「...へぇ、そう」
そっけない巫女、まったく冷淡だな。ばっさり切り捨てたと思ったら何か付け加えてきた。
「私は別にここにいようが構わないけど当分こちらにいるなら寝る所とかどうするの?まぁ私は知ったことではないけど」
優しいのか優しくないのか。だが「泊めてくれ」と言って「はい」と言えるかと言われれば言えないだろうな。当然といえば当然なのかもしれない。
「あー、まぁあれだ」
俺の住んでる世界とは別の世界、すなわちパパと連絡は当分取れない。パパに頼めないということでもある。
「失礼、お困りのようね」
突如聞きなれない声、振り向くと大人びたゴスロリ?な派手な服装に日傘らしき傘を差した1人の女性がいた。観客の1人だったのだろう。
「紫、何の用」
「そこの人...沢渡シンゴって言ったかしら」
「あぁ、そうだが」
威圧なのかわからないがその姿だけで圧倒される。
いつもの調子で話すことができない、なんだこいつ?
「話はあらかた聞かせてもらったわ、お困りのようね」
「まぁ、な」
「私の所なら泊めてあげられるわよ」
「マジかよ!」
天の救いとはこのことか、もう寝泊まりする場所を見つけられるとは...待て、俺には金がない。対価を要求されれば差し出せない。
「悪いけど、俺金なんてないが」
「いいの、ただ条件があるの」
条件?金ではなく条件として何を求められるんだ?
顔の表情は常に優しく微笑みかけられている。変わらない、だから何考えてんのかわからない。故に読めない。
「外の世界の話、聞かせて欲しいの」
「えー、それが、条件?」
「そうよ」
なんだかもっと裏のありそうだったがそんなことでいいのか。拍子抜けだな、むしろ疑いたくなる。
「それでいいなら話すけど、それだけでいいのか?」
「それだけ?私にとってとても大事なの、お金なんかよりもね」
大事、ねぇ。純粋に外との連絡を取りづらいのか、はたまた別の何かを聞き出そうとしてるのか。
「じゃあ早速聞かせてちょうだい。外について。少し目を瞑って。霊夢も来てちょうだい。」
なんでだよ、と言いかけたがここは素直に従うのが吉か、そう思い目を瞑る。1分ほどするとまた声がかかる
「いいわよ、目を開けても」
目を開けるとそこは和室だった。正確には和室の部屋の前の縁側だ。縁側から見える和室は真ん中には机、それを囲うように座布団が置かれていた。机には茶菓子とお茶を入れてる急須、ほんのりお茶の匂いがする。
「あ?なんだここは」
「私の能力、ってら事かしら、上がってちょうだい。」
もう空も飛んでたし、いいのかな。よく考えれば次元なんてものポンポンと飛んでいたわけだし俺も中々だったな。靴を脱いで和室に入る。
「じゃあ2人とも適当に座って」
促されるまま座布団に座る。正面には紫と呼ばれた女性、右にはなぜかついてきた巫女がいる。
「じゃあ聞いてもいい?..外の世界の...アカデミアの話について」
「アカデミア?」
反応から巫女は知らないらしい。アカデミア...一体どこで知ったかはわからないが俺の武勇伝も交えながら話してやるか
「アカデミアの侵略戦争か、あの時俺は常に先頭に立って...」
「いえ、それの延長上。覇王龍ズァークついて」
覇王龍ズァーク?こいつ、一体どこまで知っているんだ?
「覇王龍...ズァーク?どこで聞いたんだ?」
「私は色々と知っているのよ、ランサーズの次期リーダー、沢渡シンゴ。」
思わず立ち上がる、こいつには俺は一言もランサーズだの次期リーダーだの言った覚えはない。どこで知ったのか、気味が悪い。
「だけど私は覇王龍については知らないの。あの巨大な龍は一体なんだったの?」
「...どこで、知ったんだ?」
女性の問いかけなんて頭に入らなかった。どうして知っているのか、ただその疑問だけがぐるぐると巡っている。そんな状況の中で混乱した頭の中でやっとのこと紡ぎだした言葉をようやく口にできた。俺の言葉を聞いて数秒黙った後、不敵な笑みを浮かべなからゆっくり
「ひみつ」
「ふ、巫山戯るなよ」
「ふふふ」
弄ばれている感じだ、怒りが募る。声も荒々しくなっていき攻撃的になる。
「おい!答えろ、なんで俺の事を知っているんだ!」
「....まっすぐね、私は嫌いじゃないけど。わかったわ、話してあげる、取り敢えず座りなさい」
ち、初めからそうしておけば良かったのに。面倒臭い。勢いよく座る。
「オッドアイズペンデュラムドラゴン、霊夢が持っているそのカードは一ヶ月ほど前博麗神社に落ちていたの。この幻想郷に外のカードが流れて来るのは珍しくないの、だからいつものように霊夢が拾ったわけ、だけどそれは幻想郷にはなかったペンデュラムモンスター。私たちは困惑したわ、全く見たこともないカードだったから。直感に近いけどただならぬ力を感じた私はこのカードを調べ始めた。するとそれは外の世界の大きな出来事に突き当たった、それが覇王龍ズァークを取り巻く一連の出来事。外の世界が一体どうなってしまったのか、調べれば調べていくうちにこの幻想郷に流れてくるカードにペンデュラムカードが増えていったの、それが霊夢のクリフォートよ。そして私の...イグナイトでもある。今のところ幻想郷でペンデュラムを使うのを確認できているのは2人、いえ、これは今は関係ないことね。アカデミアの侵略戦争から始まり、スタンダード次元からランサーズと呼ばれる精鋭部隊がそれを止めるため各次元を回ったのも知っている。けど、覇王龍ズァーク。これだけは何かわからなかったの....教えて、覇王龍ズァークは一体何?次元を分けるほどの力を持つ龍の正体は何?」
「....覇王龍ズァークは、榊遊矢。俺の最大のライバルにして俺が唯一認める稀代のエンタメデュエリストだ」
あの後零児に覇王龍の件について色々と補足をしてもらった。
「奴は四つの各次元に分裂したズァークの1人。アカデミアの侵略戦争を止める中で各次元のズァークの分裂体と接触してとうとう融合次元でひとつになっちまう、そうしてズァークは復活。けど俺たちランサーズと各次元で仲間になったデュエリスト達でなんとかズァークを撃破したんだ。.....ズァークの正体か、別に普通のデュエリストだったらしい。だけど連戦連勝するズァークにエンタメを観客は求めた。そしてズァークはそれに応えようと激しく、力任せなデュエルをするうちにあんな風に変わってしまったらしい。俺が知っているのはこんな感じだ」
覇王龍ズァーク...あれで良かったのだろうか?あれで全て終わったのだろうか?
「そう、ありがとう」
そう言ってゆっくり頭を下げた。元に戻ると思い出したように言う。
「あと一つだけ聞かせて欲しいの、オッドアイズペンデュラムドラゴンのこと」
「ズァークが使っていた4枚の竜のカードの一枚だ。ペンデュラム、融合、シンクロ、エクシーズに各それぞれ一枚ずつそんなドラゴンのカードが存在する。」
「...なんかよくわからないけど、これあなたに預ける。」
巫女は突然口を挟んできたと同時にオッドアイズを差し出してきた。
「は?なんで?」
「私は覇王龍なんてわからない、けどこれが何か大きな力の一部なのはわかった。だったら理解しているあんたに預けた方がいいと判断したからよ」
「面倒くさい事に巻き込まれそうだからじゃないの?」
小さくボソッと女性はつぶやく。キッと鋭く睨んでから強くオッドアイズを差し出してきた。
「へ、しょうがねぇな。受け取ってやるか」
渡されたオッドアイズ、まさかこんな風に俺の手に来る時が来ようとは。あのオッドアイズとは違うが俺の劇団員と共にフィールドを駆け回るオッドアイズか、想像しただけで顔が綻ぶ。
「話はそれだけ?私帰るから」
「もう?ゆっくりしていけばいいのに」
そんな声聞こえないと言わんばかりに障子を開けて縁側に出ると飛んで行ってしまった。
「ごめんなさいね、そっけない子で」
「あぁ、別に。あと聞きたいことはそれだけか?」
「ええ、そうね。ありがとう沢渡シンゴ。えっとなんて呼べばいいかしら」
「好きに呼べばいいぜ、色々呼ばれてるから」
色々と言っても沢渡と名字が多いな、シンゴって呼んでる人いたかな?
「沢渡君って呼ばせてもらうわ」
「もう君いらねーよ」
また沢渡だ、シンゴって呼ぶ奴は一体どこに。
「わかったわ、沢渡。改めてようこそ、八雲家へ。当主の八雲紫よ」
「こちらこそよろしく、稀代のエンタメデュエリストの沢渡シンゴだ」
俺の幻想郷でのエンタメデュエル修行はこの日から始まった。
アニメ見てましたが後半イマイチ理解してないかな?と思います。沢渡さん知っている情報少なそうですが。