迫る提出物から絶賛逃げ出し中の雪希絵です
更新日過ぎて本当に申し訳ありませんでした!
更新日の間に投稿したかったのですが、溜まった疲れに押し勝てず……寝落ちしてしまいました
本当にすみませんでした
それでは、ごゆっくりどうぞ!
「─────というわけだ」
「OK、理解した。まとめると、敵の狙いはルミアで、その敵をぶっ殺せってわけだな」
「脳筋かっ!?」
グレンの話を要約すると、敵はまず何らかの方法で学院に潜入。
そして、学院の結界を弄り、『札が無ければ侵入不可能、中から外には出られない』という設定に書き換える。
さらに、学校の転送方陣の設定も変え、転送方陣を壊すことなく無力化した上で、脱出手段として利用する。
グレンとセリカの見立てでは、もうすぐその方陣の書き換えが終わり、敵は逃げ出すらしい。
そしてそれを、ルイスは極限まで簡略化して解釈したらしい。
「いい加減イライラしてるんだよ。勝手に学院に侵入して、クラスメイトと幼なじみに手出されたんだ。少なくとも一発殴らないと気がすまない」
「……そうか。なら、一発殴りにいかないとな」
「ああ」
そうして二人は並んで走り続ける。
転送方陣があるのは、学院内にある塔の内部。
そのため、二人は校舎を出て外に向かう。
ようやく、その白亜の塔が見えてきたころ、グレンの予想は確信へと変わった。
塔を守るように、無数の石で出来たゴーレムが徘徊していたのだ。
普段はバラバラの石片として、学院内の風景の一部になっているが、有事の際は積み重なってゴーレムとなり、ガーディアンになる。
そういう単純な命令しか与えられていないゴーレムが、塔を守るように配置されているということは。
「よっしゃ、ビンゴ!けど、最後の最後できっついなぁ……」
「勘弁してくれよ……」
泣きそうな顔になるグレンと、ため息をつきながら額に手を当てるルイス。
その後、軽く目配せし、
「「《紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吠え狂え》────!」」
同時に詠唱。
黒魔【ブレイズ・バースト】。
グレンとルイスの左手に、赤い火球が現れ、周囲に熱をばら撒く。
それをゴーレム達の中心に、全力で投げ込む。
高速で弧を描き、着弾。
爆音と共に爆裂し、強烈な炎と熱、光が辺りを包み込む。
直撃を受けたゴーレムは爆散するが……。
「だあぁぁぁぁ!こいつら硬ぇ!重ぇ!面倒臭せぇぇぇぇぇ!!」
その周囲のゴーレムは爆破を受けても体勢を乱すことすらない。
「おいおい、どうすんだよ!?なぁ、どうすんだよ、グレン!?そ、そうだ、【ブレイズ・バースト】がダメなら【ライトニング・ピアス】でまとめて貫通……って、あんな小さい穴開けてどうすんだよ、俺の馬鹿ぁぁぁ!こうなったら、俺の必殺【イクスティンクション・レイ】で……って、もう触媒がありましぇーん!魔力もありましぇーん!もう、どうせいちゅーんじゃー!」
グレンが一人絶望し、叫んでいるときだった。
ルイスがその肩を叩き、庇うように前に出たのだ。
「おいおい、ルイス?」
「ここは俺が食い止める。俺の代わりに、敵の顔面一発殴ってこい」
実に合理的な判断だった。
まず、二人の魔力には大きな差がある。
グレンは【イクスティンクション・レイ】と【ディスペル・フォース】という消費魔力の大きな魔術を二連続で行ったのだ。
ルイスも余っているわけではないが、それでもグレンよりは多い。
そして、ここにいるゴーレムの数は目に映るだけでも相当数に到達する。
ここでグレンの取れる手段は限られる。
【ブレイズ・バースト】を使えば破壊できることは確認したが、そんな消費魔力の大きな魔術を何度も撃ったら、間違いなく早々に枯渇する。
一方、ルイスなら多少は手段に幅がある。
また、これから先は敵の最終目標地だ。
何かしらの仕掛けをしていないはずがない。
「相手が何かしらの特殊な術式を使ってきた場合、俺にそれは破れない。どうしても、知識と経験はグレンに敵わないからな」
「だから、俺に先に行かせるってわけか?」
「ああ。【ブレイズ・バースト】で道を開くから、その間を駆け抜けるぞ」
「……わかった。すまん」
「いいってことよ」
謝るグレンに、ルイスは不敵に笑いながら答え、左手を突き出す。
「《紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吠え狂え》!!」
現れた火球を走りながら投げ込み、
「《大いなる風よ》!」
爆風を【ゲイル・ブロウ】で相殺。
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
その隙に、グレンは僅かに空いた隙間を駆け抜け、次々と繰り出されるゴーレムの拳を回避。
激しい動きによって二人の傷口が開き、包帯が赤く染まっていくが、全て無視する。
目の前だというのに、絶望的に遠い塔の入り口。
ルイスが三回目の【ブレイズ・バースト】を唱えたころ、ようやくグレンが入り口近くに辿り着いた。
「グレン!!」
ゴーレムの拳をギリギリ回避し、入り口に飛び込んだグレンに、ルイスは叫ぶ。
「ルミアを、頼む!」
「任せろ!」
そうして、二人はそれぞれの戦場へと向かった。
─────────────────────
「……さて」
グレンの背中が消えたのを確認すると、ルイスは目の前に視線を戻す。
数えるのも馬鹿らしくなるほどの数のゴーレムが、ルイスの方に向かって来ている。
何体かは、グレンを追いかけようとしているのかもしれない。
「だとしたら、余計にここは通せないけどな」
改めて決心するように呟き、自分の魔力を確認する。
(───もう、多くはないな。父さんの剣を投影してぶつけるしかないかと思ってたが、それすらどこまで出来るか……)
そんなことを考えている間にも、ゴーレムは鼻先まで迫り、拳を振りかぶる。
我に返ったルイスは横っ飛びでそれを回避し、頭を回す。
「考えろ……何かあるはずだ。ここを切り抜ける何かが。俺の記憶の中に、何か─────!」
懐からたった一つだけとっておいた爆晶石を取り出し、近くにいたゴーレムに投げつける。
頭部を破砕し、そのゴーレムだけは崩れるが、周りのゴーレムは無傷。
舌打ちし、さらに考える。
正しくは、さらに深くまで潜る。
自分の中へ、深層意識へ。
セリカとの修行の日々、両親の売っていた武器や道具、グレンが持っていた武器。
「─────そうだ。これがあった!」
そして、ようやく思いついた。
両拳を叩きつけるように振りかぶったゴーレムの一撃をギリギリで避け、ルイスは詠唱する。
「《体は剣で出来ている・血潮は鉄で心は硝子・」
(思い出せ、思い出せ……!)
見たことがあるのは、グレンが手入れをしている時と、そのチェックの時だけ。
「《幾たびの戦場を越え不敗・ただ一度も敗走はなく・ただ一度も理解されない・」
その僅かな記憶から、全てを再現する。
「《彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う・」
我ながら無茶だが、それでもやるしかない。
「《故にその生涯に意味はなく・」
現状を打破するには。
「《その体はきっと剣で出来ていた》!!」
全てを撃ち抜く、あの武器がいる。
「
詠唱完了、結果はすぐにわかった。
ルイス自身が魔術に慣れたのか、右手は即座に光り出す。
半秒でそれは形を成し、半秒でそれは具現化する。
無骨な金属光沢を持つ、パーカッション式リボルバー。
銃身には、ルーン文字が刻まれている。
固有名称『ペネトレイター』。
グレンが帝国宮廷魔導師団時代に愛用していた、拳銃だ。
「頼むから、効いてくれよ────!」
銃の腕など齧った程度。
グレンに多少習い、実際に撃ったことなど数えるくらいしかない。
それでも、頼れるのはこれだけだった。
「行けぇぇぇぇ────!!」
願うように叫びながら、ゴーレムに銃口を向け、引き金を引く。
爆ぜる銃声、肩が外れそうになる反動、光る銃口。
しかし、かろうじて真っ直ぐに飛んだ弾丸は、ゴーレムの胸部に直撃し、
バゴンッッッ!
明らかに銃弾で鳴るような音でない音を響かせ、盛大にその体を抉りとって貫通。
いとも簡単に崩れ落ちた。
「……うわ」
予想以上の威力に、ルイスは唖然とする。
ペネトレイターは、刻まれたルーン文字と使われる推薬『イヴ・カイズルの玉薬』の効果で、『魔銃』と呼ばれるほどの力を持った特別な銃だ。
相手が魔導生物だろうがなんだろうが、その全てを貫く力を持った銃。
魔導師殺しの伝説の一端を担った、ルイスの知る中でも指折りに強力な武器だった。
呆然としていると、ゴーレムが拳を振りかぶる。
その拳が当たる寸前、ルイスはゴーレム本体に銃口を向け、引き金を引く。
相変わらず慣れない反動。
腹部からへし折れ、崩れるゴーレム。
それを尻目に、右側を向く。
何体かのゴーレムが集合したそこに向かって、ルイスは引き金を引く。
一発、二発、三発。
繰り返す反動に思わず身を縮め、一発は地面に食いこむ。
だが、残りは複数のゴーレムをまとめて貫く。
しかし、ここで弾切れ。
何度引き金を引いても、弾丸は出ない。
ならば、やることは一つ。
「
ペネトレイターを放り捨て、代わりに二丁目を投影。
「まだまだ行くぞ!かかって来いよ、石ころ!!」
ゴーレムを睨み、ルイスは再び引き金を引いた。
お読みいただきありがとうございました!
私の寝落ち率は本当にどうにかしないといけませんね……
何か良い方法を思いついた方がいらっしゃれば、ぜひ教えてください