ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

最近ハウルの動く城が見たい雪希絵です

時間がないので見れませんけれども

それでは、ごゆっくりどうぞ!

※投稿方法を間違えてしまい、番外編に投稿されていました。早い時間から見てくださった方々にご迷惑をおかけしてしまいました。大変申し訳ございません


グレン絶体絶命

「────よし、大体わかった」

 

グレンが顔を上げる。

 

競技祭の参加メンバーを決定したようだ。

 

「心して聞けよ、お前ら。まず一番配点が高い『決闘戦』───これは白猫、ギイブル、そして……カッシュ、お前ら三人が出ろ」

 

クラスの全員が首を傾げる。

 

魔術競技祭の『決闘戦』は、あらゆる競技の中でも花形といえる、最も注目を集める競技だ。

 

ならば、クラスの中でも最高戦力である、成績最上位の三人を出場させるのが普通だ。

 

となれば、成績順で選ぶなら、システィーナ、ギイブルの次に来るのは、三位のウェンディだ。

 

しかし、実際に選ばれたのは、成績の劣るカッシュだ。

 

指名されたカッシュ自身も困惑している。

 

グレンはそんなクラス中に渦巻く困惑を完全にスルーし、さらに続ける。

 

「えーと、次……『暗号早解き』。これはウェンディ一択だな。『飛行競走』……ロッドとカイが適任だろ。『精神防御』……ああ、こりゃルミア以外にありえんわ。っと、なんだ、『読み取り』はルイスに決まってんのか。じゃあ、余裕だな。えーと、それから『探知&解錠競走』は……」

 

次々と発表されるメンバー。

 

それは、生徒達の持っていた競技祭の常識を根本から変えるものだった。

 

全ての競技種目において、使い回されている生徒が一人もいないのだ。

 

配点の高い種目だろうが、成績上位の生徒を差し置いて、成績の高くない生徒を当てている。

 

つまり、グレンはクラス全員を何らかの種目に参加させようとしているのだ。

 

全力で勝ちに行くのではなかったのか?

 

遊びはなしじゃなかったのか?

 

グレンの意図が読めず、クラス一同困惑していると。

 

「───で、最後、『変身』はリンに頼むか。よし、これで出場枠が全部埋まったな。何か質問は?」

 

メンバー発表が終了した。

 

早速質問を受け付けると、ウェンディが言葉荒々しく立ち上がる。

 

(わたくし)は納得いたしませんわっ!どうして私が『決闘戦』の選別から漏れているんですの!?私の方がカッシュさんより成績がよろしくってよ!?」

「あー、それなんだがな……」

 

すると、グレンは少し言い辛そうにこめかみを掻く。

 

「お前、確かに呪文の数も魔術知識も魔力容量(キャパシティ)もスゲェけど、ちょっとどん臭ェところあるからなー。突発的な事故に弱ぇし、たまに呪文噛むし」

「な────ッ!?」

「だから、使える呪文は少ねーが、運動能力と状況判断のいいカッシュの方が、『決闘戦』に適任だと判断した。気を悪くしたんなら謝る。その代わり『暗号早解き』、これはお前の独壇場だろ?お前の【リード・ランゲージ】の腕前は、このクラスの中じゃ文句なしのピカイチだしな。ここは任せた。ぜひ点数稼いでくれ」

「ま、まぁ……そういうことでしたら……言い方が癪に障りますけど……」

 

微妙な表情をしながらも、一応納得は出来たのか、すごすごと席に座る。

 

他にも、自分がどうしてその種目に選ばれたのかわからない生徒が、次々に手を上げる。

 

グレンはその全てに、的確な答えを出す。

 

それは、普段から生徒のことをよく見て、尚且つ一人一人について詳しく理解しているからこそ出来ることだった。

 

適当に過ごしているように見えて、実はちゃんと生徒達のことを見ていたのだ。

 

システィーナは黒板のことを眺め、ルミアとルイスが書いた名前の羅列を見て、それを感じ取った。

 

(先生って、本っ当にダメ人間だけど……たまに、こういうとこあるからなぁ……)

 

生徒の疑問に次々と答えていくグレンの姿を、システィーナは微笑ましく見つめていた。

 

しばらくして、全ての質問の答えたグレンは、

 

「───さて、他に質問は?」

 

クラス全体を見回して言う。

 

もはや、誰もグレンの編成にケチをつけるものはいない。

 

「じゃ、これで決まりってことでいいか?」

 

(うーわ……あれ絶対なんか企んでる顔だわ)

 

長年の付き合いであるルイスにはわかる。

 

見た目上は普段通り気だるげな顔をしているが、あれは何か裏がある顔だと。

 

「……ま、大方特別賞与狙いってとこか。そういや、最近金ないとか言ってたし」

 

つい最近、セリカの屋敷に行った時のこと。

 

リビングに入った瞬間、セリカに対して土下座しているグレンがいた。

 

安過ぎるグレンの土下座に呆れながら話を聞いていると、どうやらギャンブルでスったらしい。

 

そのせいで、食費が払えなくなった。

 

というわけで、セリカが食事を用意してくれなくなり、常に空腹状態だと。

 

「アホすぎる」

 

そんなことを呟いていると、一人の生徒が席を立った。

 

「やれやれ……先生、いい加減にしてくれませんかね?」

 

もちろん、こんなことを言うやつは一人しかいない。

 

ギイブルである。

 

「何が全力で勝ちに行く、ですか。そんな編成で勝てるわけないじゃないですか」

「む……?」

 

これ以上に勝てる編成等、グレンには思いつかない。

 

そんなものがあるなら、即座にそちらに変える。

 

グレンにとっては、餓死の瀬戸際なのだから。

 

「ほう?ギイブル。ということはお前、俺が考えた以上に勝てる編成ができるのか?よし、言ってみてくれ」

「……あの、先生、本気でそれ言ってるんですか?」

 

吐き捨てるようにそう言い、ギイブルは続ける。

 

「そんなの決まってるじゃないですか!成績上位者だけで全種目を固めるんですよ!それが毎年の恒例で、他の全クラスがやっていることじゃないですか!」

「…………………………え?」

 

グレンの動きが止まる。

 

(ギイブルのやつ……余計なことを……)

 

せっかくこれから面白くなりそうだったのに、とルイスは不貞腐れる。

 

こうなったら、グレンは間違いなく編成を変える。

 

システィーナやギイブル、ウェンディ等はもちろん、ルイスも容赦なく使い回されるだろう。

 

「うむ……そうだな、そういうことなら……」

 

案の定、グレンがそれを肯定しようとした時。

 

「何を言ってるの、ギイブル!せっかく先生が考えてくれた編成にケチつける気!?」

 

ギイブルに、システィーナが真っ向から反抗した。

 

(ちょ───おま、何、ギイブル君に反論しちゃってるの────ッ!?)

 

それに対して、グレンは焦りに焦る。

 

そんなグレンの心情など露ほども知らず、システィーナはクラスメイトに向き直る。

 

「皆、見て!先生の考えてくれたこの編成を!皆の得て不得手をきちんと考えて、皆が活躍できるようにしてくれているのよ!?」

 

(ちょ……お前ら……説得されんな……頼むから……)

 

「先生がここまで考えてくれたのに、皆、まだ尻込みするの!?女王陛下の前で無様を晒したくないとか、そんな情けない理由で参加しないの!?それこそ無様じゃない!陛下に顔向け出来ないじゃない!」

 

(無様でも顔向け出来なくてもいいから、余計なこと言わんといて頼むから……)

 

「大体成績上位者だけに競わせての勝利なんて、なんの意味があるの?先生は全力で勝ちに行く、俺がこのクラスを優勝に導いてやるって言ってくれたわ!それは、皆でやるからこそ意味があるのよ!」

 

そして、システィーナはグレンに振り返って言った。

 

「ですよね!?先生!」

「お、おう……」

 

初めて向けられた険しさの取れた、可愛らしい笑顔に、グレンは指立てて肯定する。

 

ここで否定したら、ただの極悪人である。

 

熱く呼びかけるシスティーナに、クラス全員が頷きながら賛成する。

 

後に引けなくなったグレンは、ギイブルに最後の望みを託すが、あえなく撃沈。

 

かくして、傍から見れば勝ちの目の薄い編成に、全て決定したのであった。




今回は説明が多いですね

次からは見どころを作っていきたいと思います

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