鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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今回は、ちょっとガンダムっぽく無いオリジナル設定が出て来ます。

私もどうかと思ったんですが、私の中二頭では他に思い付かなかったので…情けない。
自分の中二病が恨めしいが、治る気がしない…。

今回限りなので、許して下さいm(__)mm(__)m


#35 ヘイムダル、結成

巨大月面都市の壊滅。

そのニュースを耳にして、クソ親父の話が真実だったと言う実感がようやく湧いて来た。

 

爺さんは本当に、大量殺戮巨大破壊兵器を造ったのだとも。

 

「――始まった、みたいだね」

「ああ…人類、存亡の危機だ」

 

ほぼ徹夜で試作機を弄ってた俺達は、施設内に流れるラジオのニュースでそれを知った。

 

常駐する防衛艦隊が1時間もかからず殲滅され、都市に住む住民は1人残らず抹殺。

オマケに、都市は完膚無きまでに破壊…いや、蹂躙された。

都市が有った痕跡すら無くなったとあっては、大ニュースになるのも当然だろう。

 

「ツインリアクターシステムの完成、急がないとね…」

「糸口が見えないけどな。何が同調を妨げてるんだよ、これ…」

 

タブレットをブン投げて、アグニカは頭を抱える。

 

クソ親父は新型装甲とやらの開発を始めたし、マッドサイエンティストは「阿ー頼耶織の開発が急ー務なーのだ!」とか言って怪しげな研究をしている。

結局、俺達の頭だけでどうにかするしか無い…のだが。

 

「理論上、問題無しだよね…システム外の何かが有る、のかな?」

「さあ――待てよ。マッドサイエンティストが何か意味深な事を言っていたような…」

「? あの悪の科学者、何か言ってたの?」

 

娘にまで悪の科学者呼ばわりされるマッドサイエンティストェ…。

まあそれはともかく、俺は必死に記憶を呼び戻す。

あのマッドサイエンティスト、何か訳の分からない事を――

 

「――確か、『この試ー作機には悪魔がいるーのだよ!』とか…」

「いや、まさか…そんな、ねえ?」

「本当にいるかも知れんぞ? マッドサイエンティストの思考回路なんざ、常人には理解出来ねェ」

 

悪魔。

特定の宗教文化に根ざした悪しき超自然的存在や、悪を象徴する超越的存在を表す言葉だ。

仏教では仏道を邪魔する悪神を意味し、煩悩の事であるとも捉えられる。

キリスト教ではサタンの事を指し、神を誹謗中傷して人間を誘惑する存在とされる。

また、サタン以外の西洋文化の悪霊(デーモン)も現代日本語では一般に悪魔と呼ばれたりする。

イスラム教に於いて悪魔はシャイターン、イブリースと呼ばれる。

 

この他にも、有名な悪魔群として「ソロモン七十二柱」が存在する。

宇宙世紀なる時代よりも更に前、西暦。

その紀元前10世紀の古代イスラエル――現在ではアフリカンユニオンに併合されている地域を治めていたとされる「ソロモン王」に従うとされる悪魔達。

魔術師の王とも言われるソロモン王はこれらの悪魔を使役し、扱う方法を文献…魔術書に纏めて後世に残している。

 

「何であんなので悪魔が出て来るのか? そも悪魔なんているのか? とか、はっきり言って俺は知らん。とにかく、もしそんなモノのせいで同調に影響が出やがってるなら…あのマッドサイエンティストを生贄にでもしねェとな」

「うん、その時はそうしよう」

 

マッドサイエンティスト生贄化計画を進めつつ、改めて俺達はデータに向き合う。

スヴァハさん、容赦無いっすね。

 

「しっかし、本当に分からねェなこれ…」

「? 待って、この数字は?」

「どれどれ?」

 

スヴァハが、タブレットのプログラムの一部を指差す。

そのまま、数字を変え始めた。

 

「これをこうすれば…」

「本当に行けるのか? まあ、とりあえずもう一度だ」

 

何が変わったのかは分からなかったが、今はスヴァハに縋ろう。

俺達は、再度同調実験を始めるのだった。

 

 

 

 

同調試験の成功から、1ヶ月。

クソ親父ことスリーヤ・カイエルは、エイハブ・リアクター建造技術を持つ科学者の全員を世界中から自分の施設に呼びつけた。

そして、月面都市壊滅の真実とMAの存在についてを告げた。

 

「――MA…人間を狩る天使、か。あのプラージャ博士とエイハブ博士にここまでさせるとは、人類もバカな事をしたモノだ」

「全くだ。だが、当のプラージャ・カイエルとエイハブ・バーラエナはとっくにあの世逝きだ。残された我々で、人類に対抗する力を与えなければならない」

 

MA「ガブリエル」は、プログラム通りにMAを生み出し続けている。

一刻も早く何とかしなければ、人類の生活圏は天使に蹂躙されるのだ。

 

「そーの対抗策こーそ、ツーインリアクターシーステムだ! 既に、試ー作機のリーアクター同調試ー験は完了していーる! 後は量ー産し、天使を狩りまーくるのみ!!」

「――新型MSと、新型制御システム。それに、新型装甲か…行ける、行けるぞ! これならば、天使どもに届きうるかも知れない!」

 

集まったリアクター建造技術を持つ天才科学者達…計8人は、その試験機のデータを見るなりそう確信した。

 

「たーだ、この機ー体には科学では図ーれぬ力も備わーっている! 試験機と同ー等の性能を持ーつ機体は、後71機しか造ーれない!」

「? 科学では図れない力、だと?」

「いかーにも! 天使に対抗すーる力は、人間だけでは得らーれない! なーらば、()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

マッドサイエンティストは、とある本を科学者達の座る机に叩ーき付けた。

 

「――これは…?」

 

 

「魔術書ーさ! 何チャーラ王が残しーた、科学とーは正反ー対の力…魔術ーの学問ー書! 試ー験機に備ーえられた力ーの根源とーは即ーち、『悪魔』!! 機ー体には悪ー魔の力が宿ーるのーさ、ハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハハハハハーハ!!!」

 

 

ヴィヴァト・クニギンがマッドサイエンティストと言われる理由は、その言動のぶっ飛びよう故では無い。

いや、それも多少は関わっているだろうが。

 

ヴィヴァトの研究は科学者の中でも理解されず、学会では「イかれたやべーやつ」だとか言われる。

 

 

魔術を、()()()()()()()()()()()()()()()

それが、マッドサイエンティストことヴィヴァト・クニギンの研究だった。

 

 

そして、それはヴィヴァトの優れた頭脳により成功してしまった。

結果、ツインリアクターシステムを使った機体にも採用されてしまった。

 

スリーヤの開発したツインリアクターシステムによる科学的な力。

プラージャが原案を出し、ヴィヴァトが独自に手を加えて実現した阿頼耶織システムを介した悪魔との契約による魔術的な力。

 

この2つの力が掛け合わされて初めて、人類の牙は天使の首に届く。

 

「貴様、正気か!? 科学者が魔術師めいた事をするなど…いや待て、そもそもどうやって成功させたのだ?」

「全ーて、人類が勝利すーる為! その為なーら、手段を選ーぶ暇など無ーい! 結果とーして、試験機はマーザーMA『ガブリエル』を超えーる力を得ーた!! こーれを量産すーれば、勝ー機が生まれーる!!」

 

マッドサイエンティストの言葉に、反論した科学者が押し黙る。

やる事成す事はメチャクチャだが、ヴィヴァトの意見は確かに的を得ていた。

 

こうでもしなければ、人類は天使に勝てないのだ。

 

俺はスヴァハに近寄り、耳打ちする。

 

「(スヴァハ。お前、あのマッドサイエンティストの研究をどこまで知ってた?)」

「(――阿頼耶織でそんな危険な事を企んでたなんて知らなかったけど、それ以外は知ってたよ。私は神話とかさっぱりだけどね)」

「(あの時、お前が気付けたのはそう言う事か。科学的に魔術的な現象を起こそうとか、バカげた思考回路だなあのマッドサイエンティスト…しかし、後71機しか建造出来ないって事は…)」

 

俺は、少し古い知識を思い起こす。

 

それは、俺が14歳の頃。

中二病に掛かった時にマッドサイエンティストから借りて読み漁った、神話やら魔術書やらの知識だ。

 

「使った悪魔は、『ソロモン七十二柱』か」

「いかーにも! やるでーはないーか、アグーニカ君よ! あの試ー験機には、悪ー魔『バエル』が宿っていーる! 私特ー製の阿頼耶ー織を組み込み起動されーたツイーンリアクターシスーテムの機ー体には、悪ー魔が宿るシスーテムさ!」

 

バエル。

バアルとも呼ばれる、「ソロモン七十二柱」序列1位の大悪魔。

東方を加護し、66の軍団を従える地獄の王だ。

 

マッドサイエンティストが用意したツインリアクターシステム採用機体専用コクピットブロックの数は、残り71個。

そのそれぞれに、ソロモンの悪魔が宿っていると考えて間違い無いだろう。

 

「どうやって契約を…」

「そこーは? まあ? ちょーっとな」

「怪し過ぎるぞ、マッドサイエンティスト。それに乗せられる俺達の気持ちにもなれ」

 

俺の後ろで、スヴァハも頷いている。

しかし、マッドサイエンティストは何となくはぐらかす。

 

「気ーにするな」

「今、そんな事を議論する暇は無い。とりあえず、72機のMSを完成させなければならない。そして、それに手を貸して欲しい。科学者としては受け入れ難いシステムでは有るが、聡明なお前達ならどうすべきか分かるだろう?」

 

クソ親父は、そう問うた。

集った科学者達は、葛藤しながらも全員が頷く。

 

「このツインリアクターシステム採用フレームの名は、『ガンダム・フレーム』。宇宙世紀なる時代、戦場を駆けた伝説の機体の名だ。今在る試験機は、『ガンダム・バエル』と名付ける。こんな感じに、機体に名付けていって欲しい。建造数は、1人につき9機。それから、この組織の名前を決めたい」

 

と、クソ親父はそんな事を言った。

 

「出来るだけカッコ良く、な」

 

とも。

俺は手を挙げて、思い付いた名前を提案してみる。

 

 

「『ヘイムダル』」

 

 

「――意味は?」

「北欧神話に於ける、光の神の名だ。『世界の光』とも言われるな」

 

クソ親父は、しばし考えたが。

 

「我々には過ぎた名だが、カッコ良いので採用。組織名、これを『ヘイムダル』とする! 我等ヘイムダルは、科学によって人類に光をもたらそう! それこそが、天使(きょうしゃ)に抗う人類(じゃくしゃ)の希望とならん事を!」

 

人類(じゃくしゃ)の反抗は、ここから始まった。

敵は殺戮と破壊の化身、天使(きょうしゃ)

普通に考えれば、勝てる道理など存在しない。

 

それでも、人類は抗い刃向かう。

自らの力で成し遂げられぬなら、悪魔(どうぐ)を使うまで。

 

かくして、人類は生態系の頂点にまで君臨するのだから――




――アカン(確信)
すまない、中二病で本当にすまない。
反省も後悔もしている、本当にすまない…とか言いたいけど、Apoアニメ4話のせいでこのネタ使うのに抵抗が生まれました。
すみません。
誰か代わってくれお願いします何でもしますから。

と、とにかくオリジナル設定は以下の通りです。


ナノラミネートアーマーの誕生経緯。
この硬い装甲の誕生経緯は語られてなかったと思うので、元々ガンダム用に造られた設定に。
それが他のフレームにも流用された、と言う事で。

ガンダム・フレームには、マジモンの悪魔が宿っている。
中二臭くなってしまった、全ての元凶たるオリジナル設定です。
アニメを見ていた時にバルバトスが三日月に意志を持って呼応していたように感じまして、そこから出て来た設定となります。

ヘイムダル。
ギャラルホルンの前身組織です。
名前はオリジナル設定となります。


ギャラルホルンの前身組織、ヘイムダルが結成されました。
ガンダム・フレーム建造に必要なモノも全て揃ったので、いよいよ建造が始まります。

次回「初陣」。

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