バンザーイバンザーイバンz(バンバンバン
――個人的には「
そんなこんなでエイプリルフールも過ぎ去り、本日は鉄血最終話の放送日。
あの最終話から、既に二年。
明日で本作第一話の投稿から、ちょうど二年。
恐ろしい限りですが、まさか二年後も書いてるなんて当時の私は思いもしていませんでした。
ありがたいコトでございます。
鉄血アプリゲーの最新情報まだー? 特にゲーム面。
そんな感じで、番外編最終話。
大分期間が開いてしまいましたが、今回で終了です。
後書きは今回の番外編全体の振り返りとなっています。
それでは、どうぞ。
―interlude―
悪夢だ。
終わらない悪夢を、見ているようだった。
ついさっきまで近くにいた仲間が、よく分からないモノに乗せられ、よく分からないモノに繋がれ。
痛がり、苦しみ、発狂し――赤い血をとめどなく流しながら、悉くが死んで行った。
『また、失敗か』
男は言った。何の感情も孕まない声で。
そいつが、全ての元凶であり、絶対の悪だった。仲間が死んだのも、私が悪夢を見させられ続けていたのも、そもそも私があそこにいたのも――全て、その男のせいだった。
男の名は、ヴェノム・エリオン。
奴はギャラルホルンを治めるセブンスターズ、その第四席「エリオン家」の当主にして、ギャラルホルン最大戦力を誇る月外縁軌道統制統合艦隊「アリアンロッド」の司令官だった。
ギャラルホルンの権威を笠に着て、ヴェノムは様々な闇深いコトに手を出していた。
その究極と言えるモノが、ギャラルホルンの始祖たる初代セブンスターズが禁止した、人体の機械化の極点に存在する一つの技術――「阿頼耶識」の研究だった。
圏外圏で生き残っている阿頼耶識技術は、厄祭戦時の物からかなり劣化している。圏外圏で阿頼耶識手術を三回受けて、ようやく厄祭戦時の阿頼耶識一つ分の交感能力と匹敵する程に。
ヴェノムは圧倒的な操縦技術と戦闘能力を獲得出来る阿頼耶識に注目し、私兵を極秘裏に阿頼耶識部隊としようとした。
だが、ヴェノム・エリオンは強欲な男だった。足るを知る、と言う言葉を教えた後、無駄を嫌うアビド・クジャンの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい、と言われたくらいには強欲だった。
そんなヴェノムは、圏外圏に在る劣化した阿頼耶識に納得せず、厄祭戦時の阿頼耶識技術を復活させようと目論んだ。
その為にヴェノムは、大量の
人間を用意するなど、本来ならば至難の技だ。だがヴェノムは、その人間をいとも容易く調達した。
ヒューマンデブリ。
圏外圏に存在する、穀物と同等以下の値段で売買される、人間として認められていない存在。そんな彼らを、ヴェノムは五十体ほど仕入れたのである。
かくして全ての準備を整えたヴェノムは、ギャラルホルン本部「ヴィーンゴールヴ」の空きスペースに阿頼耶識の研究施設を設置し、阿頼耶識の研究を始めさせた。だが、その研究は実に酷い物だった。
五十体の内、施術を生き延びたのはたった十体。
残された十体の被験体を、ヴェノムは順番に、とある機体と接続させた。
ASW-G-14 ガンダム・レラージェ。
悪魔が宿るモビルスーツ、七十二機のガンダム・フレームの内の一機。それと接続させ、初代セブンスターズ達がやったように、悪魔の力を引き出させようとした。
結果として八体の被験体が、機体からのフィードバックに耐えられず、死んだ。
そして、ヴェノムが見守る中、九体目――第四十九被験体、後に「アーキタイプ」と呼ばれるようになる男が、実験に使用された。
どうしたい? と、悪魔が聞いてきた。
私は答えた――此処から出て、自由になりたい。
悪魔は言う――ならそうしよう、と。
第四十九被験体と、悪魔レラージェの同調は成功した。遂に、阿頼耶識技術に完全復活の光明が見えたのである。ヴェノムは歓喜に打ち震えた――が。
ガンダム・レラージェは、暴走した。
左腕のワイヤーブレードを機動させて拘束を打ち破り、自由となった機体はパイロットの意志通りに暴れ回り、その場にいたヴェノム・エリオンを叩き潰した。研究施設を壊滅させた後、ヴィーンゴールヴの外壁を中からブチ破り、圧倒的な機動性を以て逃走した。
研究は、それで終わった。研究施設は封鎖され、組織に改めて「阿頼耶識」が禁忌の力であるコトを認識させた。
当主を失ったエリオン家は、二十にもなっていなかったヴェノムの一人息子、ラスタル・エリオンを当主とし――司令官を失ったアリアンロッドは、新たにクジャン家当主のアビド・クジャンを司令官とした。
そして――ヴェノム・エリオンの死は病気による急死と発表され、真相は包み隠された。
記録から抹消されたのは、暴走し彼方へと消えたガンダム・レラージェと、第四十九被験体も同様だった。その第四十九被験体は、宇宙へと上がり――海賊「夜明けの地平線団」を組織し、圧倒的な戦闘能力とカリスマ性を以て、宇宙海賊を束ね上げ。
「
―interlude out―
ガンダム・レラージェが、呻り声のような駆動音を響かせ―――その双眸を、真紅に輝かせた。
尋常ならざる雰囲気を纏った
(ガンダム・フレームの眼が赤く輝くのは、リミッターが解除され――パイロットの何かを代償とし、悪魔の力が引き出された時、だったか…)
第四十九被験体。エリオン家前当主、ヴェノム・エリオンが遺した負の遺産。
ゾレイ・サルガタナスと名乗る男は、ギャラルホルン最大の闇を知っている。もしあの研究についてのコトが公開されたなら、ギャラルホルンの信用は地の底へと墜ちるだろう。
だからこそ、ゾレイ・サルガタナスの存在は、ギャラルホルンに取って有ってはならないモノだ。
(ヴェノム・エリオン――全く、その名の通りに
よもや、死した後にまで毒を残して行くとはな)
しかし、既にレラージェによって殴殺された死人に恨みを言っても、どうしようも無い。それは事態の解決に結び付かない、全く以て無駄なコトだ。
(しかし、これは参った――果たして、援軍が来るまで保つかどうか…!)
リミッターを解放し、悪魔の力を引き出したガンダム・フレームの戦闘能力は、カタログスペックを軽く上回るモノだ。事実、アグニカ・カイエルによってリミッターを解放されたガンダム・バエルは、最強のモビルアーマーだった「四大天使」ミカエルをほぼ単騎で撃破してしまっている。
流石にこの辺りは誇張されていると思うべきだろうが、全くの作り話でもないだろう。何にせよ、リミッターを解除されたガンダム・フレームが、常の兵器とは比較にならない戦闘能力を持つのは、まず間違い無い。
その時――レラージェが動いた。
「がっ!?」
アビドの乗るガンダム・プルソンが、右側から攻撃を受けた。レラージェ本体は動いていない、にも関わらずだ。
「ワイヤーブレードか…!」
レラージェの左腕に装備された、MAの技術を流用したと言われる兵装、ワイヤーブレードによる攻撃だ。その速度は、先ほどまでとは比較にならないほど、速い。
(
艦隊指揮を退かせたラスタル・エリオンに任せ、レラージェに全神経を注いでいたにも関わらず、アビドにはワイヤーブレードの放出と機動が見えなかった。本体はその場から動かずに佇んだままだと言うのに、ワイヤーブレードだけが音速を越えて光速にも迫る程の速度で機動している。
プルソンの装甲が格闘戦の為に、分厚く造られていなかったなら――今の攻撃で、右腕は吹き飛んでいただろう。
「アビド様ッ!!」
「バッ、来るな!!」
プルソンが吹き飛ばされる所を見たMS隊が、アビドを援護する為にレラージェに迫る。しかしその一秒後には、ワイヤーブレードによって全機が両断されていた。
「部下をやらせるか…! 貴様の相手は私だ!!」
プルソンは体勢を立て直し、レラージェに向かって突撃する。目視は愚かセンサーですら捉えられないワイヤーブレードを無視して、動かない本体のみを狙う。
しかしその時――遂に、レラージェの本体が動いた。
「!!」
唐突に右腕を振り上げ、バスターソードを目にも映らない速度で振り下ろした。防御は間に合わず、プルソンの頭部が強打され、角がへし折れる。
「うおおおおおおおあああああ!!」
それに怯まず、プルソンは両手のハンマー「レイヴン」をレラージェに振り下ろす。しかしレラージェはブースターを吹かせて後退するコトでハンマーを避け、続いて機体を前に出して左腕を振りかぶり――プルソンを、凄まじい勢いで殴りつけた。
「ぐああああああああああッ!!」
エイハブ・リアクターによる重力制御は間に合わず、アビドはシートから放り出されそうになる程の衝撃を味わう。かくして、プルソンは彼方へと吹き飛ばされて行った。
だが、その隙を狙っていた者がいる。
「ダインスレイヴ隊、放てぇッ!!!」
スキップジャック級大型戦艦「ファフニール」のブリッジから戦闘を見ていた、ラスタル・エリオンである。ラスタルの悲鳴にも近い一喝で、展開していたダインスレイヴ隊が、一斉に特殊弾頭をレラージェに向けて撃ち放った。
レラージェはワイヤーブレードを機動させ、放たれた弾頭の三割を弾いて軌道を変更させた。だが、残された七割が、レラージェに突き刺さった。
レラージェの全身の装甲が吹き飛び、バスターソードが取りこぼされ、レラージェ自身も吹き飛ばされてデブリに叩き付けられた。
「どうだ、これならどうだ…!!?」
そう吐き捨てた言葉を、ラスタルはすぐに呑み込まざるを得なくなる。
それでも――ダインスレイヴの直撃を受けてもなお、レラージェが動いたからだ。
右腕と左足が失われ、背部のブースターも三基中二基が欠損し、武装も左腕のワイヤーブレード以外の全てを損失して――身体を覆う装甲は、ほぼ全てが失われた。
しかしレラージェは、全身からギチギチと音を立てながら、身体に刺さった二本の特殊弾頭を、左腕で引き抜いて行く。同時に、ワイヤーブレードをワイヤーの長さ限界ギリギリまで伸ばして駆動させ、ダインスレイヴ隊を横凪ぎに吹き飛ばして行く。
「何なんだ、あの野郎は――何で、アレで死にやがらねぇんだ!?」
「――ガンダム・フレームは、MAに追い詰められた人類が生み出した、最終にして最強の兵器だ。たかがダインスレイヴ程度で、
その恐るべき光景を見ていたディジェの叫びに、トリクが絶望と共に答える。トリクはその時、ほぼ全てが創作だと思っていた「アグニカ叙事詩」の内容が、真実であると認めざるを得なくなった。
「ガンダム・バエルは止まらなかった。どれほどの損傷を負おうとも、格上であるMAに挑み続けた。同じガンダム・フレームであるガンダム・レラージェが、止まらなくてもおかしくはない――」
「んな訳有るか! 止めなきゃオレらは全滅だ、止めるしかねぇだろうが!
現存するガンダム・フレームが二十六機なら、四十六機は止まってブッ壊れたんだろ!? 止める方法は有るハズだ!!」
「――その四十六機が、MAとか言うガンダムを超える化け物と戦って壊れた、と知らないお前ではないだろう…!
だが、その全ては厄祭戦で破壊された! 己が魂までを捧げ、信念に殉じて戦ったアグニカ・カイエルと、初代セブンスターズによってな!! この世界にはもう、暴走したガンダムを止められる存在なんてねぇんだよ!!!」
珍しく声も口調も荒げて、トリクはそう叫ぶ。
アグニカ・カイエルが「英雄」と呼ばれる由縁。
それは、本来なら決して超え得るハズの無い力を有した「四大天使」を始めとするMAに挑み、機械が持たない「信念」「想い」を振りかざして戦い、
勝てるハズの無いモノに勝ち、終わるハズの無い大戦を終わらせた。人間の身でありながら、奇跡を起こした。起こしてしまった。
故にこそ、アグニカ・カイエルは――初代セブンスターズは「伝説の英雄」なのだ。
此処に、モビルアーマーは無い。
此処に、アグニカ・カイエルはいない。
此処に、リミッターを解除出来るガンダム・フレームは、レラージェの他に存在しない。
この場において、ガンダム・レラージェは最強の存在だ。ギャラルホルンが保有する中で最強の制圧兵器であるダインスレイヴすら、レラージェを止めるコトは出来なかった。
「――だから諦める、って言うのかよ? あの化け物に、大人しく殺されるってか?」
「…他に仕方が無いだろう――もう、どうしようも無いんだからな」
「そうか――テメェは諦めるのか」
トリクはそう言って、俯いてしまう。本体の損傷が激しいとは言え、レラージェにはワイヤーブレードが残されている。あの武装だけでも、この場の兵器全てを破壊出来るだろう。
「―――
しかし、ディジェは俯かない。
「諦めてたまるかよ。こんな所で、死んでたまるかよ! オレは絶対に、死ぬわけには行かねぇ!
オレはアイツらに…アシュリーに、ジレッドに、ガイに、デリックに、プラドに! アイツらに人生ってのは何なのか、教えてやらなきゃならねぇ!! 幸せになったコトがねぇアイツらに、幸せってのが何なのかを教えなきゃならねぇ! アイツらに世界の美しさ、生きるコトの楽しさってのを知ってもらわなきゃならねぇんだ!! やっと――やっとアイツらは、自由に生きられるようになったんだ!!
だから、こんな所でオレは死にたくねぇ!! 死ねねぇ!! 死ぬわけには行かねぇんだよ!!!」
ガンダム・ヴィネが持つ、大鎖鎌「エインヘリヤル」――バクラザン家の魂とも呼べる、扱い辛さの極地に有る武装を掲げて、そのコクピットでディジェ・バクラザンは叫ぶ。
その言葉に、トリクは大きな衝撃を受けた。だがその後、すぐに笑みを浮かべる。
「―――そうか。そうだな……お前はそう言う奴だよな、ディジェ」
決して希望を見失わず、どうしようも無い理想を描いて、その為に自分の命すら賭けられる。
そんな奴だから―――自分に出来ないコトがやれる奴だから。トリク・ファルクはディジェ・バクラザンと言う男を妬ましくも思いながら、その人間性に惹かれ、いつしかこう思うようになった。
「だから私は、お前を助けたいと思う。お前の出来ないコトは、私がやってやろうってな」
ディジェが微笑んだのが、トリクには分かった。トリクの操るガンダム・アモンが、その手に持つスナイパーライフル「ヒュルム」を構える。
「行くぜ、トリク」
「ああ、ディジェ」
それ以上の言葉は無い。
接近戦はディジェ、狙撃戦はトリクの担当だ。それは彼らに取っていつも通りのコトであり、至極当然なコトだった。
「――全く、年を取るのはダメだな。すぐ涙腺が緩んでしまう」
ダインスレイヴが放たれている間に戦線に復帰したガンダム・プルソンのコクピットで、アビド・クジャンはパイロットスーツのヘルメットのバイザーを上げ、指で目元を拭った。そしてすぐにバイザーを下ろして操縦桿に手を掛け、握り直す。
「アビド様、ご無事ですか!?」
「クジャン公、動けますか?」
そんなプルソンの側には、キュル・ミュンヘンが乗るシュヴァルベ・グレイズと、ジルト・ザルムフォートが操るガンダム・ダンタリオンの姿が有る。
そして、戦場の中心に在るレラージェは、アリアンロッドのモビルスーツ部隊に取り囲まれている。最早、逃げ場などどこにも無い。
「無論だ。―――夜明けの地平線団は、既に壊走した。後はあの大破しているガンダム・レラージェを無力化すれば、全てが終わる。
全隊! 士官学校卒業直後の若造どもなんぞに、遅れを取るなよ!!」
『はっ!!』
その言葉を火蓋として、アリアンロッド対ガンダム・レラージェの、最終決戦が開始された。
◇
ガンダム・レラージェ本体に、マトモな戦闘力は残されていない。実の所、ダインスレイヴによる損害は極めて深刻なモノだ。本来なら、動けるハズのない状況にまで、レラージェは追い込まれている。
レラージェに驚異的な速度を叩き出させていた三基のブースターは二基が粉砕して一基が損傷しており、保持していた武装もほぼ全てが失われ――右腕と左足が全損しただけでなく、全身の装甲が弾き飛ばされている。完全なる丸裸、吹けば飛ぶ程度、銃弾一発で破壊されるくらいの装備だ。
だが、唯一残された武装――ワイヤーブレードこそが、レラージェをこの場に於ける最強の存在として君臨させていた。
「チィ…!」
「く…!」
「何と…!」
「おのれ――!」
ガンダム・ヴィネの大鎖鎌「エインヘリヤル」。
ガンダム・アモンのスナイパーライフル「ヒュルム」。
ガンダム・プルソンのハンマー「レイヴン」。
ガンダム・ダンタリオンの鎧「ハーフカウル」。
その全てによる一斉攻撃を、レラージェはワイヤーブレード一つで捌き切っていた。
「撃て! アビド様を援護するのだ!」
周囲のMS部隊もライフル射撃によって四機のガンダム・フレームを援護するが、大半はワイヤーブレードによって弾かれている。ワイヤーブレードを何とかしなければ、レラージェを止めるコトは出来ない。
が、その時――ワイヤーブレードが限界以上の速度で動き、ラスタル・エリオンが座乗する遠方のスキップジャック級大型戦艦「ファフニール」のブリッジへと、一直線に伸びた。
「何ッ…!?」
「やらせるか…!」
一番近かったプルソンがファフニールのカバーに入ったが、ワイヤーブレードはプルソンごとファフニールのブリッジを貫く為に、避ける素振りも無く真っ直ぐ突撃を掛けて行く。
ワイヤーの長さとしては、かなりギリギリだがファフニールのブリッジに届く。届きさえすれば、ナノラミネートアーマーではないブリッジのモニターを割るのは、そう難しい話ではない。でなくとも、間違い無くプルソンには直撃する距離。
ハンマーを盾代わりにすべく両腕を交差させるプルソンだったが、ワイヤーブレードが到達する前に、アビドは悟った――防げない、と。
(だが、ラスタルには届かない――!)
プルソンは避けない。そんなプルソンに、ワイヤーブレードが突き刺さる――直前。
「アビド様ああああああああああああ!!!」
アビド・クジャンの右腕と称される男、キュル・ミュンヘン一佐が乗るシュヴァルベ・グレイズが、横からプルソンを突き飛ばし――コクピットの直下に、ワイヤーブレードを受けた。
「ッ、キュル!!」
「ごッ、がはァ――ッ!」
腰から下を斬られたキュルは激痛に苛まれながらも、シュヴァルベ・グレイズを動かし――機体に突き刺さったワイヤーブレードを、両腕で掴んだ。
「ディジェ、特務三佐…!」
「――ッ、おらァッ!!」
ディジェがヴィネに鎖鎌を振らせ、その特殊超硬合金製の薄刃を以て、ワイヤーブレードのワイヤーを切断した。
「トリクッ!!」
「言われずとも…!」
最後の武装を失ったレラージェに、トリクのアモンが肉迫し――専用の太刀である「アングルボザ」を引き抜き、そのコクピットに全力で突き刺した。
「――か…」
アモンの太刀は、パイロットのゾレイ・サルガタナスの胸を間違い無く貫き――その生命活動を、完全に停止させた。
それを証明するかのように、ガンダム・レラージェのカメラアイの赤い光が、数秒点滅した後――完全に消え失せる。
ゾレイ・サルガタナス。
暗闇より生まれた「朝陽の男」は、この瞬間――永遠の暗闇へと、沈んで行ったのだった。
◇
ディジェ・バクラザンとトリク・ファルク。
士官学校を卒業してから初めての任務は、波乱の内に終了した。
地球に戻った後、ディジェとトリクは二佐に昇進し、監査局から異動。それぞれ部隊を預かり、地球上での治安維持の任務に当たるコトとなった。本来ならもっと良い仕事も有ったのだが、バクラザン家とファルク家が文官寄りの家柄であるコトも有り、本人達の希望も相まって、平凡極まりない治安維持部隊に収まったのである。
休みが多く、ヒューマンデブリだった子供達に会う為、頻繁にヴィーンゴールヴに戻れると言う理由も有った。
それから、十年が経ち――時は、P.D.0325年。
世界の驚愕と共に、二人が待ちわびた「体制が崩壊する時」が、遂に訪れた。
『俺の名は、アグニカ・カイエル!! ガンダム・バエルのパイロットにして、かつて厄祭の天使を狩った者!! そして、ギャラルホルンの最高幕僚長である!!!』
歴史に残される大事件。
地球外縁軌道統制統合艦隊「グウィディオン」の司令、マクギリス・ファリド准将を中心とするアグニカ・カイエルのファンクラブ「アグニ会」が企てたクーデターをブチ壊す形で、その男は世界に声明を発表した。
アグニカ・カイエル。
かつての厄祭戦でガンダム・バエルを駆り、ギャラルホルンを創設したと伝えられる伝説の英雄が、三百年の時を経て蘇ったのである。
声明で、アグニカは「俺はもう一度ギャラルホルンを創り直す」と言った。つまりそれは、現行の体制を一度白紙に戻し、組織体制――ひいては世界体制を一から構築し直す、と言う宣言に他ならない。
ヒューマンデブリ制度の消滅を望むディジェ・バクラザン二佐に取っては、これ以上無い好機だ。
トリクはすぐさま連絡を取り、遠方のディジェと通信を開いた。
「行くんだろう、ディジェ。ヴィーンゴールヴへ」
『ああ。――って、テメェは行かねぇのか? セブンスターズは全員集まれ、ってのが、アグニカ・カイエルが最高幕僚長として出した命令だろ?』
それは百も承知だったが、その上でトリクは
「あのアグニカ・カイエルが、本物であると言う保証はどこにも無い。何せ、本物のアグニカ・カイエルを知る者は、この時代のどこにもいないのだからな。
――それに、セブンスターズが全員ヴィーンゴールヴに集結しているコトを良いコトに、悪事を働こうとする輩は間違い無くいる。なら、それらを抑える役が必要だろう?」
冷静な判断から来たその言葉に、ディジェは頭を掻くが――笑みを浮かべて、こう言った。
『――分かった。テメェの分も背負って、オレが行ってやる』
「ああ。任せたぞ、ディジェ」
通信はそこで切れ、トリクは息を吐いた。そんなトリクに、部下の一人――デリック・ハウイット二尉が、こう聞いてくる。
「よろしかったのですか、トリク様」
「――行きたい気はするがな。まあ、ディジェに任せれば悪い結果にはならんさ」
「…それは、昔からの経験則ですか?」
デリックの言葉に、トリクは笑う。そして、確信を持って一言だけ返した。
「当然だ」
ディジェ・バクラザンとトリク・ファルクについて掘り下げる番外編、これにて終了。
長ぇよ…凄まじく長くなっちまったよ…
誰だよ、最初「一話で終わるだろサブキャラだし」とか言って、余裕ぶっこいてた奴ァ!
ブン殴ってやろうか!? オラァッ!(自分を殴る)
そんな訳でいつの間にか全五話にまでなった番外編(有る意味前日譚?)、お楽しみ頂ければ幸いです。
番外編全体の振り返りをする前に、まずはオリキャラの解説から。
最終話まで初出のオリキャラが出るって、どういうコトなの…?
ヴェノム・エリオン
男性
セブンスターズ第四席「エリオン家」の先代当主にして、ラスタル・エリオンの父親。
当時、月外縁軌道統制統合艦隊「アリアンロッド」の司令官を務めていた。
ギャラルホルンの腐敗を体現したような人物で、各経済圏との癒着によって個人的な利益を上げるなどの後ろ暗いコトを数多く行い、その一環として禁忌とされてきた「阿頼耶識」――それも厄祭戦時代の本来の阿頼耶識を復活させる為、研究させていた。
四十九回目の実験を見学していた所、使用された第四十九被験体とガンダム・レラージェが暴走し、その際レラージェに殴殺されて死亡している。
名前はハーメルン内の鉄血二次創作「アグニカ・カイエル バエルゼロズ」に登場するオリジナルキャラクター、初代エリオン家当主「ヴェノム・エリオン」から流用。
許して下さい何でm(ry
名前の意味が「蛇の毒」らしいので、伝承では蛇でもあるファフニール(エリオン家の家紋)の毒、蛇(=ギャラルホルン)の毒などと言った意味を持たせてみました。
格好いい名前なのに、役回り最低ですね…。
ちなみに、元作品のヴェノムさんはアグニカに依存したヘタレ。かわいい(錯乱)
以下、この番外編全体に関しての後書きを少し。
少しか…少しで済むんでしょうか…?
この1.5話となる番外編(全五話)は、最初の前書きに書いた通り、本作のオリキャラであるディジェ・バクラザン、トリク・ファルク両名について掘り下げるコトを目的としています。
主題は勿論ディジェとトリクで表されていますが、副題はヒューマンデブリの子供達と、ゾレイ・サルガタナスが表現しています。
この番外編を書くに当たって、まずディジェ・バクラザンとトリク・ファルクと言うキャラを、一から再構築し直しました。
二人とも根本的な部分は変わっていないつもりですが、特にトリクは本編との変化が大きいキャラクターになっていると思います。
作り直したイメージを、二人の経験と言う面から補強して行くような形で、番外編のストーリーは組み立てられています。
その場で考えたキャラや展開なども有りますが、これはもう私の悪癖のようなモノなので…。
とは言え、終わりのシーンを決めた上で書き始めたのは一年経っているが故の成長だと思います。
その程度のコトを成長と言って良いのかは、甚だ疑問では有りますが…まあ成長ですよね!(前向き)
ではこれからは、ストーリー順に振り返って行きたいと思います。
まず第一話「ギャラルホルン」は、十年前のセブンスターズ会議から始まりました。
その為、最初はサブタイを「セブンスターズ」にするつもりでした――が、第一話にディジェとトリクの「バエルの祭壇」訪問を含めたコトで、セブンスターズより広義の「ギャラルホルン」に落ち着きました。
ここで、二人のオリキャラが登場します。
イシュー家前当主「オルセー・イシュー」と、クジャン家前当主「アビド・クジャン」です。
オルセーはこれ以降出番が無い、まさにチョイ役。
本編でも生きているんですが、重い持病を患って伏せっています。
ただ、アビドは私も想定していなかったほど、ストーリーに関わって来るキャラクターになりました。
イオク様のお父上とは思えないほどの有能っぷり。
正直ビビってますよ、私…。
ちなみにあの戦いの三年後、病気に掛かって急死しています。
特に暗殺とかでは無く、素で死にました。
十年前のセブンスターズ会議は、うるさい無能ことイオク様がいらっしゃらない分、有意義な会議が行われております。
ただ厳かなだけでなく、時折談笑が混じるのは、あの場に集った当主達が猛者ばかりだからなのでしょうか?
ちなみに、あの面子の中では、ラスタル様が一番年下です。
ラスタル様が若造扱いされるセブンスターズ会議とか、何それ怖い。
セブンスターズ会議の決定に従い、士官学校卒業直後のディジェ・バクラザンとトリク・ファルクは、ギャラルホルン最重要施設「バエルの祭壇」へ。
本編時は「バエル宮殿」と表記していましたが、公式により正式名が「バエルの祭壇」だと発覚したので、こちらを採用しています。
当たり前のように「入るには五百アグニカポイントが必要」とか書いてますけど、よくよく考えなくても設定が狂ってる。
キチンとシリアスを破壊し腐りやがりました、くたばれアグニ会(ブーメラン)
そしてディジェ、バエルに乗ってみる。
阿頼耶識が無いので、当然動かせませんが。
本編三十三話でディジェが言った「オレにも動かせなかった」と言うセリフを回収した形になります。
ここでギャラルホルンにとっての「ガンダム・バエル」がどんなモノか、という説明が混じっていますが、まあ皆様聞き飽きてますよね。
正直、私も飽きてます。原作のマッキーェ…。
そこから「ガンダム・ヴィネ」と「ガンダム・アモン」の存在が仄めかされた所で、第一話終了。
第二話「夜明けの地平線団」。
この回だけ凄まじく短い…仕方無いね!(開き直り)
アビド・クジャンの読み通り、ディジェとトリクは監査局に配属され、火星行きを命じられます。
この辺りはマクギリス、ガエリオと同じ感じ。
「セブンスターズはこうなるコトが多い」って言うのはオリジナル設定ですが――卒業早々に特務とは言え三佐になるのは、どう考えても正常な人事ではない…流石はセブンスターズ、ギャラルホルンの始祖たる七人の英雄、その末裔。
この監査団にアビドのアリアンロッドから貸し与えられたハーフビーク級宇宙戦艦は、アビドの右腕とも言えるキュル・ミュンヘン一佐によって率いられています。
それどころか、MS部隊はアビドの親衛隊から出頭している、正真正銘の精鋭揃い。
そして、アビドはジルト・ザルムフォートにも応援を要請しています。
このコトから、アビドが如何にゾレイ・サルガタナスを警戒していたかが分かりますね。
しかし――わざわざ番外編を書くんだから、ただ平穏に終わるハズが無いんだなぁ、これが!
そんな訳で、夜明けの地平線団とギャラルホルン監査団の戦闘が開始されます。
戦闘はゾレイが来るまで、監査団の優位で進んで行きます。
精鋭揃いであり、ディジェとトリクも士官学校を主席と次席で卒業していますからね。
ディジェとトリクのシュヴァルベ・グレイズが、ここで初登場。
当時のシュヴァルベは、まさしく開発されたばかりの、最新鋭モビルスーツ。
ディジェ機はヴィネの鎌を意識した槍(鎌は流石に用意出来なかった)、トリク機はアモンを意識してスナイパーライフルやハンマーが装備されています。
シュヴァルベ・グレイズは好き勝手武器持たせられるので、設定作るのが楽しかったです。
第二話は、この番外編のラスボスである「夜明けの地平線団」首領ゾレイ・サルガタナスが、ガンダム・レラージェに乗って登場しています。
ゾレイ・サルガタナスは、シャア・アズナブルとフル・フロンタル、ゾルタン・アッカネンから要素を少しずつ持ってきて混ぜ合わせ、鉄血世界特有の殺伐さをトッピングしたようなキャラクターです。
私怨で行動しているのはシャア、敵に対し容赦が無いのはフロンタル、加害者であり被害者でもあるのはゾルタン。
セリフがシャア(フロンタル?)っぽいのは、完全に私の趣味。
「機動戦士ガンダム
と言うか、NTを観ていなかったら、このゾレイ・サルガタナスは生まれなかったと思います。
生まれていたとしても、ただの悪役で終わっていたでしょう。
ありがとうNT、ありがとうゾルたん。
名前はゾレイ(悪魔レラージェの別名)と、サルガタナス(レラージェを配下とする上級精霊)から。
二つ名である「朝陽の男」は、夜明けの地平線に有る「朝陽」そのもの「の男」、と言う意味。
この二つ名は直感で付けましたが、良い感じにはまってくれました。
ガンダム・レラージェは、厄祭戦編の「四大天使」ウリエル戦で宇宙に放り出されてから、完結編でアリアンロッドが回収してガンダム・レラージュリアになったと明かされるまでに、長い空白期間が有りました。
そこを利用する形で、この番外編のラスボス機として大抜擢させて頂きました。
退場の仕方、再登場の仕方の都合からメチャクチャ使いやすい立ち位置にいるレラージェ兄貴、有能。
なお、名前は本編との差別化の為にちょっと付け足そうかとも思いましたが、色以外に姿は変わってないのでそのままで。
断じて面倒臭がったとかでは有りません。断じて!
武装は複雑な展開機構を有するレラージェ・ライフルが失われていますが、肝心のワイヤーブレードは残されています。
コイツが思った以上に、凶悪な大活躍ぶりを見せてくれました。
やはりワイヤーブレードは強い。ハシュマルとガンダム・バルバトスルプスレクスもそう言ってる。
そんなゾレイが登場した所で、第二話終了。
登場時に「さあ――奪わせて貰おうか、ギャラルホルン」と言うセリフが有りますが、これは自分から全てを奪ったギャラルホルンへの皮肉だったりも。
第三話「朝陽の男」は、いきなりの戦闘からスタート。
タイトルは「ヒューマンデブリ」と迷いましたが、ここはゾレイの二つ名にしておこうと思い、これになりました。
颯爽と現れたゾレイ、精鋭部隊を翻弄。
強すぎる…まあ、ゾレイの阿頼耶識は本来の阿頼耶識ほどでなくても、圏外圏の物よりはかなり精度が高いので。
そんな阿頼耶識を三つ付けられてるので、設定上はミカよりも強かったりします。
厄祭戦時のガンダムパイロットには負けますが。
この回はガンダム・ダンタリオンの見せ場。
ダンタリオンの恥も外聞も無く、純粋に敵への殺意に満ちた武装好き。
プラモは持ってない…すまない…。
閃光のハサウェイ上映時に発売されるであろうHGペーネロペーは絶対に買うので、許してバンダイ。
ミノフスキークラフトは、こっちがマザーマシンだと言うコトを思い知らせてやる!
何か最近フェネクス(ゴールドメッキ)が欲しいんですけど、多分気のせいだよね。
そしてこの回は、ディジェの心境に大きな変化が訪れます。
ヒューマンデブリ、と言う奪われる者でしかない子供達を前にして、ディジェは決意を新たにします。
トリクのディジェに対する考えも、ここでちょっと明かされていますね。
ここで取られるアビドの「対抗措置」が、ガチ過ぎて笑えない。
夜明けの地平線団への殺意に満ち溢れ過ぎてる。
イオクやラスタルと違って合法的にダインスレイヴ持ち出したり、迷い無く五個も艦隊使って討伐艦隊組織したり、当然のようにガンダム・フレームを二機持って行ったり――有能過ぎて怖い。
どんな手練手管、話術を使えば、セブンスターズ会議でダインスレイヴの使用を可決させられるんですかね…?(オイ考えろよ作者)
第四話「開戦」では、そのタイトル通りに、アリアンロッドVS夜明けの地平線団が衝突します。
ただその前に、ディジェは五人のヒューマンデブリ達をセブンスターズの権限で保護しました。
ディジェは今の自分の権限ではヒューマンデブリ制度を禁止するコトは出来ない、と理解しています。
世界経済が成立しているのは、ヒューマンデブリ制度が根底に有る為であり、例えセブンスターズ当主となっても、これを何とかするのは難しい。
一度現行の世界の体制を崩して、ヒューマンデブリが存在せずとも成立するよう作り直さないと行けないので、そんな「世界の体制が崩れる」変化を待たねばならない(それなりに年食ったら、自分から起こしに行くと思いますが)
その間は、目の前の五人だけでも…と言うのがディジェの考え。
トリクはそれが甘く、偽善的な考えであると分かっていながら、キッチリ賛同しています。
何だかんだでトリクも甘い。
一方、アリアンロッドVS夜明けの地平線団は、夜明けの地平線団が先制するものの――奇襲の為にエイハブ・リアクターを切っていたコトが災いし、ナノラミネートアーマーに守られない状況で、ダインスレイヴ隊の攻撃を受けます。
原作で、ナノラミネートアーマーに守られていたハンマーヘッドがあの有り様だったので、無防備に直撃食らえば沈みますよねそりゃ。
ここで速やかにエイハブ・リアクターを点けさせ、沈む前に艦から発進したゾレイの判断は的確。
艦をデブリの陰からちょっとはみ出させてしまった操舵手には、是非とも悔い改めて頂きたく。
出撃したレラージェ、ダインスレイヴを華麗に避けてアリアンロッドとの距離を詰める。
所詮真っ直ぐにしか飛ばないので、発射位置とタイミングが分かれば、ゾレイにとって避けるコトはそこまで至難の技でも有りません。
ダインスレイヴがヤバいのは、意識の外から狙われた時か、絶対に避けられないほどの数を撃たれた時だけ――と言うのが、私の個人的な見解。
前者は為す術無しですが、後者は弾頭を弾いて軌道を逸らすか、防げば生き残れると言うのも。
まあ、そんなコト出来るのは、厄祭戦時のやべーやつらだけなんですけど。
この時アビドは、ゾレイを「
アーキタイプと言うのは、暴走事故後に第四十九被験体に付けられた、識別名のようなモノ。
オリジナル設定として、アインがプロトタイプ、マクギリスが成功例一号――と言うのが有りますが、展開に関係無い上に、無駄にオリジナル設定を増やすのは皆様の混乱を招きかねないと思って、結局出さずに終わりました。
ガンダム・ベリアルを持ち出したラスタル様があっさりやられた感じしますけど、これは単純にゾレイが強すぎただけ。
ラスタル様も弱い訳じゃないんですよ――伝わり辛いですけど。
嬲りに行ったのは、ゾレイのミスですかね。
エリオン家への怨みが溜まってたんで、致し方無し(元凶のヴェノムを殴り殺した時はちょっと意識飛んでたんで、消化不良だった)
しかし此処で颯爽と登場、ガンダム・プルソン。
地味に「アリアンロッド一のパイロット」とか言うアリアンロッド司令官、アビド・クジャンが降臨。
どんだけ有能なんですかねこの人…。
そりゃイオク様もああなりますわ。
何より、油断や増長を一切しないのが恐ろしい。
追い詰められたゾレイは、レラージェのリミッターを解除し――と言う所で、第四話は終了。
全五話中、二話がゾレイによって締められているという…。
第五話「ゼロの未来」は、番外編最終話。
サブタイは原作第一期のOP2「Survivor」二番のサビ部分の歌詞に有る「ゼロに戻った未来」を、ちょっと弄くって短くしたモノ。
この番外編からすると未来に当たる、本編時間軸に繋がる最終話なので「未来」と言うフレーズを盛り込みつつ、本編時間軸でのアグニカの宣言で「世界の支配体制が一度リセットされる=ゼロ(0)になる」と言う意味合いも有ります。
個人的には結構気に入っている、そんなサブタイ。
冒頭の幕間では、ゾレイ・サルガタナスの過去が描かれています。
なかなかに凄惨な過去――原作第一期でマクギリスが言った「阿頼耶識の研究は、近年まで行われていた」と言うセリフを膨らませた感じです。
行っていたのは、先代エリオン家当主のヴェノム・エリオン。
コイツは純粋なクソ野郎です、珍しいコトに。
私は敵にも何かしら「そうなるだけの過去」が有るべきだと考えるんですが…コイツの過去は特に考えてないです(オイ)
こうして過去を見ると、ゾレイの境遇は仕方無いと言えば仕方無いかと思います。
海賊行為を除けば、ゾレイ自身は特に悪いコトをした訳では有りません。
生まれた時からヒューマンデブリで、ヴェノムに買われて阿頼耶識を勝手に埋め込まれ、実験台にされ続けて来た――完全なる被害者、それが
レラージェと共に暴走してヴェノムを殴り殺してますけど、まあヴェノムは完全に自業自得。
受けるべき報いだと言えばそれまでなんで、私個人としては同情の余地無しだと思います。
加害者であり被害者。
こう書くと、もう完全にゾルタン・アッカネン。
失敗作だってなぁ、見捨てられりゃ傷付くし、腹も立つんだよ。
おかげで(?)、ゾレイの台詞を脳内再生する時は、ちっとも声が安定しませんでした。
落ち着いて喋ってるとCV:池田秀一で、後半に猛ってる時はCV:梅原裕一郎――フロンタルとゾルタンの声を発する、謎キャラになってた…。
CV:梅原裕一郎は、鉄血だとユージン・セブンスタークって奴がいますけど…。
ゾレイには元々名前が無いので、ゾレイ・サルガタナスと言う名は本名でもあり、偽名でも有ります。
物心付いた頃から、ずっと「四十九番!」とか呼ばれ続けてましたからね。
そんなゾレイは、リミッターを解除してレラージェで大暴れ。
アリアンロッドがダインスレイヴを持ち出してなければ、多分あの場で艦隊は壊滅してました。
まあ、原作でもマクギリスのバエル一機を相手に大分翻弄されてたので…。
ここで描かれるのは、ディジェとトリクの決定的な違い。
ディジェは「理想主義者」であり、トリクは「現実主義者」です。
真っ向から相反しているのがこの二人。
諦めるトリクと、決して諦めないディジェ。
そんなディジェに呆れながら、共に戦うトリク。
近接戦担当のディジェ、狙撃戦担当のトリク。
互いに互いの短所を己が長所で埋め合う、私の思う「理想の相棒」であり「理想の友情」がこれ。
もしどっちかが女の子だったら、多分ラヴストーリーが展開されますが――まあそれはそれとして。
それからの総力戦は、割と短時間で決着。
キュルの犠牲でワイヤーブレードが無効化され、レラージェ撃破。
ゾレイの最期は「本当に俺は悪かったのか」的なコトを言わせたかったんですけど、なんか後味が悪くなると思ったし、どうやっても不自然になりそうだったのでボツになりました。
レラージェにサイコフレームが搭載されてたりしたなら、多分言えてたと思いますが。
その後は本編に繋がるような後日談、まとめ。
本編第三十二話「伝説の英雄」でのアラズ・アフトル――改めアグニカ・カイエルの、組織再編についての宣言を受けてのディジェ、トリクの対応。
何故トリクは招集に応じなかったのか、と言う理由付けとしての役割が大きい。
ぶっちゃけトリクは完結編の時に考案したキャラクターなので、後付けにはなってしまうのですが…。
そもそも名前自体が「エレク・ファルク…エレク…エレクトリック――じゃあ『トリク』で」くらいのノリで決められてるんで…(数秒で決めた)
そんな感じで、本編よりは美しく纏めて終わらせられたんじゃないかな? と、勝手に思っています。
主な執筆作業時のBGMは「機動戦士ガンダムUC」から「RE:I AM」「StarRingChild」「MOBILE SUIT」「FULL-FRONTAL」「MAD-NUG」「GUNDAM」「6thMob.UNICORN GUNDAM」、「機動戦士ガンダムNT」から「narrative」「VigilaNTe」「symphonicsuiteNT-no5」「synthenicsuiteNT-no1」など――って、全部澤野弘之サウンドじゃねぇか…フヘッ…。
ゾレイの初登場時に「FULL-FRONTAL」流すと、最早フロンタルでしかないので、是非一度お試しあれ。
さて。
キリ良く全体の話数が七十二話になった所で、本作「鉄華団のメンバーが1人増えました」の更新は、これを持ちまして完全終了となります。
本編だけでなくこんな所までお読み下さいました皆様に心の底より感謝し、全ての方に300APを進呈させて頂きます。
アグニカポイントと読むかアルミリアポイントと読むかは、皆様の一存にお任せ致しますが。
私は今後(と言うか明日から)、厄祭戦を改めて描く新作「厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-」にて、頑張って行こうと思っております。
本作の「厄祭戦編」を原作設定に沿って再構成したモノとなりますので、もしよろしければそちらもよろしくお願い致します。
それでは、また会える日が訪れますように。
ありがとうございました。
以下、新作の宣伝です。
まずは真改零式さんより頂きました、新作の予告編を表裏の二つ。
以前活動報告に上げました「新作進捗状況報告」で小出ししたセリフを利用し、膨らませる形で作って下さいました。
ご相談を受けました折、ワードに関してなど少しばかり口出しさせて頂きましたが、最終的には大体丸投げしました(オイ)
表Verはタイトル出た後も演出有るので、一周するまで油断なされませんよう――格好良い&不穏&禍々しい&絶望感半端無いぜ…!
本当に、本当に本当にありがとうございます。
※投稿後しばらくの間、挿絵が見えない状況になっておりました。大変申し訳ございませんでした。
予告編・裏
【挿絵表示】
予告編
【挿絵表示】
もう一つ、新作のメインビジュアルをば。
こちらに使用しているタイトルロゴも、真改零式さんより頂戴致しました。
予告編共々、原作フォント完全再現。痺れるぜ。
メインビジュアル
【挿絵表示】
「厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-」、2019年4月3日22時45分より。
最大限期待を裏切らないよう努力しますので、気が向いたら覗いてみて頂けると、私が勝手に喜んだりします。
厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-
序章「戦闘 -Fight of the Hero-」
第0話「厄祭戦」