ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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ちょっと遅くなってしまいましたが

あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願い致します!

雪希絵です!

いやー、2018年始まりましたね

本年も、気を引きしめて頑張っていきます

どうぞこれからもお付き合いください!

それでは、ごゆっくりどうぞ!


お前には渡さない

「『投影開始《トレースオン》』!」

 

ルイスがそう詠唱すると、赤塗りの槍が二本現れる。

 

それを両手に握り、縦横無尽に振り回す。

 

突くという動作には、どうしても両手を使わなければならないが、切り払うならなんとでもなる。

 

剣より圧倒的に広いリーチで、次々と死体たちを斬り裂いていく。

 

一方、アルベルトも凄まじい。

 

達人から見ると少々隙のある動きをするルイスの隙を埋めながら、さらに自分の周りの死体達も薙ぎ払う。

 

加えて、エレノアと魔術戦も繰り広げている。

 

「本当に……本当にお強いお方……!」

 

そんなアルベルトに隙など欠片もない。

 

アルベルトは、一般の魔術師……例えばグレンのような、魔道具の類は一切使わない。

 

ただただ、たしかな鍛錬に裏打ちされた魔力操作と魔術戦の技術、それで戦っているのみだ。

 

加えて、アルベルトはルイスと相性がいい。

 

ルイスは遠距離、中距離、近距離、全てに対応出来るが、やはり近距離寄りだ。

 

アルベルトも同様だが、どちらかと言えば遠距離からの援護に向いている。

 

この二人が合わされば、全ての距離感に対応した無敵のコンビになる。

 

やがて、ほとんどの死体が焼け焦げ、凍りつき、切り裂かれたころ。

 

「……本当にお強いですね」

 

悪夢でも見ているかのような気分で、エレノアは周囲の死体達を眺める。

 

驚くべきは、アルベルトどころかルイスまでエレノアに攻撃してきたことだ。

 

数はそう多くないが、ルイスにもそれが出来るだけの実力がある。

 

(この二人……本当に厄介ですわね……)

 

そう判断したエレノアが真っ先に取ったのは、相手の戦力を削ること。

 

「ですが、こんなことをなさっていてよろしいのですか?」

 

エレノアは上品に笑いながら、ルイスの方を見てそう言う。

 

「……どういう意味だ?」

 

構えは崩さず、ルイスがそう聞き返す。

 

「ええ、では、端的に申し上げましょう」

 

妖しく、艶やかに、いやらしく身体をくねらせながら、

 

「王女がどうなっていようと……構わないと?ということですわ」

 

ズバリ、そう言い放った。

 

ルイスは一瞬だけその真意を考え……直後に駆け出した。

 

「お前、ルミアに何かあったら、死んでも許さないからな……ッ!」

 

親の敵を見るような目でそう言い、ルイスは懐中時計を起動し、黒魔【フィジカル・ブースト】を使用して駆ける。

 

枝葉に頬や脚が切り裂かれるのも厭わずに、最短距離を駆け抜ける。

 

それを、エレノアは無表情に微笑みながら見送る。

 

「……ふん。戦力を削るために、エルミアナ王女のことを持ち出したのか」

「……半分、正解ですわ」

「なに?」

 

不審に思ったアルベルトは、片目で遠見の魔術を使用する。

 

「……ちっ」

「ようやくお気づきですか?」

 

アルベルトが見たのは、リィエルに剣で貫かれるグレンの姿。

 

そして、リィエルは何のためらいもなくグレンを海に放り捨てた。

 

リィエルの近くには、同じ青髪の青年が立っていた。

 

「《爆》!」

 

アルベルトの意識がそちらに逸れた瞬間、エレノアは最速最短を誇る呪文を詠唱し、即座にその場を離れた。

 

「……ちっ」

 

再び舌打ちし、アルベルトはグレンが落下した海の方へ駆け出していった。

 

───────────────────────

 

ルイスが宿に辿り着いた時には、すでに道は血に濡れていた。

 

それが誰によるものなのか、そもそも誰の血なのか。

 

嫌な想像ばかりが頭を駆け巡る。

 

「……クソッタレ!」

 

悪態をつきながら、ルイスは宿までの道を走る速度を上げる。

 

すでに肺と心臓は痛いほどに脈打っているが、そんなことを気にする余裕などなかった。

 

わざわざ中から入るのも馬鹿馬鹿しいと、ルイスはルミアの泊まる部屋の窓側を目指す。

 

どうか間に合ってくれ。

 

どうか自分の考えすぎであってくれ。

 

そんな願いも届かず。

 

「……チクショウ!!!」

 

部屋の窓は、木っ端微塵に叩き壊されていた。

 

その部屋の中から、二人分の話声が聞こえる。

 

「……まだ誰かいる」

 

ルイスは息を殺し、最大の注意を払って壁を駆け上がる。

 

ベランダから中を覗き込んだ瞬間、

 

「………!」

 

ルイスの目の前が真っ赤に染まった。

 

中にいたのは、血に濡れたリィエル。

 

腹部が血に染まり、倒れるルミア。

 

恐怖に顔を染め、ガタガタと震えるシスティーナ。

 

どんな状況なのか、目に見えて明らかだった。

 

「……リィエル……!てめぇぇぇ─────!」

 

双剣を呼び出し、リィエルに飛びかかる。

 

その声か、はたまたルイスが斬りかかってきたという事実自体か。

 

一瞬だけ驚いた顔をしたあと、リィエルはそのルイスの双剣を大剣で受けた。

 

「……なんで、なんでだ!どうしてルミアに手を出した!どうしてシスティに剣を向けてる……!それは、ルミアと誰の血だ!!!」

 

今までリィエルの見たことがないほど、怒りで染めあがった表情。

 

「……違う。私は、ルミアはまだ斬ってない。斬ったのは、グレンだけ」

「……だけ?……だけって、なんだ?」

 

ルイスの声が一トーン低くなる。

 

「……人を斬るのに、一人だけなんて言葉、使ってんじゃねえよ!」

 

リィエルの腹部に全力で蹴りを叩き込み、ルイスは飛び下がる。

 

投影開始(トレースオン)

 

ひび割れてしまった双剣を消し、もう一度呼び出す。

 

「……渡さない。今のお前だけは、許しておけない。この場で俺が、お前を止める────!」

「……やれるものなら、やってみろ!」

 

俊足で踏み込んでくるリィエルに、ルイスは全力で斬りかかった。




お読みいただきありがとうございました!

ちょっとだけ時間過ぎちゃいましたね(^_^;

申し訳ありません

さて、今回で第3巻編終了となります

話的には若干4巻入っちゃってますけどね(;゚∇゚)

次回からは、正式に第4巻編です

それでは、また来週お会いしましょう!

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