ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

スマホの画面が割れて泣きそうな雪希絵です

接触悪くて書きにくいです

時間過ぎて申し訳ありません、上記の事情があるとご理解ください

さて、現在行っている投票ですが、いよいよラスト一週間となりました

来週水曜日、19時に締切にしようと思っているので、その間でしたらドンドン投票してくださいね

それでは、ごゆっくりどうぞ!


夜道を君と

「あら……?」

 

三人を薙ぎ払った後は、極力攻撃を避けながら親衛隊の邪魔をし続けたルイス。

 

王室親衛隊相手に大立ち回りを披露する見知らぬ少女に、会場の全員は目が点になる。

 

唯一、無限の剣製を見た事のある、システィーナとウェンディは気づいているが。

 

そんな調子で、親衛隊の妨害を続けること十数分。

 

ようやく結界が解除された。

 

「ふぅ……やっと終わった……」

 

息をつき、緊張を解く。

 

途端に疲労が押し寄せ、その場にへなへなと座り込んでしまう。

 

その途中、

 

「お疲れ様、ルイス」

 

システィーナがルイスを支えた。

 

「……ありがと、システィ」

「全く、私にくらい言いなさいよ。黙って女の子になってるなんて、分かるはずないわよ」

「危ない……ことに……巻き込みたく……なかったから……」

 

肩で息をしながら、息も絶え絶えでそう言う。

 

相手は親衛隊、おまけに多対一である。

 

体力も精神力もギリギリ、むしろよくもったものである。

 

「ルイスは何年経っても、ルイスのままね」

 

ふふ、とシスティーナは笑いながら、ルイスはバツが悪そうな顔をしながら壇上を見る。

 

そこには、嬉しそうな表情を浮かべる、一組の親子がいた。

 

先程のまでの沈んだ顔でも、全てを諦めた顔でも、会いたい誰かに焦がれる顔でもない。

 

心からの、笑顔だった。

 

身体の至る所が痛み、肺も心臓も破裂しそうになるほど拍動しているが。

 

(それでも……頑張って良かった……)

 

そう思いながら、ルイスは口元に笑みを浮かべた。

 

─────────────────────

 

魔術競技祭は大きな混乱もなく終了した。

 

結界が解け、動揺渦巻く会場の全員に対し、女王アリシアは事情を説明した。

 

帝国政府に敵対するテロ組織の卑劣な罠にかかったこと。

 

そして、それを勇敢な魔術講師と学院生徒の活躍で無事解決したこと。

 

国難に関わることは濁し、目立つ部分を美化する。

 

一国を背負い、世界を相手にする女王の話術が、その場にいる全員を納得させた。

 

ゼーロスの投降によって、王室親衛隊の暴走も沈静化。

 

責任者であるゼーロスは何らかの罰を受ける必要があるらしいが、情状酌量の余地は充分にあるとされている。

 

グレンは功績を讃えられ、『銀鷹剣付三等勲章』が与えられた。

 

結界を守り、暴走していた親衛隊を足止めした少女も捜索されているが、結局闘技場からそんな人物は見つからなかった。

 

そして───

 

「それでは、魔術競技祭優勝を祝って!」

 

クラスを代表してシスティーナが乾杯の音頭をとる。

 

「「「「カンパーイ!!!」」」」

 

二組の生徒全員がグラスを掲げ、そう言う。

 

ちなみに、これで四回目の乾杯である。

 

「……何やってんだこいつら」

 

一人だけ素面のルイスは、机の上の酒を忌々しそうに見つめる。

 

リュ=サフィーレ。

 

サフィーレ地方の厳選された特級葡萄棚からとれる高級ワイン。

 

その味は上品で濃厚、かつ芳醇。

 

お高くとまった貴族達も絶賛するほどの最高峰の一品だ。

 

ようするに、高い。

 

滅法高い。

 

おそらく、誰かが葡萄ジュースと間違えて注文したその酒を、誰かが飲んだのだろう。

 

おまけにそれを頼み続けるという暴挙に出た。

 

ルイスの予想はそんなところだ。

 

どうせ酒の味なんかわからないだろう、と何本目かくらいに本物の葡萄ジュースとすり替えておいたが、結局雰囲気酔いしている。

 

「何この面倒な状況……」

 

生徒全員が妙にテンションが高い上に、いつもより砕けた態度になっている。

 

もはや、素の状態を保てているのはルイスただ一人になってしまった。

 

酒に弱いシスティーナも、既にベロベロである。

 

「はぁ……」

 

盛大にため息をつき、誰かが余らせたリュ=サフィーレを煽る。

 

ルイスは割と酒には強いのだ。

 

「……美味いな。頼む気にはならないが」

 

呟き、どんちゃん騒ぎのクラスメイト達を見て、再びため息をつく。

 

そんなことをしていると、店の扉がガチャりと開く。

 

そこにいたのは、色々な理由で遅れてやってきたグレンだった。

 

「あ!先生!」

「先に始めてまーす!」

 

生徒達が反応し、次々と労いの言葉をかけていく。

 

いつもと違うその様子を不振に思い、グレンが机の上を見て……戦慄する。

 

無数に転がる酒瓶が、あの馬鹿高いワインだと気がついたのだろう。

 

「ねえ、帰っていい?僕もう帰っていいかな?」

 

どうやら瓶全てがリュ=サフィーレだと思っているらしい。

 

誤解を解こうとルイスが立ち上がると、そのすぐ横を誰かが通り過ぎる。

 

驚いて立ち止まったルイスが見たのは、グレンに飛びかかるシスティーナ。

 

「先生〜ッ!」

「うおっ!?」

 

突然脇腹を襲った衝撃に、グレンは息を吐き出す。

 

「あははッ!やぁっと来たぁ……先生ぇ……うふふふふ……」

 

システィーナはこの中で一番酒気が入っている。

 

上目遣いの潤んだ瞳でグレンを見上げ、足腰にも力が入っていないのか、完全にグレンに体重を預けている。

 

「わらしぃ……今日ぉ……先生ぇのことぉ……見直しちゃいましたぁ……」

「……はぁ?」

「先生ぇってぇ……思った以上にぃ……わらし達のことぉよく見れれくれてぇ……なんかぁ……よくわかんないけどぉ……まぁたルミアのことをぉ……助けれくれらみたいでぇ……ほらぁ……先生ぇ……変身してたでしょぉ……?わたしぃ……、最初からぁ、わかっちゃってたんですよぉ……でもぉ……空気読んでぇ……気づかないふりしてぇ……偉い?」

「はーいはい、偉い偉い」

 

とりあえず適当に合わせてグレンがそう言う。

 

「うふ、うふふふふ!先生えらい!私かぁ、ルミアをぉ、娶る権利を上げるわぁ……」

「……はぁ?」

「ぶっ!!?」

 

システィーナの衝撃発言に、ルイスが口の中の飲み物を盛大に吹き出す。

 

「なるべくならぁ……そのぉ……私を選んれぇ……欲しいな……って、何言わせるのよぉ、もう!ばか!あははははははは!」

「心底うぜぇ……」

 

床に転がりながらも笑い続けるシスティーナ。

 

そして、グレンの服を掴んでよじ登り、強烈に抱きついた。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!折れる!折れる!」

「うりうりうりー!」

「何やってんだ!俺も俺も!」

「僕もー!」

 

何故か周りの生徒達も急に参戦し、グレンが埋もれていく。

 

「た、た、た、助けてくれ!ルイスぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

「……もうやだ、このクラス」

「あはは……」

 

半分本音でそう言いながら、ルイスはクラスメイト達を引き剥がしにかかった。

 

─────────────────────

 

飲み会がようやく終わり、ルイスはグレンにリュ=サフィーレのことを報告。

 

なんとか食費くらいは残ったことで平伏され、やけ酒をするグレンと別れる。

 

毛布を引き剥がし、ルイスはシスティーナを背負う。

 

「じゃあな、グレン」

「おう。夜道に気をつけろよ」

 

頷き、ルイスは店を出た。

 

心地よい夜風が吹き、淡く輝く月光が街を照らす。

 

背中に酔っ払いを抱えていなければ、お気に入りの場所で月でも眺めていたところだろう。

 

「ったく、変わらないのはシスティーナの方じゃねぇかよ……」

 

苦笑いしながら呟き、ルイスは夜道を歩き進める。

 

システィーナの家まで半ばまで来た時だ。

 

「う………ん……」

「起きたか、システィ」

 

僅かに身じろぎし、システィーナが目を覚ました。

 

「んぅ……?あはは、ルイスだぁ……」

「まだ酔ってるのかよ……」

 

流石のルイスもげんなりとする。

 

システィーナに酒を飲ませるのは、今後一切阻止しようと心に誓った。

 

しかし、予想に反してシスティーナは何もしてこない。

 

ただひたすら、弱々しい力でルイスの肩に手を添えているだけだ。

 

「どうした?システィ」

「……んーん」

 

ふふ、と笑いながら、システィーナはルイスに後ろから頬ずりする。

 

「や、やめろ、恥ずかしい」

「ねぇ……ルイスぅ……」

 

先程と似たような、やけに甘ったるい声で、

 

「私とぉ……ルミアのぉ……どっちが好きぃ……?」

 

システィーナはそう言った。

 

「…………」

 

沈黙を保っていると、システィーナはまた規則正しい寝息を立て始めた。

 

「………さあな?俺にもわかんないよ」

 

誰にも聞こえることの無い声は、月明かりに溶けて消えていった。




お読みいただきありがとうございました!

これにて第二巻編終了です

次回からはいよいよ第三巻編、そして新キャラクター登場となります

次回からも、よろしくお願い致します

それでは、また来週お会いしましょう!

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