ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

最近膝を脱臼して悲しみにくれる雪希絵です

ほとんど出かけられないので、外で遊びたくて仕方ない今日この頃です

まあ、そんなどうでもいいことは置いておきまして

さて、やって来ました更新日

前回はタイトル通り無限の剣製使いましたが、如何でしたでしょうか?

たくさんの方に感想を頂けて、本当に嬉しかったです

では、ごゆっくりどうぞ!


第二の敵は

「ウェンディ!」

 

倒れるフィレストを尻目に、ルイスはウェンディの元へ駆け寄る。

 

「大丈夫か!?」

 

呆然としているウェンディに、ルイスは唇を噛み締める。

 

「おい、ウェンディ!」

「あ……」

 

か細く声を出し、パクパクと何度か開け閉めした後、微かに口を開く。

 

「大丈夫……ですわ。これ……」

 

くらい、という声はほとんど聞こえなかった。

 

必死の強がりとして、なんとかこぼさないようにするが、その目からは決壊寸前の涙が溜まっていた。

 

「こんな……これくらい───」

 

とうとう涙が溢れ、それを拭おうと拘束されて腕を懸命に動かす。

 

しかし、拘束された上に恐怖で固まった身体は、そう簡単に言う事を聞いてはくれない。

 

ウェンディは有力貴族の娘だ。

 

そんな彼女は、何よりも認められなかったのだ。

 

貴族である自分が、悪に屈しそうになったことが。

 

だから、なんでもなかったかのように振る舞う。

 

今更何をというのも、自分で理解している。

 

それでも、これはウェンディの意地だった。

 

「…………ウェンディ」

 

そんな彼女の頬に、ルイスは優しく手を添える。

 

指で涙を拭い、また流れる涙を拭う。

 

「大丈夫。ここでウェンディが何言おうが、どんなことをしようが、今までウェンディが積み上げて来たものが、全部崩れたりするわけじゃない。いや、例え全部崩れたって、ウェンディはウェンディだ。今まで通り俺にとって大事な友達で、クラスのみんなにとって、大事なクラスメイトだ。だから、我慢しなくていい」

 

先程の怒声など影も形もない、どこまでも優しい声。

 

そうして、ルイスはウェンディの頭をほんの少し、抱き寄せた。

 

「こんな時くらい、誰かに頼ってもいいもんだろ?」

「───うっ」

 

ウェンディの中の、何かが弾けた。

 

「言いたい事があるなら言えよ。全部聞くからさ」

「うぅ……ぐす……!」

 

ルイスが縄を解除し、自由になった両手でウェンディは両目の涙を拭う。

 

そして、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

 

「こ、怖かったです……!すごく……!」

「うん」

「じっと、わたくしのことを見ていたかと思ったら、いきなりこんなところに連れて来られて……!」

「うん」

「そして、わ、わたくしのことを……笑いながら切りつけてきて……!」

「うん」

「ルイスが来るまで…どうなるか不安で…怖くて……怖くて……!」

「うん、うん。ごめんな、遅くなって。本当にごめん」

 

優しく頭を撫でながら、ルイスはウェンディの話を、ずっと聞き続けていた。

 

─────────────────────

 

「ぐすっ……。お見苦しいところを、お見せしましたわ」

 

しばらくして、ウェンディは泣き止み、幾許か落ち着いた。

 

「いいよ、気にしないで。あんなことになったら、その反応が普通さ」

 

言いながらルイスはフィレストを全裸にして、黒魔【マジック・ロープ】で亀甲縛りにし、ギリギリ死なない程度に傷を治療し、【スペルシール】と【スリープ・サウンド】を重ねがけして無力化。

 

そして、全身に見るも無残な落書きを施し、最後に股間に『人類史上最小』と書かれた紙を貼った。

 

「な、何をしているんですの……?」

 

あまりに手際が良すぎて忘れていたウェンディが、両手で視界を塞ぎながらそう言う。

 

「グレンに教わった敵魔術師の無力化方法」

「それ絶対間違ってますわよ……」

 

ため息をつくウェンディに、ルイスは首を傾げる。

 

「まあ、そんなことはどうでもいい。ウェンディ、これ羽織っといて」

「えっ……?」

 

ウェンディの発言についてはグレンに言及することにし、ルイスは彼女の肩に制服のマントをかける。

 

「なんというか……その、目のやり場に困る」

「………!?そ、そそそそ、そうですわね!有難くお借りしますわ!」

 

ウェンディの制服は、マントはすでにボロボロ。

 

制服の上半身部分は、真っ二つに切り裂かれている。

 

そうなれば当然、中の下着は丸見えなわけで。

 

ルイスはその事に今更気が付き、そしてウェンディも今更気が付いたらしく、急いでルイスのマントを羽織る。

 

ルイスは体格がいい訳ではないが、それなり背は高いので、前を閉めれば充分に衣服として機能した。

 

「それと、早いところ治療をしよう。本当はもっと早く治療したかったんだけど、あいつがその間に復活したら困るから、そっちを優先したんだ」

「いえ、お気になさらず……」

 

まだ若干頬の赤いウェンディがそう言う。

 

「跡になったら困るだろうから、治療薬も併用しよう《慈愛の天使よ・彼の者に安らぎを・救いの御手を》」

 

ルイスは白魔【ライフ・アップ】を発動しながら、治療薬を塗る。

 

淡い光と治療薬の効果で、ウェンディの傷が癒えていく。

 

半ばほど治療が終わったころ。

 

「……あの、ルイス」

「ん?」

 

不意に、ウェンディが口を開く。

 

そして、ルイスも予想していて質問をされた。

 

「ルイスが使ったあの剣……まるで呼び出したようでしたけれど、一体あれはなんですの?」

「俺の固有魔術だよ。『無限の剣製』っていうな」

「固有魔術……」

「ああ。俺はあの魔術を使えば、刀剣類なら見ただけで複製できる。両手に持ってた剣も、そこの人類史上最小にぶつけたのも、そうして魔力で投影した剣だ」

「七節もあったようですけど、魔力は大丈夫なんですの?」

「平気平気。魔力容量(キャパシティ)には自信あるから。っていうか」

 

治療が終わり、ルイスは道具を片付けながら続ける。

 

「俺が固有魔術を持ってることには驚かないのか?」

「……たしかに多少は驚きましたが、想像はできますわ。グレン先生と一緒に、授業をしているくらいなんですから」

「さすがクラス三位。頭の回転が早いな」

「ほ、褒めても何も出ませんわよ!」

 

ルイスが素直に褒めると、立ち上がってまた頬を赤くしながら、そっぽを向いてしまった。

 

そんなウェンディに少しだけ微笑み、すぐに表情を引き締める。

 

「さて……移動するか。あいつらの目的を探らないとな」

「そ、そうですわ!ルイス!ルミアが!」

「!? ルミアがどうしたんだ!?」

 

目的というところで思い出し、ウェンディは敵が来てからの一部始終、そしてルミアがその中の一人に連れていかれたことを話した。

 

「くそっ……!遅かったか……!」

「も、申し訳ありませんわ……。わたくしがもっと早く、ルイスに知らせていれば……」

「いや、ウェンディのせいじゃない……。俺が、もっと早く固有魔術を形にしてれば……」

 

言いながら、ルイスは拳を握りしめる。

 

多少大人びていて、多少他の生徒よりも荒事に慣れているだけで、彼はあくまでもまだ学生だ。

 

自分だけならともかく、クラスメイトや友人が騒ぎに巻き込まれれば、冷静ではいられない。

 

さっきは、使命感が乱れる心を強引に平静にしただけだ。

 

「ともかく、ルミアを連れていったなら、何か目的があるはずだ。場所を探りながら目的を……」

 

嫌な想像が頭を過ぎるが、無理やり払拭してこれからのことを考えていると、ルイスの首にかかったペンダントから、金属を打ち鳴らしたような音が鳴る。

 

ウェンディが驚いて肩を震わせる中、ルイスは迷いなくそれを掴み、顔付近に持ってくる。

 

「グレン!?セリカ姉!?」

「ルイス!無事だったか!」

「良かった、お前たち二人とも無事なんだな」

 

そこに収まった宝石から、離れた場所にいるはずのグレンとセリカの声がする。

 

「グレン、学院内に入ったのか?」

「おう。結界の設定が書き換えられていたから、札を使って入った。今白猫と一緒だ」

「俺はウェンディと一緒だ」

「ウェンディ?なんでだ」

「敵の一人に襲われてた。敵は無力化してある」

「そうか。こっちも一人無力化した。敵は後何人いると思う?」

「最低二人だな。敵の正体に心当たりは?」

「それはさっきグレンと話してたところだ。どうやら相手は、『天の知恵研究会』らしい」

「……あのイカれた集団か」

「間違いない」

「相手があれなら、何をしてくるか分からない。ひとまず合流したらどうだ?」

「わかった。グレン、合流しよう」

「ああ。とりあえず、一旦切るぞ」

「なぁ……ルイス、グレン。……死ぬなよ?」

「「こんなところで死んでたまるか」」

 

最後は二人揃ってそう言い、通信を切った。

 

「ルイス……今のは……」

「通信の魔道具だ。セリ……アルフォネア教授に貰った」

「助けは……来そうにありませんわね」

「だろうな。帝国宮廷魔導師団が来るとして、恐らく相当あとだな」

 

落ち込むウェンディ。

 

そんな彼女の肩に、ルイスは手を置き、

 

「大丈夫。ルミアもクラスのみんなも、俺とグレンが必ず助ける。ウェンディのことは俺が必ず守る。信じてくれ」

 

真っ直ぐに目を見て、そう言った。

 

「───はい」

 

覚悟を決めた顔で、ウェンディも頷く。

 

そこへ。

 

魔力の共鳴音とともに、空間が歪んだ。

 

「!?」

「な、なんですの!?」

 

身構える二人の前、現れる魔法陣。

 

そして、ゾロゾロと何かが出てきた。

 

二本の脚で立ち、剣や盾で武装した、十数体の骸骨。

 

「ボーンゴーレムか!?しかも、こいつら普通の骨じゃないな……!」

 

召喚【コール・ファミリア】。

 

本来は小動物のような使い魔を呼び出す魔術だが、この術者は大量のゴーレムを使い魔にして遠隔連続召喚(リモート・シリアル・サモン)するという、次元の違うことをやっている。

 

「くそ、ウェンディ!逃げるぞ!」

「は、はい!」

 

ガシャガシャと音を鳴らし、迫ってくるボーンゴーレム。

 

(対抗手段は、こいつしかない!)

 

走りながら、ルイスは必死に口を回す。

 

「《体は剣で出来ている・───」

 

ウェンディの手を引き、空いている左手に意識を集中する。

 

「《血潮は鉄で心は硝子・幾たびの戦場を越えて不敗・ただの一度も敗走はなく・ただの一度も理解されない・───……」

 

曲がり角を急速に曲がり、とにかく広い場所を目指す。

 

「《彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う・故に生涯に意味はなく・」

 

やがて、普通よりも広い廊下に出た。

 

ウェンディを背後に庇うように立ち、ルイスはボーンゴーレムと対峙する。

 

「《その体はきっと剣で出来ていた》!!」

 

詠唱完了。

 

投影開始(トレースオン)!!」

 

ルイスが叫ぶと、左右の手に青い煙が再び現れる。

 

左手のそれは上下に長く伸び、右手のものは細く伸びる。

 

数秒後、ルイスの左手には黒い弓が、右手には同色の矢が握られていた。

 

迫り続けるボーンゴーレム。

 

その一番前にいるゴーレムを見据え、矢を弓に番える。

 

弓と弦が軋み、目一杯まで弦を絞る。

 

「ふっ─────!」

 

発射。

 

おおよそ弓によるものとは思えないほどの轟音。

 

放たれた矢はまるで吸い込まれるように正面の骸骨に当たり、

 

ガシャァァァァァン!!

 

その後ろにいたボーンゴーレムも巻き込み、砕けていく。

 

「やってやるよ……!こうなりゃヤケだ!」

 

未だ多くいるボーンゴーレムを睨みながら、矢を追加で呼び出す。

 

同時、周囲に父親の最高傑作の剣を複数投影。

 

一対十数の、総力戦が始まった。




最近アニメで喋るウェンディを見て思いました

すごい可愛い!!!

……失礼致しました

元々小説でも可愛かったですけど、喋るところを見るとやはり印象が変わってきますね

ロクアカって本当に魅力的なキャラが多いですよね

お読みいただきありがとうございました!

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