やはり俺がカフェの店長なのはまちがっている。   作:ステツイ

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第1話「魔王は突然に」

とある日の事。

 

 

「店長〜コーヒーカップってここでいいんですかぁ〜?」

 

「おう。そこに置いといてくれ。」

 

今日も静かな雰囲気の中自分で入れた甘めのコーヒーを啜りながら従業員と会話をする。いや、質問を返しただけだから会話じゃないか、てへ。そう、俺、孤高にて孤独のボッチこと比企谷八幡はこのカフェ『alone』の店長である。いや、学生だよ?平日は任せっぱなしだけど土日はきてるから!引きこもりじゃないから!つまり俺はヒッキーでもヒキオでもない。QED

 

「店長〜また目が腐ってますよぉ〜?」

 

「うっせ、ほっとけ」

 

従業員も交代で2人しかいない。基本平日は2人で、土日は俺ともう1人でやりくりする感じだ。でもこの静かな時間がボッチにとっては居心地の良いものである。店長なんだけどね。まぁ俺が店長になった経緯を話すとするならば、幼稚園の頃から仲良くしてもらったじじいが死んで遺産相続で店を俺に押し付けた。以上。あのじじい子供がいないからって俺に押し付けやがって。でもあのじじいが作る甘いコーヒーは今でも忘れられないけどな。

 

といった感じで高校生ながら店長をやっている。ちなみに誰にも話していない。だって人が来たら嫌じゃん?あいにくリピーターは多いから繁盛はしてるんだけどな。だからこの無駄な会話のない店の雰囲気は最高である。きっとお客さんも気に入っているのか1人客が多い。学生がたまにテスト勉強をするために来るがそれでも案外静かにしてくれている。あ、もう少しで俺もテストじゃん。やーだー、テストってなんぞ?

 

「店長〜上がっていいっすかぁ〜?」

 

「ん?あぁもうこんな時間か。いいぞ、お疲れ」

 

「お疲れっした。」

 

営業時間は10時〜22時。一応家の近くだから遅くまでいることができるが小町に心配をかけさせないためこの時間にしている。だが明日は学校。早めに帰れるに越した事はない。

 

「っと、おーい。」

 

「なんすかぁ〜?」

 

「ほい。今月分」

 

「ざーす。」

 

この男は一応成人しているがどこか腑抜けている。そしてウチは時給は高めである。こいつは平日の朝からいてくれるためかなりの金額になるが。まぁ、俺が金貯めてもあんま使い道ないからそれなら給料ってことで高めに支払っている。さてそろそろ帰って小町のご飯を食べて寝ますか。

 

「ただいま〜」

 

「おかえりお兄ちゃん!晩御飯できてるけど?小町にする?ご飯にする?小町にする?お風呂にする?小町にする?」

 

「小町率高くね?。じゃあ小町とご飯で」

 

「りょ〜か〜い!今温め直すね!」

 

俺が遅くなるからいつも先食べてろって言ってるのに小町はいつも俺のことを待っててくれる。あ、今の夫婦みたいだな。てことは俺社畜じゃん。辛、もうやだ。

 

「できたよ〜」

 

「おう、今行くぞ」

 

美味しい小町のご飯を食べたらお風呂に入って1日の疲れを取る。風呂上がりにキンキンに冷やしたマッカンを飲む。

 

「くぅ〜!キンキンに!冷えてやがる!悪魔的だ!」

 

「ゴミィちゃんうるさい。静かに飲みなさい」

 

「ハイ...」

 

藤原達也のモノマネしてたら怒られちゃった。てか今気付いたけどこいつ...女の子の日だな?っていかんいかん。何考えてんだ、どこぞの雪の女王に、あら、人の生理周期を把握しているなんて変態かしら?通報しましょうか?って通報されちゃうな。通報されんのかよ。とか考えながら、やんわらか〜いベットで意識を手放す。

 

 

 

次の日奉仕部にて。

 

ガララ

 

「うっす」

 

「まともに挨拶すら出来ないのかしら?無能谷君?」

 

「いや、お前もしてないからね?開口一番に俺をdisるのやめてね?」

 

と、いつものやりとりを終え自分の席に座る。と同時に雪ノ下が立ち上がり紅茶を淹れ始める。つまり

 

ガララ

 

「やっはろ〜!ゆきのん!」

 

「えぇ、こんにちは、紅茶淹れたわよ。」

 

「ありがとー!」

 

うん。やっぱりね。なにこの子ガハマセンサーでも搭載してるの?それか猫みたいに人の気配を察知できちゃうの?なんでいつも反応出来るの?

 

「ヒッキーもやっはろ〜!」

 

「うす」

 

「ちゃんとキチンと挨拶してよ!」

 

「いや、お前のそれもキチンとした挨拶ではないからな?」

 

「うっさい!ヒッキーうっさい!」

 

え?なんで二回言ったの?大事だったか?違うよね?本当にうるさかったかな?なんか目から汗が...

 

「由比ヶ浜さん。あなたも充分騒がしのだけれど?」

 

「え?うるさかったかなぁ〜?ごめんね?ゆきのん」

 

え?俺は?いいけどなんか酷くない?

 

「い、いえ、その、ある程度わきまえてくれればいいのよ...」

 

「え?あっ!そっか!うん!ありがとゆきのん!」ギュ

 

「ちょっと暑苦しいわ..//」

 

ちょっとー?人の横で百合百合しないでね?なんか神視点になった気持ちだよ?いないもの扱いだよ?それと百合ノ下さん?最近百合ヶ浜さんに対して甘くないですか?

 

「そんなことないわよ?ただあなたに対して冷たいだけよ?」

 

「あぁ、納得。ってナチュラルに人の心を読むな」

 

「え?ヒッキーキモい...」

 

そんなガチな顔されたら泣いちゃうよ?もう学校来ないよ?

 

「それはそうと、今日は用事があるから早めに終わらしてもいいからしら?」

 

「ん、まぁいんじゃねーの?どうせ人なんざ来ないしな」

 

「ゆきのん用事って?」

 

「私情よ。姉さんに誘われてしまってね。」

 

「断らなかったのか?」

 

「私も断ろうと思ったのだけれど前も断っていてさすがに気が引けたのと、今日は雰囲気のいいカフェを見つけたらしく、そこに連れて行ってくれるとの事で仕方なく」

 

「ほーん。まぁあの人が良い所つーんだから良い所なんだろうな」

 

「あなた、随分と姉さんの事を信頼しているみたいね」

 

「いや、信頼はしてないけど、あの人のセンスは普通に良いから信用はあるだろ。」

 

「うーん、ゆきのん!私も行ってみたいかも!」

 

「さすがに今日は無理だから明日以降ね?」

 

「うん!ありがと!大好きゆきのん!」

 

また百合百合してるよ...

 

 

 

 

そして...どうしてこうなった?

 

 

「ね〜?良い雰囲気でしょ〜?」

 

「えぇ。なかなか静かで、落ち着けるわね。それにここなら勉強や作業も捗りやすいわね。ただ、紅茶が無いのが残念、といったところかしら。」

 

「まぁまぁ、紅茶ならいつでも飲めるじゃない!」

 

「それもそうね...」

 

うん。なんか雪ノ下姉妹がウチの店にいるね。今日は部活が早めに終わったから顔を出そうと思ったらこれだもん。なにこれ辛。もう店長やめたい。

 

「店長、あの2人とてもお綺麗じゃありませんか?」

 

「...だな」

 

「どうかされましたか?」

 

「なんでもない...」

 

「そうですか...」ニヤニヤ

 

今日はよりによってこいつが当番かよ。この女は勘が鋭いからちょっと嫌いなんだよなぁ...あ、ちなみにこの当番ってのは20〜22時帯に入る人で開店から20時までは2人で仕事をしてもらうが、夜遅くになると人もあまり来なくなるため1人で充分なので1人だけ残ってもらっている。

 

「んだよ、なんか言いたげだな」

 

「店長がこの前言ってた雪の女王ってあの2人のどちらかじゃないですか?」ニヤニヤ

 

「ばっ!ちげぇよ!てか聞いてたのかよ!」

 

「はい〜。ばっちり聞いてました〜。それとその反応の仕方は答えを言ってるようなもんですよ?」

 

「うるせ!もう上がっていいから帰れ!」

 

「ありがとうございます!ピュア店長」

 

「子供店長じゃねぇよ!お疲れ!」

 

「お疲れでーす」ニヤニヤ

 

ほんと疲れる。ただでさえ疲れる魔王とのエンカ率が高いのにこの劣化番魔王との会話は本家ほどではないが疲れるんだよ。ってその本家は今お店にいるんでした。ってやばくね?俺生きて帰れるかな?

 

「すみませーん」

 

あ、呼ばれちゃった。死んじゃうな。まぁ一応眼鏡をつけてるからバレないかな?小町にも眼鏡をつけたら、お兄ちゃんなんでいつも眼鏡かけないのさ!///って顔真っ赤にされたから多分身内と思えないくらい似合わないのだろう。なら身内でもないこの人達ならバレる心配はないな。そう信じよう。

 

「はい。いかがなさいました?」

 

「コーヒーのおかわりを。それとこのモンブランを」

 

「かしこまりました。ただいまお持ちします。」

 

「ねぇ...?」

 

「はい?」

 

「君...どこかであった?」

 

「そ...そんな事はありませんよ。それでは」

 

「ふぅ〜ん。」ニヤッ

 

「それでは失礼します。」スタスタスタ

 

「姉さん、お店の人に絡まないの。」

 

「だって〜かっこよかったから♩雪乃ちゃんも思ったでしょ?」

 

「...まぁイケメンの部類には入るんじゃないのかしら?」

 

「あら、意外と素直。お姉ちゃんちょっとびっくり。」

 

「姉さんこそ、男に絡むなんてみっともない真似していなかったじゃない。どうしたのかしら?」

 

「あら、結構見てたのね。というか気がつかなかったの?」

 

「何をかしら?」

 

「いーや。なんでもなーい。」ニヤッ

 

 

 

「ふぅ。案外バレなかったな。安心安心。えーと、コーヒーのおかわりとモンブランか。」

 

「まぁコーヒーは自信があるけどモンブランはそこまで自信ないからなぁ...」

 

舌が肥えてるあの人からしたらモンブランと言えるものかどうかもわからんなぁ...まぁ一応サービスとして2つ持っていってやろう。スタスタスタ

 

 

 

「お待たせいたしました。こちらコーヒーとモンブランになります。」

 

「...私は頼んでいないのだけれど?」

 

「サービスです。美人さんにだけ特別にです。」

 

「そう。ならありがたく頂戴するわ。」

 

「私は〜?美人〜?」

 

「はい。とってもお綺麗ですよ。さぞおモテになられるでしょうね。」

 

「うふふ///ありがとうね?でも他の人にも言ってるんじゃないの〜?」

 

「いえいえ。滅相もごさいません。お二人が初めてですよ。」

 

だってこんな事他の知らない人に言えるわけないじゃん。

 

「そっか〜。ありがと!」

 

「それでは失礼します。」スタスタ

 

「だってさ雪乃ちゃん」

 

「何がかしら?」

 

「美人だってさ。」

 

「まぁ私たちは少なくとも美人ではあるじゃない」

 

「うん。そうなんだけどね?んーと。」

 

「いいから食べましょう。」

 

「そだね。食べよっか」

 

パクパクパク

 

「ってこのモンブランすっごく美味しい!」

 

「確かに。コーヒーと合わせて飲むことを考えて作られていてとっても美味しいわね。」

 

「さっきの人が作ったのかなぁ?」

 

「他にも店員はいたけどさっき帰るところをみたからあの人が作ったということで間違いないんじゃないかしら?」

 

「ふーん(比企谷君、デザートも作れるんだ。コーヒーだって美味しいのにこんな美味しい物を出されたらリピーターになっちゃうじゃない♩)」

 

「ところで雪乃ちゃん?どう?ここ。なかなかいいでしょ?」

 

「そうね。私も気に入ったわ。普段もここに来ようかしら。」

 

「うふふ♩よかったわ。気に入ってもらえて。それじゃあそろそろ帰ろっか♩」

 

「ええ。結構長居してしまったものね。」

 

「ほんとだ、ここにいると時間があっという間だね」

 

「まぁ...そう感じるわね。」

 

「すみませーん。お会計お願いしまーす!」

 

 

 

 

 

「ハ-イタダイマ-!」タッタッタ

 

「お会計はコーヒー4杯で2800円になります」

 

「あれ?モンブランも頼んだよね?」

 

「サービスって言ったじゃないですか。」

 

「ええ〜悪いよ〜払うよ?」

 

「いえ。結構です。かわりと言ってはなんですが、また当店をご利用ください。それでチャラって事で。」

 

「ふふ。口が上手ね。」

 

「いえいえ、美人なリピーターが増えてくれれば当店としても嬉しいので。」

 

「そう。じゃあまた来るね!」

 

「はい。お待ちしております。」

 

「またねパクパクパク」

 

「?」

 

 

最後陽乃さんは口パクをしていたような...なんだったんだ?

 

『ヒ』

 

『キ』

 

『ガ』

 

『ヤ』

 

『君』

 

・・・え?は?バレてた?いつから?最初から?なら、あんな臭いセリフ...『美人ですよ』...!うあああぁぁぁぁ!!もうやだ死にたい...帰って小町に癒されよう。ってあいつ2日目じゃん。神は俺を見限ったのか?いや、どっちかと言うと存在無視?神からも無視される俺って最強じゃね?ってそんなことは、いい!うわぁ明日奉仕部行きたくねぇ...あれ?今度由比ヶ浜も来るって事は...死にてぇ...憂鬱過ぎるだろ...

 

 

 

 


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