遊戯王advance   作:さんま(北海道産)

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turn1 沢渡シンゴの幻想入り

「お楽しみは、これからだ!」

 

稀代のエンタメデュエリストで、俺のライバル、榊遊矢はあの日赤馬零児とのデュエルに勝利し、俺を置いてプロとなった。

 

「榊遊矢選手、プロ初デュエル見事勝利で飾りました!」

 

あいつがプロ世界で活躍してるのもその目で見た。モンスターと心通わせ、フィールドを駆け回る姿、アクションカードを巧みに取る術、あっと言わせるどんでん返し。悔しかったが楽しかった。まさしくエンタメだった。

 

置いていかれる。手の届かない場所に奴は行ってしまうのか?

自問自答する日々が続いた。俺がプロになるにはどうすればいい?一体何をすればいい?奴にあって俺にないものは。そうだ、今のままではダメなんだ、そうわかっていてもどうすればいいのかわからない....答えのない解答欄と睨めっこする。そしてある日、ふと思った。

俺にだってランサーズとして戦ってきた実績がある!だから!

 

「遊矢...いや榊遊矢!俺は必ず帰ってくる!絶対!お前を超える存在となって!」

 

俺は、沢渡シンゴは舞網を離れて、1人武者修行をすることにした。心配するパパを他所に、俺は必ず強くなって帰ってくる。絶対あいつと同じ舞台に立って、奴に勝つ。決意を胸に、足を進めた.....

 

 

 

「...で?ここどこなの?」

 

鬱蒼と生い茂る木々と隙間から微かに漏れる太陽の光が視界を覆い尽くす。いつの間にか大の字になって寝転んでいた。体を起こすと目の前にも木々が立ち並んでいた。

確かパパに手配してもらった近くの宿に泊まって、そこで一泊したんだっが、記憶をたどってもここにたどり着く理由にはならなかった。服もいつものまま、腕にはデュエルディスク。デュエルディスクをつけたまま寝た記憶もない。

 

「ヤベーな、これ明晰夢か?」

 

夢を見ているとわかっている夢、まさしくこの状況だ。しかし明晰夢の割にはしょっぱい夢だ、どうせなら遊矢とのデュエルで勝利して大観衆から拍手をもらう夢でも見たいぜ。悪態つきながらとりあえず立つ。息を深く吸うと空気もどことなく美味しい。

 

「とりあえず、歩くか」

 

明晰夢は初めてだ、どうすればいいのかわからない。けどじっとしていても仕方ない。

 

「ここは...なんだ?」

 

先ほどまで寝転んでいたのは小さな林のような場所だったようだ、しばらく歩くとだんだんと何か輝いているものが見えてきた。それを目標に歩くと、目の前には大きな湖が表れた。太陽の光を反射している姿は大きな鏡のようだ。

 

「すっげー味気のない明晰夢だな」

 

湖以外には360度木々が立ち並ぶばかりで何もない。起きる方法もわからないのでとりあえず湖に近づいてみる。覗き込むと水面にはいつものイケメンな俺が写っていた。夢の中でも冴えている....見惚れてしまった。

 

「そこの奴!何してる!」

 

「あぁ?」

 

見惚れていたので気配に気づかなかった。突如後ろから声が聞こえた、声は若く俺よりも年下の女だ。声の強さ的にも少々攻撃的だったので負けじと強めに返す。

 

「変な服着て変な髪型してるお前だよ!アタイの遊び場で何してるの?」

 

ワンピースを着て水色髪の10歳ぐらいの女子がいた。

 

「誰が変な髪型で変な服だ!これはLDSの制服で俺は沢渡シンゴだ!」

 

初見何か引っかかる点が数カ所あったが見た目完全に年下の奴から好き放題言われたことにカチンときた。

 

「そんなこと知らないよ!....ってそれはデュエルディスクか?」

 

「あぁ、そうだ。で?お前誰?」

 

急にベクトルがデュエルディスクに向きやがった。あまりの変わりように少し拍子抜けした。

 

「アタイはチルノ、デュエルディスクがあればデュエル、できるよね」

 

まさか、デュエルを夢の中でも申し込まれるとは。デュエル出来るなら誰だって関係ないぜ!

 

「デュエル?上等だ、夢の中でのデュエルなんて最高じゃねえか!」

 

 


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