というわけで、新作出しました
いやー、割と始まりの方から応援してた身としては嬉しい限りです
タイトルからわかる通り、主人公は固有魔術として無限の剣製持ってます
本来より色々やれるようにしていこうと思っていますが、基本は同じです
皆様に楽しんで頂ければ至上の喜びにございます
では、はじめていきたいと思います
よろしくお願い致します!
ダメ講師就任
「おーい、ルイス」
「んあ?」
アルザーノ帝国魔術学院、魔術学士二年次生二組の教室。
その最前列に座っていた少年『ルイス=ハルズベルト』は、馴染みの声に名前を呼ばれ、本から顔を上げる。
声のした方を向くと、そこには二人の少女が立っていた。
一人は、長い銀髪にまるで猫耳のようなリボンを結びつけた少女『システィーナ=フィーベル』。
もう一人は、セミロングの金髪にこちらはウサ耳のようなリボンを結びつけた少女『ルミア=ティンジェル』。
ルイスにとっては学院に入る前からの顔馴染みだ。
「おはよう。ルイス」
「おはよう。ルイス君」
「おはよう。システィ、ルミア」
軽く手を振りながら挨拶をする二人に、片手を上げながら答える。
そのままルミアはルイスの隣に座り、システィーナはその反対側に立つ。
「聞いてよ、ルイス。今日なんか凄いむかつく男に会ったのよ」
「むかつく男?」
「そう!私にぶつかりそうになったから『ゲイルブロウ』で弾き飛ばしたんだけど」
「いや、それはいかんだろう……」
アルザーノ帝国魔術学院では、名前の通り魔術師を育成している。
魔術師とは、簡単にいえば『イメージの力で世界の一部を改変する力を持った者』だ。
それだけに、力の使い方を誤れば、簡単に人を傷つけてしまう。
「うっ……。それはたしかに私が悪かったけど……。でもね!そいつってばいきなりルミアの身体中をまさぐりだしたのよ!?信じられなくない!?」
「それは断じて許されないな!」
「でしょう!?」
「ふ、二人とも、なんか様子がおかしいよ……?」
ちなみにこの二人、ルミアには甘い。
ルミアが絡むと、システィーナは時折、ルイスは大概冷静さを失うのだ。
「ルミアは腹が立たないの?あんなことされて!」
「うーん……実際少し触られたくらいで、大したことないし……。私は平気だよ?」
「ルミアがそう言うなら……まあいいか」
「そうね……」
そして、それを収めるのもルミアである。
「そういえば、ルイス君。何見てるの?」
半ば話題を逸らすために、ルミアがルイスの手元の本をのぞき込む。
「ああ、これか?うちの新商品のカタログだよ」
「えっ!?見せて見せて!」
「私もいいかな?」
「もちろん」
言いながら、二人が見やすいようにカタログを手に持って立てる。
ルイスの家は、帝国でも非常に有名な道具屋だ。
元々は一軒家サイズだった店舗は、今では三軒分以上になり、その品揃えは薬品や道具、アクセサリーどころか、武具にまで及ぶ。
そして、フィーベル家は、まだ店が小さかったころからの常連客なのだ。
配達にもよく行ったため、ルイスと二人はそこで知り合ったのだ。
「あ、この薬草入荷するんだ。結構希少だったはずだよね?」
「あー、それか。最近生産に成功したらしくて、父さんが早速仕入れてた」
「相変わらず仕事熱心ね……」
「まあ、仕事大好き人間だからなぁ……」
「でも、忙しそうだけど楽しそうだよね」
「そうね。あ、これ……」
そんな風にカタログを見ていると、突然ガラリッ!と勢い良く教室の扉が開いた。
驚いたクラスの全員がそちらを見ると、そこには、
「やあ、生徒諸君。元気かなー?」
とにこやかに笑う一人の絶世の美女が立っていた。
豪奢な金髪に、黒色のドレス。
完成されたプロポーションと圧倒的な美貌を持つ美女の名は『セリカ=アルフォネア』。
この大陸どころか、世界でも三本の指には入るであろう魔術師であり、生ける伝説である。
呆気に取られる生徒を他所に、セリカはヅカヅカと教壇まで歩き、立ち止まって教室全体を見渡す。
そして、おもむろに口を開く。
「今日はこのクラスに、ヒューイ先生の後任を務める非常勤講師がやってくる。では、ホームルームを……」
役目は果たしたとばかりに、ホームルームをいきなり始めようとする。
そこに、
「あの……」
遠慮がちに、しかしはっきりと綺麗な声が響く。
セリカが振り向いた先にいたのは、ルミアである。
「どうした?何か質問か?」
「はい。あの、その先生がどんな先生なのか教えていただけませんか?」
生ける伝説、七つまである魔術師のランクのうちの最高位『
(やっぱりルミアって精神力あるよな……)
昔からわかっていたことだが、やはり凄まじい。
「あー、まあ、そうだな……」
顎に手を添え、考え込むセリカ。
何気ない仕草でも、セリカほどの美女がやると画になる。
「まあ、なかなかに優秀なやつだよ」
そう言い、笑みを浮かべる。
にわかにざわつきだす教室。
セリカほどの魔術師が『なかなかに優秀』というのだ。
生徒たちの期待も、相応に高まる。
「では、今度こそホームルームを始めよう」
そんな状況に目もくれず、セリカはホームルームを始める。
手早く要件を済ませ、教室を出ようと扉に向かう。
そして部屋を出る直前、不意にルイスの方を向き、
パチンッ
とウィンクしてから出ていった。
呆気に取られるルイスを差し置き、そうさせた張本人はさっさと教室を出た。
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「……遅い!」
システィーナが苛立ちを隠すことなく吐き捨てた。
「どういうことなのよ!もうとっくに授業開始時間過ぎてるじゃない!?」
「確かにちょっと変だよね……」
「……まあ、だろうな」
ルイス、ルミア、システィーナの順番に座り、待つこと早一時間。
生徒たちの『なかなかに優秀なやつ』イメージは早々に崩れ去りそうだった。
「あのアルフォネア教授が推す人だから少しは期待してみれば……これはダメそうね」
「そ、そんな、評価するのはまだ早いんじゃないかな?何か理由があって遅れているだけなのかもしれないし……」
「……ルミアは優しいな」
だが、システィーナはそんなルミアに振り向き、猛然と抗議する。
「甘いわよ、ルミア。いい?どんな理由があったって、遅刻するのは本人の意識の低い証拠よ。本当に優秀な人物なら遅刻なんか絶対ありえないんだから」
「そうなのかな……?」
「まったく、この学院の講師として就任初日から大遅刻なんて良い度胸だわ。これは生徒を代表して一言言ってあげないといけないわね……」
と、その時だ。
「あー、悪ぃ悪ぃ、遅れたわ!」
がちゃ、と教室前方の扉がまったく悪びれる様子のない声とともに開く。
すでに授業時間の半ばを過ぎた、前代未聞の大遅刻である。
「やっと来たわね!ちょっと貴方、一体どういうことなの!?貴方はこの学院の講師としての自覚は──」
宣言通り一言言ってやろうとシスティーナが男を振り返って、硬直した。
「あ、あ、あああ───貴方は───ッ!?」
ずぶ濡れのままの着崩した服、蹴り倒された時にできた擦り傷、痣、汚れ。
ホームルーム前、システィーナがルイスに話し、すっかり忘れていた通学途中で会った変態が、そこにはいた。
「…………………違います。人違いです」
自分に指をさしてそう言うシスティーナの姿を認めると、抜け抜けとそんなことを言った。
「人違いなわけないでしょ!?貴方みたいな男がそういてたまるものですかっ!」
「こらこら、お嬢さん。人に指をさしちゃいけませんってご両親に習わなかったかい?」
表情だけは引き締め、男はシスティーナに応じる。
「ていうか、貴方、なんでこんな派手に遅刻してるの!?あの状況からどうやったら遅刻できるって言うの!?」
「そんなの……遅刻だと思って切羽詰まってた矢先、時間にはまだ余裕があることがわかってほっとして、ちょっと公園で休んでたら本格的な居眠りになったからに決まっているだろう?」
「なんか想像以上に、ダメな理由だった!?」
「やめとけ、システィ。まともに対応するだけ無駄だ」
「だけど……!」
そう小声で言うルイスに、システィが大声で反論する。
当然その声も聞こえ、男がルイスの方を見ると……。
「げっ!?な、なんでお前がここにいるんだよ!?ルイス!!」
突然システィを優に超える大声をあげた。
(あの馬鹿!そんな大声で……!)
ため息をつき、心底仕方なくという表情で、ルイスが片手を上げる。
「……よう、グレン。昨日ぶり」
そう、何を隠そうこの二人。
同じ師から魔術を教わった、言わば兄弟弟子なのである。
この辺は、まあ原作通りですね
一応、原作に沿った形で進めていきたいと思っております
ちなみに、fateキャラはほとんど関係ありません
……ひょっとしたらクロスもあるかもですが