ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

一番好きな炭酸ジュースはジンジャーエールの雪希絵です

辛口でも結構美味しく飲めます

それでは、ごゆっくりどうぞ!


待っていて欲しい

旅籠を出ると、生徒達が何人か集まって、不安気な表情でこちらを見ていた。

 

グレンとアルベルトは、どうやら先に行ったらしい。

 

「……ルイス。それに、ジャンヌも」

 

ウェンディが一歩前に出て、二人の名前を呼んだ。

 

彼女は、ルイスの全身にぐるぐると巻かれた包帯を見て、さらに不安気な表情をする。

 

「なぁ……ルイス。お前、どうしたんだその怪我」

 

カッシュが、硬い声で続ける。

 

「先生もさっきまで死にかけてたし、長髪の怖ぇ(こえぇ)人も、先生も説明してくんないし……。もう、わけがわかんねぇよ」

 

額に手を当て、大きく息を吐く。

 

他の生徒達も、似たような表情だ。

 

「……すまん、今は言えない」

 

ぽそりと、ルイスは呟くように答える。

 

「色んな……本当に色んな理由で、今は話せない。ただ、ルミアやリィエルが危ない……それしか言えない」

 

拳を強く、強く握り締め、ルイスは唇を噛み締めながらそう言う。

 

ジャンヌは、そんなルイスの拳に手を添える。

 

ルイスがジャンヌの顔を見ると、決意に満ちた表情をしていた。

 

『覚悟は出来ています』という声が、聞こえてきそうだった。

 

「……だから、行ってくる」

 

胸に手を当て、制服と包帯ごと強く握る。

 

「俺は……また守れなかった。俺が躊躇ったせいで……俺が……!」

「ルイスさん」

 

ジャンヌの手に力がこもる。

 

我に返り、ルイスは大きく息を吐いた。

 

「今度こそ、俺が……俺達がなんとかする。だから、待ってて欲しい。あいつらが帰ってきたら、いつも通りに迎えられるように」

 

沈黙。

 

「……じゃあな。いってくる」

「お願い致します」

 

ルイスは痛む身体を引きずりながら、ジャンヌはぺこりと一礼しながら、少し先にいるグレンとアルベルトの元へ急いだ。

 

「ルイス!」

 

不意に、背後から名前を呼ばれ、ルイスが振り返る。

 

「……ウェンディ?」

 

首を傾げるルイスに、ウェンディが続ける。

 

「……どうか、ご無事で」

「……おう、当たり前だ」

 

ニヤリと笑い、ルイスは再び踵を返して歩き始めた。

 

その姿は、先程のグレンによく似ていた。

 

「……用は済んだか」

「うん。待たせてごめん」

「ふん、構わん」

 

四人並んで、歩き始める。

 

「ジャンヌ、本当に来るつもりか?言っとくが、この先はとんでもなく危ないぞ?」

「もちろんです、先生。私だって……ルミアさんとリィエルさんが心配なんです」

「……本音は?」

「私がいないと絶対ルイスさんは無茶するので私も行きます」

「なぁ!?」

「ふっ……はっはっはっはっ!」

 

身も蓋もないジャンヌの言いように、グレンは大笑いする。

 

ルイスはといえば、思わぬジャンヌの本音に大きく肩を落としていた。

 

「だって実際そうじゃないですか。ルイスさんってば、あの時もこの時も……」

「わぁーわぁー!悪かった、悪かったから!俺が悪かったからやめてくれ!」

 

平謝りするルイスを見て、ジャンヌも少しだけ微笑んだ。

 

アルベルトも相変わらず無表情ではあるが、その横顔はほんの少しだけ、今の状況を……悪くないと思っているように見える。

 

「なんだよ、みんなして……ったく」

 

不満そうに、ルイスはブツブツと文句を言う。

 

「……まあ、それはそれとして……お前とこうして組むのは久しぶりだよな?アルベルト」

「ふん。俺はお前と組むなぞ、もう願い下げだったのだがな。お前と組むと常に厄介事ばかりで嫌になる」

 

遠慮のない口を叩きあう二人。

 

ルイスは懐かしそうに苦笑いし、ジャンヌは若干オロオロとしている。

 

やがて、四人は街の外れに辿り着いていた。

 

目の前には鬱蒼としげる、観光用に整備されている場所とは全く違う、人跡未踏の領域だ。

 

「……行こうか。頼りにしてるぜ、相棒」

「抜かせ、誰が相棒だ。寝言は寝て言え」

「ジャンヌ、頼りにしてるぜ」

「ええ、任せてください」

 

グレンとアルベルトが、二人は風のように駆け出す。

 

ルイスとジャンヌも、慌ててその後を追った。

 

アルベルトに道案内を任せ、サイネリア島中央部に向けて、樹海の中を疾走する。

 

「どうした?息が上がっているぞ、グレン」

「うっせぇ!こちとら病み上がりじゃボケ!」

 

グレンがほんの少しだけ遅れてはいるが、二人は惚れ惚れするような体捌きで、激しく起伏する樹海の木々の隙間を、ひらりひらりと身軽に走破していく。

 

「ルイスさん、大丈夫ですか?だいぶ、息を切らしているようですが……」

「……っ。ああ、なんとか。ちょっと傷口が痛むけどな……」

 

一方、ジャンヌとルイスも大したものだ。

 

現役と元軍所属の正式魔導師であるグレンとアルベルトに、少し距離は引き離されてはいるが、それでもよくついて行っている。

 

大きな木の根を飛び越え、枝をしゃがんで回避し、絡まる草を薙ぎ払う。

 

ジャンヌは山奥の村の中で暮らしていた為。

 

ルイスは日頃の訓練によって、この機動力を確保している。

 

「ぐっ……っ……」

 

痛む傷口に顔をしかめながら、そんなルイスをやはり不安気に見ながら、ルイスとジャンヌは二人の後を負い続けた。

 

───────────────────────

 

「はぁ……はぁ……」

「ふぅ……ふぅ……」

 

やや息を切らしながら、二人はようやくグレンとアルベルトに追いついた。

 

「よぉ、二人とも。大丈夫か?」

 

自分も死にかけた後だというのに、グレンは振り返ってそう言った。

 

アルベルトもそれに習って二人を一瞥すると、

 

「この湖の南西方面に、バークスの秘密研究所に繋がる地下水路の入り口がある筈だ。不自然な水の流れを辿れば容易見つかるだろう」

「へいへい、じゃ、野郎だけの……じゃなかったな。ジャンヌいるし。まあ、とりあえず海水浴と洒落こもうか」

「湖だがな」

 

そして、四人は黒魔【エア・スクリーン】の呪文を唱え、湖の中に潜って行った。

 

空気の膜によって呼吸が可能になり、水中でも問題なく行動出来る。

 

無事に用水路に辿り着き、四人は周囲を見渡す。

 

まるで迷路のように入り組んだその通路には、無数のヒカリゴケが群生していた。

 

「……ビンゴだな」

「ああ」

「白金魔導研究所とそっくりだしな」

 

さて、どうするのか。

 

それを相談しようとした矢先、

 

「……来る」

 

アルベルトがそう呟く。

 

直後、目の前の用水路から大量の水が吹き上げ、巨大な水柱を形成した。

 

「どぉわぁああああ────ッ!?な、なんだぁあああああ─────!?」

 

グレンは慌てて身構え、アルベルトは軽い身のこなしで後ろに飛び下がった。

 

現れたのは、巨大な蟹。

 

人の倍以上の背丈を持つ、左右で三対ものハサミを持つ、モンスター蟹だった。

 

「何この生物の進化過程構造をガン無視しちゃった、クリーチャー!?」

 

そんなクリーチャーを見据え、ルイスは、

 

「《体は剣で出来ている》─────ッ!」

 

【無限の剣製】を発動させ、愛用の双剣を呼び出した。

 

「………我が旗よ」

 

そして、ジャンヌの方はボソリとそう呟いた。

 

両手に光が現れ、それは棒型を形成したかと思うと……即座に固まる。

 

先端に刃のついた、一見すると槍のように見える長物。

 

(……旗、か?)

 

ジャンヌはそれをくるりと一回転させると、それこそ槍のように構えた。

 

いつの間にか、その腰には細身の剣まで収まっている。

 

しかし、それらにルイスが疑問を持つよりも早く、

 

「来るぞ!構えろ……!」

 

グレンによる、開戦の合図が響いた。




お読み頂きありがとうございました!

今回から戦闘ラッシュ!という事で、私も書くのが楽しみです

日常とはまた違った楽しさがありますからね!

それでは、また来週お会いしましょう!

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