公式より、鉄血のオルフェンズ新作についての情報が明かされましたので、これを受けての私の新作についての決定のご報告を兼ねて更新です。
新作は「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント」――ソシャゲ内のオリジナルストーリーであり、時系列的には一期二期の間…金星のお話だそうです。
とりあえず「公式が厄祭戦をやる」と言う異常事態(?)は避けられ、私の新作については、予定通り投稿するコトとしたいと思います。
なお、新作で新たな機体の登場、新たな厄祭戦に関わる設定が明かされる可能性は高いです。
それが出揃うまで投稿を待とうかとも思いましたが、何分ソシャゲと言うコトで、全て出揃うのが数年先になる可能性も有ります(現状、配信日は愚かアプリの正式タイトルすら未定)
その為、ソシャゲでの新設定はガン無視する方向で行こうかと考えております(反映出来そうなら反映しますが)
そんな訳で、新作は本年四月三日より投稿を開始する予定でいます。
よろしければ、お付き合い下さい。
以上、宣伝を失礼致しました。
それでは本編へどうぞ――今回は短めですけど、許して下さい。
仕方ないんです、キリが良かったんで…(言い訳)
バクラザン家とファルク家のガンダム・フレームが「バエルの祭壇」より持ち出されてから、二日が経過した頃――総務局が本年度の人事を発表した。
アビド・クジャンの読み通り、監査局に配属され火星行きを命じられたディジェ・バクラザン特務三佐とトリク・ファルク特務三佐は、地球衛星軌道上の衛星基地「グラズヘイムⅢ」へと上がっていた。そのグラズヘイムⅢには、月外縁軌道統制統合艦隊「アリアンロッド」から出向した、ディジェとトリクが指揮する予定のハーフビーク級宇宙戦艦が停泊している。
「やっぱり、警戒し過ぎじゃねぇのか? わざわざ戦艦一隻、それもモビルスーツ一個中隊までセットでなんてよ」
「――アビド・クジャン公は、その程度の人物ではない。きっと、何か理由が有る」
そう言うトリクは、この二日で月外縁軌道統制統合艦隊の最高司令官であるアビド・クジャンの経歴を調べ上げていた。自分の息子でもないディジェとトリクをこれほど気にかけ、戦艦まで貸し出して来た理由が、トリクには分からなかったからだ。
「ここ二日で分かったコトは、クジャン公が判断を誤ったコトは一度もなく、また無駄を嫌う性格だと言うコトだけだ。こんな手厚い対応をする、詳しい理由までは掴めていない」
ファルク家の次期当主として、集められるだけの情報は集めたが、それでも何故アビド・クジャンがここまでするのかは分からずじまいだ。
後はもう、実際に圏外圏へ行ってみるしか無い――と、トリクは結論づけた。
「当たって砕けろ、って訳かよ」
「そう言うコトだ。――そろそろ、積み込み作業も終わる頃合だろう。艦に向かうぞ」
「おう」
積み込み作業と言っても、やるコトと言えばディジェとトリクのシュヴァルベ・グレイズ、並びに両家のガンダム・フレームを積み込むだけだ。そんなに時間がかかるモノではない。
艦に乗り込んだ二人は、ブリッジに向かった。ブリッジにはクルー達が立ち並んで待機しており、二人が入って来るや否や一斉に敬礼した。
「これはまた、ご丁寧なコトだな」
「は。アビド・クジャン司令より、全力を以てお二人の助力になれ、と仰せつかっております。自分は艦長を務めます、キュル・ミュンヘン一佐です」
「おう――積み終わり次第、出航だ」
『は!』
それから十分後、ディジェとトリク率いる監査団のハーフビーク級はグラズヘイムⅢを出航し、正規航路に乗って火星へと進み始めた。
◇
月外縁軌道統制統合艦隊「アリアンロッド」の最高司令官アビド・クジャンは何故、セブンスターズの次期当主が二人参加しているとは言え、毎年送られる監査団一つの為にハーフビーク級宇宙戦艦一隻とMS一個中隊を貸し出したのか。
その答えは、すぐに分かるコトとなった。
「十時の方角に、エイハブ・ウェーブを確認! 距離一万二千、数は三! 宇宙戦艦です!」
出航から五日。艦の左側に有った暗礁宙域に、ギャラルホルンの物ではないエイハブ・リアクターが観測された。
「解析、遅いぞ!」
「観測データ、出します!」
ブリッジのモニターに、観測データからCGで合成された画像が映し出される。
全長四百メートルほどの、厄祭戦時代からありふれたタイプの宇宙戦艦が三隻。しかし、その艦艇には一つのシンボルマークが刻まれている。
「――『夜明けの地平線団』」
「あぁ? 何だそりゃ」
「おや――トリク様は、アレをご存知で?」
「近年勢力を伸ばしている、宇宙海賊だな。月と火星の間、広い範囲の暗礁宙域で活動している」
トリクの予測通り、今監査団のハーフビーク級に近づいて来ているのは、宇宙海賊「夜明けの地平線団」だ。近年は勢力を急速に伸ばしつつあり、ギャラルホルンが管理する正規航路にさえ、時折現れるようになって来ている。
「オイオイ、アリアンロッドは何してる? ああいう奴らをとっちめるのは、お前らの仕事だろ?」
「仰る通りです。しかし、今接近して来ている『夜明けの地平線団』は、通常の宇宙海賊とは訳が違うのd」
アリアンロッド所属のキュル・ミュンヘン艦長が訳を説明する前に、オペレーターが報告する。
「敵艦より、MSの出撃を確認!」
「艦長、説明は後で聞かせてもらう。――MS隊、随時出撃だ。私とディジェのシュヴァルベ・グレイズも、出撃準備をさせろ」
「よし。キュル艦長、艦の指揮は任せたぜ」
「御意に。――全艦第一戦闘配置、ブリッジ移行! MS隊は出せる者から出せ!」
艦の重力制御が解除され、エイハブ・リアクターの出力が武装に回される。艦底のカタパルトが起動し、瞬時にMSの出撃シークエンスが開始された。
「対応が早いな。既にMSを出し終えたか」
「ああ。流石はアリアンロッドの精鋭だ」
速やかにパイロットスーツへ着替えたディジェとトリクは、MSデッキに降りる。二人に取っては初の実戦になるが、恐れは無い。
それぞれが専用のシュヴァルベ・グレイズのコクピットに乗り込み、手慣れた手付きで起動させる。それから、ディジェのシュヴァルベ・グレイズからカタパルトに降りていく。
『射出準備完了。タイミング、任せます』
「おう。…ディジェ・バクラザン、シュヴァルベ・グレイズ――出るぜ!」
ディジェのシュヴァルベが打ち出された直後に、トリクのシュヴァルベ・グレイズがカタパルトに設置された。
「トリク・ファルク、シュヴァルベ・グレイズ。行くぞ」
トリクのシュヴァルベを最後として、ギャラルホルン監査団のMSは全機が出撃し終えた。母艦を中心として、MS隊は散開配置されている。
『敵艦、射程まで三千!』
『敵MS部隊、突っ込んで来ます!』
『阿頼耶識もいる、絶対に油断するな!』
『艦砲射撃用意、当てろよ!』
『ミサイル発射管装填! 照準!』
通信が飛び交う中、トリクのシュヴァルベはディジェのシュヴァルベに追い付き、並んで警戒態勢を敷く。同時にトリクのシュヴァルベは畳まれていた専用のスナイパーライフルを展開し、ディジェのシュヴァルベは背部に接続されていたバトルスピアーを両手で構えた。
「見えた。ディジェ、お前は斬り込め」
「おう。援護は任せるぞ」
ディジェのシュヴァルベは背部スラスターユニットを起動させ、高速で敵部隊に突撃。トリクのシュヴァルベはその場に留まり、両手でスナイパーライフルを構える。
夜明けの地平線団のMS部隊は、厄祭戦時から存在するロディ・フレームのMS、ガルム・ロディを中心として構成されている。ギャラルホルン製の最新鋭MSであるグレイズと、同型のカスタム機であるシュヴァルベ・グレイズで構成された部隊なら、性能としては負ける要素など無い。
『御曹司が突撃してるぞ!』
『全員、遅れるな! 続いて突っ込むぞ!』
『奴らに反応をさせるなよ!』
トリクが指示を飛ばすよりも早く、MS部隊は各々の判断でディジェに続き、敵部隊に突撃して行く。
「うらァ!」
ディジェのシュヴァルベがバトルスピアーを突き出し、一機のガルム・ロディを撃墜する。その側では、続いて来たグレイズ部隊が次々とガルム・ロディを落として行く。
物量では劣っているものの、練度は圧倒的にギャラルホルン側の方が上だ。事実として、一切の損害無く五機のガルム・ロディを無力化せしめた。夜明けの地平線団の先陣を、完全に挫いた形となる。
『あの坊ちゃん、やるじゃねぇか!』
『油断するな! 阿頼耶識持ちが来るぞ!』
『来たぞ、警戒しろ!』
((「阿頼耶識」…?))
ディジェとトリクが、先ほどから時々通信に乗っているその言葉に引っかかりを覚えた時、敵MS部隊の第二波がやってきた。
先ほどの第一波が五機だけだったのに対し、この第二波は十五機。更にその後ろには、第三波にして本命と目される二十機編成のMS部隊が有る。
「そらッ!」
ディジェが、敵機体に対してバトルスピアーを突き出す。ついさっき、敵機を仕留めたモノよりも速度の速い突き。
目前のガルム・ロディは、それを――腰からバスターソードなる格闘武装を展開し、弾き返した。
「何!?」
続いてバスターソードを振り下ろそうとするガルム・ロディに対し、ディジェのシュヴァルベは左腕を伸ばしてバスターソードを保持するガルム・ロディの右腕を掴み、思い切り左腕を引いてガルム・ロディを自機に接近させ――同時に自機を回転させ、バトルスピアーを敵機の背面に刺し込んだ。
バトルスピアーの穂先は背部装甲を突き破り、ガルム・ロディのコクピットを後部から潰した。
『ぎゃあああああああー!!』
「……!」
その断末魔がいやに若く聞こえ、ディジェは思わず眉を顰める。
しかし振り払い、槍を抜いて一旦後退。それに追尾して来たガルム・ロディのメインカメラが、後方からのトリクのシュヴァルベによる狙撃で撃ち抜かれた。
「フ」
「ナイ、スッ!」
敵機が狼狽した隙をついて、ディジェのシュヴァルベはバトルスピアーを構えて突撃し、ガルム・ロディのコクピットを貫く。
『うああああああああ!!!』
だが今度の断末魔も、声が若い。ディジェは流石に妙と思って、戦場を見回しつつ通信に注意するものの、これについて言及する者はいない。
それから二機ほど敵機を撃墜した所で、味方からの艦砲射撃の開始と共に、味方の間でも通信が飛んだ。
『本命が来るぞ!』
『何だ、あのMSは!?』
『データ取得、解析しろ!』
『何てスピードだ…通常の三倍に近いぞ!』
何度か夜明けの地平線団と戦っているハズのMS部隊パイロット達が、何かを見て困惑を露わとしている。一体何だ、と思って、ディジェとトリクも観測する。
モニターに映ったMSは、少なくともロディ・フレームのMSではなかった。されど、凄まじい速度でギャラルホルンMS部隊に近付きつつある。
その速度、実に後ろに付くガルム・ロディの三倍にもなっている。
「――トリク、もしかしてアレは…!」
「…お前もか。間違い無い――」
頭部に内蔵された、双眼のメインカメラ。
頭部に飾られる、特徴的なブレード・アンテナ。
背部に接続されて突き出る、大型ブースター。
左腕部に装備されている、大型ブレード。
相当数が存在するロディ・フレームでも、厄祭戦時に数多く建造されたヘキサ・フレームでもない――一般機の常識より逸脱した、通常の三倍近い速度で接近して来る、真紅に染め上げられた機体。
そんな規格外の化け物MSに使われるようなフレームなど、この世界にはただの一種類しか存在していない。
言うまでもなく、それは――
「―――『ガンダム・フレーム』…!!」
◇
「さあ――奪わせて貰おうか、ギャラルホルン」
夜明けの地平線団の首領であるゾレイ・サルガタナスは、真紅に彩られたガンダム・レラージェのコクピットの中で、そうほくそ笑んだ。
キリが良い(?)ので、短いですが今回はここまで。
ディジェとトリク、初任務が凄まじくハード。
ここで「夜明けの地平線団」を出したのは、以前の本編で出番を丸々カットしたからだったりします。
まだサンドバル・ロイターの時代じゃないですが。
なお、この時代の夜明けの地平線団の事情は、何もかもオリジナル設定です。
そんな訳で、前回の反省が有りながらも再び増えたオリキャラと、今回はオリジナル機体も解説。
さては反省してねぇな、この作者。
キュル・ミュンヘン
男性
アリアンロッドから火星監査団に貸し出されたハーフビーク級宇宙戦艦、その艦長。
階級は一佐であり、アビド・クジャンの右腕だとも言われる凄腕。
艦隊指揮、MS部隊指揮に加えて、操縦も出来る。
EB-05s シュヴァルベ・グレイズ(ディジェ機)
スペル:SCHWALBE GRAZE
全高:18.1m
本体重量:32.5t
動力源:エイハブ・リアクター×1
使用フレーム:グレイズ・フレーム
装甲材質:ナノラミネートアーマー
武装:ライフル×1
バトルスピアー×1
ワイヤークロー×2
パイロット:ディジェ・バクラザン
概要
「EB-06 グレイズ」と共通の試作機から発展したカスタム機であり、指揮官機、エースパイロット機として開発されたMS。
背部に惑星間航行艦の技術を用いた「GR-Es01 フライトユニット」を装着しており、肩部、腰部、脚部のブースターを併用すれば、重力下でも高い飛行能力を発揮する。
頭部は上下二段式のセンサーと大型アンテナを採用し、独自の形状を持つ。
パイロットに合わせたカラーリングやカスタマイズを施された機体が多く、パイロットの個性が際立つ傾向が有る。
ディジェ・バクラザンの専用機は、全長二十メートルにもなるバトルスピアーを装備するのが特徴である他、本来ならば左腕のみに装備されるワイヤークローを両腕に装備している。
EB-05s シュヴァルベ・グレイズ(トリク機)
スペル:SCHWALBE GRAZE
全高:18.1m
本体重量:32.5t
動力源:エイハブ・リアクター×1
使用フレーム:グレイズ・フレーム
装甲材質:ナノラミネートアーマー
武装:スナイパーライフル×1
バトルハンマー×1
バトルブレード×1
ワイヤークロー×1
パイロット:トリク・ファルク
概要
「EB-06 グレイズ」と共通の試作機から発展したカスタム機であり、指揮官機、エースパイロット機として開発されたMS。
背部に惑星間航行艦の技術を用いた「GR-Es01 フライトユニット」を装着しており、肩部、腰部、脚部のブースターを併用すれば、重力下でも高い飛行能力を発揮する。
頭部は上下二段式のセンサーと大型アンテナを採用し、独自の形状を持つ。
パイロットに合わせたカラーリングやカスタマイズを施された機体が多く、パイロットの個性が際立つ傾向が有る。
トリク・ファルクの専用機は、大型のスナイパーライフルと特注のバトルハンマーを装備している他、通常ならばグレイズにのみ装備されるバトルブレードを腰背部に懸架している。
ASW-G-14 ガンダム・レラージェ
スペル:GUNDAM LERAJE
全高:18.6m
本体重量:35.0t
動力源:エイハブ・リアクター×2
使用フレーム:ガンダム・フレーム
装甲材質:ナノラミネートアーマー
武装:ワイヤーブレード×1
ロングライフル×1
バスターソード×1
ハンドナイフ×2
パイロット:ゾレイ・サルガタナス
概要
背中と腰に計三基のブースターが装備されており、一撃離脱戦法を得意とする機体。
元々は緑と白で塗装されていたが、宇宙海賊「夜明けの地平線団」の首領であるゾレイ・サルガタナスの手によって、真紅に塗り直されている。
ワイヤーブレードは左腕に取り付けられた近中距離での格闘兵装で、ワイヤーの先に接続されたブレードを自在に操る物。
ハンドナイフは袖に仕込まれており、ワイヤーブレードを使用出来ない超近接戦で本領を発揮する。
その他、ガルム・ロディが使用する口径三百ミリのロングライフルと、近接武器としてバスターソードを流用している。
名前の由来
ソロモン王直属の使い魔「ソロモン七十二柱」に於ける序列第十四位の悪魔「レラージェ(レラジェ、レライエ、レライハ、ロレイ、オライとも)」から。
レラージェは三十の軍団を率いる、地獄の大侯爵だとされる。
ゾレイ・サルガタナス
男性
「夜明けの地平線団」の首領(P.D.0315年時)。
真紅の服を纏って真紅の機体に乗り込む、三十前半と目される人物。
シャアとかフロンタルとかと同じ匂いがする。
阿頼耶識手術を受けており、通常の三倍の速度で機体をかっ飛ばし、「朝陽の男」との異名を取る。
その素性は、謎に包まれている。
次回「朝陽の男」
こんな終わり方しときながら、更新はかなり先になる模様。
下手したら二月とかになる…かも…?