最近『終末何してますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』を一気見して号泣した雪希絵です
あれはもう……泣きます、号泣です
まだ見ていない方がいらっしゃったら、是非見てみてくださいね
さて、やって参りました更新日
特別動きがあるわけではありませんが、楽しんでいただけると幸いです
ごゆっくりどうぞ!
後日、グレン率いる二組の生徒達は、早速魔術競技祭の練習を始めた。
アルザーノ帝国魔術学院では、競技祭の一週間前から練習期間が設けられている。
細かく言えば、全ての授業が一日三コマになり、本来なら四時間目になる時間を、担任の講師の監督の下で練習に当てるというものだ。
放課後の中庭では、たくさんの生徒が様々な魔術の練習をしていた。
呪文を唱え、空を飛ぼうとする生徒。
念動系の魔術で、遠くの物を動かそうとしている生徒。
ルイスは、そんなクラスメイト達の様子を、木に背中を預けて座り込みながら眺めていた。
「……やる事ないなぁ」
軽く息を吐きながら、誰に言うとでもなく呟く。
ルイスの参加する競技『読み取り』は、当日までほとんどやる事がない。
競技内容は、特殊な宝箱に手を触れ、黒魔【ファンクション・アナライズ】、魔術機能の解析の魔術で読み取る。
魔術によって複雑に隠蔽された宝箱の解錠方法を見つけ出し、その通りの行動を取って開く。
宝箱は一つ一つ開け方が違うため、他の選手の真似をしても意味は無い。
毎年、多くの参加者が挫折するほどの難易度の競技だ。
しかし、宝箱は学院が厳重に管理し、少しでも怪しい行動を取れば当日は失格。
それどころか減点までされるため、期間中は保管庫に近づく者すらいない。
そのため、現物を用意することは不可能に近く、練習のしようがない。
「まあ……そもそも練習する必要があるかと言われれば黙るしかないわけだが」
言いながら、ルイスは苦笑いする。
所以は、ルイスの
固有魔術【無限の剣製】の真髄は、対象となる武器を解析、理解することにある。
そうすることで、その武器の全てを記憶し、魔術で投影することができるようになる。
となれば、解析の魔術が得意なのは必然だった。
武器ではないものとなると、多少の精度と速度の低下はあるが、それでもその実力は群を抜いて高い。
だからこそ、ルイスはこの競技を希望したのだ。
「暇だ」
とはいえ、暇なのはどうしようもない。
去年は多くの競技で使い回されていたため、目も回るような忙しさだったが、今年はグレンのおかけでそれもない。
しかし、それは裏を返せば暇を持て余すということだ。
「……寝るか」
欠伸をし、薬の調合であまり寝ていないことを思い出す。
幸い天気はよく、絶好の昼寝日和だ。
そうして、木の表面を探りながら、楽な場所を探している時だった。
「ルイス君」
頭上から心地よい声で名前を呼ばれた。
見上げると、そこに居たのは金髪の美少女。
静かな風に揺れる髪を抑えながらルイスを見下ろしている、ルミアだった。
「ん、ルミアか。どうした?」
「暇になっちゃったから、少し座ってようと思って。隣、いいかな?」
「おう、もちろん」
こくこく、と頷きながら答えると、ルミアは微笑みながらルイスの隣に腰掛ける。
「さっきまでシスティと一緒に、魔術式の調整してたよな。もう終わったのか?」
「うーん。正しくは、私の手の出しようのないところまで来たっていう感じかな」
「なるほどね。ま、システィに任せておけば大丈夫だろ。人任せこの上ないけど」
「ふふ、そうだね」
口元に手を添えて、笑いながらそう言うルミア。
何気ない仕草でも、ルミアには品がある。
(やっぱり……王家の血筋だもんな……)
つい最近に起きた、学院テロ事件。
表沙汰にはなっていないが、あの事件の首謀者の狙いは、ルミアだった。
グレンとシスティーナはその時初めて知った事だが、ルミアは現在のアルザーノ帝国女王の娘であり、正真正銘の王女なのだ。
しかし、三年前にルミアが『感応増幅能力者』であることが判明。
アルザーノ帝国において、王家は絶対的な信仰の対象である。
その王家から、『悪魔の生まれ変わり』とすら言われる異能者が生まれたという事実が公になれば、どうなるかは火を見るより明らかだ。
という事実を、ルイスは随分前にセリカから聞いていた。
(あれはセリカ姉が悪いけどな)
ある日のこと、ルイスはいつも通りセリカの教授室に行こうとした。
部屋の前につくと、普段は締め切られている筈の扉が、微妙に開いているのに気がついた。
セリカは重要な話をする時は、大抵『範囲結界』を使って周囲に聞こえないようにする。
だが、部屋の中を範囲結界で指定する時に扉を締めていないと、扉の周囲は結界が影響しなくなる。
よって、そこに立てば会話は丸聞こえである。
その後は、学院長とセリカに掴みかからんばかりの勢いでまくし立て、ルミアの真実を聞き出したのだ。
(まあ、なんにも変わらなかったけどな)
元の出生が何であろうとも、異能者であうとも、ルイスにとってルミアは大事な幼なじみである。
わざわざ距離を取ったり、気を使ったりする必要などないし、他の誰にも代えられない大事な人だ。
「みんな頑張ってるね。私も頑張らないと」
「……そうだな。俺同様、練習のしようなんかないけど」
「あはは、たしかにそうだね」
穏やかな会話をしながら、ルイスは改めて目の前の少女を絶対に守り抜くことを誓った。
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「ふわぁ……」
しばらくルミアと話し続けていると、ルイスが不意に大きな欠伸をした。
「ルイス君、眠いの?」
「んー、まあな。最近寝不足だったからな」
「無理は禁物だよ?本当は良くないけど、今のうちに少し眠ったらどうかな?」
「そうだなぁ。そうするか」
そうと決まればとばかりに、再び木の表面を探っていると、ルミアがもそもそと動き出した。
座り方を横座りに変え、太ももをポンポンと叩く。
「あの……良かったら、どうぞ」
「……………………………………ん?」
完全に停止するルイス。
意味が理解出来ず、パチパチとひたすら瞬きを繰り返す。
「……………………………………ん?」
「えっと……木にもたれたままだと、首痛めたりしちゃうからと思って……どうかな?」
ほんのり頬を染め、ルミアは恥ずかしそうに微笑む。
一方、ルイスの内心では凄まじい論争が起こっていた。
(いや待て、落ち着け。落ち着つくんだ俺よ。そして落ち着くんだ俺。わかる、ルミアが言いたいことはわかる。ルミアが俗に言う膝枕というやつにあまり抵抗がないのも知っている。だが待て、いいのか本当に。ここは学院のど真ん中だぞ?いいのか、本当にいいのか?いや、ここはルミアのためにも慎重に……)
「あ……ひょっとして、迷惑だった、かな?」
「いやそんなことありません失礼します」
悲しそうにそう言うルミアに、先程の葛藤など忘却の彼方に送り、ルイスは早口で答える。
覚悟を決め、おずおずと芝生の上に寝そべり、慎重にルミアの太ももの上に頭を乗せる。
「ど、どうかな?」
「……びっくりするくらい快適。もう死んでもいい」
「お、大袈裟だなぁ……」
お互い顔を赤くしながら、至近距離で見つめ合う。
膝枕をしているのだから当然だが、どうやら二人ともそれを失念していたらしい。
「じゃ、じゃあ……気が済むまで眠ってていいからね」
「お、お、おう……ありがと」
しかし、落ち着くわけが無いのも事実だ。
健康的で均整のとれたプロポーション故か、ルミアの太ももは程よい弾力に富んでいる。
それが後頭部全体を包むように当たっている上に、上を見ればルミアの端正な顔が目の前にある。
これで落ち着いていられる方がおかしい。
(やばい、眠気吹っ飛びそう……)
だが、せっかく膝枕までしてもらっておいて、ずっと目を開けているわけにもいかない。
形だけでも寝ていようと、ルイスは瞼を閉じる。
(ぬあぁぁぁ……!感触がより鮮明にぃぃぃぃ……!)
そんな苦悩と幸せの狭間に揺られ、ルイスは結局ほとんど眠ることなど出来ないのだった。
お読みいただきありがとうございました!
いいですよね、膝枕
私はいつも何故かする側なので、こういうのは結構憧れます
それでは、また来週お会いしましょう!