鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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案を募集して2日で、多くの方が提案してくれました。
特に初日が多く、私の設定作りが間に合わないくらいで…ありがとうございます、ありがとうございます…!


#37 出航

施設へ襲撃を掛けて来たMAの撃破から、約2時間。

サンプルデータを回収すべく、MAの死体は解析されている。

 

俺とスヴァハは何とか動けるので、その場に立ち会う事とした。

 

「ふむ、装甲にはナノラミネートアーマーと同じ原理が用いられているな。ビーム砲は損傷が酷いが、アグニカとスヴァハちゃんの証言からしてガブリエルと同タイプのビーム砲って事で良さそうだ」

「こーの尻尾――テイルブレードの基ー本構造も、ガブリエールと同一らーしい。刃にーは、バエル・ソードやアガレス・ナイフと同ーじ特ー殊超硬合ー金が使われーている」

「月の資源か?」

「恐ーらくな」

 

クソ親父とマッドサイエンティストは、スタッフ達と協力しながらMAを解析して行く。

まだ本調子では無い俺とスヴァハは、見ている事しか出来ないが。

 

「スリーヤ博士、ヴィヴァト博士。コンピューター部の破片をスキャンしてデータ復元した所、貴重そうなデータが幾つか出て来ました」

「よし。全データは吹っ飛んでなかったか」

「どんーなデータが出てー来た? 見せーたまえ」

 

ガブリエルによって生み出されたこのMAには、ガブリエルの設計図に無いデータが有るかも知れない。

俺とスヴァハはクソ親父とマッドサイエンティストの後に付いて、データに目を通す。

 

「『Zadkiel(ザドキエル)』――コイツが、このMAの名前か」

「そうらしいな。ザドキエルと言えば、ユダヤ教の伝承に伝えられる『生命の樹』の守護天使。ハシュマルと並び、天使を纏める天使長でも有るが…」

 

これは、「ハシュマル」なる名前のMAも存在していると見て良さそうだ。

 

「ここには、『Zadkiel-02』って有るから――どっかに『Zadkiel-01』とかいそうだね」

「そうーだな。MAは、1種ー類につき1機と言うー訳では無いーようだ。後、他に何ーか分かーらないか?」

 

マッドサイエンティストの問いを受け、データ解析班がキーボードを叩く。

しかし。

 

「残念ながら、これらのコンピューター部の破片の情報を合わせても名前くらいしか分かりません。後の情報は、破壊されて吹っ飛んだか停止した際にデータが自動消去されたかのどちらかでしょう」

「他に分かった事は、ガブリエルが生み出した機体にわざわざ名前を付けてるって事くらいか」

「意外と母性に満ち溢れてたりするのか、ガブリエルって」

「さあ…?」

 

現物を見た事が無い以上、ガブリエルについては何とも言い難い。

だが、防衛用に配備されていたMSを根こそぎ叩き潰して強固かつ巨大な施設の39%を数時間で使い物にならなくしたような化け物が、ガブリエルから生まれた事は確かだ。

その時点で、ガブリエルを含めた全てのMAは人類の害悪足りうるだろう。

 

「――アグニカ、スヴァハちゃん。お前達はもう休め」

「おや、クソ親父から気遣いされるとは…」

「お前は俺をヴィヴァトみたいなマッドサイエンティストだとでも思ってんのか…?」

「待ーて、私が子ー供を気遣えーないとでも言いーたいのかね?」

 

マッドサイエンティストが噛み付くが、スリーヤはスルーして続ける。

 

「とにかく休んで来い。阿頼耶織手術には、体力を使う。大急ぎで施術したから、負担も大きい。あの医者は凄腕だから失敗は有り得んが、それとお前達の体力は別の話だ」

 

クソ親父の言葉に従うのは何となくアレだが、正論なので仕方無い。

俺とスヴァハは部屋に戻り、眠りに就くのだった。

 

 

 

 

「――どうやら、悪魔と契約はしなかったようだ」

「そーのようだーな。私は少ーし、安心してーいるぞ」

 

子供が部屋に戻った後、父親2人はそんな会話をしていた。

 

「メチャクチャ安心してる、の間違いだろう親バカマッドサイエンティストめ。そも、機体に悪魔を憑かせたのも阿頼耶織を完成させたのも契約システムを作ったのもお前だろう。作った当人が、そんな気合いでどうするのだ?」

「いーや待て、1ヶ所物申ーすぞ。阿ー頼耶織の原案はプラージャ・カイエル博ー士で、完成させーたのはスリーヤ・カイエル博ー士…つーまりキミだろう。私はたーだ、ガンダム・フレームに合ーうよう手を加ーえたに過ぎーんよ」

「その手の加え方がおかしいんだよ。悪魔とか言う存在自体怪しいモノを機体に仕込んだからそれに合わせてシステム変えました、なんてお前しかやらんぞ。あの場にいた奴らも、半分は納得出来てないハズだ」

 

科学者からすれば、魔術なんて意味の分からない幻想(オカルト)でしかない。

衰退して久しい現在、悪魔が宿ったMSの存在そのものが禁忌とさえ言って良い。

 

「ガンダムに宿った悪魔は搭乗者に力を与えるが、相応の対価を要求する。或いは身体、或いは心、或いは感情、或いは魂。その悪魔によって支払うべき対価は異なるが、パイロットが()()()()()()()()()()()()()()()()()事は変わらん――それは確かだな?」

「そーの通り。そしーて、それは悪ー魔との契約の下絶対遵守されーる。悪ー魔は例外無ーく、契約にうるーさいからな。今回、アグーニカ君とスヴァハは悪ー魔に力を求めなかーった。だかーらこそ、五体満ー足で生きていらーれるが――」

()()()()()()()()()()()()()()()、か」

 

スリーヤの言葉に、ヴィヴァトは頷く。

 

「ザドキエルとーは、名前かーらして『天使長』。プラージャ博ー士が遺しーたガブリエルの設計ー図のプログラーミングを見るーに、下かーら2番目の位ー階。つまーり、()()()()()()()

「それが『四大天使』、か」

 

ガブリエルの設計図には、ガブリエルは自分すら超える力を持つMAを3つのみ生み出せると有る。

そして、それこそが「四大天使」と呼ばれる最強のMA達だ。

 

「ガブリエルと言う名前から推測するに、『神の人』ガブリエル、『神の如き者』ミカエル、『神の炎』ウリエル、『神を癒す者』ラファエルが四大天使に当たるハズだ」

「それーで間違ーいは無いーだろうな。果たーしてそれーらを相手にしたー時、悪ー魔と契約せずどこーまで戦えーるか――ガンダム・フレームは、悪ー魔と契約せねーば真の力を発揮しなーいからな」

 

これからの子供の運命について、父親達には不安しか無い。

しかし、ここで止めれば人類は滅亡する。

 

「――そう言えば、アレの状況はどうなってる? 設計図だけ書いて、その後はお前に丸投げしたが」

「ガンダム・フレーム建ー造の合ー間を縫って、着ー々と建ー造し続けーて来た。完ー成も間近だ」

「そうか。――そろそろ、反撃を始める頃合か?」

 

 

 

 

数日後。

俺とスヴァハは、再びクソ親父とマッドサイエンティストから呼び出しを食らった。

 

「で、今度はどんな無茶振りをするつもりだ?」

「私達が眠ってる間に、ガンダム・フレームは大体仕上がって…るね」

 

以前のザドキエル襲撃で人類の危機をより強く認識した研究所職員達が馬車馬の如く働き続けた結果、ガンダム・フレームはほぼ完成してしまった。

現在職員の全員はぶっ倒れ、起きて活動しているのは俺とスヴァハ、クソ親父とマッドサイエンティストだけだ。

 

「本気になった人間の火事場の馬鹿力と言う奴が引き起こした、1つの奇跡だな。俺としては、後1ヶ月で全機完成の予定だったのだが…」

「僅ーか4日で全ーて仕上がってしまーった。人ー間、恐ろしーい生物だ」

 

どんだけ働いたんだ、職員の皆様。

この意地に応えるべく、俺達も敗北は出来ない。

 

「そこで、だ。予定を少し――いや、かなり繰り上げる事とする。数ヶ月単位でのスケジュール繰り上げとなってしまったが、全て頑張った皆のお陰だ。ならば、その期待には応えねばな」

「――具体的には?」

「攻勢に出る」

 

そして、クソ親父は俺にタブレット端末を渡して来た。

その画面を、俺とスヴァハは覗き込む。

 

「これって――戦艦の設計図、ですか?」

「ああ。ガンダム・フレーム建造の合間を縫って、これも建造していた。俺が設計した新型汎用戦艦、バージニア級だ」

 

設計図を見る限り、艦の動力源はエイハブ・リアクター。

汎用戦艦とあって、陸海空宙のどこでも運用が出来るようだ。

 

「バージニア級…名前は『ゲーティア』とするか」

「ゲーティア…『ソロモン七十二柱』の悪ー魔が列挙されーた、『レメゲトン』の第一部の名ー前か。良いーんじゃなーいか? こーれは悪ー魔のMSを載せーて飛ぶ艦ーだ」

 

流石マッドサイエンティスト、使った悪魔の出所くらいは分かっているようだ。

 

「それを載せずに、何を載せろと言うんだか。だが、攻勢に出るにせよ問題は有るだろ」

 

俺は、ガンダム・フレームを指差す。

 

「パイロット、どうするんだ?」

「道中で掻き集めろ」

「無茶を言いやがって」

 

パイロットがいなければ、ガンダム・フレームは動かない。

しかし、「俺達と一緒にMAと戦おうぜ」と誘いを掛けた所で乗る奴はいないと思う。

 

このバージニア級に艦載可能なMSの数は23機。

かなり多いが、その内の16機はパイロットがおらず残りの7機分は空いている状態だ。

 

早々に仲間をかき集めなければならない。

俺とスヴァハだけでは、限界も有る。

 

「戦艦には、この施設の職員の6割を移乗させる。技術師長として、ヴィヴァトにも乗ってもらう」

「うーむ。よーろしく頼ーむぞ」

 

何て事だ、このマッドサイエンティストが一緒だと言うのか。

腕を見るには申し分無い適任者だが、思考回路がぶっ飛んだ変人を乗せて大丈夫なのだろうか?

 

「オイ、クソ親父は?」

「俺はここに留まる。この研究所は、元々親父が造ったモノだ。ザドキエルに見つかったとは言え、基本MAには発見されにくい。ここでせいぜい、下らないモンを造るとするさ」

 

そう言って、クソ親父はもう1つタブレット端末を渡して来た。

 

「まず、道中でMAを狩りながら世界各地の『ヘイムダル』と合流してもらう。月に攻め込むのは、その後と言う事になるが――合流に、時間は掛けるなよ。今の所、ガンダム・フレームの建造速度は我々が一番早い。とっとと合流して、ガブリエルに喧嘩をふっかけろ」

「待ーてスリーヤ、気が早ーいぞ。この屍ー共が復活しなーい限り、バージニア級…ゲーティアは出せーんぞ」

「―――そうだった」

 

とりあえず、出発は明後日と言う事になった。

最初に向かう「ヘイムダル」基地は、地球――かつて「日本」と呼ばれた、オセアニア連邦が統治する地域に有る。

 

「そーちらには、エイハブ・リアクター建造技術ーを持つ科ー学者が2人いーる。そしーて、我々と同じーくバージニア級の建ー造をしていーるハズだ」

浦上(うらがみ)駿(はや)()と、アドルフ・オファロン。ヴィヴァトと比べりゃ、かなりマシな奴らだ」

 

日本とあって、随分変わった名前の人物だ。

 

「では、出発までしばし休め。散々休んだだろうが、まだ休め。道中にもMAの襲撃が予想されるから、一度出れば休みなど無いぞ」

 

 

 

 

2日後。

バージニア級戦艦「ゲーティア」は、海上移動研究所「ヴィーンゴールヴ」を後にした。

スリーヤは、ザドキエルに破壊された所から外へ出てそれを見送った。

 

「ガブリエルが起動して以後、世界各地でMAによる殺戮は行われている。今の所、人類の7分の3は殺されたと聞いたが――親父。こんな凄惨な厄祭が、アンタの望む光景なのか?」

 

答えは無い。

だが、スリーヤ・カイエルはこう断言出来る。

 

「プラージャ・カイエルは――人類が大好きだった俺の親父(大バカ者)は、こんな光景を望まない。俺は、全てアグニカに押し付ける事しか出来なかったが――頼む。人類は、こんな所で終わって良い存在ではない」

 

断言出来るが故に、スリーヤ・カイエルは今の世界を否定する。

圧倒的な暴力のみがまかり通り、弱者の想いが踏みにじられ淘汰される世界を。

 

「――さて。俺もまた、下らない研究に戻るとしようか」

 

スリーヤが新たに考案したのは、スタイリッシュな新フレーム。

後に「ヴァルキュリア・フレーム」と呼ばれる、レアフレームの開発に取りかかった。




アグニカ達、世界を回り始めました。
次回からもオリジナルキャラやらオリジナル設定やらオリジナルMSやらオリジナルMAやらがポンポン出て来ますけど、お気になさらず(オイ)。

では、もはや恒例のオリジナル設定解説。


四大天使。
やっと、名前が出揃いました。
ガブリエル、ウリエル、ミカエル、ラファエルが四大天使なるMAとなります。
ラファエルと言われてティエリアが浮かんだのは、私だけではないハズ。
ガブリエルは、3機しか自分と同等かそれ以上の力を持つMAを造れない。←この設定、重要です。
当然、全部オリジナル設定なのをご理解下さい。

バージニア級戦艦「ゲーティア」。
オリジナル戦艦になります。
サイズとしては、ハーフビーク級より大きくスキップジャック級より小さい感じ。
設定などは、またいつか公開します。

各地に散らばるヘイムダル基地。
オリジナル設定として、これが後にギャラルホルンの基地となって300年後も残っているモノも有ります。

浦上駿斗とアドルフ・オファロン。
オリジナルキャラで、ヘイムダル初期メンバー。
スリーヤやヴィヴァトと同じく、エイハブ・リアクターの建造技術を持っている天才科学者です。

スリーヤの持つ海上移動研究所。
オリジナル設定として、これが後に施設拡張されてギャラルホルン地球本部基地「ヴィーンゴールヴ」となりました。

ヴァルキュリア・フレームはスリーヤが建造。
オリジナル設定です。
ヴァルキュリア・フレームの設定は名前しか考えてません(オイ)


次回から、いよいよ本格的なMA狩りです。
頂いた案を元に設定したMAとか、出して行きたいと思います。

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