やはり俺の受けた祝福はまちがっている   作: サキラ

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感想、評価ありがとうございました!
やっぱり反応を貰えるとモチベ上がりますね。
相変わらずのスローペースな不定期更新ですがよろしくお願いします。



当然ながらぼっち二人の買い物は盛り上がらない。

 

 

結局、昨日逃げ出したセシリーは帰って来なかった。

まぁ荷物一式纏めて持って逃げているので心配しなくてもいいだろう。

たぶん腹が空いたら何食わぬ顔でしれっと戻ってくるはずだ。

……説教はその時にしてやろう。

 

今日はゆんゆんとの約束もある。

 

別に心配とかいう訳でもないが、いつまでもセシリーが戻って来るのを待っていても仕方ないので、待ち合わせ場所に向かう。

時間通りに来たはずだが、ゆんゆんは既に着いておりそわそわと周囲を伺っているようだった。やがて俺の姿を捉えたのか、その顔には安堵の色が浮かび上がった。

 

 

「うす。待たせたか?」

 

「と、とんでもないですっ。私が早く来過ぎただけなので……」

 

 

どうやら割と待たせていたらしい。

っていうかサラッと早く来過ぎただけとか言ってたけど、この子いつから待ってたのだろう?

 

 

「ちなみに着いたのどれくらいだ?」

 

「えっと、たぶん一時間前くらいです」

 

 

……俺、もしかして時間間違えた?

 

 

「あっ、いえ!私が早く来過ぎちゃったんです!だからハチマンさんは何も気にしないでください!待たせると悪いなぁとか、もしも待ちくたびれさせちゃって帰られてしまったら悲しいなぁ。なんて考えてたら居ても立っても居られなくなっちゃって……!」

 

 

思った以上に悲しい理由だった……。

相変わらずゆんゆんは変な方向にぼっちを拗らせてるな。いやまともな拗らせ方も知らんけど。

 

 

「と、とにかく早速行きましょう!」

 

 

俺のなんとも言えない視線に気づいたのか、誤魔化すようにゆんゆんが言う。

 

 

「と言っても俺は魔道具店とか全然分からんぞ?」

 

 

アクセルの町には日常生活用の商店街と冒険者ご用達の商店街の二つがある。

この世界に来て一ヵ月。全く冒険者としてクエストをこなして来なかった俺は、普通の商店街に関してはタイムセールの時刻まで把握している程に精通しているのだが、冒険者街の方に関してはからっきしだ。

定番の展開だが変な路地に迷い込んで恐喝にあうような気がする。

 

うわ、めっちゃ帰りたいんだけど。

 

 

「大丈夫です!行ってみたいところや話題のお店とかはリストアップして来てるので任せてくださいっ」

 

 

ということは今日俺はひたすらついて周るだけでいいのか。

自分で店とか考えなくていいのはありがたい。

 

なんで女子ってなんでもいいとか言っておいて、ラーメン屋とかサイゼとか言うと冷めた目で見てくるのかしら?

 

 

▼▼▼

 

 

 

魔道具店には様々な小瓶や巻物、一見何に使うか分からないような小道具まで所狭しと置かれていた。

俺達はそれぞれ店の中を散策し出す。

応急セット、携帯食料、万用カギ型フック、採集セット、宴会芸セット。

……宴会芸セット?

 

 

「あっ、探していた光の屈折魔法用のスクロールありましたよ?」

 

 

スクロール棚の方を見ていたゆんゆんから声をかけられる。

 

そう言えば昨日そんな話してたよね。

まぁ今頃回復させたミツルギや腕利きパーティーらが上位悪魔討伐に向かってるのだろう。

腕利きパーティーの実力は知らないがチート持ちのミツルギがいるんだ。上位悪魔なんて今日の夕方には倒されているだろう。

 

まぁそれでも保険は打っておくに越したことはないし、魔法のスクロールとやらには興味がある。

ファンタジー系のゲームで慣れ親しんだものだが、実際にはどういったものなのだろう?

ゆんゆんの所へ行き棚に並べられた巻物を一つおもむろに手に取ってみる。

 

 

「……高くね?」

 

 

値札を確認してみるとこれが想像以上に超高かった。

その価格は軽く昨日のカエル討伐の報酬金額を超えている。

80万エリスとか……俺の内職何回分だよ。

 

 

「マジックスクロールは特殊な技術を使っているのでどれも高価なんです。そのうえこれは特殊系統の魔法ですから」

 

 

さすがにこの価格は手が出ない。まさか昨日の報酬の取り分をひっくるめても届かないとは。

マジか。リアルだとそんなにすんのか。これなら地道にレベル上げをしていった方がマシな気がする。

 

手にしたスクロールを棚に戻そうとすると、隣のゆんゆんがオドオドしつつも口を開いた。

 

 

 

「どうします?三つくらい買っておきましょうか?」

 

 

えっ……。

ゆんゆんの言葉に一瞬思考が止まる。

待って。八幡が八万だとするだろ?つまり八十万のスクロールは俺が十人いるってことだ。そしてそれを三つ。ということは三十人の八幡か。

やだ、俺だけで一クラス作れちゃうじゃん。めちゃくちゃ鬱陶しいなそれ……。

 

脳裏に嫌な光景を思い浮かべ強制的に頭を冷やす。

 

 

「……ゆんゆんってもしかしてどこぞのお嬢様だったりするのか?」

 

 

そういえば族長の娘とか言ってたな。

意外とお嬢様なのかもしれない。

やだっ!俺ってばちょっと養ってもらえるかもなんて期待してる!

相手は年下の女の子なのに!

 

 

「へ……?そんなことないですよ?族長の娘って言っても、紅魔族は滅多に外部の人のやってこない辺境に住んでるので基本的にみんな質素ですし」

 

「……お前、パパとか呼んでる男とかいないよな?」

 

「??お父さんならいますよ?もうしばらくパパなんて呼んでませんけど」

 

 

その質素なはずの一族の娘が、こんな高価なものを気軽に買おうとしてるものだから、何か妙な事をしているのではないかと心配になってしまう。

 

 

「……ちなみに今日いくらぐらい持ってきた?」

 

「えっ……その、一千万エリスくらいです」

 

「ちょっとまってなにいってるかわかんないよ?」

 

 

あまりの額に脳がフリーズを起こす。

今なんてったのこの娘?一千万?それって俺だと何人分になるか分かってる?

 

 

「一応聞いておくけど真っ当なお金だよな?」

 

「…………はい、たぶん」

 

 

……どうやら真っ当なお金じゃないらしい。

 

 

「ち、違うんです!このお金は友だ……ライバルが工面してくれたもので……!」

 

「ゆんゆん、友達ってのはいくらなんでも一千万を工面してくれるような奴じゃない。いくら一人が寂しいからって誰彼かまわずついていったりするなよ。世の中には下心を持った危ないやつもいるんだし。俺でよければ買い物とかクエストとかなんでも付き合うから。頼むから不用心に知らない人についていくなよ?何されるか分かったもんじゃないし」

 

「なんだろう!すごく嬉しいことも言われたのに素直に喜べない!!」

 

 

涙目になりながらもゆんゆんが弁解を始める。

なんでも、一緒に紅魔の里からやってきたライバル兼友人が上位悪魔討伐の為と言って、どういう方法か知らないが本当に工面してくれたらしい。

 

 

「どうですかね!?やっぱりあの娘、人には言えないような方法で用意しちゃったんですかね!?」

 

「どうだろうな。この額とまでなると個人というより団体とかから借りたって方が信憑性あると思うけど。どっかの貴族か、商業組合、宗教団体とかにコネがあれば用意できなくもない額だと思うけど」

 

 

俺の言葉に心当たりがあるのかゆんゆんはほっと胸をなでおろした。

 

というかそんな訳アリの金を、上位悪魔討伐をしないかもしれないというのに使ってしまっていいのだろうか?

 

……まぁ、最悪準備している段階で倒されるとは思わなかった。

とか言って言い逃れたらいいか。

実際、上位悪魔討伐の為に使ってるんだしマッチポンプな気もするけど詐欺じゃないと思う。たぶん、きっと!

 

一抹の不安を脳内の端っこに追いやり再び順々に店の商品を見て回っていく。

 

 

「見てください!妨害魔法のスクロールもあります。中々お目にかかれないレア物ですよ!」

 

「妨害魔法?」

 

「はいっ。特殊な系統の魔法で相手の魔法を無効化するんです!魔力を込めれば込めるほど性能が上がって理論上ならどんな魔法も一度だけなら打ち消せるんですよ!」

 

 

マジか。理論上だと最強だな。

実戦で打ち消せるだけの魔力の余裕があればだが。少なくとも俺には向かないな。

 

 

「なるほど。魔力容量の多い紅魔族にはうってつけかもな。在庫が一つだけって言うのが心許ないが」

 

「すごく稀少なものですし仕方ないですけど。でもあって良かったです。買っておきますね」

 

「そういやウィザードやプリーストの御用達というか、オススメのアイテムとかってあるのか?」

 

 

魔法の威力上昇とか、魔力を回復させるポーションとかあるのならそちらも見ておきたい。

俺の魔力容量は高いとは言えないし魔力補充の手段はあるに越したことはないしな。

 

 

「聖水を使うと浄化魔法や破魔魔法はだいたい威力が上がりますね。悪魔やアンデッドには聖水だけでダメージが入りますし。あとは魔法が使える職業全般だと消費魔力を肩代わりしてくれるマナタイトは欠かせないです」

 

「じゃあそれも買ってくか」

 

 

店内をぐるっと見回して探してみる。

やっべぇ全然分かんねえ。せめてどういう形か分かれば見当もつくのだが。

 

 

「あっありましたよ!」

 

 

ゆんゆんが声を上げる。

その手には野球ボールほどの紫色の丸い水晶が握られていた。

あれー?俺もそこは見たはずなんだけど……。

 

 

「置いてあるのは中級魔法用のマナタイトですね」

 

「用途が決まってるのか?」

 

「はい。マナタイトには純度というのがあって、高純度なものほど肩代わりしてくれる魔力が多いんですよ。そのぶん高価になっちゃうんですけど」

 

 

なるほど。確かに初級用のマナタイトと見比べてみると、中級用のマナタイトの方が澄んだ紫色をしている。

ふと隣のゆんゆんを見ると、店頭にある中でより純度の高いものを厳選し始めている。

やだなにこの娘、マジで詳しい。これなら一人で回るより一緒に見て回る方が効率よさそうだ。

 

 

「とりあえず一緒に見て回っていいか?素人目な俺がいいアイテム選べるとは思えないし」

 

「えっ!?いいんですか!?」

 

「いや聞いてるのは俺の方なんだけど。まぁ、一人で見て回った方が気楽だしな」

 

「い、いえ!とんでもないです!こちらこそお願いしますっ!」

 

 

嬉しそうに爛々と目を輝かせるゆんゆん。

……お願いされても困るんだけどなぁ。

 

 




【補足説明】
ゆんゆんの持ってきたお金はめぐみんがセシリーから貰ったお金です。この作品だけでのご都合主義な独自展開というわけではないのであしからず。相変わらず詳しくは原作を。この作品の中では逃げ出したセシリーが向かった先がめぐみんの宿という感じですね。

【所感】
遅い上にこのクオリティいやはや本当に申し訳ない。
まだゆんゆんを動かすのが下手くそですね。ぼっち同士の絡みな上にゆんゆんは基本敬語。苦肉の策でほぼ説明ばかりになっています。
ほんともっとらしさを出して行きたいんですが。
まだまだ頑張って行こうと思います。

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