ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

エアコンをつけていると、末端冷え性が辛い雪希絵です

養命酒でも飲みましょうかね……

さて、やって来ました更新日

第2巻編も、あと数話で終わりですね

それでは、ごゆっくりどうぞ!


シャッフル

「このお馬鹿!お前、一体、何考えてるんだ!?」

 

フェジテの路地裏、その更に奥まった場所。

 

リィエルの襲撃の理由が『現役時代の時にお預けになった勝負の決着をつけたかった』だったと聞き、グレンが叫んだ。

 

「むぅ……」

 

怒られたリィエルが、感情の起伏に乏しい顔をしょぼんとさせる。

 

「せ、先生……その方達は……」

 

ルミアは少し離れた場所で、不安と戸惑いの表情を向けている。

 

よほど不安なのか、ルイスの袖をちょこんと握っている。

 

「あー、こいつら俺の帝国軍時代の同僚だ。信頼できる連中だから安心……できるはずねーよな、さっきの光景見た跡じゃな……」

「俺は大したことないから大丈夫だって」

「そうね、街中でいきなり軍用の攻性呪文(アサルト・スペル)を撃つなんて。うかつよ、アルベルト。どうやらあなた、その子に怖がられ───」

「「オ、マ、エだよ!お前ッ!」」

 

グレンはリィエルの頭を両手の拳で挟み込み、グリグリと動かす。

 

ルイスは盛大にため息をついた。

 

「痛い、痛い」

「……ったく、お前はちっとも変わらんな……はあ……」

「……話の続き、いいか?状況はとても深刻なんだがな」

 

アルベルトのどこか冷ややかな態度に緊張しながら、ルイスとグレンは頷いた。

 

話をまとめると、ルミアを狙う理由は不明、貴賓席のセリカが動かない理由も不明。

 

加えて、女王陛下に接触しようにも、王室親衛隊が女王陛下の周りをぐるっと囲んでいるらしい。

 

どうしたものかと、ルイスとグレンとアルベルトが考え込んでいると。

 

「もういい。考えても仕方ないことがある」

 

リィエルが唐突にそう言った。

 

「……いや、お前はもう少し考えような?」

「だから、わたしは状況を打破する作戦を考えた。グレンとルイスがいるなら、もう少し高度な作戦が可能」

「ほう?言ってみろ」

 

グレンが促すと、リィエルがドヤ顔で作戦を話し始める。

 

「まず、わたしが敵に正面から突っ込む。次にグレンが敵に正面から突っ込む。次にルイスが敵に正面から突っ込む。最後にアルベルトが敵に正面から突っ込めばいい。……どう?」

「お前はいい加減、その脳筋思考をどうにかしろっての!?」

「痛い」

 

再び頭をグリグリされ、リィエルが無表情にそう言う。

 

「お前がいなくなった後の俺の苦労、少しは理解したか?お前が何も言わずに俺達の元から去った理由、今は聞かん。帰って来い、とも言わん。だが……いつか話せ。それがお前の通すべき筋だ」

「……ああ」

「そして、いつかわたしとの決着をつけること。それがあなたの通すべき筋」

「嫌だよ!?」

 

アルベルトの方には神妙に頷いたが、リィエルの方は全力で否定する。

 

「っていうか、リィエル。なんでそんなにグレンと決闘したがるんだ?」

「魔術師同士の決闘では、勝った方が要求を一つ通せると聞いた」

「それで?」

「グレンに戻って来て、欲しかった……」

 

最後は消え入りそうな呟き、リィエルの瞳に憂いの感情が浮かぶ。

 

「ちっ……それで俺が死んだら元も子もないだろうが」

「グレンがあれくらいの攻撃で死ぬわけない」

「お前なぁ……」

 

そんなグレンとリィエルの様子を見守っていたルミアが、くすりと笑った。

 

「アルベルトさんに、リィエルさん……でしたっけ?ふふ、良い方達なんですね?」

「はぁ?良い奴?こいつらが?ルイスなら認めるが。冗談……」

 

もはや、グレンはため息しかでない。

 

「まあ、いい。とにかく女王陛下に直接面会すれば、この状況を打破できる」

「その根拠はなんだ?グレン」

「さあな?セリカがそうしろって言ったんだ。知ってるだろ?元帝国宮廷魔導師団、執行者ナンバー21『世界』のセリカ・アルフォネアは、ケチで意地悪だが、意味のないことを言うやつじゃない。どの道このままじゃ物量差でジリ貧、それに賭ける」

「信じていいのか?」

「少なくとも、俺とグレンは信じているよ」

「わかった。お前達がそう言うなら、俺も信じよう」

 

アルベルトが静かに目を閉じて頷いた。

 

「お前達三人を女王陛下の前に立たせるときて……俺達はどう動けばいい?」

「そうだな───」

 

グレンが少し考え込んで、アルベルトとリィエルにとある提案をした。

 

─────────────────────

 

「遅いなぁ」

 

歓声渦巻く闘技場。

 

その控え席にて、システィーナは不安そうに呟いた。

 

グレンがルミアを探しに出てから、かなり時間が経っている。

 

ルイスの姿も見えず、システィーナは心配していた。

 

先程から貴賓席の方も騒がしいし、グレンのいなくなってしまった二組の士気も落ちている。

 

やっぱり駄目か、いや俺達にしてはよくやった、そんな弛緩した空気になっているのだ。

 

「本当にどこに行ったのかしら、あの三人……まさか、ルミアに邪なことをしてるんじゃないでしょうね……。いや、ルイスに限ってそれはなさそうだけど……」

 

システィーナが理由のわからない焦燥に駆られていると、背後に覚えのある気配を感じた。

 

「やっと帰って来たの!?遅いわよ、先生……あ、あれ?」

 

つい、グレンとルミアかと思ったが、そこにいたのは見知らぬ男女だった。

 

長髪の、鋭い目つきをした青年。

 

帝国では珍しい青髪、感情の抜け落ちたような物静かな少女。

 

「お前達が二組の連中だな?」

「そ、そうですけど……あなた達は一体?」

「俺はグレン=レーダスの昔の友人、アルベルト。同じくこの女はリィエルだ」

「…………」

 

システィーナの問いに、青年の方が答え、少女が軽く頭を下げる。

 

挨拶のつもりらしい。

 

「今日は旧交を温めようとグレンの奴に学院に招致されてな。この通り、学院の正式な許可証もある」

 

そう言い、アルベルトが懐から魔術符を取り出した。

 

「だが、奴は今、突然の用事に少々取り込んでいるそうだ」

 

突然の来訪者に、ざわざわと騒ぎ出す生徒達。

 

「……で、だ。唐突なことで戸惑うと思うが、あの男は今しばらく手が離せないらしい。ゆえに俺はこのクラスのことをグレンに頼まれた。今から俺が奴の代わりにこのクラスの指揮を執る。そして───」

 

そんな面々の様子を、黒髪で空色の瞳をした美少女が、腕を組みながら微笑し、離れた位置から眺めていた。




お読みいただきありがとうございました!

次の短編は、『赤い弓兵』にしようと考えています

書き上がり次第投稿しますので、今度見かけましたら、読んでくださると嬉しいです

それでは、また来週お会いしましょう!

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