前回、二話まとめて更新するとか言っておいてすまない。
「……ダメだったみたいですね」
「ソーダネ」
「……どうしましょうか?」
「どうすっかねぇ……」
重苦しい沈黙がのしかかる。
そんな俺達とは対照的にギルドは阿鼻叫喚のドッタンバッタン大騒ぎだ。
「そんなにお前らが行きたくないなら、もう俺が行くよ!」
「いやここは俺が行くよ!」
「待て、俺が行くよ!」
「しょうがないな俺が行くよ!」
「俺だって行ってやるよ!」
どうぞどうぞ!!だ。
そんなに行きたいなら代わりに行ってきてくれませんかね?
というか日本から来た先人達はロクな文化広めてないな……。
「……とりあえず作戦はなくもない」
「例の不意打ちですか?でもそれだと一撃で倒せないとかえって……」
その通りだ。
そして残念ながら、一撃で倒せるかどうかなんて分からないし、そもそも成功するかも怪しい。それどころか失敗すると普通に戦うより危険だ。
かと言って、正面切って戦うなんてことも出来ない。魔術師と聖職者はどちらも後衛型だし、前衛職に守ってもらわなければすぐにやられてしまう。
「いっそのこともう遠くの町に逃げてしまおう。その紅魔の里から一緒に来た子も誘って夜逃げするんだ」
「なにも解決してないじゃないですか!?」
いや、ほんとどうしようもないんだって。
それに働きたくない俺からしたら、むしろこっちの方が性に合ってるまである。
「いやだって、俺達より遥かに強い奴らが負けてんだぞ?ぶっちゃけ勝てる未来が見えない」
「そ、それはそうなんですけど……」
というかミツルギは魔剣持ちだろうが。
そういうのって当たれば必殺じゃないの?
特典チートってそういうもんでしょ。
「仮に戦うとしても、屈折魔法以外にも身を潜める手段は欲しいし、せめて盾役になれる前衛職がいないとどうにもならん」
「でも今日買ったアイテム使ったら…」
「それでやるしかないな……」
言ってて不安になってくる。
確かに高額なマジックアイテムは数多く入手できた。
しかし、そんなアイテムとは比べるまでもない強力な武器を持ち、高価な装備に身を包んでいたミツルギらがやられてるんだ。
思わず深い溜息を溢してしまう。
「話は聞かせてもらったよ!!」
突然横から声をかけられる。
見るとそこには、見覚えのある銀髪に頰に小さな刀傷のある女の子と、フルプレートに身を包んだ金髪碧眼の女性が立っていた。
「えっと……エリスだっけ?」
「えっ!?ええええええ!!?ちちち違うよ!なに言ってんの!?私の名前はクリス!!」
あぁ、そうだったな。クリスだクリス。
というかなんでそんな驚いてるのん?
「悪い、うろ覚えになってた」
「も、もうっビックリしたなー!よりにもよって神様の名前と間違えないでよね!畏れ多いよまったく……」
ふーっと汗を拭い、手で顔をパタパタと扇ぐクリス。
そういえば最初に会った時もエリス教徒といたし、クリスもエリス教徒なのかもしれない。
それならエリスなんて呼ばれたら畏れ多いよな。
「それでそっちの人は?」
「私はダクネス。まだ駆け出しだがクルセイダーだ。今はクリスとコンビを組んでいる」
凛とした声で礼儀正しく頭を下げられ、思わずこちらも会釈を返してしまう。
クルセイダーは確か聖騎士と呼ばれる前衛の上級職だった気がする。
なるほど、確かに騎士らしい佇まいだ。
「はぁ、ども。俺はハチマン。一応アークプリーストだけど、まだ駆け出しだから期待しないでもらえると助かる。で、コンビ組んでるこの子はーー」
「は、初めまして!我が名は……い、いえっ私はゆんゆんと申します!職業はアークウィザードで趣味はトランプタワーを作ることです!まだ中級魔法しか使えないんですがすぐに上級魔法だって覚えるのでよろしくお願いしますっ!」
クリスとダクネスが来てから話し出せなくなっていたゆんゆんが、かなり気合の入った自己紹介をした。
というか自己紹介くらいで目を紅くするなよ……。二人とも引いてんじゃん。
「それで何の用だ?なんか話は聞いてたみたいだけど」
「そうそう。君達、上位悪魔の討伐考えてるけどメンバー不足で困っているんだよね?」
「まぁ、有り体に言えばそうなるな」
「実は私達も上位悪魔討伐を考えててね?よければ今回合同でやらない?私は盗賊で潜伏スキルを使えるし、ダクネスはクルセイダーだから前衛になれるよ」
「本当ですか!?やった、ついてますよハチマンさん!……ハチマンさん?」
さて、どうするかね……。
クリスの言うことが本当ならありがたい。
ゆんゆんも賛成みたいだし正直、合同でやれるならそれに越したことはないのだろうが……。
俺はこの世界に来て嫌というほど味わってる。
せっかくの転生特典チートは、アクシズ教徒への強制入信で改宗不可とかいう、祝福どころか呪いのようなもので。
けれど、そのおかげで宿が手に入ったかと思えば、今度はセシリーという変態のろくでなしに付き纏われ。
ようやくパーティーが決まったかと思ったら、上位悪魔討伐をすることになり。
わざわざ回復させた連中は呆気なくまた負けて帰って来た。
うまい話には裏があるどころじゃない。
何故か起こるイベントが次々と悪い方向へ転がっていく現状、この一見、幸運の神の思召しとも思える提案にも疑いの目を向けて望むべきなのだ。
「んっ……そ、そんな目で見るな……。いや違う、もっと見ろ!その下卑た視線を向けて見ろ!!」
「は?」
ちょっとこの人なに言ってんの?
突然わけわかんない事を言い出したダクネスにちょっと……いや、だいぶ戸惑ってしまう。
というか下卑た視線とはなんだ。
俺は雪ノ下以来になるが、いきなり失礼な事を言ってくれたダクネスを警戒の意も込めて威嚇をしておく事にした。
「がるるるるる!」
「きゃうんっ!」
えっ?なんで頬赤らめて嬉しそうにしてるのん?
ちょっとこの人怖いんですけど。雪ノ下と違う意味で。
「クリス!彼は想像以上だぞ!想像以上に逸材だ!!」
「うん。ダクネス、君はちょっと黙っていようね?」
なにが想像以上なんだろう……。
鼻息荒く興奮し始めたダクネスを見て、言いようのない不安感を覚える。
いや深く考えるのは止めておこう。きっとガッカリする。
「あー……ちょっといいか?さっき上位悪魔討伐を考えてる言ってたけど、なんでなんだ?普通なら関わらないだろ」
「えっ?悪魔だから当たり前じゃん?殺さないと」
「うむ。私達はつい先程クエストを終えたばかりで知らなかったからな。よくもまぁ現れたものだ、ぶっ殺してやる!」
理由を聞くとクリスはハイライトの消えた目で当然のように答え、一方のダクネスは目を血走らせて怒ったように答えた。
……なんでリアクションは正反対なのに言ってる事は同じなのん?
というか怖い。怖いんですけど。
そういえばアクアとクリスにはアンデッドと勘違いされて浄化魔法を撃たれた事もあったし、教会関係者は悪魔やゴーストといった類のモンスターには容赦がないのだろう。
にしても怖いんだけど。ゆんゆんも怯えてるし。
「けれど私達は決定打を持っていないのでな。嬲られるのは好きだが嬲るのは趣味じゃないんだ。羨ましくなっちゃう」
「こら、ダクネス擬態……。それで君を見かけたわけだよ。経緯としてはこんな感じかな」
なるほど。とりあえずダクネスがドMな残念な奴ということが分かった。
アレだな。オープンなドMってキツいんだな。
第一印象の凛々しい女性像は何処へやら、正体はただのド変態キャラだったのだが、とりあえず致命的な欠点はなさそうだ。
まぁ正直関わりたくない部類の人間だけど、どうせその場限りのパーティーだし。
なによりも現状、やっぱり合同でやる以外にいい手が浮かばない。
「分かった。変に疑って悪かったな。協力してくれると助かる」
席を立ってゆんゆんの隣に移動する。
隣に座っただけなのだが、ぼっちの初期スキル人見知りを発動して今までなかなか会話に入れずにいたゆんゆんは、心なしか嬉しそうな顔をした。
そんなゆんゆんを無視するようで心苦しいのだが、クリスとダクネスを空いた対面する座席に座るよう促す。
「さっそく作戦会議始めるぞ。なんか頼むか?」
ようやくタグ付けした主要メンバーと出会わせることが出来ました。
今回クリス、ダクネスと臨時パーティーを結成させましたがこの作品では基本的にカズマパーティーはそのままの形で進めていくつもりなのでご安心ください。
カズマさんがまだ冒険者として活動していない土木工事中の時系列だからこそ出来る組み合わせですね。
日刊ランキングに載ることが出来ました!
不定期更新でろくに進んでもないのに読んで支えて下さっている皆々様のお陰です!ありがとうございます!
そして申しわけないのですが前にチラッと言っていたお気に入り1000件記念の特別編なんですが一章完結の特別編と合同でやらせてもらおうかと思います。
まさかあんなに早く1000件越えちゃうとは思わなかったので……。
日刊ランキングの強さを思い知りました。今後とも期待に添えるだけの話を作れるよう頑張りますのでよろしくお願いします。
さて、話はこのすばや俺ガイル関係なくなっちゃいますがFGO2周年熱いですね。
地方民なので現地勢が羨ましい限りでニコ生見てます。
自分は確定ガチャを引く際、
まずホームズを当てていい流れにしたあと福袋を引き神引きを呼び寄せる!
と完璧な計画を立ててガチャを回してましたが二万が無くなり傷心の末に引いた福袋はジャックの宝具レベルが上がるだけの結果となりました。
同じ殺鯖ならヒロインXが欲しかったですね。復刻が待ち遠しいです。
見事、目当ての鯖や限定鯖を当てた方にはアクア様からの祝福があらんことを切に祈ってます。
それでは感想、評価はお待ちしておりますがガチャ大勝利報告なんかは受け付けておりませんのでよろしくお願いします。