Princess Evangile -After Story-   作:Canhel
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説明回になるはずがどうでもいい雑談が大半を占めてしまったせいで7000文字オーバーという失策。

しかし、これで瑠璃子さんの可愛さを知らせることができれば私は僥倖です。


第2話 ”Soeur”

チュンチュン、と小鳥がさえずる音が、窓の外から聞こえてくる。

「・・・んあ。もう朝?」

がばり、とかぶっていた布団を押しのけて上体を起こす。
いつもならあともう一~二時間早く起きているのだが、昨日の夜は如何せん、眠る時間が遅かった。
というか寝たのがもう今日だった。時計の針が12時を超えた的な意味で。

あの律子さんの衝撃的なお誘いは、文字通りボクの身体に衝撃をもたらした。
その後、詳しい話を聞いてみると、近年ヴァンセンヌ女学院は金銭的な問題により存続の危機にあったらしく、危機的状況を脱するための政策として男女共学案を提示、推進派と保守派それぞれに代表を立て、全校生徒を巻き込んだ選挙という形で共学化の有無を決めたらしい。

結果、年度末の選挙によって共学化自体は決まったのだが、様々な事情から、入学者を募るのは再来年以降とし、来年度はその準備期間としたらしい。

そのうえで、共学化に少し拒否感を持っている生徒たち・・・つまり、男子が入ってくることに恐怖を抱く一部の生徒たちの不安を払拭すべく、もう一人男子生徒をこの一年の間にサンプルとして入学させる、という案を打ち立てたらしい。

・・・ぶっちゃけ、そのサンプルとなる男子がボクってのは若干違うと思う。
世間にはボクみたいな男子は恐らく一人もいない。断言できる。
校長もそのへんは理解していたようなのだけれど、

「大事なのは、君の容姿がとても男子には見えないという事ではありません。たとえ見た目が可愛らしかろうが君は男です。うちの生徒が
キミのことを男と認識したうえで、男という存在に少しでも耐性をつけることができれば、それでいいのです」

とのこと。
まあ、ボク的にはお金もかからずに一年間勉強ができて、更に衣食住まで提供してくれるのなら願ったり叶ったりなのだが。

「・・・さて」

ちなみに本日は4月1日。
新年度の始まりの日ではあるが、ヴァンセンヌ女学院は春休みの途中で、始まるのは3日かららしい。
しかし、他の生徒たちを動揺させるわけにはいかない、という理由から、始業式の日までは部屋から出ないように、と命じられた。
そのため、二日間は暇になると思っていたのだが・・・。

こんこん、と部屋の扉をたたく音が鳴る。

『結月?ちょっといいかな?』

「先輩」

声の主が男のものであることを察し、扉を開ける。
女子高であるこのヴァンセンヌ女学院に現在在籍している男子生徒は二人。
一人はボクで、もう一人が、目の前の人物だ。

「よっ。学校のルールとか、そういうのを教えてやってくれって校長から頼まれてさ」

「わざわざありがとうございます、正也先輩」

「いいんだよ、俺もどうせ暇だし」

小此木正也先輩。
学院を共学化するか否かで揺れていた去年、男子のサンプルとして学院に入学し、見事全校生徒の信頼を勝ち取った人らしい。
最初は周りからの風当たりも強かったものの、本人の人柄や頑張りが周りに伝わり、年度後半は、『共学化はまだアレだけど、正也さん個人なら』という意見が多かったとか。

「さて、まず何から話そうかな」

部屋の中に招き入れ、お茶を淹れたところで正也先輩が口を開く。

「・・・まず、ヴァンセンヌの形から教えようか」

「・・・形?」

「ああ。・・・ヴァンセンヌは全寮制で、小中高一貫校だ。ここまでは知ってるな?」

コクリと頷く。

「ただ、それだけじゃない。ヴァンセンヌを卒業した人たちは、一度学校を出るか出ないかの違いは在れど、大体はまたヴァンセンヌに戻ってくる。そして、学内で何かしら従事するらしい。ここは俺も聞いた話だから詳しくは知らないんだが。・・・そして、親になった卒業生たちは子供をヴァンセンヌに入学させる。そうすることで、ヴァンセンヌで育つ生徒たちは、ここを一種のコミュニティであり、ひとつの世界であると認識してるんだ」

「・・・この、山一つ分程度しかない敷地を、ですか?」

「ああ。小学校から一貫してここに通い、卒業後そのままヴァンセンヌで職に着いたらそれこそその人にとっての世界ってのはこの敷地内だけ、ってことになるな」

「・・・」

「そして、そのコミュニティの事を"Filles De la Vansennes(フィユ・ド・ラ・ヴァンセンヌ)"つまり、『ヴァンセンヌの乙女たち』って言ってるよ」

「フランス語ですか?」

「俺はそのへんには疎いから分からんけど、多分そうだと思う。・・・んで、その乙女たちの中でもひときわ目立つ・・・というか、他の生徒たちから一目置かれる生徒には、"一名"と呼ばれる・・・いわゆるあだ名が付けられる」

「先輩は?」

「・・・俺はないよ。去年の序盤に不名誉な一名を賜ったけど、今はその名で呼ばれることもないしな」

「ちなみになんと?」

「・・・"Tentateur Serpent(タンタトゥル・セルパン)"だよ」

「意味は?」

「・・・もうないあだ名なんだから、それはいいだろ。それより、次に行くぞ!」

なんか話をそらされた感じがする。聞かれたくないことなのだろうか。
・・・後で律子さんにでも聞いておこう。

「先輩を呼ぶときは、尊敬の念を込めてお姉様、または様付け。同学年の人を呼ぶときは、親愛の念を込めてさん付け。年下を呼ぶときは、慈愛を込めて呼び捨てに。
これも一応覚えておいた方がいい。俺の場合は、どうしても様付けになれなくて、結局さん付けになってたんだけどな・・・」

『ごきげんよう』にもなれなくて、結局まだ『こんにちは』って言ってるんだぜ。と、わははと笑いながら頭をかく先輩。
そのままひとしきり説明が済み、先輩がお茶に手を伸ばした。

「・・・んっ?」

一口、お茶を含んだ先輩が、驚いた声を上げる。
もしかして緑茶は好きじゃなかったかな。

「あ、お口にあいませんでした?」

「いや、逆だよ逆。こんなうまい緑茶、初めて飲んだかもしれない」

「そうですか?有難う御座います」

「いやいや、本当にうまいな・・・瑠璃子さんが淹れる紅茶といい勝負するかもしれないぞ・・・」

と、知らない名前が出て来たな。
ボクが今現在、ヴァンセンヌ女学院に在学している生徒の中で知っている顔は4人。
正也さんと律子さん、そして、昨日律子さんと別行動で男子生徒を探していたという瓏仙院理瀬さんという人と、たまたま外出していた律子さんのお姉さんの北御門綾香さん(前年度で丁度卒業して、東京の大学に進学予定らしい)の4名だ。
ちなみに、理瀬さんも綾香さんも美人さんでした。ヴァンセンヌの女子ってレベル高い。

「あの、正也先輩。瑠璃子さんっていうのは?」

「ああ、えーっと」

少し、答えに間が開く。
その間が何を物語っているのか、私、気になります。

「・・・まあ、変な動物を飼ってる、ちょっと世間知らずな箱入り娘の人、ってところかな」

「それは本当にちょっとで済むんですよね?」

「そんなに気になるなら呼んでみようじゃないか。どうせ新学期になれば顔を合わせるんだし、いつものメンバーくらいは把握しておいた方がいいからな」

何故か正也先輩がにやりと嫌な笑みを浮かべる。それに気づいたボクが待ったの声をかけようとするも、既に正也先輩は通話ボタンを押した後だった。
何なんだ・・・その瑠璃子さんってのは何者なんだ・・・。





「あらあらあら。まあまあまあ」

正也先輩の電話から数分とかからず部屋を訪ねて来たのは、クリーム色の長い髪をに瑠璃色の瞳が映える、いかにもお嬢様といった感じの女性だった。
部屋に入るなり、ボクの姿を見つめて目を爛々と輝かせている。

「瑠璃子さん、こいつの名前は神宮司結月。今年度の男子のサンプルだよ」

正也先輩の紹介を受け、ぺこりと頭を下げるボクを見る目が、より一層輝きだした。

「去年と同じで、正也さんみたいな硬くて太いアレをお持ちの方がいらっしゃるのかと思ったら、今度はとても可愛らしい方がいらっしゃいましたね・・・特にその長い髪・・・とても長いのに、ちゃんと手入れされていて、しかもふわふわしてらっしゃいます。モフモフさせてもらってもよろしいですか?」

「正也先輩・・・貴方、瑠璃子さ・・・お姉さまに何を」

瑠璃子さんに何か頼まれた気もするが、それ以上に聞き捨てならん言葉を聞いた気がした。正也さんみたいな硬くて太いアレってなんだ。
場合によってはボクは早急に刹那のうちに右手に持った端末に3つの数字を入力しなければならない。

「待て後輩。誤解なんだ。・・・ちなみに瑠璃子さん。俺の太くてかたいアレって何のこと?」

「はい?もちろん、正也さんの手に決まっていますが?」

「・・・・・・。な、なんだ。ボクはてっきり、正也先輩を警察に突き出す準備をしないといけないのかと。ゴメンナサイ先輩、ボクはあなたの事を勘違いしていました」

言葉とは裏腹に、ボク今何とも言えない気持ちでいっぱいです。
流石に絶対わざとでしょ、今の言い回し。でも模範的な対応をするボクおっとなー。

「うん。去年もよくあったから大丈夫だよ・・・」

やっぱり女子高に男子一人って、気を遣うんだろうなあ。

「うずうず・・・」

それを一年も・・・正也先輩って、案外苦労人なのかもしれないな。

「うずうず・・・」

「先輩。ツッコミに疲れたら、遠慮せずボクを頼ってくださいね。遠慮なくボケを振りますから!」

「後輩よ。お前は俺に死ねと言っているのか!?」

「会話の途中ですみませんが、もう我慢できません!結月ちゃん失礼しますっ」

「え?わぷっ」

正也さんとの会話中に、突然の瑠璃子さん・・・瑠璃子お姉さまか?のカットインが入る。
てか、この顔面に密着してるやわらかい二つの物体は・・・いやこれはやばいでしょお!?

「あぁ・・・もふもふですぅ・・・やわらかい髪質なのに、お手入れがしっかりしているので指に絡まなくて、さらさらしているのにふわふわで・・・こんな極上の毛並みが
あるんですねぇ……」

「んー!んー!」

「あの、瑠璃子さん?結月が窒息で死にそうなので、そろそろ開放していただけると・・・」

「こんなもふもふ手放したくないです・・・夜寝るときに抱いて寝たいくらいですぅ・・・」

そのまま、ボクの意識が限界で脱力しきったところでようやく瑠璃子さんは開放してくれた。これを夜寝るときずっととか絶対いやだ・・・。
ボクはお嬢様に絞め殺される未来を願ってヴァンセンヌに来たんじゃないよ。



ちなみに、何故結月『ちゃん』なのかと聞くと、
『可愛いからちゃん付けでもいいじゃないですか』とのことらしい。
昔バイト先でも同じような理由でちゃん付けされてたので訂正はもうあきらめてます。ハイ。







「上宮城瑠璃子、といいます。よろしくお願いします。そして、こちらはパンターベルです」

「クー!クー!」

唐突かつ過激なボディランゲージを初対面でいきなりぶつけて来た目の前のこの人は、上宮城瑠璃子さんというらしい。
訊けば、日本でも有数の財閥である上宮城グループの一粒種だとか。すごいなヴァンセンヌ。そんなお嬢様まで通っているのか。

しかし聞けば、上宮城グループはヴァンセンヌにも巨額の投資をしているのだとか。だから娘も通わせてるんだな。

「あ、今年度からお世話になります、神宮司結月です。よろしくお願いします」

「じんぐうじ・・・?」

「? 何か?」

「い、いえ。聞き覚えがあるな、と思っただけです」

「そうですか? ではこちらから質問なんですが・・・その肩に乗っかってるクークー鳴く生き物は・・・オコジョか何かですか?」

「オコジョ?パンターベルはパンターベルですよ?」

「クー?」

オコジョを知らないのだろうか。首をかしげつつの返答に、肩に乗っかっているパンターベルの動きもシンクロする。
なんだかよくわからない生き物だけど、まあ可愛いからなんでもいいか。
ヴァンセンヌに通うようなお金持ちの人が飼ってる生き物なんてみんなそんなものなのだろう。あんまり気にし過ぎたら負けな気もするし。
経験上、お金持ちは何をするかわからないからね。昔メイドとしてバイトさせてもらっていたお屋敷のおじさんは浴槽にぎっしり札束詰めて
お風呂に入ってたっけ。
いや体洗えないだろ普通にお湯張れよ。と何度言いたくなったことか。
・・・ちなみに、なんで正也先輩はそんなに必死に笑いをこらえているんですかね?

「瑠璃子さんも、さっき言った一名持ちなんだ」

「へぇー」

正也先輩の一言に、関心が一気に瑠璃子先輩の方へと向く。
確かさっきの説明だと、一名と言うものはヴァンセンヌの中でも一目置かれる人にしかつけられないものだとか。
上宮城先ぱ――お姉さまは第一印象ではトロそう、という何とも失礼なイメージだったのだけれど・・・。

「"Bijou Bleu(ビジュ・ブルー)"。意味は、"瑠璃色の原石"だそうだ」

「・・・なんか、あれですね。一名って厨二病っぽいですね」

瑠璃子さんの一名を聞いたボクがぼそっとそんな一言を洩らすと、正也先輩は「俺も最初はそう思ったよ」と苦笑を返した。

「・・・?? あの、ちゅうにびょう?って何ですか?」

対してヴァンセンヌ育ちの瑠璃子さんには縁のない言葉だったらしく、頭上に?マークを浮かべている。
呼び方に対しては、心の中ではさん付けでいいか、ということにした。名前を呼ぶ機会はそうそうないし、その時だけお姉さま付けしていれば問題ないだろう。正也先輩もなんだかんだで先輩にはさん付けらしいし。

「厨二病っていうのはあれです。男子は思春期になると、無駄に背伸びしようとしてコーヒーをブラックで飲んでみたり、唐突な政治批判をしてみたり、『俺は特別な人間なんだ』なんて世迷言を言ったりすることがあるんです。それを厨二病って言うんです」

「男子にはそういう時代があるってことなんですね・・・でも、それが何故一名につながるんですか?」

その疑問に正也先輩が口を開く。

「厨二病の一種として、横文字を安易につなげて格好いいあだ名とかを作ったりするやつがいるんだよなあ。有名どころだと、"ダー○フ○イムマ○ター"とかな」

「"○ターナル○ォースブリ○ード"なんていう必殺技名も有名ですね。で、大人になってから己の行動を省みて、恥ずかしすぎて悶えるっていう」

「な、なるほど・・・それは恥ずかしいですね」

おおらかな性格の瑠璃子さんでさえ、これには微妙な反応を返した。
しかしすぐに一転して目を輝かせる。

「・・・ということは、正也さんと結月ちゃんにもそういう時期があったという事ですか?」

「いや・・・俺は、バイトだったりでそんなことしてる暇はなかったな」

正也先輩が呟く。
この人の境遇については昨日のうちに聞いていた。なんでも、父親が仕事をしない割に浪費癖のあるダメ人間だったらしく、先輩が10歳の時に離婚。
母親は先輩の事を引き取ろうとしていたようだが、「母は一人でも大丈夫だけど、父親を一人にしたら駄目かもしれない」と10歳の子供にしてはいささかしっかりし過ぎじゃないかと思わせるような思考を経て、先輩は父親のもとに残ったそうだ。

「そうでしたね・・・。では結月ちゃんは?」

「ボクは正也先輩とは違う意味で多忙でしたね。6歳の頃に天涯孤独の身になって、とある孤児院に入ってました。自分より小さい子の面倒を見るのとバイトが大変で、そういったことはなかなか・・・」

「ヴァンセンヌに来る男子生徒は総じて苦労性、というジンクスでも出来そうですね・・・」

失敬な。正也先輩ほどではない。
ボクは一応、周りの人たちには恵まれていたからね。

「・・・そういえば瑠璃子さ・・・お姉さま」

「まあ。まあまあまあ。お姉さまだなんて!結月ちゃんにそう呼ばれると、正也様一筋のこの気持ちが揺らいでしまいそう」

ボクに名前を呼ばれてぽっと頬を朱に染める瑠璃子さん。この人はいちいち一回は話題をそらさないと会話ができないのだろうか。

「あの、瑠璃子さん。俺は理瀬さんと付き合ってるから」

そして正也先輩からの衝撃のカミングアウト。

「・・・はっ?え!?先輩、理瀬さ・・・お姉さまと付き合ってるんですか!?」

「お、おう。何だやけに噛みつくなお前」

「いや、女子禁制のこの学校で、たった一年で恋人まで作るなんて・・・先輩、この一年で余程の信用を勝ち取ったんですね」

「理瀬さんが革新派の筆頭、ということも味方していると思います。ところで結月ちゃん、私に何か聞こうとしていませんでした?」

「・・・あ、そうだった」

正也先輩が衝撃のカミングアウトをするものだから、ついつい興味がそっちに行っちゃってたよ。

「いえ、ただの質問なんですが・・・ボクも正也先輩と同じように、上級生相手にお姉さま付けはどうも慣れないんです。
瑠璃子さ・・お姉さまさえよければ、さん付けでお呼びしたいんですけど・・・」

ボクとしては何気ない質問のつもりだったのだが、それを聞いた瑠璃子さんはとたんにぶわっと涙をその瑠璃色の瞳に浮かび上がらせた。

「まあ・・・結月ちゃんは、私の事をお姉さま呼びするのが嫌なのですね・・・?悲しい。私、ついに妹ができたのかと嬉しい気持ちでいっぱいでしたのに。よよよ」

「い、いや。そういう意味では無くて。ボクも正也先輩と同じで中学は一般校の出身なので、年上の人をお姉さまと呼ぶのに慣れないんです。てかよよよって。確実に嘘泣きですよね」

「ちっ」

「舌打ちした!今この人舌打ちしましたよ正也先輩!」

「瑠璃子さんって嘘泣きうまいよな」

「今ボクが言いたいのはそんなことじゃない!」

駄目だ。ボケが多すぎてツッコミが追いつかない。
というか、正也先輩はそもそもボクにこの学校の決まりだとか、そういったものを教えるために来てくれたんじゃなかったのか?
いつのまにかいつメン紹介みたいになってるじゃないか。

「・・・ちらっちらっ」

いつまでも嘘泣きを辞めない瑠璃子さんには取りあえず無視を決め込んでみる。すると、今度はあからさまにこちらの様子を伺いだした。
ちらっちらっとか言ってる時点で嘘なきじゃないですか。

「・・・わかりました。しょうがないですので、お嬢様呼びで許してあげましょう」

嘘泣きを辞めた瑠璃子さんがキリッとした顔をこちらに向ける。
いや、なにどや顔しちゃってるの?貴女、譲歩できる立場じゃないですからね?
・・・まあ、お嬢様呼びなら昔バイトしてたお屋敷でさんざんやってたから慣れてるし、いいけど。

その後もヴァンセンヌ女学院の独特な言い回しについて説明を受けた後、正也先輩と瑠璃子さんはそれぞれの部屋へと帰って行った。
「まあ、同じ待遇の俺もさん付けで黙認されてたし、結月も大丈夫だと思うぜ」と正也先輩も言っていたし、瑠璃子さんは取りあえずさん付けでいいだろう。



・・・ちなみに、正也先輩が帰った後速攻で律子さんに、正也先輩の一名"Tentateur Serpent"についてご教授願いました。
電話越しに聞いてみると、少しの沈黙があった後、くすりと笑い声が聞こえて、

『"Tentateur Serpent"は、誘惑の蛇、という意味です。一年前に入学してきた誰かさんが、
着替え中の女子がいる教室のドアをなんの躊躇もなく開け放ったという事件からできた一名ですよ』

と言っていた。
正也先輩とはたった一日の付き合いだけど、どこまでも人のよい彼が意図的に女子が着替えている部屋に飛び込んでいくとは考えにくい。
わざとではないと頭ではわかっていても、何故か笑いをかみ殺せない夜になったのだった。



瑠璃子さんはとても可愛いのです。
皆さんぜひgoogle画像検索で調べてみて下さい。
きっと鼻息が荒くなります。(*´▽`*)