三魔王異世界珍道中   作:ヤマネコクロト

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ガラク達の襲撃を難なく退けたモモンガ。己のやりたい事を見つけ、”アインズ・ウール・ゴウン”を名乗る事を決意する。そして、リムルに説教くらいながら宿屋へ戻ったその翌日・・・・・・

※今回オリジナルスキルやらなんやらが出ます。そのあたりはご容赦願います


シエル先生が一晩でやってくれました

◆◇◆

 

【side:ディアヴロ】

 

翌朝、小窓から差し込む光で目が覚める。昨日は散々だった。魔術師協会に絡まれるわ、リムルに説教されるわ・・・・・・このだるさはきっとその所為だ、そうに違いない

 

それにしても、やっぱり異世界に来てるんだよなぁ・・・・・・見知らぬ天井、見慣れない壁、更には藁にシーツをかけたベッド。ブランケットは蹴とばしたのか、身体にかかっていなかった。目が覚めたらすべてが夢、なんてことにはならなかったか

 

今は何時だろうか・・・・・・ゲームなら時計が画面端のところに表示されていたが、そんな都合のいいものなどない。もう他の四人は起きているだろうか。そういえば、昨日は部屋に戻ってすぐ寝てしまったため前後の記憶があいまいだ。レムとシェラはどこで寝たのだろう?床とかだったらすごく申し訳ないな・・・・・・

 

そう思いながら、身体を起こそうと左右に手をついた

 

 

むにっ

 

もにゅんっ

 

 

……よし、落ち着けおれ。落ち着くんだ・・・・・・素数を数えて落ち着くんだ・・・・・・

この柔らかい感触・・・・・・そんなギャルゲーみたいな展開あってたまるものか。いや、しかし・・・・・・

 

俺は意を決して、自分の両手に視線を向ける

 

まず、『むにっ』の方―――黒色の薄い衣服だけを身にまとったレム

次に、『もにゅんっ』の方――豊満な身体をゆるいローブだけで隠したシェラ

 

服の上からではあるが、俺の右手はレムの胸を、左手はシェラの胸を揉んでいた

 

お、落ち着け!落ち着くんだ!魔王はこの程度でうろたえないっ!!

とにかくっ!二人の胸から手を離さねば!

 

そう思った時だった。ドアの方からノックの音が聞こえ、開かれた

 

「ディアヴロさん、もうそろそろ朝食ができるそうで・・・・・・す」

 

モモンガ改めアインズが入ってきて俺達がいるベッドを見るや否や、固まってしまう。そして

 

「・・・・・・(お邪魔しましたー)

 

起こさないように気を使ったのかは知らないが、小声で静かに部屋から出て行きドアを閉めた

 

「お、おい待てアインズ!?これには訳が」

 

「んー・・・・・・ディアヴロうるさいー・・・・・・」

 

「……なんですか、騒々しい・・・・・・」

 

アインズに弁明の機会すら与えられないまま、俺の声で二人が起きてしまった。そして、自分たちの胸に違和感を覚えたのかそちらに視線を移すと、みるみるうちに顔が赤く染まっていった

そんな彼女達に俺が二人にかけた言葉というと

 

 

「シェラの胸は揉みごたえがあるが、レムの膨らみかけも至高だぞ」

 

 

いい笑顔で声をかけたその後、二人の絶叫が響いた

 

なお、朝食でリムルに≪思念加速≫で恨みの呪詛を吐かれたのは俺だけしか知らない

 

 

◆◇◆

 

【side:リムル】

 

全く・・・・・・ディアヴロくんめ、朝からラッキースケベができてうらや(ゲフンゲフン)けしからん!

 

俺達は今、酒場の席に座って朝食をとっている。昨日はセレスティーヌが人払いをしたため他に人はいなかったが、今朝は人がごった返している。主にいるのはレムのような獣人やグラス・ウォーカーなどの亜人達だ。人間(ヒューマン)の姿は一切ない。このあたり差別とかありそうだな。さっきからチラチラと視線を感じる。悪意とかそういった視線ではないが、あまりいい気分ではないな

 

ちなみに、今朝の被害者であるレムなんだが・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

黙々と朝食に出されたジャガイモを木のフォークで刺し続けていた。どうやら静かに怒るタイプらしい。ディアヴロくんが謝ろうと声をかけてはいるが、一向に聞く耳を持とうとしなかった。しばらく放っておくのが吉だな

 

そうそう、モモンガくんの食事の件についても解決済みだ

 

「……ああ……ジャガイモがこんなにおいしいなんて……このスープも具がそんなに入ってないのに深い味わいが・・・・・・」

 

今は仮面を外して、昨日門番たちに見せていた顔で出された料理に舌鼓を打っている

 

流石のシエル先生である。今のモモンガくんに適切なスキルを作成してくれた。その名も≪人体構成(アコガレルスガタ)≫。名前の通り、魔力を魔素に変換し、変換した魔素で人体を構成するスキルだ。これにより、以前モモンガくんが検問を通るときに使った幻術と同じ顔の他に人体を構成するあらゆる器官を作り出すことができる。当然、魔力を消費するので時間が限られ乱用はできないが食事をするくらいなら余裕でできるため問題ない。更に食べた物は魔力に還元されるという優れものとなっている。しかし、食事によって還元される魔力の量は微々たるものなので、元を取ろうとするとそれはもう大量に食べないといけないというデメリットがある。効果としては微妙なところだが、食事を可能にするのが目的と言っても過言ではないのでこのくらいで丁度いいのだ

 

それと、モモンガくんの精神の抑制についても対処済だ。精神は肉体に引っ張られるとはよくいったもので、いかなる状況でも冷静でいられるのはかなりメリットがあると思われるが、それでも楽しみにしていた食事の感動を邪魔されるのは遺憾だろう。そこで、シエル先生がどんな行動をとったかというと・・・・・・モモンガくんの精神体(スピリチュアルボディ)を別の器で保護し、その精神を守るというものだった。

そしてその器に選ばれたのが、モモンガくんが今も所持している≪世界級(ワールド)アイテム≫の宝玉だ(通称モモンガ玉というらしいが命名したやつのセンスはどうなっているんだ)。精神体の移動も可能で、戦闘時などの際は宝玉からアンデット体へ、普段であればアンデット体から宝玉へといった感じに分けて過ごせるようになった

 

まあ、うん。スキル作成とかご無沙汰だったから張り切りすぎたっていうのもあるだろうけど、シエル先生頑張りすぎです

 

「あー・・・・・・パンってこんなに柔らかいのか・・・・・・スープに浸して食べると味が染みて・・・・・・」

 

……モモンガくんも楽しんでいるみたいだし、いいか。シエル先生の能力贈与の時の声を聴いたモモンガくんの驚き様も面白かったし

 

レムの無言の威圧に耐えかねたディアヴロくんが話題を振る

 

「そういえば、この宿には亜人ばかりで人間がいないようだが、なぜだ?」

 

「……亜人の宿に人間は泊まりません」

 

まだご立腹なのか、ジャガイモを惨殺しながら淡々とレムが答える

 

『設定どおり、人間の領土では亜人達は嫌われ者のようだな。ゲームではそのような風潮なぞなかったからあまり意識してなかったが・・・・・・』

 

『それはプレイヤーが『人間』だったからでしょうね。同じ人間がプレイしているのだから種族差別なんて起こり得なかったんでしょう・・・・・・そう考えると、俺がプレイしていた≪ユグドラシル≫のプレイヤーは相当異質に思えてきました。異形種プレイヤーというだけで躊躇なくPK(プレイヤーキル)を仕掛けるほどでしたし』

 

うわぁ・・・・・・自由度の高いゲームと聞いていたがマナーもエチケットもないな・・・・・・

これはラミリスやヴェルドラを連れてくるのはやめた方がいいかもな・・・・・・あいつらなら絶対に騒ぎを起こす。間違いなく起こす。特にこの世界の人間、特に貴族階級の奴には気をつけておかないと。差別が特にひどいのがそのあたりの人間だろうし

 

「あ、そういえばこの国・・・というよりも、この世界にはレベルという概念が存在しているんですか?」

 

モモンガくんが思いついたように、レムに質問する

 

あ、それは気になる。レベルなんてゲームの仕様みたいな概念で強さを測っているのなら、その計測方法もあるはずなのだ

 

「……ええ、確かにわたし達はレベルで各々の強さを測っています。ちなみに、わたしはレベル40の召喚士です」

 

「レベル・・・・・・あたしは、ない・・・・・・かな」

 

シェラが気まずそうに、レムは多少機嫌が直ったのか得意げに答える。ナイスだ、モモンガくん。意図せずとは言え、雰囲気がよくなった

 

「そのレベルはどうやって測ってるんだ?目視で測れる訳じゃないだろうし、計測できる魔道具とかあると思うんだが」

 

「……魔術師であれば、魔術師協会が定める基準があります。リムルさんのおっしゃる通り、レベルを判定する方法があるのですよ。他の職業には詳しくありませんが、冒険者協会にいる試験官が決めるのだとか」

 

「そうそう!だから、あたしのレベルがないのは、まだ冒険者登録してないからで、レベルを測ったらきっと40か50だよ!」

 

シェラが意気揚々とそのエルフ耳をひょこひょこと動かしながら宣言する。その耳動かせたのか

そんなシェラを見たレムのしっぽが左右に振られる。まるで、ナイナイと手の代わりに否定しているようだ

 

「……どう考えても、あなたのレベルは10かそこらです・・・・・・基準より10は低いでしょう」

 

「そんなことないもん!エルフの国の協会では、40だったんだから!」

 

「……エルフの国で、魔術師の判定が?」

 

「えっと・・・・・・その・・・・・・射手として」

 

「……それって召喚士にならなくても射手として登録したら普通に活躍できるんじゃないのか?」

 

「射手は独りっきりなんだよ!?召喚士だったらカワイイ召喚獣がいっぱいいるじゃん!暗い夜の森とかも寂しくないもん!」

 

「……あなたは可愛い召喚獣が欲しかったのですか・・・・・・そうですか、そうですか。それではディアヴロもモモンガもリムルさんも要りませんね。そもそも、召喚獣ではないですし」

 

「強さも必要なの!」

 

……また喧嘩が始まった。まあ、ギスギスした空気になるよりかはいいか

 

「ああ、そういえば皆さんに折り入って頼みたい事があるんですが」

 

「どうしたんだ?改まって」

 

「実は、昨日決めたことなんですが名前を変えようかと思いまして」

 

おや、どういった心境の変化だろうか。まあそのくらいなら別に構わないんだけど

 

「え?どうしたの急に」

 

「この世界でやりたい事が決まったんですよ。これはその為の、誓いのようなものですね」

 

「へぇ、決まったのか。それで、どんな名前にするんだ?」

 

「これから私は、『アインズ・ウール・ゴウン』と名乗ることにします。そしてこの名を、世界中の人々に轟かせたい」

 

確かその名前はモモンガくんが所属していたギルドの名前だったな・・・やはり捨てきれなかったか。だが、それでいいのかもな。昨日の一件がきっかけだったのかもしれないが、彼が選んだ道だというのなら俺達がとやかくいうのも野暮というものだろう

 

「……そうか、頑張れよ。こればっかりは俺達が余計な手を出すわけにもいかないしな」

 

「ええ、それは理解してますよ。私の”わがまま”に貴方方を巻き込むなんてできませんし」

 

「でもでも!あたしがモモンガ・・・じゃなかった、アインズについていくならいいんだよね!?」

 

あ、そうきたか。確かに勝手についていく分には問題ないんだろうが・・・・・・この子結構図々しいな。いやまあモモンガくん改めアインズくんがいいならそれでいいんだが。あ、レムがムスッとしてる

 

「まあ誰についていくにしても、先立つ物がなければ話にもならん。食べ終わったら冒険者協会にいくぞ」

 

「そう、そうだよ!あたしも冒険者登録して稼がなきゃならないの!アインズ達が一緒なら安心だよ!」

 

こいつさり気に俺とアインズくんも一緒に行く事にしやがった。確かに俺も路銀稼ぎに登録しようとは思ってたけども、強引なところがどこかの冒険者三人組パーティの紅一点とそっくりだな

 

「……バカエルフは放っておいて、わたしも冒険者協会に三人を連れて行きたいと思っていたところです。特に、三人のレベルが気になります」

 

そういえば俺のレベルってこの世界で測れるのか・・・・・・計測不能とか言われたら間違いなくひと悶着あるだろうな。ま、レベルの計測方法知ってから考えるか

 

そう思いながら、マッシュポテトにされていない最後のジャガイモにフォークを刺した。この時、アインズくんも狙っていたらしく取られた事に落胆していた

 

ふふん、あいにく食に関して俺は一切妥協しない男なのだよ

 

 

◇◆◇

 

【side:アインズ】

 

レムさんの案内で、俺達は今冒険者協会の前にいる。冒険者協会はファルトラの西部に位置しており、宿屋からはそんなに離れてない位置にあった。他の建物の三倍か四倍くらい大きな建物だったので一目でわかるのは助かる

 

大きな扉をくぐり、中に入るとどうやら一階は酒場になっているようだ。しかし、内装は宿屋のそれと共通点はあっても、いたるところが汚れていたり、カウンターや椅子などに破損が見られる。

酒場の荒れようを見る限り、ここにいる冒険者は血の気が多いようだ。今も、掲示板のような大きな板の前で言い争っていたエルフの女性とドワーフの男性が喧嘩を始める。なんだこの世紀末臭漂う場末の酒場は・・・・・・

 

『これは・・・・・・シェラさんが一人で来たがらない訳ですね』

 

『ぬぅ・・・・・・これが”ゲーム”と”現実”の違いということか。しかし、ここまで荒れているとは思ってなかったぞ』

 

『まあこっちにも似たような組織があったけど、割と雰囲気近かったな』

 

うーん、冒険者ってそういった人達がなる職業なのか・・・・・・これはまた絡まれそうだな

って、そう思ってたらこっちに気づいた人がいた

 

「……なんだ、あの混魔族(ディーマン)?」

「角が生えている者など、見たことがねぇな。それにあの怪しい仮面の魔術師、まさか魔族じゃねぇだろうな」

「一緒にいるのはレムさんと、あの姓を持つエルフのお嬢ちゃんだよな?レムさんもエルフの嬢ちゃんもかなりの腕だったはずだが・・・・・・?」

「あれは、隷従の首輪だよな?まさかもう一人の嬢ちゃん(・・・)も?」

「あいつら、何者だ?」

 

でっすよねー・・・・・・まあ、いきなり絡んでこなかっただけマシか

 

『くっ・・・・・・昨日からそうだが誰か俺が男だと気づいてくれる奴はいないのか・・・・・・!?』

 

リムルさん、それは俺達ではどうにもできないんで何とか頑張ってください

レムさんが騒動を無視して階段を指差した

 

「……行きましょうか。少々騒がしいですが・・・・・・いつものことです。冒険者登録は二階のカウンターです」

 

「う、うん」

 

俺達三人は階段へと向かう。このまま何事も起きませんよーに・・・・・・

 

 

「待て、そこの角の生えた混魔族と怪しい仮面の魔術師!」

 

残念、また絡まれてしまった。

振り向くと、煌めく黄金の鎧を身にまとった人間の青年がいた。腰にはロングソードが提げられている

 

「……エミール」

 

「げげ」

 

レムさんとシェラさんが嫌な顔をしている。知り合いみたいだが、友達という関係でもなさそうだ。エミールと呼ばれた青年は、ディアヴロさんの顔をまじまじと見て、フッと笑う

 

「悪そうな面をしているな」

 

「なんだ、こいつは?」

 

エミールの挑発とも取れる発言を気にも留めずに、ディアヴロさんがレムさんに尋ねる

 

「……この人は、冒険者協会で一番強いと言われている戦士です。戦士系職業の試験官も務めているはずです」

 

結構偉い人だった。しかも冒険者協会で一番強いとは・・・・・見かけで判断できないものだな。だが、実際の強さはどのくらいなのだろうか。ガラクの件もあるからな・・・・・・

 

「その通り!俺様の名前は『エミール・ビュシェルベルジェール』!レベル50を誇る≪怪力戦士≫である!」

 

レベル50・・・・・・昨日のサラマンダーよりかは強いが、これで冒険者で一番強いとなると他の冒険者達の実力もそこまで強くないのか。この辺りって本当に適正レベル60の地域なんだろうか

 

「それで、エミールさんでしたか?我々に何が御用でしょうか?」

 

「ふ、知れたこと。お前たちは知らないだろうが、俺は女性が大好きなのだ!」

 

「「「は?」」」

 

見事に俺達三人がハモった。いや、初対面の俺達に何言ってんのこの人

 

「レムちゃんとシェラちゃんに首輪をつけて連れ回す貴様らを、俺様は許せんのだ!その二人を奴隷にするなど、貴様らは余程あくどい事をしたに違いない!」

 

うわぁ、そう捉えるのか・・・・・・いつの間にか冒険者たちが集まってきており、エミールに同調するように「そうだ、そうだ」と声があがる。ていうかあっちの喧嘩終わったのね

 

「あまつさえ、そこのお嬢さんまで無理やり連れてきて!二人のように奴隷にするつもりか悪「誰がお嬢さんだ、キザ野郎!?」へぶぅ!?」

 

とうとう切れたリムルさんがエミールの顔面を、ハリセンでぶっ叩いた。昨日から思ってたんですが、そのハリセンどこから取り出してるんですか

 

「・・・・・・あっ、いけね。ついやっちまった」

 

フラストレーション相当たまってたんですね、リムルさん

 

 

◆◇◆

 

【とある三大魔王の思考会議その7】

 

リムル『エミール・ビュシュビュッくそっ!?』

 

アインズ『エミール・ビュビュッくぅ、噛んでしまった』

 

ディアヴロ『エミール・ビュシェルベビュッくそっ、惜しい!?』

 

『『『・・・・・・あいつ、よく噛まなかったな』』』

 

 

 

 

 

 




うん、ついにやってしまったオリジナルスキル。ない頭使っていろいろ考えた結果がこれである(反省はしている。だが後悔は(ry

ルビのセンスもそこまでないので何卒ご容赦願います

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