短編の非日常   作:ミスター超合金
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アポカリプス・デイ

 明日死んだらどうしますか。死因は不問とする。こんな質問を唐突にされた場合、大抵の者は咄嗟に答えられないだろう。
 何時死んでしまうか解らないから後悔しないように生きているつもりであり、万一の事態に備えてという心理を突いて保険屋は店を構えている。あくまで現代社会でも平和な日本の話であり海外については解らないが……。


 ただ何であれ例外はある。備えても意味の無い、或いはそもそも備える段階から無理な場合だ。




「抵抗する奴だけ殺せ! 投降した者は捕虜にして、収容所へ転送しろ!!」


 突如として冥界の悪魔統治領域へ、全く未知の勢力が進行してきた。最悪のタイミングだとサーゼクスは舌打ちした。最近()()()()反乱に政府軍の大半を割いているのだから。
 侵略者は個々の実力こそ低いがそれを補って余りある物量作戦を展開し、出撃した最上級悪魔達を圧倒。半日足らずで四割が陥落してしまった。


 要因は2つ。先ず、同盟により援軍としてやって来た天使、堕天使達の光が効かない。敵は悪魔や魔物。故に最前線を任せたのだが雑魚を何匹か倒すだけで致命傷には至らなかった。
 そして最大の特徴は……。




「サイラオーグ様、連中は甦ります!」


「くそッ! どうやって倒せば良いんだ!?」


 殺しても殺しても起き上がってくる点にある。頭を撃ち抜かれようが幹竹割りにされようが、骨や蟲が集まって新たな身体を形成するのだ。
 完全に戦意を削がれ、命あっての物種とばかりに民衆や兵達は投降する始末。連携も取れぬまま悪魔側は個々に立ち向かい戦死するか生け捕りにされた。


 首都が落ちるのも時間の問題だった。


▼▼▼▼▼


「バロム幕僚長より首都以外の全エリアを完全制圧したとの通信です」


「捕虜が八万を越えました。至急、強制収容所の拡大をなされた方が宜しいかと思われます」


 へドリアンやデスパペットの報告をブラックモナークは満足そうに聞いていた。思ったよりも簡単に一勢力を落とせそうだ。ブレインジャッカーを貴族共に寄生させた甲斐があったというもの。
 赤ワインを飲み干すと隣に座る少女達の腰に手を回した。


 白音、黒歌。初めてこの世界に降り立った際に保護した姉妹だ。親として、同時に愛人として手塩にかけて育ててきたお陰か二人共に美しく成長した。
 今やブラックモナークのお気に入りだ。


「見ておけ。もうすぐ冥界は我々の物になる」


 亡者で溢れ返った魔王城を眺めながら彼は呟いた。そしてその数時間後、悪魔政府から降伏文書が送られてくるのだった。




「まあ、政府軍や実力者は殆ど戦死するか捕虜にしたからな。貴様が何れだけ強かろうが孤軍奮闘は叶うまい?」


「私はどうなっても構わない、捕虜となった悪魔の命や人権を保証して貰えないだろうか! 妻子も助命して欲しい!!」


 目の前に連れられたのは、鎖で繋がれたサーゼクスとその妻子、後は貴族達。他の魔王は戦死したとの事だ。懸命に命乞いをしている豚は後でパラサイトワームの餌にするとして……。サーゼクスを殺すのは惜しい。
 内政や統治の才能については兎も角、戦闘能力については目を見張るものがある。


 今後を考えても戦力が多いに越した事は無い。となれば腹は決まった。それに先程どうなっても良いと宣言してくれたところだ。手間が省ける。
 跪く彼にブラックモナークは囁いた。


「では我の部下になれ。そうすれば貴様が望む者の命を保証してやる。ただし二人までだ。それ以上は貴様の働きによるが」


「……ッ! 解りました。ブラックモナーク様の軍門に下ります」


 二つ返事で了承したサーゼクス。覇王の部下になるというのがどういう事なのか、彼はまだ甘く考えていた。




 こうして冥界は一日で手中に落ちた。覇王が次に狙うのは天界か、堕天使領か……。




世界が終わる。そして、フィオナの森が燃える。