苦手な方は、一応ご注意の程を。
どこからが鬱展開なのか、よく分からない私は一体…虚淵作品の見過ぎですかね?(爆)
その光景は、まさしく「蹂躙」だった。
「四大天使」の一角たるMA「ウリエル」の前に、火星を守るべく集まった軍になすすべは無かった。
頭部ビーム砲を失ってなお、ウリエルの戦闘力は脅威的なモノだ。
4枚もの翼に備えられたダインスレイヴと拡散ビーム砲、それに尻尾のような5本の超硬ワイヤーブレードと2本の腕に持つクローとパイルバンカーが有れば、武装としては充分過ぎる。
『ク、長蛇の陣を取れ!』
ガンダム達が一列に連なり、ウリエルに攻撃を仕掛ける。
ウリエルは先頭のガンダム・ベリアルを吹き飛ばし、その次のガンダム・レラージェを腕で拘束した。
『しまっ…!?』
更にその後に続くガンダム達をワイヤーブレードとプルーマで蹴散らし、ウリエルはレラージェをパイルバンカーで貫いた。
『ッ、アマーリア!』
『が、は――はああ!』
レラージェは自らを掴むウリエルの腕にライフルを叩き付け、撃ち出す。
しかし、ゼロ距離射撃を持ってしてもナノラミネートコートを施されたウリエルの腕を破壊する事は出来ない。
レラージェは宇宙に放り出され、翼のダインスレイヴを受けてコクピットを貫かれた。
『アマーリア!!』
『ロb』
アマーリアが最期の言葉を紡ぐより早く、ウリエルは腕を振ってレラージェをどかす。
『テメェェェェ!!!』
激昂したロブは、アンドロマリウスの目を赤く輝かせてウリエルに大剣を振り下ろす。
それはウリエルの翼の装甲にヒビを入れる程度に終わり、アンドロマリウスはワイヤーブレードによって吹き飛ばされた。
各ガンダムは高速機動をし、四方から銃撃や剣撃、時にはダインスレイヴなどもぶち込むが――ウリエルは揺るがない。
『 』
拡散ビーム砲を撃ち、ウリエルはガンダム達を後退へ追い込む。
その中で、ガンダム・アガレスがウリエルに銃を放つ。
『よくも、よくも――!』
『 』
アガレスの射撃はウリエルの装甲の隙間に当たっているが、ただでさえ分厚い装甲の前には無意味だ。
アガレスはワイヤーブレードの一撃を受け、ライフルを破壊された。
『あ――』
ウリエルの腕がアガレスに伸び、それを捕らえる直前。
白と青の機影が、ウリエルの腕に黄金の剣を突き立てた。
その剣はウリエルのナノラミネートコートを貫き、ウリエルの腕の腱に当たる部分を正確に破壊していた。
『 !?』
『ア――アグニカ?』
ウリエルが狼狽して出来た隙に、バエルはウリエルの頭部に肉薄。
そのまま剣を振り、その頭部を斬り落とした。
『 !?』
その次の瞬間にはバエルはワイヤーブレードの基部を叩き落とし、ワイヤーを切断。
瞬く間に3本のワイヤーブレードを無力化させたが、残る2本に弾かれてウリエルから離される。
『 !!』
ウリエルは4枚の翼全てをバエルに向け、ダインスレイヴと拡散ビーム砲を放つ。
しかしバエルはダインスレイヴの全てをかわし、拡散ビームを剣で叩き落としながら更に加速。
ウリエルにさえ認識出来ない程の速度で、ウリエルのスラスターに電磁砲を放っていた。
『 !』
ウリエルは必死で2本のワイヤーブレードを振り、バエルに応戦する。
ワイヤーブレードによる攻撃を捌き続けるバエルだったが、射出されたプルーマへの対応が間に合わず吹き飛ばされて近くのハーフビーク級に叩き付けられた。
その機を逃さず、ウリエルはバエルが突っ込んだハーフビーク級に取り付いてダインスレイヴで無力化させる。
そして、バエルを潰すべく腕を振り上げた時。
ベリアルとアスモデウス、キマリスの攻撃がウリエルの肘関節と呼ぶべき所に直撃した。
それがウリエルの腕の動きを止めた所に、3機の反対側からパイモン、ヴィネ、プルソンが関節に武器をぶつける。
同時に、バエルが斬り落とした頭部の斬り口にアモンとフォカロル、エリゴールが攻撃する。
更に、バルバトスとグシオンが翼を殴り。
再びウリエルが拡散ビームを放とうとした所に、それぞれアンドロマリウス、カイム、アガレス、ダンタリオンが攻撃してビーム砲を破壊。
続いてダインスレイヴを構えるウリエルだったが、ウヴァル、アンドレアルフス、デカラビア、イポスの攻撃によりそれすらも破壊された。
『 !』
その場に集った全てのガンダムは、瞳を赤く輝かせていた。
バエルに構って他のガンダムへの注意を疎かとした為に、ウリエルは主力となる武器を失ったのだ。
『 !!』
しかし、ウリエルにはまだワイヤーブレードが残っている。
ウリエルは機体を高速回転させながらワイヤーブレードを振り回し、取り付いたガンダムと周囲のMS、戦艦を攻撃する。
ガンダムを自身から引き剥がし、雑魚をあらかたスクラップへと変えたウリエルだったが、その懐に1機のMSが飛び込んだ。
言わずもがな、ガンダム・バエルである。
『 !!!』
バエルは、ウリエルの胴体に2本の黄金の剣を突き刺す。
そのまま剣を上下に振り、ウリエルの胴体は斬り裂かれた。
斬り裂かれた事で露わになったコンピューター部に黄金の剣が刺し込まれ、ウリエルの最重要部分が粉微塵に破壊される。
だが、ここで終わらないのが「四大天使」である。
ウリエルは自らを起爆させ、周囲を巻き込みながら大爆発を引き起こした。
月面都市やコロニーを破壊し、圏外圏で猛威を振るった「四大天使」ウリエルは―――そこで暮らす人々を守る為、あらゆるわだかまりを超えて団結した人類に打倒されたのだった。
◇
結論から言って、俺達は「四大天使」ウリエルに勝利した。
ハーフビーク級戦艦18隻、バージニア級戦艦1隻。
ガンダム・フレーム1機に、その他のMSが98機。
ダインスレイヴ46基を使い潰し、核ミサイル85発を消費して。
10000人を越える人命を犠牲にし、ヘイムダル&フヴェズルング&バルドル&アフリカンユニオン火星駐屯軍&SAU火星駐屯軍&アーブラウ火星駐屯軍&オセアニア連邦火星駐屯軍の連合軍はウリエルの討伐に成功したのだ。
この報は、瞬く間に全世界に広がった。
正面から戦闘を行い、最強クラスのMAを撃破。
この事実は、「四大天使」の撃破が不可能ではない事とその為には全人類の協力が必要不可欠である事を世界に示した。
「四大天使」ウリエルの撃破以降、世界は団結してMAに立ち向かう事を重要視するようになった。
各経済圏の協力戦線も行われるようになったが、他の経済圏の技術を強奪したり自らの経済圏の功績拡大の為に他の経済圏の軍を謀殺したりする暗躍も耐えない。
ただし、唯一言える事は。
このウリエル撃破は、人類の反撃の狼煙となった。
これ以降、各地の戦線ではMAが押され始めた。
そんな偉業を成し遂げた連合軍であったが、その被害は決して少なくなかった。
ヘイムダルは旗艦であったバージニア級戦艦「ゲーティア」と世界最高の頭脳と言っても過言ではなかった天才科学者ヴィヴァト・クニギンを失い、戦闘に参加したガンダムパイロットは多かれ少なかれその殆どが身体に欠損を抱える事となった。
各経済圏の火星駐屯軍も戦力の殆どを失い、火星の治安維持さえままならず。
ウリエル戦で人類が受けた被害は、後々にも響く程に大きなモノとなってしまったのだった。
◇
身体の右側に慣れない義手義足、義眼を使っている為フラつきながらも、俺はスヴァハの部屋の前に辿り着いた。
部屋と言うが、元々それが有ったゲーティアは撃沈した。
その為、今はアーレスの1室がスヴァハに貸し出されている。
しかし、ゲーティアの撃沈――スヴァハの実父であるマッドサイエンティスト…じゃない、ヴィヴァト・クニギンの戦死はスヴァハの心に深い傷を残すには充分過ぎた。
常日頃「
それが、最期の言葉すら満足に無いまま永遠の別れとなってしまった。
情けないにも程が有るが、結局俺は何も言えなかった。
部屋に閉じこもってしまったスヴァハには早く出てもらわないと、MAの襲撃時やガンダム・アガレスの整備に差し障る。
だが―――傷付いたスヴァハをそのように酷使するなど、俺にはどうしても踏み切れない。
カロムには「貴方が支えなきゃ誰が支えるのよ!」と言われたし、フェンリスやクリウスには――やめよう、情けなさすぎて死にたくなる。
そんな状態でも貰えた合い鍵を使い、スヴァハの部屋に入る。
「スヴァハ、いるか?」
「―――アグニカ?」
部屋にいたスヴァハを見て、俺は思わず言葉を失った。
ガンダムのリミッターを外した事で、スヴァハは左目を失明した。
右半身を持って行かれた俺と違い、スヴァハは左目だけで済んだ。
これはまあ、まだ良いとしても――この半日、ロクに食事も取っていないのだろう。
少しやつれ、目の下には泣いた後が残っている。
一瞬の硬直の後、俺は特に意識せず――前より細くなったスヴァハの身体を、抱き締めていた。
「――悪い。こんな時、お前に何て言えば良いか…まだ、俺には分からない。だから――こんな事しか出来ない」
「―――」
スヴァハはそっと、自分を抱き締める右腕…俺の義手に触れ。
何かが、崩れたように――
「―――あああ、あああああああああああああああああああああああああああ……!!!」
俺の腕の中で、絶叫した。
叫び声はどんどん高くなり、最後には聞こえなくなってしまって。
残った右目から大粒の涙をこぼしながら、ただただ叫び続けた。
たった1人。
側にいた肉親を亡くした女の子の悲痛な慟哭を、俺はただ受け止めるしか出来なかった。
酷使し過ぎたが為に声を枯らしたスヴァハは、しばらく俺の腕の中でうずくまり。
「――ゴメン、アグニカ…私、すごく辛い事が起きるとこうなるんだ。何も考えられなくなって、世界が真っ暗に見えて、叫んで、泣き叫んで――その時はいつも、お父さんが慰めてくれてたんだ」
――それは。
11年も同じ場所、同じ時間を過ごしていながら――俺は、それに気付かなかったって言うのか…?
「アグニカと会ってからは、毎日が楽しくて…そんな事も無かったんだけど―――お父さんが死んじゃって、ゲーティアも沈んじゃって、アグニカも傷付いちゃって…すごく、辛くなっちゃった。怖くもなっちゃったの…アグニカの前であんなヒステリーを起こしたら、嫌われちゃうかもって…だから」
だから部屋でたった1人になって、声を押し殺して泣き続けてたのか。
―――つくづく、迷っていた自分に腹が立つ。
真っ先に涙を受け止めなきゃいけない立場にいながら、俺はそれを…すぐ、慰めに行く事も出来なかった。
「――バカ。こんなに好きなのに、嫌いになるわけないだろ。むしろ、悪いのは俺だ。ゴメンな、こんなに長い時間気付いてやれなくて…」
「気にしないで――アグニカは、やるべき事をやってたんでしょ? 私は、義務さえ果たせなかったから。戦って人類を守るって誓ったのに、このザマだもんね…ゴメン」
俺はバカだ、大バカだ。
スヴァハは絶対に、戦わせちゃいけなかった――それなのに俺は何だ、何をしてる!?
「スヴァハの意志だから」だと?
この理不尽で残虐で残酷で絶望と殺戮に満ちた、クソみたいな世界で!
誰よりも優しいスヴァハが、自らの感情を封殺してでも他人を守ろうとしている――そんな事に、何で気付く事が出来なかった!!?
テメェはこの11年でスヴァハの何を見てたって言うんだ、
スヴァハに「好きだ」なんて言っておきながら、テメェは自分を守ろうとしていたんじゃないのか!?
スヴァハがガンダムに乗れば、敵のターゲットはスヴァハにも分散される。
そうすれば俺の生存確率も上がる――心の底ではそう思っていた!
テメェは、これを完全に否定出来るのか!?
口先でなら、幾らでも「違う」と叫べるが!
本当に、心の奥底0.000000000001ymまで思ってなかったと断言出来るのかクソ野郎!!
「スヴァハ――もう良いんだ。お前はもう、戦うべきじゃない」
「…そうかも知れない。でも、そうは行かないよ。私がいないと、アグニカって何も出来ないじゃん」
―――マズい、完全に論破された。
本当に何やってんだ、俺…。
「確かに、ちょっと無理してた事は否定しない。私は背伸びして、強がってた。本当はすごく怖かったし、いつも震えが止まらなかった。でも、今度はそうじゃないよ。私はアグニカを助けながら、ずっとアグニカの側で生きたいんだ。だから、私は戦う。人類の為、なんて事はもう言わない。私は私と、私の大好きなアグニカの為に戦う。アグニカと、ずっと一緒に生き抜く為に――」
そして、スヴァハは俺に笑いかける。
それはすごく不格好で、恐怖に苛まれながらも必死に浮かべられた引きつった笑顔だったけれど――
「―――分かった」
俺はそこでも、スヴァハを戦いから身を引かせられなかった。
自分がクソ野郎で、どうしようもなく愚かで、正真正銘のクズ野郎だと分かっていても―――そんな俺への想いから来るスヴァハの意志を踏みにじる事が、どうしても出来なかったのだ。
「だが、俺もお前を守る。何が有っても、絶対に。俺の全部を使ってでも、必ずスヴァハを守ってみせる。そんで、一緒に畳の上で老衰してやる」
「――うん。ありがとう、アグニカ」
そのまま、俺の唇にはスヴァハの唇が押し付けられた。
それはただ触れ合うだけ、軽い口付けだったが――甘く暖かい、スヴァハの温もりが感じられた。
「―――さて、落ち込むのは終わり! さあアグニカ、修行を始めるよ!」
「…修行? スヴァハさん、俺に何をさせるおつもりですかね?」
「これだよ、ほらこれ見て!」
そう言いながらスヴァハが取り出したのは、あちこちがほつれた俺の服だった。
「自分の服くらい、自分で直せないとね! 料理やら何やらの前に、まずは裁縫を習得してもらうよ! ほらほら、針と糸持って!」
「ちょ、スヴァハさん!? 待て、俺何も分からないんだけど!?」
「だから、それを何とかしよう! まずはこれをこうしてだね――」
◇
そこまで話した時、時計は既に18:00を回っていた。
「――今日はここまでだな。続きはまた、明日にでも語ろう」
そう言って、ギャラルホルンの最高幕僚長であるアグニカ・カイエルは話を打ち切った。
セブンスターズの会議場に集った人々は、何を話す事も無く解散して行く。
数分後、セブンスターズの会議場にはアグニカだけが残された。
「世界は、思ったようには回らないからな。世界を統一するには、どのようにギャラルホルンを変革すべきかな――」
アグニカはそう呟いたが、声を返してくれる人はいない。
しばらく椅子にもたれていたが、やがて立ち上がって窓に近付く。
空に輝く月を見上げて、アグニカは。
「――『天使王』ルシフェル。貴様もどこかで、あの月を見ているのか?」
目に見えぬ何かに話し掛けるようにして、夜空を睨み付けた。
◇
時はB.D.0001年に入り。
火星へと向かったヘイムダルのメンバーは、火星を回って各地でMAを掃討した。
これには、ウリエルを撃破した後に火星へは1機もMAが飛来していない事が関わっている。
とりあえず現在火星に残っているMAを一掃し、ヘイムダルはフヴェズルングとバルドルのメンバーも吸収して地球へと出発した。
この2組織をヘイムダルに併合した理由として、それぞれの組織が目も当てられない程に疲弊した事が有る。
「煽動屋」フヴェズルングはヘイムダルより強奪した戦艦と物資に加え、ガンダム・フレームの1機や元から有った戦力の大半を失った。
「傭兵団」バルドルもまた、所有していたMSの90%と戦艦の全てを損失。
ヘイムダルも戦力をズタズタにされた為、それぞれのリーダー(ヘイムダルのリーダーはいなくなったので、主要メンバー全員)から認可を得て組織を統合。
唯一アーレスに残されたハーフビーク級に色々詰め込んで、若干の重量オーバーから目を背けつつも何とか体制を整えて地球圏へと出発した次第だ。
それから、何故か一度も道中でMAと回敵せず。
火星出発から約1ヶ月後――地球から出発した時から数えるなら、約半年後。
ヘイムダルの火星行きメンバーは、地球に残ったメンバーが建造したらしい衛星軌道上のヘイムダル基地「グラズヘイム」に入港した。
「や、やっと帰って来た…」
「そうだね…何だろうね、この地球の安心感」
「そりゃあ、安心感くらい出るだろう。何せ、地球は生命の源だからな。今は汚染されてるが」
「核爆弾使い過ぎなんだよ…いや、ウリエル相手に使いまくった俺らの言う事でも無いんだけどさ」
「あれはセーフだセーフ、あンな化け物相手じゃ仕方ねェよ。効いてなかったがな!」
そんな他愛の無い事(?)を言う余裕が有るのがどれだけ良い事なのかを実感しつつ、現在はこのグラズヘイムにいるらしいベルファストの科学者、イーモン・ハットンに会いに行く。
しかし、彼の表情は非常に険しかった。
「――あの、イーモンさん?」
「…おお、やっと戻って来たか! 遅いぞ!」
「いや、最大船速で来たんですけど。とりあえず、どうしたんですか?」
そう聞くと、彼はタブレットをこちらに投げて来た。
「――!! これは…!」
そのタブレットに表示された写真には、とあるMAが写っていた。
続いてタブレットを覗き込んだ全員が、顔を青ざめる。
「――そう言う事だ。『四大天使』ウリエルを討伐し、火星のMAを掃除してからの帰還早々にこんな情報を伝えたくはなかったのだが…」
そして、イーモン博士はこう告げた。
「『四大天使』ミカエルが現れた。出来る限り早急に、討伐作戦を決行する」
MA、ミカエル。
火星で撃破されたMAウリエルと同じく、「四大天使」に該当する存在だ。
「――マジすか?」
「――マジっすよ」
それを聞き、俺達は息を大きく吸い込み。
月にまで届きそうな声で、
「クソゲーェェェ!!」
と叫ばざるを得なかった。
「何で連チャン!? 連チャンであんな化け物を相手しろって!? バカだろ!?」
「何を言うのだ、アグニカ君。まさか、人類にバカじゃない奴がいると思ってるのかね? 人類皆バカだ、賢さなど求めるな」
「いやイーモンさん、そう言う話じゃない。いくら私達が『四大天使』ウリエルを討伐したとは言え、それには多くの犠牲を伴った。我々の出で立ちから分かる通り、悪魔との契約は言葉通り命を縮める。協力してくれた四大経済圏の火星駐屯軍も、戦力のほぼ全てをウリエルに破壊された。あまりに被害が大きすぎて、連戦なんてムチャクチャだ」
ドワームが至極真っ当な意見で、迂闊に討伐作戦を遂行する事に反対する。
「ああ、その通り。ドワーム君、キミの言いたい事はよく分かる。だが―――」
そこまで言って、イーモン博士は机を叩き。
「―――この機を逃せば、いつまた現れるか。最近は地球に残ったガンダムでのMA掃討作戦が展開されて、MAの数は減りつつある。だが、ミカエルは以前日本基地を襲撃した後、行方を眩ました為にそれを掴む事は不可能だった。今回ミカエルの位置が分かっているのは、奴がベルファストを襲撃した際に発信機を取り付ける事に成功したからだ。そして、それもいつ気付かれて壊されるか分からない」
つまり、人類には余裕が無い。
地球圏でも、MAが確認される事態が減っているようだが――いきなりいなくなったと言う事は、ミカエルやガブリエルが機体を自分の下に集結させていると考えるべきだろう。
「…なら、早急にミカエルを片付けるしかないな。だが、だとしても問題は山積みだ。ミカエルについての情報が足りなさ過ぎる。ウリエルは予め特殊能力が『無差別破壊』だと分かっていたし、フヴェズルングの戦艦が受けた被害からビーム砲やダインスレイヴの威力を図る事が出来たが――ミカエルについて、そう言った情報はあるのか?」
一応、ミカエルは日本基地を襲撃した際にダインスレイヴを放っている。
その威力は凶悪極まりなく、ナノラミネートアーマーに守られた基地外壁を難なく突き破って基地の最奥に程近い場所にいた科学者2人を殺害した。
狙いもピッタリであり、ミカエルの恐ろしさを伺い知る事は難しくない。
「強襲を受けて、ベルファストは数時間と掛からず灰燼に帰した。ただ、悠矢君のヴァッサゴで敵を解析して分かった事も有る。大半はブラックボックスで理解不能だったが、特殊能力は特定させた」
そして、イーモン博士は俺の持つタブレットにデータを送信した。
俺達はそれを見て――ただ、「?」を浮かべた。
「ミカエルの特殊能力は、『自己進化』。自分で進化をして行く――正確に言うなら、自分で自分をチューンして性能を上げて行く。時間が経てば経つ程に、ミカエルは強力になる訳だ」
その説明を聞いて――ようやく俺達は、事の重大さを認識した。
どんどん自分で強くなるMA…つまり、後手に回れば回る程に不利になって行く訳だ。
「で、いつ作戦を行う? 俺も同行しよう」
「クリウス・ボードウ院」
「ふむ…作戦説明の前に、まずはミカエルの現在位置からだ」
イーモン博士は、部屋に世界地図を展開させた。
続いて博士が手元のパネルを操作すると、ニュージーランド付近に赤い光の点が現れる。
「ここが、ミカエルの現在位置だ。ベルファストを襲撃した後、ミカエルは6時間と掛けずにこの場所へ移動して動いていない。それからここ1ヶ月、世界中に散らばっていたMAがミカエルの下へと集っている。恐らく、敵MAの数はミカエルを含めて50機弱」
「50、か――纏めて一度、しかも『四大天使』を含めて相手をするのは厳しいな」
「ああ。味方も含めて無差別破壊を行うが為に単機で行動していたウリエルとは違って、ミカエルにはこれらを指揮する力が有る。統制が取れていて、互いに連携もしてくるであろうMA50機を纏めて相手して全てを撃破する――『ヘイムダル』の全戦力を動員しても、簡単に成せる事では無い」
どう考えてもクソゲー、だがクリアしなければ世界は救えない。
結局の所、やるしかないのだ。
「これより、全戦力をオーストラリアのトリントンへ降ろす。全軍が集結し次第、ミカエル討伐作戦を開始する!」
アグニ会結成、その第一段階を記しておきます。
出ているキャラクターの名前を1人出すごとに、100APを進呈。
期限は次回更新まで。
何故、こんなモノ描いたのかって?
本編シリアス中にぶち込むと、色々ダメな気がしたからです(いつもフザケてるクセに今更何を)
【挿絵表示】
オリジナル設定解説のコーナー。
この作品で最も硬いものは?
ナノラミネートアーマー<レアアロイ<ナノラミネートコート<特殊超硬合金<エイハブ・リアクター
物の硬さはこんな感じです。
ナノラミネートコートは、レアアロイの武器で破壊出来ません。
特殊超硬合金の武器ならばナノラミネートコートを破壊出来ますが、エイハブ・リアクターを壊す事は不可能となります。
ウリエル
全長:159.9m
本体重量:不明
動力源:エイハブ・リアクター×5
武装:頭部ビーム砲×1
腕部クロー×2
パイルバンカー×2
翼部拡散ビーム砲×4
超硬ワイヤーブレード×5
ダインスレイヴ×4
プルーマ×∞
特殊機能:無差別破壊
概要
「無差別破壊」の機能に基づき、近付いたモノの全てを破壊する最も危険で無慈悲なMA。
4枚の翼と2本の腕を持ち、尻尾5本を胴体から生やす他にも翼には1基ずつダインスレイヴを備える。
腕部にはパイルバンカーが内蔵され、頭部ビーム砲は拡散と収束を使い分けられる。
全身はナノラミネートコートで覆われており、傷付けるのは困難である。
ウリエルにの破壊対象は他のMAすら例外では無い為、常に単機で行動する。
デビルガンダム四天王で言うと、ウォルターガンダムに当たる存在。
月面都市を破壊する際にガブリエルに造られ、それ以降多くのコロニーを破壊している。
ガブリエルの指示で火星の衛星軌道に現れ、四大経済圏の火星駐屯軍&ヘイムダル&フヴェズルング&バルドルの連合軍と戦闘。
連合軍の戦力をほぼ全て無力化させたが、悪魔の力を引き出したガンダム達によって撃破された。
名前の由来は、旧約聖書や新約聖書などで「四大天使」の一柱とされ、「破壊」を司るとも言われる大天使「ウリエル」から。
この名は預言者ウリアから取られており、「神の炎」「神の光」と言った意味を持つ。
UGY-R35 グレイブ・ロディ
全高:17.0m
本体重量:39.8t
動力源:エイハブ・リアクター×1
使用フレーム:ロディ・フレーム
武装:90mmマシンガン×1
グレイブ・シールド×1
ヒート・チョッパー×1
ハルバード×1
概要
ロディ・フレームのMS。
圏外圏で多く建造され、主力機として活躍した。
際立った特徴は無いが、コストが低く汎用性が高く重装備の運用が可能だった為大量生産された。
機体色は、ダークグレーで纏められている。
グレイブ・シールドはレアアロイで錬成され、高い防御力を誇る。
ただし重量がかなり有り、棺桶型な事から取り回しも悪い為地上での運用には不向きである。
カンツウツボさんより頂いた案を元に、設定しました。
UGY-R51 フラム・ロディ
全高:17.7m
本体重量:41.2t
動力源:エイハブ・リアクター×1
使用フレーム:ロディ・フレーム
武装:6連装ミサイルポッド×1
90mmマシンガン×1
ヒート・チョッパー×1
肩部シールド×1(指揮官機は2)
概要
ロディ・フレームのMS。
グレイブ・ロディと同じく大量生産され、圏外圏で使用された。
機体色は、主に赤で纏められている。
スピナに似た形状の四肢と頭部を持ち、グレイブ・ロディより防御に優れる。
ミサイルは散弾タイプ。
プルーマの牽制、撃破を主な使用法とするが、市街地での使用には課題が残る。
カンツウツボさんより頂いた案を元に、設定しました。
IPP-66305D ユーゴー(ダインスレイヴ搭載型)
全高:19.8m
本体重量:30.1t
動力源:エイハブ・リアクター×1
使用フレーム:ヘキサ・フレーム
武装:頭部バルカン砲×2
ワイヤーアンカー×6
ダインスレイヴ×1
概要
ヘキサ・フレームのMS「ユーゴー」に、ダインスレイヴを持たせた機体。
機体色はグレーとネイビーの組み合わせ。
ロディ・フレーム並みのコストの低さから大量生産されたものの、機動力を高めた結果装甲が脆弱化した為に撃墜数も多かった。
コクピットが頭部に有るのが他のフレームとは一線を画す部分で有り、撃墜確率が高い代わりにパイロットの生存確率が高かった。
本機は腕のどちらか一方(パイロットが右利きか左利きかによる)をダインスレイヴに換装しており、軽い機体を固定する為のワイヤーアンカーが6基装備されている。
また、弾の装填は別の機体の手助けが必要。
ダインスレイヴを正確射撃する為に頭部は大型観測用センサーへと換装されており、コクピットのモニターと直結している。
カンツウツボさんより頂いた案を元に、設定しました。
次回「