誰に言うでも無く空気に喋りかける。ほら、ぼっち遊び初級1人会話だよ。意外と楽しんだなこれが。脳内でエア友達と会話するんだよ。俺がこう言う、相手がこう返す。その答えにまた俺が答える。その話し合いを楽しむ。結局、自分対自分でしかない為自分以上の話が出来ないの難点。皆もやってみてね。ボケ防止になるよ。まぁ独り言を話す時点で危うい存在ではあるが。

 

カランコロン

 

そんな事を考えていると金属の高音が耳に入る。これは店内の扉を開けた時に店員に客が来た事を教える為につけている。ん?そんなの言われなくてもわかるって?いいんだよそれ位。文字稼ぎだよ。コラ、そこメタいとか言わない。俺が1番それ思ってたから。と、危ない。ぼっちは考える事に長けている為ついつい人の存在を忘れてしまう。まぁ俺自体忘れられている存在であるけど。何そのGANTZ2の最後感

 

「あっと...いらっしゃいませ」

 

そこには短髪の女子が立っていた。まぁそれだけなら普通だ。考えてみても欲しい。先ほどから雨がまるで豪雨のようにけたたましい強さの雨だ。通称ゲリラ豪雨である。傘を持っていない人にとっては最悪の事態だろう。まさにそう。この女の人は全身ずぶ濡れである。濡れた髪が頬に張り付き、雨で冷えた身体で入って来た際寒暖差によって一気に紅潮させられた顔。少々風邪を危惧する状態だ。ーーなんかちょっとエロいな。

 

そんな煩悩を捨て去るように話しかける。カフェやってて良かったよ。ギリギリコミュニケーションの取れる位は他人に話しかける事が出来るようになりました。

 

「あ、あの、座って貰っていいでしゅよ?」

 

だぁぁ!噛んだぁ!何がギリギリだよ!ギリギリアウトだよ!ちょっと恥ずかしくて嫌な気分だなおい!

 

「えっと...濡れちゃいますよ...?」

 

彼女は座る椅子が濡れる事を予見し遠慮する。

しかし、濡れていようが客は客なのでそれ相応の対応をする。

 

「えっと...大丈夫なんで、そちらの暖房の近くの椅子に座っていてください」

 

態々暖房の近くを指定する辺り俺ってば紳士。マジぼっち紳士。ぼっちはこうして人の為を思いやる紳士である。つまり人類が皆ぼっちであれば紳士淑女が増えるのだ。ぼっちって最高だよな。人に迷惑かけないし、人を気遣うとかほんと...やめよう言ってて悲しくなる。

 

「は、はい。すみません」

 

うん。マジ謙虚つーの?奥手つーの?静かな感じの子だな。顔も...可愛いな。

まぁ、そんな優しいと思われる子に風邪を引かれても仕方がないので色々と用意する。

 

「これどうぞ」

 

まずはタオル。女の子だもん髪とか濡れた所とか拭きたいよね。

 

「あ、ありがとうございます」

 

うーん。これは言うのに抵抗があるが濡れている女子を目の前に何もしない訳にはいかない。多分小町がポイント低い!と怒るくらい駄目だな。

 

「それと...一応軽く着替えは用意出来ますが?」

 

下着は無いが制服の余りはある。まじ沙希姐感謝。あん時に予備もあった方がいいから、と言われなければこんな紳士対応出来なかっただろうな。

 

「え、えっといいんですか?」

 

流石に着替えまで用意して貰うのには抵抗があるようだな。

 

「いいですよ。お客様を濡れさせたままにして風邪を引かれても嫌ですし、替えなら制服の余りがあるので。」

 

「じゃあ...お言葉に甘えて...」

 

ふむ。この子アレだな。話を合わせる系女子。あまり自分の意思を表に出さない様な人。なんだか前の由比ヶ浜を見ている様だ。

 

「彼処の個室でお着替えください。」

 

目の前で着替えるような変態ではないとは思うが、どっかの相模は目の前で着替え始める。しかも、「えぇ〜何々?八幡ってばそんなに私の身体みたいの〜?」とか身体をくねくねさせながら言う。お前が着替え始めたんだろうが。見たくないって言ったら嘘になるけど。

 

「はい。すいません。」

 

彼女が個室に入ったのを確認してコーヒーを作り始める。やっぱり濡れた女子が着替えた後に温かい物を出すのは様式美である。

 

ガチャ

 

ちょうどコーヒーが淹れ終わって1分もしない間に個室のドアが開く。よかったサイズが合ってたみたいだね。

・・・相模と似たプロポーションだったのは気に留めない。俺胸より尻派だし。

 

「ありがとうございました」

 

端的に感謝をされ返答をする。

 

「いえいえ。コーヒーが入ったので温かい内にお飲みください。」

 

彼女が歩いて座ったカウンター席にそっとコーヒーカップ等を置く。この時にコトッて音を鳴らす様に置くとかっこいい。

 

すると彼女は両手でカップを持ち手を温めた後にコーヒーを一口飲む。

 

「・・・あったまる〜」

 

ぼそりと放たられる言葉。なんでこう自然に出ちゃうんだろうね。お風呂とか入ったら、「あ"ぁ"〜」とか言っちゃうよね。雪ノ下の前でやると「ゾンビの鳴き声がするわ」とか言われちゃうね。目の前で風呂に入る場面とか無いけど。

 

程良く温まった彼女は俺に喋りかけ始めた。

 

「すみません。急に降られちゃって。周りが住宅街に近い所為か、中に入れそうなお店が見当たらなくて...」

 

まぁそうだろうな。ここら辺って住宅街がすぐ側にあるから他のお店が無いのだ。でもあと300m程歩けばコンビニがあるはずなんだが。このゲリラだ。どこでもいいって思うよな。後、話されてわかる。リア充さんですね。喋り方がもうそんな感じ。誰だよ由比ヶ浜とか言った奴。この子はむしろ副リーダーでも申し分ない程リア充オーラ出してんだよ。最初の方なんて寒くて喋り辛かっただけなんだね。ウソつき!!とか言いたくなったね。ミ-ンミ-ン おっと。ひぐらしが鳴いたようだね。

 

「大丈夫ですよ。こちらこそありがとうございます。」

 

なんとなく感謝。感謝されて嫌がる人間は少ない為適当に感謝の意を込めると大分違う。ソースは隼人。「適当に笑っていれば万事オッケーd(^_^o)」とか言いやがった。それはイケメンに限るって奴だ。俺は違うからもっと簡単なものを体現させたのだ。まぁ会話自体あまりしないけど。

 

「・・・あっ、もうすぐで友達が迎えにきてくれるみたいです」

 

ほら見たことか。スマホをぽちぽちし始めたと思ったらメールですよ?こいつはくせぇー!リア充の匂いがプンプンするぜッーーーッ!こんなリア充には(隼人のグループを除いて)出会った事がねぇ程なァーーーッ!

 

「左様ですか。それまで少々冷えるとは思いますがご寛ぎください。」

 

そんなスピードワゴンな心情をポイ捨てし話す。

 

彼女は俺に話しかけてくれる。俺もそれを無下にすべく、答える。いつもならエア友達だったのがリアルの他人と話している。俺も進歩したと思う。初めはお店の事に関してだったがだんだんと俺の話になってきていた。やれ彼女はいるか?だの、好きな人はいるか?だとか。

何々?俺のこと好きなの?勘違いして告白して振られちゃうね。これに懲りたら女の子は男の子に好きな人や彼女がいるか聞かない事。どこぞの一色あざといろはさんがテクニックとしてレパートリーに入れている程男の子には効果てきめんなのだ。

そんな話をしながら30分程経っただろうか。また扉が開かれる。

 

カランコロン

 

「おーい。千佳ー?ごめんねー遅くなった!」

 

傘を二本携えた短髪のゆるふわウェーブをかけた茶髪の女子がリア充オーラを丸出し状態でこの女子に話しかける。名前...千佳って言うんだ。

この言い方なんかストーカーみたいだから辞めておこう。

 

「もう!かおり遅いよ?」

 

プンスカしながら答える。うわお。リア充って言葉を放たれると感情が表に露わになる感情的なフレンズなんだね。

 

つか...かおり?って言ったか?確か...中学の時にそんな名前の奴いた様な...

 

と言うか

 

「ども!店長!お久しぶり!」※10話以来です。

 

折本かおりだった。アイエエエエ?ナンデ?カオリナンデ?

 

「お久しぶりです。」

 

俺はブレずに太陽の様に微笑む。自画自賛だけど。

 

「あぅ///かおり知り合いなの?」

 

「///...ん?あぁ〜言わなかった?ここが私オススメのカフェなのだ!」

 

ババン!!と音が聞こえる様な物言いをする折本。てか頼むからオススメしないでね。1人でひっそりとやりたいんだから。ただでさえ常連となった人達のお陰で小うるさい状態なんだからね?

 

「あぁ〜言ってたね。確か...イケメン店長だのコーヒーがかなり美味しいだの...」

 

「ちょ!千佳〜!!」

 

バタバタと手を千佳?の前で激しく振る。せっかく暖まった身体が冷えそうですね。つか、イケメンとか言わないでね勘違いしちゃうからね?俺くらいのボッチになればお世辞を言われても動じないのだ。

 

「あの、折本さんも何かお飲みになられますか?」

 

はよ飲んで帰れ。と言うか今すぐ帰れ。

 

「あ、じゃあ前と同じもので!」

 

覚えてねぇよ。...普通の客なら。生憎折本が飲むものは覚えていた。普通に何飲むのか気になったためである。決してまだ未練があるとかそう言うのじゃ無いんだからねっ!

 

「かしこまりました」

 

コーヒーを出して30分程経っただろうか、やはりこの2人以外の客人の足音はしない。なのだが会話の花が満開で煌めいている為中々騒音である。

 

・・・まぁ悪くは無いんだけどね...

 

最近心の老化が進んでいるのだが何か原因はあるんだろうか?小町にも「お兄ちゃんお爺ちゃんみたーい」とか言われて辛いんだよ。はぁ...直したい、心の病、春うらら。

 

「じゃあ私達帰るね!」

 

おっと感傷に浸かっていたら元気な声で言われました

 

「ありがとうございました」

 

「うん!じゃあね!」

 

「さようなら」

 

ふりふりと片手をこちらに向かって振る。俺は最初こそ戸惑ったが、胸の高さまで上げた左手を降ろす事は無く、軽く手を振った。

 

「・・・やっぱ雨も悪くはないんじゃねぇか」

 

また1人になった店内にぼそりと音を置く。このまま少し寂しい憂鬱な感情も洗い流してくれないかなと窓際の席でコーヒーを啜った。

 

 

 

【八幡を愛する会】

 

陽乃<速報:黄昏八幡見つかるww

 

相模<そマ?

 

陽乃<大マジ

 

雪乃<写真はよ

 

結衣<黄昏...?

 

平塚<・・・由比ヶ浜。自分で調べる事の重要性を認識しなさい。

 

結衣<えっ?

 

陽乃<これ!

 

(『alone』の窓から外を見つめる頬杖ついた八幡の写真)

 

葉山<なんてこった!こりゃあ八幡が寂しがってる顔じゃあ!

 

小町<なんやてぇ?つまり...雨で客足が伸びなくなり最近入り浸っていた方達も来ないから1人でいる事に寂しさを感じたってぇのかい?あのぼっちの兄が!

 

戸塚<2人とも八幡と仲良い(?)んだね?

 

葉山<八幡検定準一級

 

小町<紅白帯レベル

 

結衣<なんで柔道だし!?

 

沙希<それよりもさ...この八幡...

 

儚い感じで可愛いよね

 

全員<わかる。

 

 

 

八幡「なんか最近温かい目で見られたり優しくされるのはなんでだろう?」

 

真実はグルメンのみぞ知る。

 

 

 

 

 


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