ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

迫り来るテストから全力で逃走中の雪希絵です

しかし、やはりやらない訳にはいかず……時間を超過してしまいました

申し訳ございません

それでは、ごゆっくりどうぞ


VS合成獣

「食らえ!」

 

ハサミを側転、跳躍などで回避しながら、グレンは腰に収められた銃を抜き放つ。

 

速攻のクイックドロー、回転する銃口。

 

躊躇うことなく引き金を引く。

 

爆ぜるマズルフラッシュ。

 

真っ直ぐに弾丸は合成獣(キメラ)に飛来し、

 

カンッ

 

間抜けな音を立てて弾かれた。

 

「ですよねー。これ、普通の弾だし」

「アホグレン!なに馬鹿やってんだ!こいつ使え!」

 

そう言いながら、ルイスは数発の弾丸が入った銃を放り投げる。

 

「おっと。マジか、ペネトレイターまで投影出来んのかよ……」

「話はあとだ、前だけ見ろ!」

 

風を切るような速度で滑走し、ルイスは両手の双剣を振るう。

 

ハサミのうち一本に切りかかり、殻を破って破壊する。

 

流れるように、片側のハサミを全て切り落とす。

 

もう片側では、ジャンヌが手に握った旗を長物のように振るう。

 

鋭い切れ味でハサミを次々穿ち、切り裂く。

 

「下がれ、二人とも!」

「はいよ!」

「承知しました!」

 

アルベルトの一声に、二人はバックステップ。

 

「《吼えよ炎獅子》!」

 

黒魔【ブレイズ・バースト】を一節で詠唱し、炎球が合成獣に向かって飛来する。

 

巨大な火柱が上がり、水路の天井まで焦がしていく。

 

数秒後には、巨大なカニの丸焼きが出来上がっていた。

 

「おー。この距離でジャンヌもルイスも巻き込まずか。さすがの魔術制御だな」

「ふん、お前こそ、銃の腕は錆びていないようで何よりだ」

 

そんなことを言い合う二人をよそに、ルイスは巨大カニを剣でツンツンとつつく。

 

「……食えんのかな、これ」

「やめましょう、ルイスさん。絶対お腹壊しますよ」

「いやまあ、たしかに不味そうだけど」

「そういう問題じゃないんですけど……」

 

苦笑いをするジャンヌ。

 

だが、内心は少し安心していた。

 

昔は、よく似たようなやり取りをしていたからだ。

 

もっとも、その時は汚れた川で見つけた蛙だったが。

 

今や、それが巨大なカニ型合成獣となっているわけだ。

 

(これが成長というものでしょうか)

 

残念ながらそれも違うが、とにかく四人は先に進むことにした。

 

カツカツと一定の靴音が響く。

 

しばらく進んだ時だった。

 

水路のあちこちで水柱が上がる。

 

カニだけでなく、ゼリー状の不定形生物や、半魚人のようなものまで、多種多様な合成獣が行く手を阻む。

 

「各個撃破だ。俺とアルベルトで右の二体。ルイスとジャンヌは左を頼む」

「……ふん」

「了解!」

「お任せを!」

 

グレンとアルベルトが開いた道に、姿勢を低くして滑走しながら通り抜ける。

 

「ジャンヌ、前頼む!」

「はいっ!」

 

言いながら、ルイスはブレーキをかけて両手に意識を集中する。

 

「『投影開始(トレースオン)』!」

 

現れたのは黒い鉄弓と、棒と見紛う程に細いレイピア。

 

「矢じゃ威力が足んないからな……!」

 

千切れそうな程に弦を引き、伸びてきたゼリー状合成獣の触手を回避しながら放つ。

 

矢を有に上回る轟音を鳴らし、レイピアがカニ型合成獣の目玉に突き刺さる。

 

「まだまだ!」

 

さらにレイピアを番えながら、ルイスは詠唱を開始する。

 

「《吼えよ炎獅子》!」

 

矢を放った直後、ルイスは黒弓を放り投げる。

 

左手に現れた炎の球を投げ込むと、カニ型合成獣はまたも丸焼きになる。

 

「《守り人の加護あれ》────!」

 

ジャンヌはそう呪文をくくると、【トライ・レジスト】を発動。

 

【ブレイズ・バースト】を無効化し、炎の中を表情一つ変えずにくぐり抜ける。

 

「はぁぁぁっ!」

 

跳躍し、ゼリー状合成獣に旗を突き刺す。

 

ぶよぶよとした手応えのない感覚が伝わってくるが、そんなものは無視する。

 

二回、三回、四回…………十回、二十回。

 

幾度も切り捨て、突き刺し続け、ゼリー状合成獣は程なくして消え去った。

 

「ゴリ押しだな……」

「物理攻撃が効きにくかったので……」

「まあ、たしかに。行こう、グレンとアルベルトさんが待ってる」

「はい!」

 

そうして、四人はペースを落とすことなく、奥へ奥へと進行していった。

 

───────────────────────

 

やがて、四人は開けた大部屋に出た。

 

そこに鎮座していたのは……。

 

「こ、こいつはちょっとヘヴィーかな?」

 

大部分が透明な鉱石で構成された、巨大な亀型合成獣だった。

 

「宝石獣か。過去、帝国の合成獣実験の最高傑作として、設計だけはされていたと聞いたが……」

「使われてるのは魔鉱石か。店で見たことがある。ってことは、だいたいの攻性呪文(アサルトスペル)は通用しないな」

「ああ。おまけに恐ろしく硬い」

「……厄介極まりないですね」

 

と、その時。

 

「ゥォォオオオオオオオ────ンッ!」

 

大亀が後ろ足で立ち上がり、倒れ込むように拳を打ち付けてくる。

 

四人はその場で散開。

 

アルベルトとグレンはバックステップし、ルイスとジャンヌが左右を囲む。

 

「やぁ────!」

「しっ────」

 

気合い一閃、互いの得物で渾身の一撃を叩き込む。

 

ビシッ────

 

僅かに、本当に僅かに、武器が突き刺さった。

 

「おおっ!すげぇ!」

「しかし、ほとんどダメージが通っていませんね……」

「一万回くらい打ち込めば、案外片足くらいなら……」

「それは途方もなさすぎます、ルイスさん!」

「だよな……」

 

距離を取りながら、ルイスはため息をついた。

 

「時間が有り余っているならそれでも構わんが、そうもいかん。グレン、やれ」

 

背後のグレンにそう言うアルベルト。

 

「いや、分かっちゃいるが、アレやると後が続かねぇ……」

「問題ない。やれ」

「……りょーかい」

 

ニヤリと不敵に笑い、グレンはポケットから宝石を取り出す。

 

「《我は神を斬獲せし者・────》」

 

左手で握りこんだそれに、右手のひらを叩きつけて音を鳴らす。

 

「《我は始原の祖と終を知る者・───》」

 

その間も、宝石獣は攻撃を続ける。

 

図体に似合わない俊敏さで、グレンに向かって突進する。

 

「《其は摂理の円環へと帰還せよ・────》」

「させるかよ────!」

 

ルイスは自分の周囲に無数の剣を投影し、宝石獣の背中に次々と着弾させる。

 

突き刺さりこそしないが、衝撃は相当。

 

目に見えて速度が減少する。

 

「《五素より成りしものは五素に・像と理を紡ぐ縁は乖離すべし・────》」

「────行きます!」

 

ジャンヌも負けてはいない。

 

若干ながらダメージが入るのは分かっているため、脚に狙いを絞って攻撃を繰り返す。

 

「《いざ森羅の万象は須らくここに散滅せよ・────》」

「《鋭く・吼えよ炎獅子》《吼えよ》《吼えよ》────!」

 

さらに、アルベルトが即興改変しながら魔術を繰り出す。

 

爆風と衝撃に、宝石獣は足を止めざるを得ない。

 

「寄るな、化け物。貴様はそこで大人しく、聖句でも唱えていろ」

 

ルイスとジャンヌがグレンの後ろに回り込んだ。

 

その直後、グレンの呪文が完成する。

 

「《────・遥かなる虚無の果てに》」

 

突き出されたグレンの左手を中心に、三つの円環が形を成す。

 

「……ふん」

 

アルベルトは軽く鼻を鳴らしながら、グレンの後ろに回り込んだ。

 

「ぶっ飛べ。有象無象」

 

そして、三つの円環の中央を貫くように、光の衝撃波が放たれる。

 

黒魔改【イクスティンクション・レイ】。

 

この世の森羅万象全てを、問答無用で塵と化す、究極の破壊魔術。

 

それは容易く宝石獣を飲み込み、その全てを砕いて見せた。




お読みいただきありがとうございました!

本当はやりたいことがあったので、もっと先まで書こうと思ったのですが……ちょっと文字数が多くなりそうなので切りました

原作四巻は色んな視点から書いている回なので、一つの視点に絞ると、結構短くなってしまうんですよね……

なので、一話に盛り込み過ぎると、この四巻の章だけ短くなってしまうという……

そこら辺に注意しながら、書き進めて行きたいと思います

それでは、また来週お会いしましょう!

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