鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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壁を殴り過ぎて手が痛いです。
何故って?
今回の話をお読み頂ければ、分かるかと。


友人にゲームのガチャを一度引かせた所、ペーネロペーが出ました。
なんでさ。


#46 アーレス奪還作戦

ゲーティアとハーフビーク級2隻は、強奪された火星基地「アーレス」をセンサー圏内に捉えた。

 

ゲーティアの作戦室には机が設置され、ガンダムパイロット達と艦長、科学者達が揃った。

これより、作戦会議が開始される。

 

艦内にテンポの良い曲が流される中、ドワームは机の前に立ち。

 

「火星基地アーレスは、ヴィーンゴールヴ程では無いにせよ巨大だ。武装も幾つか備えられており、正面から戦艦で攻めるのは自殺行為。違う案を取らねばならない」

 

ドワームはアーレス周辺の地図を呼び出し、どこからか取り出したチェスの駒――キングを、ゲーティアの現在地に置く。

 

「ここが現在地だ。まず、カラドボルグに並ぶゲーティアの特殊砲撃武装を以てアーレスに攻撃する。アーレスの外壁にはナノラミネートアーマーが使われているから、沈みはしない。あくまで、敵の注意を引き付ける事が目的となる」

 

続いてドワームはポーンを取り出し、ゲーティアとアーレスの間に置く。

 

「間髪入れず、MSで強襲を仕掛ける。沈ませない程度にアーレスを揺るがし、敵に危険だと思わせる。そして、これが本命」

 

ドワームは最後にクィーンを取り出し、アーレスに叩き付ける。

 

「奇襲部隊をアーレスに侵入させ、司令室を速攻で奪還する。それさえ出来れば、司令室から基地施設を操作して強奪されたMSや戦艦を奪還可能。出来ずともアーレスからの砲撃を止めさせれば、ゲーティアとハーフビーク級で一気に乗り込める」

 

そこまで説明をし、ドワームは息を吐いて。

 

「大まかな作戦は以上だ。異議の有る者は?」

 

――いない事を確認し、ドワームは表示されている地図を片付ける。

次にクィーンの駒を、アグニカに投げ渡した。 

 

「火星基地の面子を含めた奇襲部隊の指示はお前に任せるぞ、アグニカ」

「俺か。何故?」

「お前には、指導者の素質が有る…気がする」

「勘かよ」

 

ボヤきつつも、アグニカはウィリアム博士にアーレスの設計図を見せるように要求。

博士はレトロな紙の設計図を取り出し、机の上に広げる。

 

「ここに隠し通路が有る。そこを通れさえするなら、司令室に直行出来るハズだ」

「良し。通路ってかパイプだが…とりあえず、奇襲出来るなら良し」

「他のMS隊は私が率いる。『クラウ・ソラス』の砲撃は、ルベルト艦長に一任する」

「請け合おう」

 

艦長が頷いた事を確認して、ドワームはブリーフィング最後の言葉を口にする。

 

「作戦開始は30分後。全員、行動せよ!」

『了解!』

 

 

 

 

「ボス、3隻の戦艦が接近中です! 2隻はトンズラこきやがったハーフビーク級で、1隻は――該当データ無し? 新型戦艦と思われます!」

「新型だァ? ンだそりゃあ、それがどうしたってンだ」

「あーもうBOSS! A LittleはBe Surprisedしてあげて下さいよ!」

「無駄よ? ボスはとっくの昔にトチ狂ってるわ」

 

ゲーティアとハーフビーク級2隻を捕捉したアーレスで、彼らは笑った。

カモがネギを引っさげて戻って来たのだ、ほくそ笑まないハズが無い。

 

「どうするのかしら、ロブ? 爪楊枝(ダインスレイヴ)で終わらせる?」

「いいや? そンなンつまらねェだろ。アマーリア、ピラール。奴らに、煽動屋(ならず者)の流儀を教えてやれ」

「OK!」

「フフ、良いわよ。帰って来たらキスしてね?」

 

部下の2人が奪ったMSの下へ向かって行くのを見届け、「煽動屋」を最初に始めた男――ロブ・ダリモアは、部下に指示を出し始めた。

 

 

 

 

ゲーティアは、アーレスを「クラウ・ソラス」の射程圏内に捉えた。

ハーフビーク級から1隻のテンプテーション、ゲーティアからそれを引っ張る役を担うガンダム・バエルが出撃した。

ゲーティアからはガンダム・ベリアル、ガンダム・フォカロルテンペストが出撃して攻撃の準備を整える。

 

『では、基地の奪還は任せるぞアグニカ』

「了解、任せろ。敵MSは頼む」

『当然だ。宇宙用に改修したこの「ガンダム・フォカロルテンペスト」の力、見せてやるよ』

 

アグニカはドワームとアマディスのやる気を頼もしく思いつつ、テンプテーションを牽引してアーレスへと出発した。

 

『アグニカ、ドワーム、アマディス。「クラウ・ソラス」の射線上には入るなよ。―――出力60%で、発射用意!』

『仰ーせのままーに!』

 

ゲーティア艦長のルベルトがそう言うと、火器管制室に回ったマッドサイエンティスト…もといヴィヴァトがそのスイッチを押す。

何故マッドサイエンティストが火器管制室にいるかと言うと、純粋な人員不足である。

 

ゲーティアの右側の装甲が動き、中からエイハブ・リアクターと丸太のような黒い兵器が現れる。

それはエイハブ・リアクターと直結されており、コロニーさえ維持する膨大なエネルギーの全てが砲身に注がれて行く。

その兵器の砲身が伸び、内部ユニットが回転を始めた。

スパークが起き、砲身の先にエネルギーの塊が出来る。

 

「カウント、開始します! 10、9、8、7、6――」

 

そして、カウントが1になり。

 

 

「『クラウ・ソラス』、発射!!」

 

 

艦長がそう言った瞬間、下手なMAのビーム砲を上回るビームが放たれた。

 

クラウ・ソラス。

バージニア級戦艦の右舷に取り付けられ、エイハブ・リアクターと直結して放たれる超強力なビーム砲である。

その威力は、100%ならば宇宙世紀に存在したとされる「ハイパーメガ粒子砲」に匹敵するとされる。

出力60%だと、「ハイメガ粒子砲」に匹敵するくらいだろう。

 

放たれたビームは先に出発したバエルとテンプテーションを追い越し、アーレスに直撃した。

 

「ッ、何事だ! さてはMAか!?」

「いえ――て、敵新型戦艦からの砲撃です!」

「戦艦だと!?」

 

僅か30秒足らずの砲撃が終了し、クラウ・ソラスは砲身冷却を開始した。

一方、直撃を食らったアーレスの煽動屋達は慌てふためいていた。

 

「この施設の破壊までには至りませんが、火星に向かって押し出されています! このままでは衛星軌道から外れて、火星に落ちます!」

「チィ、小癪な――! 戦艦とMSを全て出して、施設を押せ! 衛星軌道に戻すぞ!」

『ロブ、Me達はどうする?』

「あの小賢しい戦艦を叩き墜とせ!」

『Roger。行くよ!』

 

アーレスから煽動屋のMS部隊と戦艦が出撃し、アーレスを衛星軌道へと押し出し始める。

アマーリア・ウィーデンのガンダム・レラージェとピラール・ハーディングのガンダム・カイムは、ゲーティアを撃沈すべく出撃した。

 

『アマーリア、ThatはWhat?』

『? あれは――テンプテーションと、ガンダム? あんな所で何をして…』

 

アマーリアは僅かに考えたが、すぐに目的に思い当たる。

 

『肉弾戦を仕掛けるつもり!?』

『ちょ、Itって…!』

『落とすわよ!』

 

レラージェとカイムは、テンプテーションに火器を向ける。

 

『アグニカ、上にガンダムが…!』

「どうやら、強奪されてしまったみたいだな。しばらく独力でアーレスに向かってくれ」

 

護衛のバエルが、2本の剣を抜いてレラージェとカイムに突撃する。

 

『!?』

『What!?』

 

左の剣でレラージェを牽制しつつ、右の剣でカイムに斬り掛かる。

レラージェはロックオンを解除して回避し、カイムもロックオンを外してカイム・サーベルを抜いて応戦する。

 

『たかがOne機で、WhatがCanってSayのかい!』

「はッ。誰が1機って言ったよ?」

 

左腕に取り付けられたワイヤーブレードで、レラージェが攻撃を仕掛ける。

バエルはカイムを圧倒して押し返した後、全速後退してワイヤーブレードを回避する。

 

『逃がしゃしないよ!』

「テンプテーションは…あそこか。じゃ、後よろしく」

 

反転したバエルは、速やかにテンプテーションの方向へ向かう。

追撃しようとするレラージェとカイムに、ミサイルが降り注いだ。

 

『ッ!』

『Hindrance…!』

 

2機がそれを迎撃していると、レラージェに大剣が振り下ろされた。

 

『――何者だ!』

『アグニカ達の邪魔はさせん!』

『さて、宇宙の塵になりやがれ!』

 

ベリアルとレラージェ、フォカロルとカイムの戦闘が始まった。

 

『ナノミラーチャフ、発射せよ!』

 

ゲーティアとハーフビーク級2隻からミサイルが放たれ、アーレスの近くで爆発してナノミラーチャフをバラまく。

 

「センサーが…!」

「何してンだ、焼き払え!」

「すみません、施設の把握がまだ…!」

「テメェら、この28時間何してやがった!? 火器管制室くらい見つけとけよ!」

 

 

 

 

ナノミラーチャフがバラ撒かれる中、テンプテーションは気付かれぬようアーレスに入港した。

なお、肉眼でテンプテーションを見た者はレラージェとカイムを除いて全てをバエルで斬り捨てている。

 

バエルをアーレスに入れ、俺はライフルなどを持った奇襲部隊の前に出る。

 

「ザルムフォート。あの通路ってのは、ここからで良いな?」

「ああ。後、シプリアノと呼んでくれた方がやりやすいのだが」

「分かった。じゃあ、全員行動開始。10分で基地を奪還する」

 

奪還の方法はシンプルだ。

注意を引きつける囮部隊と、隠し通路から司令室を奪還する特殊部隊に分かれる。

囮部隊は出来る限り敵の注意を引き付けつつ、僅かな人数で編成された特殊部隊が隠し通路からそれぞれ司令室へ向かう。

 

そして、特殊部隊は順調に司令室の天井裏に辿り着いた。

 

「(ここは排気口になってる。この金網をズラして、敵の親玉を狙撃しよう)」

「(了解)」

 

俺は金網を静かにズラし、拳銃で敵のボスと思わしき人物に狙いを定める。

 

「(大丈夫、アグニカ?)」

「(狙いが定まらない…ええい、ままよ!)」

 

当てずっぽうで撃つが、そんなモノが当たるハズも無く。

拳銃の発砲音が司令室に響き、敵のボスがこちらを見る。

 

「外れただと!? やはり、サイレンサーを付けるべきだったか!?」

「アグニカ、言ってる場合じゃないよ!」

「――テメェら、何モンだァ!?」

 

敵のボスが拳銃を構えた瞬間、付いて来ていたスヴァハが金網を外して飛び下りた。

スヴァハは銃を構え、敵のボスの拳銃を狙撃して破壊した。

 

「チィ!」

「よいしょ!」

 

俺も続いて飛び下り、敵のボスに蹴りを1発。

あっさりかわされたが、その時。

 

「全員、突撃なさい!」

 

司令室の扉を刀で斬り捨て、カロムの率いる囮部隊が司令室になだれ込んで来た。

 

「アホか、こンな時代に刀だと!?」

「その言葉、後悔すると良いわ!」

 

カロムは刀を構えて敵のボスに突撃し、刀を振り下ろした。

 

「クソが…! 退くぞテメェら!」

「退かせる訳には行かぬな」

 

フェンリスがアサルトライフルを撃ち、敵の部下達を確実に仕留めて行く。

 

「お待ちなさい!」

「ハッ、待てと言われて待つ奴がいるかよ! 司令室を奪還された、ハッチが塞がれる前にズラかる! テメェら、オレの機体を用意しとけよ!」

 

単身で司令室を脱出し、敵のボスは連絡を始めた。

 

「テンプテーションはともかく、バエルは無くなったら困る…すまん、後は任せる!」

「う、うん! 気をつけてね、アグニカ!」

 

 

 

 

カロム達が入って来た扉から、アグニカはバエルの下へ向かった。

全力疾走した結果、アグニカは何とかバエルに辿り着いた。

コクピットに乗り込んで起動させ、アグニカが横を見ると。

 

 

黒と白で塗られた、4つ目かつ4本角のガンダムが大剣で斬り掛かって来ていた。

 

 

「ッ、あれは…!」

 

後退して大剣をかわしつつ、バエルは剣を抜いてその機体と向かい合う。

 

大剣に「アイギス」と呼ばれる防御兵装、右肩から出るビームマント。

4つの目と角を持ち、白と黒に塗られたガンダム。

 

それは、アグニカが火星基地の科学者から聞いたとある機体に酷似していた。

 

「――ガンダム・アンドロマリウス…!」

 

アンドロマリウスの目が光り、バエルに襲いかかった。

バエルが大剣を剣で防ぐ間に、アンドロマリウスは基地の外に出てマシンガンを構える。

そのまま発砲し、ナノミラーチャフを起爆させて吹き飛ばす。

 

『全員、施設を衛星軌道に戻す作業はもういい。司令室を奪還された、とっとと持てるモン持ってズラかるぞ。ダインスレイヴとかは発射準備もしとけ』

「貴様…!」

 

続いて基地から飛び出したバエルが、アンドロマリウスに斬り掛かる。

アンドロマリウスはそれを大剣で防ぎ、バエルとつば競り合う。

 

「何者だ。何故、ヘイムダルの基地を攻撃した?」

『オイオイ、質問は1つにしとけよ。まあ、せっかくだし答えてやるよ』

 

接触回線で、ロブはアグニカの問いに答える。

 

『オレはロブ・ダリモア。世界最大規模の煽動屋、「フヴェズルング」のリーダー』

 

「煽動屋」の1つ、フヴェズルング。

MAが暴れるこの数年、幾多の仕事を引き受けて達成して来た一流の煽動屋だ。

 

『テメェらヘイムダルは、MAを倒す為にこンなMSを作りやがった。だがよ、あんな化け物を相手にしながら戦おうなンざ自殺行為だろ? せっかくのMSが無駄だしな。だから、オレ達が有効活用してやろうってンだ』

「有効活用? その化け物を誘導して、大量殺戮の手伝いをする事がか?」

『おうさ。金は出る、食い扶持に困る事も無ェ。これが有効活用じゃなくて何だってンだ?』

 

ロブの言い分は、個人の視点から見れば正しい。

仕事を達成すれば経済圏から大金を得る事が出来るのだから、自身は良い生活を送れるだろう。

 

――「その仕事を達成した結果、喪われる多くの命を度外視すれば」正しい意見だ。

 

「――ダカール、アーブラウ、ニューヤーク。これらの大都市に現れたMAが、何人の人間を殺したか分かっているのか?」

『お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?』

「――なら、貴様もそのパンの1枚に成り果てろ。今更嫌とは言うまいな、殺人鬼」

『これはまた的外れだな。確かにオレはMAを煽動したが、殺したのはMAだ。煽動したモノが煽動した先で何をしようが、オレの関知する所ではない』

 

アンドロマリウスは大剣を振り、バエルを吹き飛ばす。

続けて左腕に接続された迫撃砲を撃ち、バエルを牽制した。

対するバエルは電磁砲を放ち、アンドロマリウスの肩に当てる。

 

『ボス! 撤退準備、整いました!』

 

アンドロマリウスはビームマントで牽制しつつ、撤退する。

 

『よし。アマーリア、ピラール! 後退するぞ!』

 

そう言われたレラージェとカイムは、ベリアルとフォカロルを振り切って強奪したハーフビーク級に戻って行く。

その3機を収容したハーフビーク級は、速やかにデブリ帯へ姿を消した。

 

『…見事な退き際だな』

『全くだな…まあ、第一目標は達成したし良しとしよう』

 

そして、3機はゲーティアに帰還し。

ゲーティアとハーフビーク級は、アーレスへ入港した。

 

 

 

 

アーレスの中では、逃げ遅れた火星基地スタッフが捕らえられていた。

 

「よくもまあ、こうも見事に捕らえてぶち込めたモノだな。殺された者はいないみたいだが」

「ああ、この手腕に関しては見事としか言えん。MSの使いようと言い、あの腕ならばMAであれ倒せるだろう。何故、『煽動屋』などに身をやつしているのか」

 

クリウスとフェンリスは息を吐きつつ、独房の鍵を開けてスタッフを解放して行く。

その近くでは、俺とスヴァハも独房を開ける。

すると。

 

 

「――女神だ」

 

 

「「…は?」」

「結婚してくれ!」

 

などとほざき、スヴァハにゼフィランサス(花)を差し出す変人がいた。

 

「―――アグニカ」

「―――ああ」

 

スヴァハは独房の扉を操作し、そっ閉じして鍵を閉めた。

 

「んん? どうした?」

「―――変な奴がいた」

「変な奴?」

 

フェンリスとクリウスが、興味深そうに問題の独房の扉を開く。

すると。

 

 

「女神よ結婚してくれ!」

 

 

などとほざき、ガーベラ(花)を差し出す変人がいた。

フェンリスとクリウスは一瞬で独房の扉を操作し、扉を閉める。

 

「………クリウス。我々は何も見ていない。そうだな?」

「………その通りだ、フェンリス。俺達は何も見ていない」

「オイ、現実逃避してんゾ。気持ちは分かるし――取り敢えず、スヴァハこっちこっち」

「あ、うん…そだね、よろしくアグニカ」

 

スヴァハを俺の陰に隠した上で、フェンリス、クリウスと共に再び扉を開ける。

すると。

 

 

「おお女神よ! 私はレオナルド・マクティア、自己紹介が遅れた事お許し願う! 貴女の可憐さに私は心を奪われた、この気持ちまさしく愛だ!!」

 

 

などとほざき、オーキス(花)を差し出す変人がいた。

 

「――む? 我が愛しの女神は何処? イケメンも捨てがたいが、今我が瞳は女神しか受け付けぬ!」

「もうダメなんじゃないか、コイツ。何か、マッドサイエンティストと同じ――ヤバい匂いがする」

「た、確かに…」

「嗚呼、女神の麗しき声が! 女神よ、我が愛の告白に応えたまえ!」

 

改めてサイサリス(花)を差し出す変人、スヴァハからの返事を求める。

 

「――ねえアグニカ、これどうしよう」

「…お答えしてあげなさい。男たる者、好きな女の子に告白した暁には答えが欲しいモノだ。それが是であれ否であれ、な」

「「うんうん」」

 

フェンリスとクリウスが頷いている。

前から思ってたけど、お前ら仲良いよな?

 

「さあ我が愛に応えををを!!」

 

ステイメン(花)を差し出しながら、レオナルドが答えを求める。

スヴァハは息を吸い――

 

 

「変な人はダメです」

 

 

一言でフった。

 

「「ですよねー」」

「うおおおおお!! バカなあああああ!!!」

 

変人、轟沈。

用意していながら無駄になったらしいデンドロビウム(花)を握り締め、悔し涙を流す。

 

「――変人(バカ)の死体は俺達が拾う。アグニカとスヴァハは、別の所で働いてくれ」

「う、うん…」

「悪いな、助かる」

「気にするな。ほら起きろ、変な人。愚痴くらいなら仕事しながら聞いてやるから」

「せめて真摯に聞いてくれえ!」

「一目惚れの恋が玉砕した程度の愚痴、仕事しながらでも充分だ」

 

割と容赦無い言葉を耳に挟みつつ、俺とスヴァハは独房エリアを後にした。

 

 

 

 

「アハハ…何か、悪い事をした気がするよ…」

「そんなに気にするな。マッドサイエンティストと同じ匂いがする変人をフっただけだ、責められる事は無い。それに、ああいう関係は本当に好きな人としか持たないとダメだろうし」

 

そんな話をしながら、窓の外に火星が見える展望廊下をスヴァハの後ろに付いて歩く。

 

「―――ふーん。そっかあ…」

 

と、何か感慨深そうにスヴァハが呟く。

 

――あの声は、何か企んでる声だ。

俺は詳しいんだ、スヴァハがああいう素振りを見せた後は俺に何かイタズラしてくるんだよ。

なお、その内容まで可愛いのはお約束。

 

しかし、俺とてただやられるつもりは無い。

今まで散々先を越されて来たが、今度は越してやらねば。

 

などと考え謀略を巡らせていると、スヴァハは施設の一角にある3方向が窓になった部屋に入った。

何かと思い、その後に部屋の中へ入る。

 

「――あのね、アグニカ」

 

スヴァハは俺に背中を向けたまま、呟くような声で俺に話し掛けて来る。

その時、俺の後ろで部屋の扉が閉まった。

 

第一声から数分が経って、スヴァハは再び口を開いた。

 

「……私、アグニカのこt」

「いやー、綺麗だなー火星」

 

スヴァハの言葉を敢えて遮り、俺は左側に見える火星を指差して的外れな事を言う。

俺の的外れな言葉に少し混乱したようだが、スヴァハはとっさに左側を見て「そ、そうだね」とぎこちなく返して来た。

 

スヴァハの顔には、僅かな不満が見て取れる。

11年の間何度か見たその表情を受けて、俺はスヴァハに一歩だけ近付いて。

 

 

「好きだよ、スヴァハ」

 

 

と、後の時代になっても恥ずかしく思えるド直球な言葉で告白した。

 

「―――えっ?」

「スヴァハ、お前が好きだ。愛してる」

 

ふとこちらを見て呆気に取られるスヴァハに、更に追撃を掛ける。

ようやく言葉の意味を理解したらしいスヴァハの顔が、真っ赤に染まって行く。

 

「―――え、えっえっ? ア、アグニカそれってまさかいやでもなんでそんなことをいうのわたしn」

 

テンパるスヴァハの前に跪き、小さな銀色の指輪を差し出す。

ベルファストで自由行動をした時、さり気なく買っておいたモノだ。

 

「…答えを、聞かせてくれ」

 

俺がそう言った瞬間、スヴァハは俺に抱きついた。

限りなく近付いた身体を、そっと抱き締め返すと。

 

「――バカ、遅いよ…私も、アグニカが大好き。離れたくない。ずっと、一緒にいたい―――」

 

そう、嬉しい答えを返してくれた。

 

「本当に良いのか、俺で。ガサツでバカで、基本的に何も出来ないけど?」

「良いよ。私はガサツでバカで、でも…いつも気遣ってくれて、私を勇気づけてくれた。私を安心させてくれる、優しいアグニカに恋をしたんだよ――」

 

スヴァハが着けている手袋を外して、その左手の薬指に指輪をはめる。

そして、その手を取って立ち上がり。

 

柔らかい唇に、口付けをする。

それはとても甘く――全てを蕩けさせるような味が口の中を埋め尽くして行った。

 

 

 

 

火星より少し離れたラグランジュポイントにある、デブリ帯。

そこを、「煽動屋」フヴェズルングが強奪したハーフビーク級が航行していた。

 

「BOSS! NowからRetaliationしましょうよ!」

「アホか。ヘイムダルは、ガンダム・フレームを作った組織だぞ? この前はガンダムが3機しか出て来なかったが、もっと多くのガンダムを持ってるに違いねェンだ。こちらには大量のダインスレイヴが有るとは言え、圧倒的な機動力を持つガンダム相手じゃ分が悪い。報復に行った所で、返り討ちにされンのが関の山だろうが」

 

ピラールの提案をあっさり却下し、ロブは手元のタブレットを確認する。

 

「次の依頼は――ドルト10の破壊か」

「それじゃ、しばらく掛かるわね」

「ああ。地球と火星の往復なンざ、簡単には行かねェからな。これが木星になりゃ尚更だ」

 

ロブ達がそう雑談していると、オペレーターからこのような報告をされた。

 

「艦の前方約1800km先に、何か妙な反応が有ります。エイハブ・リアクターのようですが…」

「ああ? どうせ、このデブリ帯を作ってるエイハブ・リアクターの残骸だろ? 捨ておけ」

「いえ、それにしては妙なんですよ。普通はロディ・フレームやらヘキサ・フレーム、レアな場合でもガンダム・フレームのモノですから数はせいぜい2基のハズです。このエイハブ・リアクターの数は…5基有ります」

 

5基のエイハブ・リアクター、それもフル稼働状態であると言う報告にロブは眉を顰める。

5基全てのエイハブ・リアクターがフル稼働状態と言う事は、それは同調していると言う事だろう。

 

人類の最新技術を以てしても、エイハブ・リアクターはガンダム・フレームのように2基の同調が限界。

となると、5基の同調したエイハブ・リアクターは人間の手によるモノではない――必然的に、MAのモノと言う事になる。

 

「エイハブ・リアクターを5基も積んだMAなンざ、聞いた事が無ェぞ?」

「ハイ…一体何が…ッ、5基のリアクターの周囲に高エネルギー反応! これは――!!」

 

―――破壊。

それが、その機体…エイハブ・リアクターを5基も積んだ過剰極まるエネルギーを誇るMAの役割だ。

 

「ビームです!」

「な、なンだと!?」

 

全て、全て。

何もかもを破壊する。

人間の生きる環境を破壊し、人間の創るモノを破壊し、人間そのものも破壊する。

 

 

それこそが、「四大天使」の一角たるMA。

ウリエルが唯一持つ、存在意義なのだから―――




オリジナル設定解説のコーナーです。
何故こんなにも多いんですかねえ…覚えられないんですけど(お前のせいだろ)


煽動屋について。
各経済圏などから依頼を受け、指定された場所にMAを誘導する仕事をする者達の総称。
依頼者は主に、敵対者に大きな被害を与える為に彼らを必要とします。
依頼者から払われる報酬は絶大で、行き場を無くした者が煽動屋に身をやつす例も少なくありません。

ロブ・ダリモア
汚れ仕事の代表である「煽動屋」の最大勢力「フヴェズルング」のリーダー。
ヘイムダルより強奪した「ガンダム・アンドロマリウス」のパイロット。
初めて「煽動屋」となり、以後組織として巨大化させた。
まず自分を第一に考える為、仕事をした結果人々がどうなるかについてはあまり関心が無い。

ASW-G-72 ガンダム・アンドロマリウス
全高:18.4m
本体重量:29.6t
動力源:エイハブ・リアクター×2
使用フレーム:ガンダム・フレーム
武装:ナノラミネート・バスターソード×1
   迫撃砲×1
   マシンガン×1
   ビームマント×1
   アイギス×1
概要
ロブ・ダリモアの専用機。
機体は黒と白で塗られており、4つ眼かつ4本角。
ナノラミネート・バスターソードによる、近接戦を得意とする。
左利きの機体で、左腕には迫撃砲が取り付けられている。
右腕ではマシンガンを持ち、右肩にはビームマント発生装置と右腕にアイギスが装備されている。
背中と腰には大型スラスターが有り、バエルをも越える高機動を実現した。
機体はシンプルだが、それ故に扱いやすい。
名前の由来はソロモン王直属の使い魔「ソロモン七十二柱」に於ける序列第七十二位の悪魔「アンドロマリウス」から。
アンドロマリウスは36の軍団を率いる、地獄の伯爵だとされる。

アマーリア・ウィーデン
「煽動屋」フヴェズルングのメンバーで、ロブの側近の1人。
ヘイムダルより強奪した「ガンダム・レラージェ」のパイロット。

ASW-G-14 ガンダム・レラージェ
全高:18.6m
本体重量:35.0t
動力源:エイハブ・リアクター×2
使用フレーム:ガンダム・フレーム
武装:レラージェ・ライフル×1
   ワイヤーブレード×1
   ハンドナイフ×4
概要
アマーリア・ウィーデンの専用機。
背中と腰にブースターが装備され、一撃離脱戦法を得意とする。
武器は「レラージェ・ライフル」と「ワイヤーブレード」、「ハンドナイフ」。
レラージェ・ライフルは折り畳み可能な専用ライフル。
ライフルモードとスナイパーライフルモードを使い分けられ、それぞれのモードの専用マガジンを携行している。
展開方法が複雑で、整備には時間が掛かる。
ワイヤーブレードが左腕に取り付けられ、ハンドナイフは近接戦で使用される。
名前の由来はソロモン王直属の使い魔「ソロモン七十二柱」に於ける序列第十四位の悪魔「レラージェ(レラジェ、レライエ、レライハ、ロレイ、オライとも)」から。
レラージェは30の軍団を率いる、地獄の大侯爵だとされる。
ダラク・ニンジャさんより頂いた案を元に、設定しました。

ピラール・ハーディング
「煽動屋」フヴェズルングのメンバーで、ロブの側近の1人。
ヘイムダルより強奪した「ガンダム・カイム」のパイロット。

ASW-G-53 ガンダム・カイム
全高:18.4m
本体重量:32.8t
動力源:エイハブ・リアクター×2
使用フレーム:ガンダム・フレーム
武装:カイム・サーベル×1
   ショートバレルキャノン×2
概要
ピラール・ハーディングの専用機。
背部に装備された2基の大型スラスターを利用した、一撃離脱の戦法を得意とする。
武装は専用の「カイム・サーベル」と汎用武器の「ショートバレルキャノン」。
カイム・サーベルはレアアロイで錬成されており、場合によってはフレームごとMSを叩き斬る事が可能。
ショートバレルキャノンによる牽制と、カイム・サーベルによる接近戦が主な戦闘スタイルとなる。
名前の由来は、ソロモン王直属の使い魔「ソロモン七十二柱」に於ける序列第五十三位の悪魔「カイム」から。
カイムは30の軍団を率いる、大総裁だとされる。
クルガンさんより頂いた案を元に、設定しました。

クラウ・ソラス。
バージニア級戦艦の右舷に取り付けられた、エイハブ・リアクターと直結して放たれる超強力なビーム砲。

ASW-G-41 ガンダム・フォカロルテンペスト
全高:18.5m
本体重量:41.5t
動力源:エイハブ・リアクター×2
使用フレーム:ガンダム・フレーム
武装:バスターオール×2
   キャニスターガトリング/ダインスレイヴ×2
   マシンガングレネード×2
   ティザーアンカー×4
   多目的ランチャーポッド×4
   ネプチューンⅡ×1
概要
アマディス・クアークの専用機。
水中戦を想定して開発されたガンダム・フォカロルを、水中以外の場所で最大出力の戦闘を可能とすべく改装した機体。
水中でも高い機動力と運動性能、長時間運用を可能にすべく装備される専用装備「ネプチューン」は、水中以外の場所では高出力スラスターとなるよう再調整された。
専用武器「トライデント」は「バスターオール」に、「ハープーン」は「キャニスターガトリング」と選択式になり、「ティザーアンカー」の他にも「マシンガングレネード」と「多目的ランチャーポッド」が増設されている。
バスターオールはトライデントに代わるオールを模した主武装で、柄を繋げればトライデントと同じように使用出来る。
ハープーンはキャニスターガトリング、ダインスレイヴの選択式に。
キャニスターガトリングは散弾をバラまくガトリング砲で、広範囲かつ大多数の敵に対して真価を発揮する。
マシンガングレネードは両腕部に取り付けられ、鉄甲榴弾とナパーム弾と魚雷を選んで装填可能。
多目的ランチャーポッドは両肩と両脚側面に装備されており、ミサイルか魚雷かを選んで装填出来る。
名前の由来はソロモン王直属の使い魔「ソロモン七十二柱」に於ける序列第四十一位の悪魔で、30の軍団を率いる地獄の大公爵「フォカロル(フルカロルとも)」から。
テンペストは「弾幕の嵐」の意。
逸般Peopleさんより頂いた案を元に、設定しました。

シプリアノ・ザルムフォート
「ヘイムダル」火星基地のメンバーで、「ガンダム・ダンタリオン」のパイロット。
後にギャラルホルンの名家となるザルムフォート家の初代当主。

レオナルド・マクティア
「ヘイムダル」火星基地のメンバー。
変人。


アーレス奪還、変人の失恋、アグニカとスヴァハの2828案件と忙しい回でした。
最後には「四大天使」ウリエルが出て来ましたし、いよいよここから物語が加速します。
長すぎる? 諦めて下さい。私は諦めました。


次回「神の炎(ウリエル)」(予定)。

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