ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

正月ボケが抜けていない雪希絵です

昼夜逆転生活の癖が抜けていません

そんなおとぼけ状態で書いたものでよろしければ、ごゆっくりどうぞ


第四巻
VSリィエル


「────クソッタレ……!」

 

またひび割れた双剣を放り捨て、再び投影しながら舌打ちする。

 

絶大な身体能力を誇るリィエルの一太刀は、人体くらいなら容易く両断する。

 

加えて、操る大剣は錬金術によって作られる最高峰の金属『ウーツ鋼』製。

 

一太刀で命が危ういその一撃を、ルイスは双剣で受け流し、防御する。

 

その度に、双剣はダメージを受けてひび割れていく。

 

(どんな威力だよ、ちくしょう……!)

 

ルイスの持つ双剣は、『無銘』から送られた『五つの武具』のうちの一つだ。

 

いくらルイスがまだ発展途上とはいえ、その能力は折り紙つきのはずだ。

 

それが、次から次へとひび割れ壊されていく。

 

舌打ちし、双剣を握り込む。

 

何よりも悔しいのは、自分の実力不足のせいで、無銘から託された武器が負けていること。

 

(けど、今は置いておく。今目の前にいるのは、あの帝国宮廷魔導師団。それも特務分室のメンバーだ。死ぬ気でやらなきゃ、即座に殺される……!)

 

「おぉぉぉぉぉぉ────!!」

 

雄叫びを上げながら、双剣を手にリィエルに飛びかかる。

 

リィエルはその場で仁王立ちしながら、表情の見えない顔でルイスを見つめる。

 

「しっ────」

 

短く気合いを吐き出し、ルイスは右手の剣を突き出す。

 

「いやぁぁぁぁぁぁ────ッッッ!」

 

リィエルは気合いとともに、それを受けようともせず横薙ぎに一閃。

 

(くそっ!完璧に読まれてやがる……!)

 

残る左手の剣では防ぎ切れない。

 

リィエルはそれを分かっているのか、何のためらいもなく全力で大剣を振るう。

 

ルイスは即座に右手を引き、双剣を噛み合わせて防ぐ。

 

「ぐぅ───!」

 

呻き声を上げながら、腕に力を込める。

 

先程から、ルイスは防戦一方だ。

 

高い双剣術を持っていても、能力の高い装備を持っていても、埋まらない差。

 

「くそっ……!くそっ…!」

 

悪態をつきながら、ルイスは迫るリィエルの大剣を目で追う。

 

片手の剣でギリギリ受け流し、もう片方、左手の剣をリィエルの腹部を狙って振るう。

 

「……邪魔!」

 

リィエルは受け流された大剣を一回転することで強引に引き戻し、ルイスの剣に叩きつける。

 

ルイスはそれを予期し、途中でその剣から手を離す。

 

その効果でダメージは受けずに済み、ルイスは即座に攻撃に転じる。

 

再び左手の剣を呼び出し、腰の捻りを加えて勢いよく振るう。

 

大剣は叩きつけられたばかりで、いくらなんでも引き戻せない。

 

だからリィエルは、

 

「……いやぁぁぁぁぁぁ────!」

 

アッパーの如く拳を振り上げ、双剣を叩きそらす。

 

「そう来ると思ったぜ!!」

 

言いながら、再び双剣を消して、次の武器を呼び出す。

 

現れたのは、エレノア戦でも使っていた赤塗りの槍。

 

俗に『剣が槍に勝つには、槍の使い手の3倍の技量がいる』と言われている。

 

それほどまで、剣との戦いでは槍が有利になる。

 

「せやぁ!」

 

突然の間合いの変化に対応しきれず、リィエルは大剣を盾がわりに構えて防御する。

 

特大の火花が飛び散り、リィエルをベランダ側に押し込む。

 

「システィ!下がってろ!」

 

背後のシスティーナにそう言うが、システィーナは硬直するばかりでなかなか動き出せない。

 

無理もない、彼女は戦いに慣れていない。

 

幼い頃から鍛錬を積み、家の仕入れの帰りに野党に襲われたことさえあるルイスとは違い、システィーナは恐怖に身体が震えてしまうのだ。

 

「……くっ…!」

 

そんなシスティーナに声をかけようとするも、体勢を立て直したリィエルが斬りかかってくる。

 

ルイスは両手で槍を握り、渾身の突きを繰り出す。

 

様々な武器を投影する【無限の剣製】の性質上、ルイスは一通りの武器を扱うことが出来る。

 

無銘から教わった双剣術と弓術はもちろん、セリカから剣術や槍術なども教わった。

 

それでも達人に通じるかは分からないが、リィエルの場合ならこれでも充分。

 

彼女の力任せの剣術相手なら、槍の性能さえ良ければ対応出来る。

 

(……本当に、すごいな。この槍は。無銘はどこでこんな槍を見たんだ……)

 

心の中で感嘆しながら、ルイスは大上段に振り下ろされた大剣を、柄から刃にかけてを大きく使い、受け流す。

 

くるりと一回転してそれを横腹に構え、腰を捻りながら打ち込む。

 

リィエルはそれをジャンプして回避。

 

さらに縦に一回転するような勢いで大剣を叩きつける。

 

正面から受けたらただでは済まない。

 

ルイスは再び受け流すことを選択。

 

衝撃に一瞬動けなくなるが、それは着地したばかりのリィエルも同義。

 

一瞬の静止。

 

そして、同時に攻撃を繰り出す。

 

下から上に切り払うような斬撃。

 

ルイスは真逆の方向から叩きつけることを選択。

 

尋常ではない量の火花。

 

お互いの武器が壊れないのが不思議で仕方ないレベルの衝撃。

 

リィエルはそれを必死で押し殺す。

 

だが、武技に利があるルイスは、それを利用する。

 

衝撃で跳ね上がった槍を片手で掴み、

 

「うらぁ!」

 

上からリィエルに向かって突き込む。

 

衝撃に引っ張られ、リィエルは避けられない状況。

 

だが、

 

「…………ぐっ……!」

 

その槍は、リィエルの目の前で止まった。

 

「……どうしたの?」

 

リィエルは、いつも通り無表情で、いつもと違う目で、ルイスを見つめていた。

 

決定的なダメージを与える最大のチャンス。

 

それを、敵の目の前でみすみす逃す。

 

「……どうしたの?刺してよ。出来るなら」

 

カタカタと、槍の先が震える。

 

「………くそっ!」

 

ルイスは槍を突き込む。

 

だが、そんな見え見えの攻撃に当たるリィエルではない。

 

すくい上げるように槍を跳ね飛ばし、

 

「……さよなら。ルイスの傍は、好きだった」

 

躊躇うことなく、大剣でルイスを切りつけた。

 

ゾリ────ッ

 

およそ人体から鳴るとは思えない音が、ルイスの体内で反響する。

 

「ルイス──────!!!」

 

システィーナの悲痛な叫びが、口の端から血を流すルイスの耳に届いた。

 

勢いは止まらず、ルイスはシスティーナの近くのベッド脇まで飛び、床に叩きつけられた。

 

床が猛烈な勢いで真紅に染まる。

 

「いや……いやよ……ルイスまで……!そんなぁ……!」

 

現実を直視できず、システィーナが口元を抑える。

 

リィエルはそんなシスティーナを最後に一瞥すると、ルミアを抱えてベランダから飛び降りた。

 

風になびく青い髪を視界に捉えたのを最後に、ルイスの意識は闇へと沈んだ。




お読み頂きありがとうございました!

って、また時間過ぎてる!?

バトルシーンは書いててたのしいので、ついつい熱中しすぎてしまいました……申し訳ございません

それでは、また来週お会いしましょう

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