やはり俺の受けた祝福はまちがっている   作: サキラ

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引き続き頑張っていきます!


このぼっち少年にパーティーを!

 

 

翌日、本気を出して内職を早めに切り上げた俺は、久しぶりに冒険者ギルドへ足を運んでいた。

 

目的はパーティーメンバー募集の貼り紙が出てないかと、俺でもやれるようなプリースト向けのクエストが出てないかの確認だ。

 

まずはパーティー募集の掲示板に向かいざっと目を通す。

臨時含めてのメンバー募集の貼り紙はそこそこあったが、どれもアクシズ教徒お断り!!とデカデカ書かれていた……。

 

そんな中一枚の貼り紙が目に留まる。

 

 

『パーティーメンバー募集しています!どんな職業、駆け出しの方でも構いません!ただ多少の沈黙でも苦にならない方、複数人での会話に参加しても嫌な顔しない方、みんなで遊ぶ時は必ず声をかけてくれる方、街で偶然会っても声をかけてくれる方、一緒にいて別の知り合いと会った時さりげなく紹介して会話に混ぜてくれる方、1人でいるときに声をかけてくれる方がいいです!出来れば歳の近い方!当方13歳のアークウィザードです!よろしくお願いしますっ!!』

 

 

……なにこのぼっちのトラウマ全集みたいなの。

読めば読むほど、まだ友達が欲しかった小学生の頃の思い出が蘇ってくる。

このメンバー募集者間違いなくぼっちだ。それも重度の。

 

ギルド内を見回すと、端っこのテーブルに1人ぽつんと寂しく座ってる少女が目に入った。

 

声かけられねえよあんなの……。

 

レベル上げのために臨時のパーティーでも組めるものなら組みたいが、あいにく四人がけのテーブルに独り寂しそうに座ってる女の子への声のかけ方なんて俺の辞書には載っていない。

 

それに目の腐った男が13歳の少女に話しかける。

……どう考えても事案です。捕まった男性はアクシズ教徒でした。

なんて事にもなりかねない。

 

もう一度掲示板の募集をよく見るが、やはり他にアクシズ教徒を受け入れてくれるようなパーティー募集は見つからなかった。

 

 

「あのちょっとよろしいですか?」

 

 

肩を落とし、今度はクエストの掲示板でも見に行こうとした時、後ろから声をかけられる。

振り返ると、そこには冒険者登録をした際にお世話になった受付嬢が立っていた。

このギルドで一番人気の受付嬢で、名前は確かルナさんだったと思う。

 

 

「えっと、なんすか?」

 

「実は今、冒険者の皆さんに声をかけて人探しをしていまして、ハチマンさんは確かアクシズ教のアークプリーストでしたよね?」

 

「不本意ながら立場上は」

 

 

悪態をつくように答えると、ルナさんは乾いた笑みを浮かべた。

 

 

「あははは……けどちょうど良かったです。あのハチマンさん、アクシズ教徒で青い髪の女性アークプリーストはご存じないですか?」

 

 

青い髪の女性アークプリースト?

青い髪と聞いたとき真っ先にあの女神が浮かんだが、仮にも女神なアイツがこの世界に来てるとは思えない。

女性プリーストならうちの同居人がそうだが、アイツは金髪だしな。

 

 

「ちょっと知らないな。青い髪ってなら見たら忘れないだろうし」

 

「そうですか、つい先日冒険者登録をされた方でアクシズ教徒でしたから、もしかしたら面識があるのかと」

 

 

先日ということは俺と同じ駆け出し冒険者って事か。

しかし、なんでそんな駆け出しをわざわざ他の冒険者に声をかけてまで探しているんだろう?

 

 

「なんで探してるかとか教えてもらえます?ひょっとしてなにかやらかしたとかじゃ……」

 

 

そうなってくると俺のパーティー探しがまた難しくなってしまう。

どこの誰だか知らないが、ただでさえ悪いアクシズ教の評判を地に落とすような事はしないでもらいたい。

 

 

「いえ、そんなことはないですよ。ただ上位悪魔が最近アクセル近くの森で目撃されたので、討伐の依頼をお願いしたいんです」

 

 

そういえば確か昨日そんなこと話したな。

なんでも冒険者がカエル討伐か土木工事しかやりたがらない様な凄いのがいるとか。

 

 

「その上位悪魔とやらは、駆け出しのアークプリーストでも討伐できるようなもんなのか?」

 

「普通は無理ですね。魔王軍幹部級ですし、いかに相性がよくてもステータス差で押し切られてしまいます。ですがその方はレベル1にして、知力と幸運以外のステータス値が最高ランクでして、アークプリーストに必要な全スキルを既に取得しているのです!」

 

 

マジかよ、何その超絶チート。絶対転生者じゃねえか。

というかあの女神もなんて奴を俺の後に送ってくれてんだ。

 

俺の転生特典意味なくなっちゃっただろうが……。

 

 

「……あの、ハチマンさん。つかぬ事をお聞きしますが……今レベルはいくつですか?」

 

 

……それを今言いますか。

 

無言で冒険者カードを差し出す。

受け取ったルナさんはなんとも曖昧な表情になった。

そりゃそうだ。初期と変わらねえんだから。

 

 

「あー……。クエストに出られないんですか?」

 

「あいにく、駆け出しのアクシズ教団の冒険者を受け入れてくれるパーティー募集とかもなくってな」

 

「うぅ……。その節は大変ご迷惑をおかけしました」

 

 

ホント多大な迷惑を被ったのだが、深々と頭を下げられると怒るに怒れない。

というか好き放題してる頭のおかしい教団が遠因なんだし。

 

 

「いや、そこんとこはもういいから。アンデッド系モンスターなら回復魔法は反転して効くし、ソロでもやれるようなクエストがないか探してたんだよ。なにか簡単そうなの斡旋してもらえるか?」

 

「すみません。ゾンビみたいな下級アンデッドには痛覚が働かないらしく、駆け出し冒険者がソロで行くと気付かぬうちに囲まれてムシャムシャと……。せめて浄化魔法だけでも覚えているようなら違うんですが……」

 

 

なにそれこわい。

 

可愛らしくムシャムシャとか言ってるけど、それ要は食われてるってことじゃねぇか。

下手すればアンデッドみたいな目がアンデッドそのものの目になってしまう。

 

 

「使い道のあるスキルは今のところ回復魔法しかないな。と言ってもアンデッド系が難しい以上、やっぱり臨時でもパーティー組まないと話にならないか」

 

「あれ?ハチマンさんはもう一つスキルを持っていなかったですか?」

 

「……アレはたぶん俺の人生の中で最も必要ないスキルだから」

 

 

花鳥風月

 

俺の第二スキルであり、紛う事なき宴会芸のスキルだ。

これを初使用した際に一緒にいたセシリーが手を叩いて喜んで

 

『素晴らしい!素晴らしいわ!あなたはアクア様に選ばれた言わば救世主とも呼べる人間ね!さあ一緒に邪なエリス教徒共に神に選ばれしものの力を見せに行きましょう!』

 

などとトチ狂った事を言い出したので人を喜ばせるのには使えるかも知れないが、ぼっちの俺には無縁のスキルだった。

名前だけは大層なスキルのくせして……。俺の期待を返してほしい。

 

 

「そ、そうなんですね……。それならせめてパーティーが組めるようお手伝いしましょうか?」

 

 

まぁそう言ってくれるのは正直ありがたい。

だけど俺がパーティー組めないのも、この人がアクシズ教徒って漏らしちゃったのが原因だからな。

ここはそのぶん頼らせてもらうとしよう。

 

 

「じゃあ頼んでいいっすか?」

 

「任せてください!実はもう目星はつけてあるんですよ?」

 

 

ウインクをしてルナさんが先にギルド内を歩いていく。

大人しくそのまま後を付いて行くと、端っこの四人掛けテーブルの前で立ち止まった。

 

おいおい、この席は……。

 

 

「もしもし、ちょっといいですか?パーティーメンバー希望者を連れてきたのですが?」

 

「えぇっ!?」

 

 

案の定紹介先は最初に目に入ったぼっち少女の所だった。

ぼっち少女は立ち上がりルナさんと俺の顔を見て慌てふためいている。

 

 

「え、えええっと……」

 

「こちらの方アークプリーストなんですけども実はまだレベル1でして、例の上位悪魔の件もありますから一応レベル上げをしてもらいたいんです」

 

 

えっ?ちょっと待て。そんなの聞いてないんだが。

というかステータス差で低レベルのアークプリーストには無理だったんじゃなかったの?

いきなり呼び出されてエヴァに乗せられたシンジ君の気持ちがよくわかる。

早く逃げなきゃ!早く逃げなきゃ!

 

 

「えっと、やっぱ見ず知らずの男がいきなりパーティーに入りたいと言ってもダメだよな。俺は別にどうしてもレベル上げしたいって訳じゃないから気にしなくていいぞ。それじゃ悪かったな無理言って」

 

「いやいや何言ってるんですかハチマンさん!?どこのパーティーにも所属できないんでしょう!?この子は入れてくれますって!」

 

 

いや、そういう問題じゃねえから。

早口で立ち去ろうとした時、ルナさんが俺の服を掴んできた。

 

 

「……いや、俺にとっちゃあんたがさっき口走ってた上位悪魔がどうとかの方が何言ってるんですか?だから」

 

「……あくまで保険ですよ?もしもそのアークプリーストが見つからなかったら、この町にアークプリーストはあなた一人しかいないんです」

 

 

……やれって言うのか。レベル1の俺に。

 

静かな口調で笑うルナさんと目が合う。

顔は笑っていたがその目は笑っていなかった。

 

 

「……ちなみにそのアークプリーストは見つかりそうなのか?」

 

「…………」

 

 

おっとこれは駄目そうですね。

というかレベル1の俺に話が来る時点で望み薄なのだろう。

 

 

「ならちょっと俺も探してきますね……!」

 

「逃がしませんよ?ハチマンさんはアクシズ教徒でしょう?『悪魔倒すべし、魔王しばくべし』じゃなかったんですか?」

 

「いや俺、所属だけのなんちゃってアクシズ教徒だから……!」

 

 

なんとか逃れようとすると、ルナさんもぐっと近づいてきて逃がすまいと抵抗してきた。

 

嫌だ!止めろ!離せ!近い!離れろ!嫌だってば!近い!離せ!近い!近い!いい匂い!!

 

 

「あ、あのう……」

 

 

俺が欲望とルナさんを相手に必死の抵抗をしてると、黙って様子をうかがっていたぼっち少女が口を挟んできた。

その紅い瞳には涙が溜まり今にも零れ落ちそうになって震えている。

 

 

「パーティー……組んでくれないんですか?よ、ようやくまともな人が来てくれたとおもったのに……。私、からかわれてたんですね……?」

 

 

…………。

 

アクシズ教徒、13歳の少女にトラウマを植え付け人間不信に陥らせる。

そんな噂が立たないためにも、俺はパーティー加入を決意する他なかった。

 

 

 

 




5話目においてタグの大半が登場していないという詐欺作品があるらしい。
しかもサブタイ詐欺までしているらしい。
相変わらずの進みの悪さです。申し訳ありません。
ただ八幡がいきなり話し掛ける様が浮かばなかったのでこんな遠回りになってしまいました。
次回、ぼっちとぼっちが交差する時新たな物語が始まる!

感想、評価お待ちしております。

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