やはり俺の受けた祝福はまちがっている   作: サキラ

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やはり異世界転生はチーレム無双が王道である。

 

 

「お姉さんはエリス教会に行って来ようと思うの」

 

 

クエストを終え教会に戻ると、セシリーがいきなりそんなことを言い出した。

この子珍しく補導されてないと思ったら一体なに企んでいるのかしら……?

 

 

「……行ってらっしゃい」

 

 

なにか嫌な予感がしたので、深く聞くこともせず送り出すことにする。

するとセシリーはキョトンとした顔を浮かべた。

 

 

「何言ってるの?ハチマン君にも来てもらうんだから」

 

 

……ほら、やっぱり。

 

 

「あのな、前にも言ったろ?俺はアクシズ教の布教活動もエリス教団への嫌がらせもしないって。警察に引き取りには行ってやるから行くなら一人で行って来い」

 

「それはアクシズ教徒としてどうかと思うのだけれど。今回は違うわ。真面目な話なの」

 

「おう、そうか。行ってらっしゃい」

 

「なんでよ!今のは聞く流れだったじゃない!」

 

 

むしろ場の空気を読んだから聞きたくないのだが。

ぼっちは話の流れは読まないが場の空気は割と読むのだ。

クラスの不穏な空気とか読み取って、先に安全地帯に避難したり背景に溶け込むのとか超得意。

だけど今はセシリーと一対一。ハチマンは逃げられない!

 

 

「厄介ごとは上位悪魔の件で充分なんだよ……」

 

「それよ!」

 

「は?」

 

 

うんざりしたように言うとなぜがビシッと指差してセシリーが食いついて来た。

もしかして、こいつ自分が討伐に行くとか言い出さないだろうな?

 

 

「その上位悪魔にやられた冒険者達がエリス教会で治療を受けてるらしいの!それが中々上手くいってないみたいで。ここは私たちの出番だと思うわ!」

 

「嫌だ。断る。そんなもんエリス教会のプリーストに任せとけばいいだろ」

 

 

なんでよりによってそんな面倒な事しなきゃならないんだ。

ただでさえ今日はクエストに行って疲れてんだよ?トドメ刺してただけだけどさ。

 

 

「なんでも負傷者の中には勇者候補の人や、アクセル一の腕利きパーティー達がいるらしくて、少しでも早く回復させたいんですって」

 

 

待てよ……?

急ぎということは回復させればそいつらがまた上位悪魔討伐に出向くという事だろうか?

 

 

「でも一度負けてんだろ?任せて大丈夫なものなのか?」

 

「なんか勇者候補も腕利きパーティーも不意打ちでやられちゃったみたいなの。だから治ったらリベンジするとか言ってるそうよ?」

 

 

という事は、回復だけしてやれば後はそいつらが勝手に戦いに行ってくれるのか。

うまくいけば俺に討伐の話が回ってくる事もないだろう。

 

 

「それでね?私たちがサクッと治してアクシズ教団の優秀さを見せつけてやるの!エリス教徒達の悔しげな顔が目に浮かぶわ!!」

 

 

確かに上位悪魔討伐に比べれば怪我人の回復なんて楽な仕事だ。

セシリーの言う通りサクッと終わらせて引き継がせるに越した事はない。

 

 

「よし、それなら行くか。善は急げってな」

 

「それでこそだわ!ようやくあなたもアクシズ教徒らしくなって来たわね!」

 

 

いやそういう事じゃないからね?

反論しようとしたがセシリーはウキウキと上機嫌で先に行ってしまう。

 

ほんと分かってるのかしらこの子は……。

 

 

▼▼▼

 

 

「帰ってください」

 

 

……おう。

 

セシリーと共にエリス教会の前に着くと、教団関係者の男性から開口一番にそう告げられた。

エリス教徒とアクシズ教徒は仲が悪いと聞いていたが、まさか取りあってすらもらえないとはな。

 

 

「なんですって!?せっかく人が親切で来てあげてるってのに邪悪なるエリス教徒めっ!」

 

「ひぃっ!?」

 

 

今にも飛びかかっていきそうなセシリーを羽交い絞めにする。

……なぜだろう。女性と密着しているはずなのに全くドキドキしない。

…………女性というよりは狂犬だからか。

 

セシリーに任せても話が進まないどころか悪い方に転がっていきそうな予感しかしないので、怯えきってしまってる関係者さんに頭を下げて俺から話を切り出す。

 

 

「ここで例の悪魔にやられた冒険者の治療をやってるって聞いたんだけど、何か手伝えることはないか思って来たんだ。俺はアークプリーストだしこっちのプリーストも回復魔法はかなりの腕だから迷惑かけることは……ないとは言えないだろうけど、役には立てると思ってな?」

 

「ねえ、ハチマン君?なんでお姉さんを見て迷惑かけないとは言えないなんて言ったの?」

 

「そ、そうでしたか。遂に二人がかりで嫌がらせに来られたのかと……」

 

 

日ごろの行いのせいで完全に警戒されているようだった。

納得いかないと言わんばかりのセシリーだが、完全にお前のせいなんだからな?

 

 

「そんなつもりは毛頭ないんだが、とりあえず責任者に話だけでも通してもらっていいか?なんならセシリーは帰らせるから」

 

「ちょっと!?私は帰らないわよ!もし帰らせようとするものならいつものように石投げてやるんだから!」

 

「やめてください!やめてください!分かりました!ちょっと相談してきますから待っていてください!」

 

 

困り果てた様子で教会の中に駆け込んでいく関係者さん。

隣の一仕事したかのようなドヤ顔のセシリーが腹立つ。

お前脅してただけじゃねえか……。

 

教会の中からは先ほどの関係者さんと責任者の人とのやり取りが聞こえてきた。

 

 

「だからあれほど言っておいたでしょう!アクシズ教徒が来たら追い返せって!今はあの連中に構ってやる暇はないんです!猫の手も借りたい現状なんですよ!?」

 

「し、しかし彼らはアークプリーストと回復魔法を得意とするプリーストらしいのです!手が回らないのであれば尚更……」

 

「それでも本当に猫の手を借りた方がマシですよ!彼らは何かしようとすれば必ずまた別の問題を起こすんです!早く帰ってもらいなさい!」

 

「そ、それが帰らせるなら石を投げると言っておりまして……」

 

「こ、これだからアクシズ教徒は……!分かりました。私が直接行って話をつけてきます」

 

 

それを言ったのはセシリーなんですがねえ。

一緒にしてもらいたくはないが、責任者の人には通じないのだろう。

苛立ちを隠せてない足音が近いてくる。

嫌だなぁ……怒られたくないなぁ。

 

「お引き取り願えませんか?」

 

 

扉から出てきた責任者のお姉さんは笑顔だった。

……それはそれは恐ろしい笑顔を浮かべてらっしゃった。

 

 

「上等よ、見てなさい!今からこの石をエリス像の虚乳めがけて投げて真実の姿にしてやるんだから!」

 

「やめろ馬鹿。これ以上怒らせてどうすんだ」

 

「あだっ!?」

 

 

セシリーの頭を叩いて止める。

というかなんで野球もない世界なのにこんな洗練された投球フォームなんだ。

もっとなんかロッテの始球式に投げる野球したことない女タレントみたいなものだと思ってたんだけど、変に器用だなこいつ。

 

 

「なにすんのよ!?エリス教徒なんかに気を使えって言うの!?」

 

「こっちは頼みにきてる立場だろうが。それ相応の礼儀くらい示せよ」

 

「なに言ってんの!?不甲斐ないエリス教徒を見かねて手伝ってあげようって言ってるんじゃない!追い出すどころか感謝されるべきだわ!」

 

「それをありがた迷惑って言うんだ。もういいからお前は口挟むなよ」

 

 

やっぱりセシリーがいると話すらもまともに出来ない。

強引に黙らせて一から説明しようと責任者さんの方を見ると、彼女は不思議生物を見るような目で俺を見ていた。

 

 

「えっと、あなたはアクシズ教徒では……?」

 

「不本意ながら立場上だとな。でも俺はセシリーや他の信者と違って嫌がらせとかはする気はないから、話だけでも聞いてくれないか?」

 

「……言ってみてください」

 

 

まだ疑いの目は消えていないが、なんとか話だけは聞いてもらえるようになったので、ここに来た目的をもう1度説明する。

 

 

「……分かりました。何も問題行動を起こさないようなら正直助かります。我々だけでは現状維持が精一杯でしたので」

 

 

渋々といった様子だったがなんとか責任者さんの了承は得られた。

というかセシリーが変に口挟まなければもっとスムーズに話を進められた気がする。

こちらも無理を言ってる身なんだし、出来るだけ早く回復を終わらせてお暇しよう。

もう既にちょっと疲れちゃったし。

 

 

「私は最初からそう言ってたのに!謝って!教会は万人に門を開くべきなのに私だけのけ者にしたことを謝って!早く謝って!!」

 

「こ、この人は……!」

 

 

ようやく話がまとまりかけた所でまたもセシリーがお姉さんを挑発した。

こいつは協力しに来たのか邪魔しに来たのかどっちなんだ……。

 

 

「あんまり言うようなら本当にお前だけでも帰らすぞ?それが嫌なら大人しくしてろ」

 

「私共としてはセシリーさんにはお引き取りになってもらって一向に構わないのですが……」

 

「あら?ということはやっぱり石投げても構わないということね?」

 

「構います!構います!あぁもうあなたもついてきてください!」

 

 

……大丈夫なんだろうか?

先行きに不安しか感じないんだけど。

 

 

▼▼▼

 

 

教会では怪我を負った冒険者達が床やベッドに寝かされ応急手当てを受けていた。

実際に見たことはないが、野戦病院という言葉がしっくりくる。

 

 

「よし、まずは勇者候補から始めるか。どこにいるんだそいつは?」

 

「彼は重症なのでカーテンの奥のベッドで寝かせてます。ほらあちらです」

 

 

お姉さんが指した先のカーテンに仕切られた方に向かう。

ふとセシリーを見ると、あいつはあいつで手頃な怪我人から治癒を始めていた。

どうやら本当に問題を起こすつもりはないらしい。

 

 

「あー……ちょっといいか?治癒魔法かけたいんだけど?」

 

「「え?」」

 

 

言いながらカーテンを開けると、ベッドには半裸の若い男が寝かされていた。

そのそばには顔を赤らめて鼻息を荒くしている二人の女性が……。

 

おっと、お邪魔しちゃいましたね。

 

 




ゆんゆんの霊圧が消えた…!?
お待たせしてすいません。そしてデート回はしばらく先です。
皆さんGWどうお過ごしでしたか?
私は後半から休みだったのでこのすば新刊とCCCコラボを完走させてました。
CCCはコラボも良かったのですが本編は素晴らしい出来なので是非プレイしてみてください。
そしてどなたかBBとザビが協力して戦うSSを紹介してくれませんかね?

感想、評価お待ちしてます

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