ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

50 / 56
どうも皆様

本当にお久しぶりでございます、雪希絵です

諸事情で2週間も投稿しないで……申し訳ありません

これから投稿再開していきますので、よろしくお願い致します


作られた命だとしても

「しっ────!」

 

気合一閃、ルイスは右手の剣を突き込む。

 

リィエルは腰を捻りながら大剣を真横に振り、横から叩きつけるようにルイスの剣を弾く。

 

「まだまだ!」

 

ルイスはその勢いを利用して一回転し、左手の剣を切り払う。

 

「やぁっ!」

 

しかし、リィエルは持ち前の身体能力を活かして強引に振り抜いた大剣を引き戻し、盾のように構えて斬撃を防御する。

 

飛び散る猛烈な火花が、互いの力の強さを物語る。

 

お互い反発する磁石のように飛び下がり、距離をとる。

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

「……もう、終わり?」

 

肩で息をするルイスに対し、全く息が乱れていないリィエルが、挑発するようにそう言った。

 

「へっ。そんなわけないだろ。……まあ、全身痛てぇがな。どっかの誰かさんのせいで」

「……兄さんの計画の邪魔をしたから。それだけ」

「ああ……そうかよっ!」

 

舌打ちをしながら、ルイスは双剣をギリギリと握る。

 

ボロボロの身体はそれだけで悲鳴をあげるが、ルイスは毛ほども気にしていない。

 

「『投影開始(トレースオン)』」

 

ボソリと呟き、両手に三本ずつの双剣を投影する。

 

ルイスの必殺技の一つ、『鶴翼三連』の準備だ。

 

鶴翼(しんぎ)欠落ヲ不ラ(むけつにしてばんじゃ)────」

 

ルイスが詠唱の如くそう言った直後、

 

「クソッタレ……!」

 

ルイスのものではない悪態が聞こえ、すぐそばにグレンが飛び込んできた。

 

「グレン!?どうした!?」

「すまん、ルイス。間に合わなかった……」

 

首を傾げるルイスを他所に、リィエルは戦闘を続行しようと斬りかかってくる。

 

「話はあとだ。とりあえずリィエルを抑える!」

「分かった。ルイスはスキを作ってくれ。あとはなんとかする」

「任せろ」

 

言いながら、ルイスは両手の双剣のうち左手の剣だけ1本にし、右手の残る剣を投げつける。

 

白い剣は、投げナイフの要領で一直線に飛んでいく。

 

(……? サイズが小さくなってる……?)

 

リィエルは飛来する剣に違和感を覚えながらも、対処を開始する。

 

とはいえ、いつもの如く猪突猛進し、

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

その最中で水平に回って剣を薙ぎ払うだけだが。

 

速度を全く緩めることなく、突撃して来るリィエル。

 

それを、ルイスは実に冷静に眺めていた。

 

ぐっ、と両手に力を込めて塚を握り込むと、両手の剣に変化が現れる。

 

長く、太く、大きく伸びていく。

 

予想外の変化にリィエルも目を見張るが、怯まずに特攻する。

 

横抱きにした大剣を、下から上へすくい上げるように切り払う。

 

ルイスは巨大化した双剣を勢いよく振るい、左手の剣を大上段に叩きつける。

 

「ぐっ……!?」

 

重量が増え、その威力は先程までと桁違いだった。

 

リィエルの一撃が押し返され、態勢を乱す。

 

間髪入れずに横薙ぎに飛来する右手の剣。

 

大きさ故か、遠心力の加わったその攻撃は比べ物にならない迫力を持っていた。

 

「ぬぐっ……やぁぁぁぁぁぁっ!」

 

半ばヤケ糞に大剣を持ち上げ、盾にする。

 

どうにかこうにか防ぎはするが、衝撃に耐えきれず吹き飛ぶ。

 

膂力と機動力は高いが、リィエルは小さな体格の故に体重が軽い。

 

もちろん、長い距離ではないためすぐに着地するが、

 

「───・理の天秤は右舷に傾くべし》」

 

致命的な隙に突き刺さる、黒魔【グラビティ・コントロール】。

 

「うっ……ぐっ……!」

 

その小さな肢体を押し潰さんとせんばかりに、重力が襲いかかる。

 

単純な力には押し負けてないだろうが、重力には流石のリィエルも対処のしようがない。

 

そうしてようやく、リィエルは止まった。

 

「ったく、本当にお前は大したやつだよ。ここまでしないと、止まんないんだもんな……」

「ああ、本当にな」

 

しかし、グレンとルイスは警戒を解かない。

 

「……グレン。何があった?」

「ああ。それはだな……」

 

直後、二人の直感が危機を感知した。

 

同時に飛び下がると、そこへ飛び込んでくる一つの影。

 

「……!? り……リィエル……?」

 

その人物は、リィエルと瓜二つだった。

 

それだけではない。

 

研究所内の氷石柱が壊れたかと思うと、さらに現れる二人のリィエル。

 

合計三人のリィエルが、そこにいた。

 

「は……?な、なん……だよ……これ……?」

「馬鹿なっ!?」

 

混乱するルイスの傍らで、グレンが驚愕に目を見開いて叫ぶ。

 

「『Project:Revive Life』が成功しているだと!?」

「『Project:Revive Life』……?い、一体何を言って……」

 

いや、頭では分かっているのだ。

 

リィエルは、かの研究で作られた人工生命体だと。

 

しかし、心が理解を選ばない。

 

今までのリィエルとのことが、頭を駆け巡る。

 

ルイスの膝で呆けた顔で眠るリィエル、タルトを頬張って幸せそうにしているリィエル、荒々しい表情でこちらを睨むリィエル。

 

今の、泣きそうな顔になっているリィエル。

 

(こいつが……人間じゃないと?)

 

「ルイス!」

 

グレンの一喝で我に返る。

 

「ルイス、今まで黙ってて悪かった。……お前の察している通りだ」

 

けど、と躊躇いがちにグレンは続ける。

 

「頼むから、あいつの事を人間じゃないなんて思わないでやってくれ……!」

 

その一言で、腹は決まった。

 

何を迷っていたのか。

 

今しがた、思い出していたではないか。

 

あれが、ただの人形の姿だと?

 

「……冗談じゃねぇ」

 

言いながら、ルイスはもう一度双剣を握りしめる。

 

元のサイズに戻ったそれを、くるくると回転させて構える。

 

「ああ、分かってるよグレン。あいつは、リィエルは、ルミアとシスティの友達で、クラスメイトで、俺の大事な妹分だ。作られた命だろうが、人形だろうが、そこだけは変わらない。変えさせない───!」

「……よく言った、ルイス。背中頼むぞ」

「任せろ!」

 

覚悟を決めた二人の、最後の戦いが始まろうとしていた。




3時間半超過って……何をやっているんでしょうね

やっぱりしばらく書いていないせいか、思ったように書けなくて……大変に時間がかかってしまいました

早く、元のペースに戻せるように頑張ります

それでは、また来週お会いしましょう

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。