正月ボケが抜けていない雪希絵です
昼夜逆転生活の癖が抜けていません
そんなおとぼけ状態で書いたものでよろしければ、ごゆっくりどうぞ
VSリィエル
「────クソッタレ……!」
またひび割れた双剣を放り捨て、再び投影しながら舌打ちする。
絶大な身体能力を誇るリィエルの一太刀は、人体くらいなら容易く両断する。
加えて、操る大剣は錬金術によって作られる最高峰の金属『ウーツ鋼』製。
一太刀で命が危ういその一撃を、ルイスは双剣で受け流し、防御する。
その度に、双剣はダメージを受けてひび割れていく。
(どんな威力だよ、ちくしょう……!)
ルイスの持つ双剣は、『無銘』から送られた『五つの武具』のうちの一つだ。
いくらルイスがまだ発展途上とはいえ、その能力は折り紙つきのはずだ。
それが、次から次へとひび割れ壊されていく。
舌打ちし、双剣を握り込む。
何よりも悔しいのは、自分の実力不足のせいで、無銘から託された武器が負けていること。
(けど、今は置いておく。今目の前にいるのは、あの帝国宮廷魔導師団。それも特務分室のメンバーだ。死ぬ気でやらなきゃ、即座に殺される……!)
「おぉぉぉぉぉぉ────!!」
雄叫びを上げながら、双剣を手にリィエルに飛びかかる。
リィエルはその場で仁王立ちしながら、表情の見えない顔でルイスを見つめる。
「しっ────」
短く気合いを吐き出し、ルイスは右手の剣を突き出す。
「いやぁぁぁぁぁぁ────ッッッ!」
リィエルは気合いとともに、それを受けようともせず横薙ぎに一閃。
(くそっ!完璧に読まれてやがる……!)
残る左手の剣では防ぎ切れない。
リィエルはそれを分かっているのか、何のためらいもなく全力で大剣を振るう。
ルイスは即座に右手を引き、双剣を噛み合わせて防ぐ。
「ぐぅ───!」
呻き声を上げながら、腕に力を込める。
先程から、ルイスは防戦一方だ。
高い双剣術を持っていても、能力の高い装備を持っていても、埋まらない差。
「くそっ……!くそっ…!」
悪態をつきながら、ルイスは迫るリィエルの大剣を目で追う。
片手の剣でギリギリ受け流し、もう片方、左手の剣をリィエルの腹部を狙って振るう。
「……邪魔!」
リィエルは受け流された大剣を一回転することで強引に引き戻し、ルイスの剣に叩きつける。
ルイスはそれを予期し、途中でその剣から手を離す。
その効果でダメージは受けずに済み、ルイスは即座に攻撃に転じる。
再び左手の剣を呼び出し、腰の捻りを加えて勢いよく振るう。
大剣は叩きつけられたばかりで、いくらなんでも引き戻せない。
だからリィエルは、
「……いやぁぁぁぁぁぁ────!」
アッパーの如く拳を振り上げ、双剣を叩きそらす。
「そう来ると思ったぜ!!」
言いながら、再び双剣を消して、次の武器を呼び出す。
現れたのは、エレノア戦でも使っていた赤塗りの槍。
俗に『剣が槍に勝つには、槍の使い手の3倍の技量がいる』と言われている。
それほどまで、剣との戦いでは槍が有利になる。
「せやぁ!」
突然の間合いの変化に対応しきれず、リィエルは大剣を盾がわりに構えて防御する。
特大の火花が飛び散り、リィエルをベランダ側に押し込む。
「システィ!下がってろ!」
背後のシスティーナにそう言うが、システィーナは硬直するばかりでなかなか動き出せない。
無理もない、彼女は戦いに慣れていない。
幼い頃から鍛錬を積み、家の仕入れの帰りに野党に襲われたことさえあるルイスとは違い、システィーナは恐怖に身体が震えてしまうのだ。
「……くっ…!」
そんなシスティーナに声をかけようとするも、体勢を立て直したリィエルが斬りかかってくる。
ルイスは両手で槍を握り、渾身の突きを繰り出す。
様々な武器を投影する【無限の剣製】の性質上、ルイスは一通りの武器を扱うことが出来る。
無銘から教わった双剣術と弓術はもちろん、セリカから剣術や槍術なども教わった。
それでも達人に通じるかは分からないが、リィエルの場合ならこれでも充分。
彼女の力任せの剣術相手なら、槍の性能さえ良ければ対応出来る。
(……本当に、すごいな。この槍は。無銘はどこでこんな槍を見たんだ……)
心の中で感嘆しながら、ルイスは大上段に振り下ろされた大剣を、柄から刃にかけてを大きく使い、受け流す。
くるりと一回転してそれを横腹に構え、腰を捻りながら打ち込む。
リィエルはそれをジャンプして回避。
さらに縦に一回転するような勢いで大剣を叩きつける。
正面から受けたらただでは済まない。
ルイスは再び受け流すことを選択。
衝撃に一瞬動けなくなるが、それは着地したばかりのリィエルも同義。
一瞬の静止。
そして、同時に攻撃を繰り出す。
下から上に切り払うような斬撃。
ルイスは真逆の方向から叩きつけることを選択。
尋常ではない量の火花。
お互いの武器が壊れないのが不思議で仕方ないレベルの衝撃。
リィエルはそれを必死で押し殺す。
だが、武技に利があるルイスは、それを利用する。
衝撃で跳ね上がった槍を片手で掴み、
「うらぁ!」
上からリィエルに向かって突き込む。
衝撃に引っ張られ、リィエルは避けられない状況。
だが、
「…………ぐっ……!」
その槍は、リィエルの目の前で止まった。
「……どうしたの?」
リィエルは、いつも通り無表情で、いつもと違う目で、ルイスを見つめていた。
決定的なダメージを与える最大のチャンス。
それを、敵の目の前でみすみす逃す。
「……どうしたの?刺してよ。出来るなら」
カタカタと、槍の先が震える。
「………くそっ!」
ルイスは槍を突き込む。
だが、そんな見え見えの攻撃に当たるリィエルではない。
すくい上げるように槍を跳ね飛ばし、
「……さよなら。ルイスの傍は、好きだった」
躊躇うことなく、大剣でルイスを切りつけた。
ゾリ────ッ
およそ人体から鳴るとは思えない音が、ルイスの体内で反響する。
「ルイス──────!!!」
システィーナの悲痛な叫びが、口の端から血を流すルイスの耳に届いた。
勢いは止まらず、ルイスはシスティーナの近くのベッド脇まで飛び、床に叩きつけられた。
床が猛烈な勢いで真紅に染まる。
「いや……いやよ……ルイスまで……!そんなぁ……!」
現実を直視できず、システィーナが口元を抑える。
リィエルはそんなシスティーナを最後に一瞥すると、ルミアを抱えてベランダから飛び降りた。
風になびく青い髪を視界に捉えたのを最後に、ルイスの意識は闇へと沈んだ。
お読み頂きありがとうございました!
って、また時間過ぎてる!?
バトルシーンは書いててたのしいので、ついつい熱中しすぎてしまいました……申し訳ございません
それでは、また来週お会いしましょう