タイトルから、内容はお察し下さい。
短めですけど、次の所までいれると長くなったんでご了承をm(__)m
「――モビル、アーマー…!?」
「人間を抹殺する兵器、って…」
親父…スリーヤ・カイエルから話を聞いた俺とスヴァハは、絶句するしかなかった。
「当然、全部真実だ。親父は1ヶ月後、MAの起動をすると言った。マザーMA『ガブリエル』はどんどんMAを生み出し、世界を絶望へと叩き落とすだろう。では、MAに対抗する戦力は? ツインリアクターシステムを搭載した、MSしか無い」
「――待って下さい、スリーヤさん。ツインリアクターシステムは、まだ同調実験すらしてないんですよ? それなのにどうやって…?」
「やらなきゃ、人類は滅亡だ。
選択の余地無し、か。
確かに爺さんが残した設計図を見る限り、通常のMSではMAに到底及ばない。
しかし、ツインリアクターシステムが現実化したとしても問題は有る。
「操縦は、どうするんだ? ツインリアクターなんて過剰パワー、普通じゃ扱い切れないぞ」
「そこは、親父の残したコイツを使う」
そう言って、親父は爺さんの研究室から引っ張り出して来たらしい設計図を俺達に見せる。
「『阿頼耶織システム』。脊髄にナノマシンを注入し『ピアス』と言うインプラント機器を埋め込み、ナノマシンを介して操縦席側の端子と接続。それによって、パイロットの神経と機体のシステムを直結させる操縦システムだ。脳内に空間認識を司る器官が疑似的に形成され、直感的かつ迅速な操作が可能になる。マニュアルを読まなくても操縦が可能であり、文字すら読めない者でもMSの操縦が出来るようになる代物。これを使う」
「――待て親父、これは…!」
「スリーヤさん、いくら何でも…!」
俺とスヴァハは親父を注視するが、親父に譲る気は無さそうだ。
「――アンタ、充分狂ってるよ…スリーヤ博士」
「ああそうさ。これを考えた親父より、実現しようとしてる俺の方が余程狂ってるだろうよ。だが、もう一度言おう。
そこで、と言って。
親父…スリーヤ博士は、俺達に頭を下げて来た。
「お前達には、これを使ってツインリアクターシステムを搭載したMSに乗って欲しい。あわよくば、MAと戦って欲しい。そして勝て。さすれば、ツインリアクターシステムを使用したMSと阿頼耶織システムの有用性が世界に証明される」
――何を、言っているんだろうかコイツは。
俺には、本気で理解出来なかった。
つまり、俺達に「
仮にも実の息子である俺と、友人の娘であるスヴァハに?
俺はともかく、スヴァハまで巻き込んで戦えって言ってるのか?
そこまで考えた所で、俺はスリーヤ博士に掴み掛かった。
「フザケてんのか、アンタは!!? 俺達に改造人間になって、戦えって!? 人体改造してまだ名前も決まってないMSに乗ればMAを倒せるって言う、プロパガンダになれってのか!? そんな事に、スヴァハ共々協力しろってのか!!?」
「待って、アグニカ!」
スヴァハに止められたので、俺はやむなくスリーヤを解放する。
「ッ…! 俺はまあともかく、スヴァハに戦えってのを容認する訳には行かねェ。スヴァハはな、そんな――」
「ううん、いいの」
スヴァハは俺の服の袖を掴んで、首を横に振る。
「良い、って――」
「私、やるよ。だって、人類が生き残る為だもの」
「――悪い、もう一度だけ待ってくれ。俺がまだ納得出来ない。スヴァハ、それはお前が
スヴァハは少し考えたようだったが、俺を見据えて頷いた。
「――じゃあ、俺に止める権利は無しだな…で、クソ親父。どうすんだ?」
「クソが付きやがった…否定出来ないが。とりあえず、今まで通りツインリアクターシステムを仕上げないとどうしようも無い。阿頼耶織の研究は、ツインリアクターシステム開発の合間を縫ってヴィヴァトに進めて貰ってる。両方、同時期に開発が終わるハズだ。それまで、外は天使に蹂躙される事になるが――こればかりは、俺達にはどうにも出来ない」
そう言って、クソ親父はツインリアクターシステム試作機の方へ向かって行った。
「はあ…俺達、どうも科学者からパイロットにジョブチェンジさせられるみたいだな」
「うん、そうみたいだね――ねえ、アグニカ」
すると、スヴァハは笑顔を見せてこう言った。
「ありがとう。私を、気にかけてくれて」
「――あ、ああ…どう、致しまして?」
いきなり送られて来た感謝の言葉に驚きつつ、俺は何とかそう返した。
◇
1ヶ月後。
月面に存在する専用の研究施設で、プラージャ・カイエルとエイハブ・バーラエナは。
「――これで、人類が滅ぶかも知れないぞ。本当に良いのだな、プラージャ・カイエル博士。私と違い、君には家族もいるだろう?」
「…ああ」
その時、施設が揺らいだ。
「――感づかれたか。やるからには急ぐぞ」
「行くぞ。3、2、1――」
そして、彼らは起動スイッチを押した。
人類に厄祭をもたらす、破滅の天使を起動させるスイッチを。
『 !!!』
最初の天使は、おぞましく吼えた。
◇
その頃、施設の外では。
『核攻撃、直撃を確認。目標施設の損壊、認められず』
『第二波、用意』
オセアニア連邦軍の艦艇とMSが、包囲網を固めていた。
かつてスリーヤ・カイエルはオセアニア連邦に赴き、規定数のエイハブ・リアクターを製造した。
そのスリーヤから再三の要請を受け、月面都市防衛艦隊の艦艇1隻とMS3機がようやく月の研究施設を核攻撃したのだ。
ただ、少し遅かったようだが。
『…! 施設内に、エイハブ・ウェーブ確認!』
『問題無い。第二波、発射せよ』
第二波の核爆弾が、施設へと降り注ぐ。
(呆気ないモノだな)
司令官の余裕は、次の瞬間には消え失せる事となる。
謎の赤い光が、施設から飛び出したからだ。
『な、なんだ!?』
光は核爆弾を溶かし途中で爆発させ、船が大きく揺らぐ。
それに留まらず、光は船のブリッジを焼き払った。
彼らには知る由も無かった事だが、光は「ビーム」と呼ばれる熱線だ。
エイハブ・リアクターによって生み出されるエイハブ粒子を超高速振動させる事で高熱を持たせ、物質を溶解する。
MAで初めて搭載された新兵器にして、プラージャ・カイエルとエイハブ・バーラエナの研究成果の1つである。
『 ――!!』
施設を内部から破壊し、原初の天使「ガブリエル」がその姿を晒す。
『母艦が、一撃で…!?』
『クッソ、何なんだよあの光は!!』
『狼狽えるな! 殲滅するぞ!』
MS隊が動き、MAの討伐作戦に移る。
その時。
黒い子機が、MS隊に襲いかかった。
子機は1機に張り付き、尻尾でMSのコクピット付近を貫く。
『ぐおああああああああああ!!』
コクピット内のパイロットは左腕をもがれ、泣き叫ぶ。
動きが止まったその機体に更に子機が張り付き、機体の各所に穴を開けて行く。
子機…正式名を「プルーマ」。
MAが共通して持つ機能として、これの製造機能が有る。
本体からマイクロウェーブによってエネルギーを供給され、MA同様人を殺戮する無人兵器だ。
『しっかりしろ、今…!』
『敵性体より、高エネルギー反応!』
『まさk』
ガブリエルが再びビームを吐き出し、プルーマ共々3機のMSを破壊した。
この時期、まだ「ナノラミネートアーマー」は開発されていない。
『 』
ガブリエルは施設内に戻り、MAを生産する行動に移った。
この近くに存在する巨大月面都市を破壊するには、自身の力だけでは足りない。
圧倒的な力を持つ、破壊のみを行う機体を造らなければならないだろう。
この時生み出され月面都市を更地へと変えた機体は、後にこう呼ばれる。
「四大天使」ウリエル、と。
この瞬間こそが天使と人間、悪魔による祭りの始まりとされる。
「厄祭戦」――人類の文明発展に大きく貢献した科学者達の絶望と願望によって彩られた、災厄をもたらす祭りの名だ。
四大天使、起動回でした。
ガブリエル、ウリエルについての設定も追々明かします。
オリジナル設定は以下の通りです。
阿頼耶織システムの誕生経緯。
公式では明言されてなかったと思うので、勝手に捏造。
アグニカ祖父が考案し、その理論をアグニカ父が発見し、マッドサイエンティストが手を加えて完成させた事に。
ビームの原理。
鉄血世界に於けるビームの原理が説明されてなかったので、勝手に作りました。
月面の巨大都市。
存在した事自体がオリジナル設定となります。
場所は、フォン・ブラウンと同じ所です。
「四大天使」ウリエル。
位階設定がオリジナルな事は、以前述べた通り。
本作のオリジナル機体となります。
いずれまた、出る予定です。
ようやく、厄祭戦が開幕しました。
まだ序盤ですが、頑張れる範囲で頑張りたいです。