やはり俺がカフェの店長なのはまちがっている。   作:ステツイ

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第2話「女王様の苦いティラミス」

 

 

ども。比企谷八幡です。『alone』というカフェの店長をやってます。今日はあいにくの曇り空。客足も少なくなって来た日曜日。明日は晴れてくれるかな?とか考えてたら

 

 

「店長。私、もう上がりますけど今日は早めに締めますか?」

 

 

「いや、今日はまだやるよ。」

 

 

一応閉店時間は決められてるけどその日の天候などで時間を早めたりする。べ、別にめんどくさいとか、帰る時に雨降ってたらやだなとか思ってないんだからね?!

 

 

「そうですか。お疲れ様でした。」

 

 

「おう。お疲れさん。」

 

 

よかった。今日は無駄な勘繰りを入れられなかった。この前の月曜に雪ノ下姉妹が出現したため、探られるとばかり思っていた。やだなぁ、小町とか陽乃さんのせいで探られるのが当たり前だと思い始めてるなぁ。ドMじゃないですかーやーだー。

 

 

カランカラン

 

 

おっと?お客さんだ。

 

 

「いらっしゃませ。お好きな席へどうぞ。」

 

 

こんな時間にここに来るなんて珍しい事もあるんだな。さてご注文はうさぎですか?残念ながら愛でれるのは俺のアホ毛だけだよ。ごめんね?愛嬌はある子なんだよ?

 

 

「すんませーん」

 

 

っと。呼ばれました。さぁお行きなさい!ってさっきバイトの子は帰っちゃったんでした。八幡のドジっ子!

 

 

「はーい。ただいまー」

 

 

なんだろう。この応答がテンプレになりつつあるけどなんか居酒屋感あるよな?変えた方がいいのかな?

 

 

「はい。ご注文はなんでしょう。」

 

 

「エスプレッソ。あとコーヒーゼリー」

 

 

「かしこまりました。」

 

 

うーん。コーヒーゼリーを頼むとはお目が高い。さすが伊達に縦ロールにしてるだけあるな。ん?縦ロール?チラッ

 

 

 

.....

 

 

 

...うん。三浦様ですね。人の顔を見てないため今気がつきました。わぁ。2週間連続で知り合いに会うとか店の場所変えたいな。てか、あーしさん1人で来るって意外だな。なんかあったのか?とりあえず商品だけでも。って三浦さん?どうしてカウンター席に移動して来たの?かまちょなの?他の人いないんだから奥に行きなさいよ。あるよね。飲食店に入ったら出来るだけ角とか他のお客さんと離れた席に座ろうとする事。んで。なんで来たの?

 

 

「...エスプレッソとコーヒーゼリーになります」

 

 

「ん」

 

 

いや、「ん」て、一文字ですか、さいですか。まぁ一応店員だからね?わきまえてるけどね?もうちょい態度よくしないとバイトの子に変なあだ名つけられちゃうよ?ソースは俺。よく自分の家の近くにあるセブンでプリペイドカードを買いまくってたら根暗廃課金者ってあだ名ついてたみたい。あのバイトの佐々木。絶対許さん。って、三浦さん?なに人の顔ジロジロ見てるんですか?何か付いてますか?さっき鏡で見たときは何もなかったんですが?

 

 

「あんさ...仲が良いってなんだろね?」

 

 

え?本当どしたの?いつもの女王さは何処へ?てか、仲が良いっていつものグループの事か。やはり何かあったんだな?

 

 

「何かあったんですか?」

 

 

「なんかさ、その仲良いグループのリーダー格ってーの?なんつーの?そういう奴がね?今色々と思い返したら中途半端な野郎だなー。って思ってさ。それになんかそいつのためのグループみたいな感じで。女子同士は仲良いんだけど、男子同士がね...」

 

 

あの。いくら静かな所だからってそんなシリアスな話ぶち込まれても私困ります!てかやっぱ葉山のことだよね?いろんなこと聞かれすぎてどこから返したら良いのか...

 

 

「僕にはハッキリとはわかりませんが、そのお方もそのグループのために頑張っていたんじゃないんでしょうか。例えば関係性が崩れるのが嫌だったとか。」

 

 

「それはあーしも思う。だからあーしも今の関係が崩れるのは嫌。でもあーしはそんな脆い関係だとは思わない。だからどこかそいつが一歩引いてるっていうか高みの見物っていうかさ?どこか冷めて諦めてる気がすんの。」

 

 

ほう。三浦。中々良い観察眼を持っているな?あの下手くそな仮面を被った奴をそこまで見抜けるなら葉山になんか言ってやれ。俺は知らん。

 

 

「左様ですか。貴女はどうなさるつもりで?」

 

 

「...あーしはこのままだと嫌。でも関係が崩れるのはもっと嫌。だからグループの全員が本音を言い合えるそんな関係性になりたい。」

 

 

意外と自分をしっかり持ってるんだな。てっきり、壊れるならそれでいい。とか言いそうだったけど。んー。まぁ本音を言い合えるってのは俺も憧れるけどな。あいにく本音を言い合う友達がいない。あ、泣きソ。

 

 

「...貴女は?貴女はその人達に本音を言ったんですか?」

 

 

フルフル「んーん。なんか修学旅行から帰って来てからいい感じだったんだけど、それも誰かのおかげで今の関係が続いてるって感じなんだよね。隼人...その...彼に問い詰めても知らないの一点張りであーしに隠してることがある気がするからさ。やっぱそれを知ってからじゃないと次の段階に進めない気がしてさ」

 

 

さすがカースト上位の女王様。普通の人間ならそこまで気が回らないと思うんだがな。たしかに当事者達はもちろん葉山もあんな終わらせ方をさせたんだから秘密にしたいと思うのはわからなくないな。そもそも関係を崩さない為の俺の行動だったんだからな。

 

 

「それを今すぐに知りたいんですか?」

 

 

「んー。なんつーか、知りたいけどさ?こういうのって本人から言ってくれないとなんか違う気がしてさ」

 

 

「よく相手のことをお考えで。...ならこちらを。サービスでございます。」

 

 

「え?ありがと。ってこれ、ティラミス?」

 

 

「はい。何層にも分けてあるティラミスでございます。」

 

 

「なしたん?急に」

 

 

「いえ、ただ。人間付き合いってのはこの当店のティラミスと一緒で深く行けば行くほど、濃い苦さ、甘さがあり。上辺だけなら少し物足りない。ですから人の気持ちを考える必要があるのです。」

 

 

まぁ俺も人の気持ちを考えなくてあいつらに怒られちまったんだけどな。そしてこのティラミス。それを表現するために敢えて味付けに工夫をした。

 

 

「いただきます。」パクッ

 

 

「どうです?」

 

 

「メチャクチャ美味しい。けど確かに物足りない。」ヒョイ パク

 

 

「下の深い所だと?」

 

 

「かなり苦い。でもすごく甘い。」ポロポロ

 

 

「あーし...グスッ...このままでもいいのかな?グスッ」パクパク

 

 

「大丈夫です。そのティラミスの底の素材を見てください。」

 

 

「底?チラッ... スポンジじゃなくて...何か四角い正方形が白と黒互い違いに配置されてる。」ズズッグスッ

 

 

「生チョコです。たまにはブラックなチョコ、でも時々ホワイトなチョコ。そうやって人間の深いところだって認めたくない、苦い黒の部分もあればその人の良いところという甘い白い部分もございます。でも、ブラックチョコレートだって好んで食べてくださる人だっています。だから。あなたもその人達の悪い部分、いえ、黒い苦い部分さえ、許せないと駄目だと思います。」

 

 

「そっか...そうだよね。フフッ 店長って若い顔の割におじさんくさい事言うんだね」クスッ

 

 

「でも...言いたいことはなんとなくわかった。だからあーし、何があっても許す。本人達がした事なんだからあーしがとやかく言うのはお門違いって奴じゃん?」ニコッ!

 

 

「フフッ そうですね。その優しい笑顔をその人達に向けてあげてください。それにあなたは涙より笑顔がお似合いですから。」

 

 

「そっか...ありがと。店長。そろそろあーし帰るね。」

 

 

「お代は結構です。また来てください。その時にそのグループがどうなったか教えてくださればチャラに致します。」

 

 

「なんか癪に触るんだけど...」ムスッ

 

 

「でも...ありがとね。話聞いてくれて。クスッ」カランコロン

 

 

ふぅ。行ったか。つっかれたなぁ〜もう。なんで俺がまたケツ拭きしてんの?そういうの葉山の役目だろ。代金はあいつに請求してやるか。やめとこう、なんか怖いな。あいつたまにガチでキレるから怖いんだよ。てかなんか臭いセリフ吐きすぎた気が...『その優しい笑顔をその人達に向けてあげてくだい。』...ハァ...夜のテンションって怖いな〜。いや、バレてないからいつもの俺と違うアプローチが出来たのか?何言ってんだ俺ってば。周りの目を気にしないんじゃなかったのか?てかあいつ...俺って気づいてないよね?気付かれてたら俺自殺しちゃうよ?つーか。2週連続黒歴史作成してる気がする。なにそれ辛。マッカン買って帰ろ。

 

 

 

「あ〜。なんか泣いたらスッキリしたし!あの店の店長、なかなかイケメンだし、相談事も聞いてくれるし、また来てって言われちゃったし。今度から暇な時行ってあげるし!」

 

「ってあーし。「し」ばっか言いすぎだし!///なにこの感じ!隼人を見てる時と違う感じで胸が熱い。なんだろう...好き?なのかな?///」

 

「そんな訳ない!///あーしは隼人一筋だし!」

 

「でも...また今度...ね?」

 

その日黒歴史を作る代わりにリピーターを1人増やした八幡であった。


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