ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

案の定テストで大失敗した雪希絵です

もう……本当に数学苦手です……

私のような文系脳には理数系は厳しいです

またもや時間過ぎて申し訳ありません

今回は単純に取り掛かるのが遅すぎました……

それでは、ごゆっくりどうぞ


決戦へと

「ふぅ……ふぅ……」

 

肩で息をしながらルイスは立ち上がる。

 

少女を抱きかかえる腕が震える。

 

「お、おい、ルイス。大丈夫か?」

「……大丈夫だ、問題ない」

 

しかし、その足元は覚束無い。

 

魔力を使いすぎたのだろう。

 

顔色も悪くなりつつあり、若干ではあるがマナ欠乏症の兆候が出ている。

 

「ルイスさん」

 

そんなルイスを、ジャンヌが支えた。

 

「……ありがとう、ジャンヌ」

「いえ、気にしないでください」

 

魔晶石を握りながらそう言うルイスに、ジャンヌは微笑みかける。

 

「はん、相変わらず仲のよろしいことで」

「そうだよ。悪いか?」

 

当たり前のように返すルイスに、ジャンヌがほんのり頬を染める。

 

「別に仲が良いことは構わねーよ。それはそうと、本当に大丈夫か?なんならその子、俺が抱えるぜ?」

「いや、魔晶石でだいぶ楽になった。グレンは俺より重傷なんだから、大人しくしてろ」

 

アルベルトが手渡した布を少女に巻きつける。

 

これで体温が急激に下がることはないだろう。

 

「ルイスさんも重傷だったじゃないですか。私が背負います」

「え、でも……」

「………………」

「……はい、お願いします」

 

無言の抗議に負け、ルイスは頷くしかなかった。

 

その時だった。

 

「貴様らァ!?私の貴重な実験材料になんてことをしてくれた!?」

 

場違いで筋違いな怒声が響く。

 

「バークス=ブラウモン……!」

「……てめぇだけは生かしておかねぇ」

 

円筒の群れの奥に姿を現したバークスを、ルイスとグレンは睨みつける。

 

「おのれぇ!やっとの思いで確保したサンプルを解放しおって……!いかに魔術的な価値があるのか分かっているのか!?この愚鈍な駄犬どもッ!許してはおかんぞッ!」

「なぁ、あんた……聞くだけ無駄だろうが……お前が切り刻んで標本にした人達のこと……どう思ってるんだ?少しは罪の意識とかねーのかよ?」

「はぁ?罪だと?何を戯けたことを」

 

完全に馬鹿を見るような目で、バークスがグレンを見やる。

 

「偉大なる魔術師たる私のために身を捧げることが出来たのだぞ?寧ろありがたく思って欲しいくらいだ。大体、どいつもこいつもまったく役に立たん……だが!」

 

バークスはふざけたことを、全て自分が正しいとばかりに語る。

 

「たまたま、少しは役に立ちそうな実験材料が見つかったと思えば……貴様らが今台無しにしてくれた!魔術の崇高さを欠片も理解できぬ愚者共が……!恥を知れ!」

 

そう言い、ルイスを睨みつける。

 

「とくに、直接手を加えた貴様は許してはおかん……!」

 

顔を伏せ、ルイスはそれを黙って聞く。

 

「たかが鼻たれた餓鬼の分際で、よくもやってくれたなッ……!しかも、武器を制作して切りかかる固有魔術(オリジナル)だと?野蛮人がっ!貴様など、魔術師の風上にもおけん!」

「……貴方が、貴方がそれを言いますか!」

 

何も言わないルイスの代わりに、ジャンヌが叫ぶ。

 

「人の身でありながら、同じ人間を道具のように扱うなど……!主に対する冒涜です!いえ、そうでなくも、人として許されるものではありません!」

「何を言うかと思えば……そんなことか。相手は異能力者だぞ?何を遠慮するというのだ?」

「……異能力があるから、人間ではないんですか……?」

「そうだとも。何がおかしい?」

 

全く悪びれることのないバークスは、ぬけぬけとそう言う。

 

「あー、うん、もうね。わかった。あんた本物だよ。……本物の、クズだ……!」

 

グレンは冷静に怒り狂っていた。

 

ジャンヌは、唇を出血する程に噛み締める。

 

そんなジャンヌの隣で、

 

「きゃっ……!?」

 

一陣の風が巻き起こる。

 

理由は明白、ルイスが双剣を握り締めて突撃したからだ。

 

「……殺す」

 

その速度に、バークスは全く反応出来ない。

 

首筋と心臓に深々と剣が突き刺さる。

 

間違いなく即死。

 

だが、

 

「……ふんっ!」

 

バークスが気合いとともに力を込めると、双剣は抜けてしまった。

 

「…………」

 

ルイスは腹立たしそうな顔をして、黙って剣を引いて後退する。

 

バークスの手には、いつの間にか金属製の注射器が握られていた。

 

「本当はもう少し後に使うつもりだったが……仕方ない。これはな、魔術を破壊にしか利用できぬ、下らない犬でしかない貴様らの分際では理解できん、神秘の産物よ」

 

直後、異変は起こる。

 

初老にしては体格のよかったバークスの体が、メキメキと音を立てながら膨れ上がっていく。

 

同時に、傷も急速に塞がる。

 

「……再生した?」

 

ルイスが怪訝そうな顔でバークスを睨みつけ、他の面々は驚きを表情に表す。

 

「……お前達、先に行け」

 

そして、アルベルトがそう言った。

 

「珍しいな。お前らしくもない。魔術戦において、一対一は極力避けろ、敵より上の頭数であたれ……お前の言だぜ?」

「その通りだ。だが、状況が変わった」

 

アルベルトの声色はいつも通り、淡々としたものだった。

 

「敵側にエレノア=シャーレットがいる以上、グレンの固有魔術もルイスの固有魔術も割れている。それがわかっていてこうして姿を表す以上、勝算があるのだろう。加えて、あの薬品……何か異質だ。やつとの戦いが長引くのは必至だろう」

「だったら尚更……」

「今は時間が惜しい。こうしている間にも、王女があのような姿にされている可能性は捨てきれない」

「……っ!?」

「「…………」」

 

グレンは息を飲み、ルイスとジャンヌは黙ってバークスを睨む。

 

もしそんなことになっていたら、二人は……とくにルイスは、どんな手を使ってもバークスを命を奪いにかかるだろう。

 

「俺たちの命より、王女の命が最優先だ。恐らく、グレンとルイスならエレノア相手に有利に戦える。ジャンヌ=ダルクにより援護もある。ここにリィエルが姿を見せていない以上、この布陣が鉄壁だ。異論は認めん」

「援護任せた」

「了解した」

「承知しました」

 

アルベルトの言葉に応じ、三人が駆け出す。

 

「馬鹿がっ!良い的だ……!」

「《気高く・吼えよ炎獅子》!」

 

バークスが何かしようとした瞬間、アルベルトが黒魔【ブレイズ・バースト】を放つ。

 

「馬鹿な、この距離で【ブレイズ・バースト】だと!?貴様、味方を巻き込むつもりか!?」

 

しかし、三人は足を止めない。

 

速度を緩めもしない。

 

ジャンヌは少女を背負ったままだというのに、大した速度だ。

 

放たれた炎弾が地面に着弾し、巨大な爆発を引き起こす。

 

それは一瞬で燃え広がり、バークスと四人を飲み込む。

 

否、飲み込まれたのはバークスだけだ。

 

アルベルトによる呪文の即興改変で、バークスだけを攻撃するように操作されたのだった。

 

その後も速度を緩めず、三人は走り続ける。

 

「ジャンヌ、大丈夫か?疲れてないか?」

「これくらい問題ありません。それに、本当に、可哀想なくらい、軽いんです……この子」

「……目が覚めたら、たっぷり飯食わせてやらないとな」

「……はい」

 

ジャンヌは頷き、再び前を向く。

 

駆ける。

 

駆ける。

 

ひたすら駆ける。

 

長く長く、永遠に続くかのように思えた薄暗い道も、やがて終わりが近づいてきた。

 

「だらっしゃぁぁぁぁーーー!!!」

 

最後の扉を勢いよく、強引に蹴り開ける。

 

「……グレン?」

「先生……!」

「……なにッ!?」

 

その部屋の中にいた全員が、現れた青年に注目する。

 

「ルミア!無事かっ!?ルミア!」

「ルミアさん……!」

「ルイス君……!ジャンヌ……!」

 

さらに後ろから大事な友人達の姿が現れたのを見て、ルミアが感動の涙を流す。

 

「さぁ……バカ騒ぎも終いにしようぜ」

「返してもらうぞ。俺の大事な幼馴染をな……!」

 

ルイスとグレンはそれぞれの得物を用意し、部屋の中央にいる一人の青年を睨みつけた。




お読み頂きありがとうございます!

なんか、『睨む』多かったですね(^_^;

それでは、また来週お会いしましょう!

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