鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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前回までのあらすじ
 蘇 リ オ 

今回は短めです、ご了承下さいm(__)m
ここで切るのがベストだったんです、お許しを。

32話だ…もう、アラズ・アフトルとしての時間は充分に楽しんだだろう?
目を覚ませ、ア■■■・■■■ル――


#32 伝説の英雄

「彼は、まだ戻っていないのですか?」

 

スキップジャック級のMSデッキで、ジュリエッタは整備長のヤマジン・トーカに問う。

 

「ヴィダールなら、地球へ行ったよ。…ははーん。さては、除け者扱いが悔しい?」

「ラスタル様には、きっと何かお考えが有るのでしょう。でも、彼は1人で大丈夫なんですか?」

「さあ、ね。ただ、1つ訂正しておくよ」

 

そして、ヤマジンはこんな事を言った。

 

 

「ここに来てからずっと、アイツは…()()()()()()1()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

バエル宮殿に、MSが突っ込んで行った。

 

「教官、あれ――」

「ああ。頼む、三日月」

 

トランクを持ったアラズを右手に乗せ、サブアームでヴァルキュリア・ブレードを保持したバルバトスルプスレクスはバエル宮殿に向かった。

 

 

 

 

「――ガエリオ・ボードウィン…!!」

「久し振りだな、マクギリス」

 

バエル宮殿で、マクギリスとガエリオは再開を果たした。

以前と違ってガエリオの顔には大きな傷が出来ていたが、変わらず整った顔立ちをしている。

 

「まさか、お前がラスタル・エリオンに飼われているとはな」

「今、彼とは利害が一致している。あくまで対等な立場だ」

「フッ。そうやって、すぐ人を信用するのはお前の悪い癖だなガエリオ」

 

マクギリスの挑発を、ガエリオは反論せず受け止める。

 

「ああ、そうかもしれないな。何せ、親友だったハズの男に一度殺されたのだから。親友…いや、その言葉は違うな。俺は結局、最後までお前を理解出来なかった」

 

昔を思い起こしながら、ガエリオは言葉を紡ぎ出す。

 

「俺に取って、お前は遠い存在だった。だからこそ、俺はお前に憧れた。お前に認められ、隣に立ちたいと願った。そのうちお前は仮面を着け、本来の自分を隠すようになった」

 

マクギリスは、ガエリオの言葉を黙って聞く。

 

「しかし、やっと隣に立てたと思えた。お前は俺の前では仮面を外してくれていると、そう感じた。なのに、お前は俺を殺した」

「――」

「俺は、他ならぬこの目で確かめたかったんだ。カルタや俺や、寄り添おうとしている人間を裏切ってまで…お前が手に入れようとしているモノの正体をな。そして、ようやく辿り着いたのさ」

 

この2年間、ガエリオは常にマクギリスの求める者を知ろうとしていた。

そして、その真意に辿り着いたのだ。

 

()()()()()()()()()()()。それこそが、俺が抱いた疑問の答え。おかげで、決心がついたよ。愛情や信頼、この世の全ての尊い感情――それらは、()()()()()()1()()()()()()()()()()()()

 

心の奥で、マクギリスは失笑した。

友に裏切られてなお、ガエリオはガエリオで在り続けたのだ。

 

「お前に理解出来るのは、権力。気力。威力。実力。活力。勢力。そして、暴力。全て、『力』に変換出来るモノのみ。だからこそ、お前は厄祭戦を終わらせた『力』であるギャラルホルンの最高幕僚長アグニカ・カイエルに憧れアグニ会の会長にまで至ったのだ。ここにいると言う事は、動かせるのだろう? ――マクギリス、()()()()()()

 

と、ガエリオはマクギリスにそう勧めた。

 

「――正気か、ガエリオ? 俺がこれを手に入れる事の意味、分かっているのだろう? それとも、一度は死んだ身で失うモノは持たないと?」

「いいや、逆だ」

 

マクギリスの推測を、ガエリオは真っ向から否定した。

 

「今の俺は、多くのモノを背負っている。しかし、それらは全て()()()()()()()()()()()()()()()()。お前がどんなに投げかけられても、受け入れようともせず否定するモノだ。それら全てを背負い――今この場で、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「――いや。その必要は無いようだ、ガエリオ」

 

マクギリスがそう言った瞬間。

 

 

ガエリオの開けた穴から、ガンダム・バルバトスルプスレクスが入って来た。

 

 

「ッ!」

 

ガエリオが、ガンダム・ヴィダールのコクピットに戻る。

レクスは、ガンダム・バエルの側に着地した。

 

「よし、良いぞ三日月。そのまま、バエルの肩に右手を近付けてくれ」

『分かった。剣は?』

「ああ、そこら辺に突き刺しといて」

 

アラズの指示を受け、レクスはヴァルキュリア・ブレードをバエル宮殿の床に突き刺す。

レクスの右手がバエルの肩に近付くと、トランクを持ったアラズはバエルに飛び移った。

 

『あの青いのはどうする?』

「邪魔されても困るし、適当に相手よろしく」

『了解』

 

レクスは、手に持った超大型メイスをヴィダールに打ち付ける。

それを合図として、レクスとヴィダールの戦闘が始まった。

 

「貴方は、一体何を…!?」

 

コクピットハッチの側に飛び移ったアラズを見上げながら、マクギリスはそう問う。

それに、アラズはこう答えた。

 

 

「当然、俺の機体を取りに来たんだよ。勝手に俺のバエルに乗ろうとは、失礼千万だなマクギリス・ファリド」

 

 

そして、アラズはバエルのコクピットハッチを開いてその中へと消えて行った。

 

「―――」

 

マクギリスは声を発する事すら出来ず、目を見開いてその場に呆然と立ち尽くした。

 

 

 

 

「よっと」

 

馴染み深いバエルのコクピットに座ったアラズは、トランクを開いてガンダム・フレーム専用の阿頼耶織コネクトを取り出す。

それを背中から出っ張った阿頼耶織接続用インプラント機器「ピアス」に付け、バエルと接続する。

 

「――およそ300年振りだな、バエル。何を今更と思うかも知れんが、問答無用で付き合って貰うぞ」

 

アラズは胸ポケットから、そっと1枚の写真を取り出した。

そこには、アラズと1人の女性が写っている。

 

アラズはその写真をしばし眺めてから、胸ポケットにしまい直す。

そして、300年前と何1つ変わらない直角スティックを握る。

 

「網膜投影、開始」

 

阿頼耶織を接続したアラズの網膜で、モニターの投影が開始される。

 

「ガンダム・バエル――起動!!」

 

 

ガンダム・バエルの双眼が赤く輝き、原初のガンダム・フレームは動き出した。

 

 

床に突き刺さった2本のヴァルキュリア・ブレードを両手で引き抜き、バエルはウイングを展開して飛び上がる。

 

「教官――?」

「マクギリス…? ――いや!」

 

打ち合うレクスとヴィダールの間に割り込んだバエルは、剣の1振りと1蹴りでヴィダールを吹き飛ばして宮殿の外へ放り出す。

 

「ぐうううう!?」

 

体勢を立て直したヴィダールは、バエル宮殿の天井の穴から飛び上がったガンダム・バエルを見た。

それはとても神々しく、悪魔などとは程遠く思える姿をしている。

 

バエルは施設の屋根に着地し、その側にはレクスが並び立つ。

 

「バエルから――通信?」

 

ヴィダールは、バエルからの通信を受け取った。

 

 

 

 

「ラスタル様、ガンダム・バエルから通信です!」

「――何!?」

 

部下の報告を、ラスタルはにわかに信じられない。

 

「マクギリスか…?」

「開きます!」

 

モニターに開かれた映像を見て、ラスタルは己の目まで疑う事となった。

 

そこには、赤い髪を持つ男が映ったからだ。

 

 

 

 

ヴィーンゴールヴに掲げられるギャラルホルンの御旗の側に立ったバエルに乗るアラズは、アリアドネを通じて全世界に伝わるよう映像通信を開いた。

 

『あー、あー。全人類へ、ガンダム・バエルのコクピットから告げる。セブンスターズを拘束し、バエルを入手してギャラルホルンを乗っ取ろうと画策したアグニ会の目論みは阻止させてもらった。同時に、アグニ会をギャラルホルンへの反乱分子として自らの敵を一掃しようとしたアリアンロッドの企みもこれで潰れた事になる。残念だったな』

 

映像が全世界に流される中で、アラズはそう事実を告げた。

 

『さて、全世界の人類諸君。貴様らはそろそろ、俺が一体何者なのかが気になっているだろう? そんな訳で、とりあえず自己紹介をしよう』

 

続いて息を吸い込み、アラズ・アフトルは自らの名前を名乗る――

 

 

 

 

 

『俺の名は、()()()()()()()()()!! ガンダム・バエルのパイロットにして、かつて厄祭の天使を狩った者!! そして、ギャラルホルンの最高幕僚長である!!』

 

 

 

 

 

全世界が、静寂に包まれた。

 

 

アグニカ・カイエル。

それが、アラズ・アフトルの本当の名前だった。

 

 

『300年の時を越えて俺は目覚め、世界を見た。だがしかし、何なんだこのクソみてェな現状は!? ギャラルホルン、貴様らはこの300年間に一体何をしていた!? 随分と腐り果てたモノだな!! あの時代の、無駄に高尚な組織の存在価値はどこへ消えた!? 世界の秩序を維持する警察であるハズのギャラルホルンは、どこへ消えたのだ!!? カロム・イシューの、フェンリス・ファリドの、クリウス・ボードウィンの、ドワーム・エリオンの、ケニング・クジャンの、リック・バクラザンの、ミズガルズ・ファルクの意志はどこへ消えた!!?』

 

そう、アラズ…アグニカはバエルから叫ぶ。

腐敗したギャラルホルンへの怒りを、世界にぶつける。

 

『そう言う事だから、俺はもう一度ギャラルホルンを創り直す。今更出て来て何のつもりだ、か? この300年お前は何をしていた、か? 何故お前は生きているのだ、か? 俺に直接異論を述べたいならば、このヴィーンゴールヴに来るが良い! ああ、それと。この腐敗を正さず現在の世界を享受していたセブンスターズには、問答無用で集まって貰う。ギャラルホルン最高幕僚長、その権限で命令する。世界の混乱が収まったならば、組織再編を始める。今度はこのように急な放送では無く、ちゃんとした場で会おう』

 

そして、アグニカは映像通信を切った。

こんな急な放送で、細かな事を話す必要は無い。

 

『――教官』

「ん? 何だ、三日月?」

 

レクスが、バエルに通信する。

 

 

「アグニカって、誰?」

 

 

アグニカは、コクピットの中で盛大にズッ転けた。




アグニカポイント新規取得
アラズ・アフトル 590AP

アグニカポイントシステム登録名変更
アラズ・アフトル

アグニカ・カイエル

アグニカポイント所持量公開
アグニカ・カイエル ∞AP


長かった、ここをずっと書きたかったんだ…!
そんな感じで、今作の主人公アラズ・アフトルの本名判明です。


本名をアグニカ・カイエル。
もはや言うまでも無い、ギャラルホルンを創った伝説の英雄でした。


これは難しいですね、ミスター・ブシドーの正体くらい難しいですよ。
良かったですね皆様、これで心置きなくアグニカって呼べますね! ちくしょう!!ww
あ、地の文でもこれからは主人公を「アグニカ」と呼びますので。

後、アグニカの階級はオリジナル設定となります。
セブンスターズも各局も飛び越えてギャラルホルンの全体を指揮出来る最高階級です。


それと、一応言いますと。
「アグニカ・カイエルである事」が、∞APの達成条件です。
うん、絶対無理だね!


ついでに、バエルの機体データを。
公式と変わりはあまり無いんですが、今まで主人公機のデータは載せてたので一応。

ASW-G-01 ガンダム・バエル
全高:18.0m
本体重量:30.0t
動力源:エイハブ・リアクター×2
使用フレーム:ガンダム・フレーム
武装:バエル・ソード×2
   ヴァルキュリア・ブレード×2
   電磁砲×2
   ■■■■・■■■×■
   ■■■■・■■■■×■
概要
アグニカ・カイエルの専用機。
厄祭戦後、ギャラルホルンの権力を象徴するMSとして動態保存されていた。
アラズ・アフトル…もといアグニカ・カイエルの手でギャラルホルン本部「ヴィーンゴールヴ」の地下にある「バエル宮殿」より強奪…もとい奪還。
専用武器「バエル・ソード」と、グリム・パウリナより継続使用の「ヴァルキュリア・ブレード」を使う。
バエル・ソードとヴァルキュリア・ブレードは同じ特殊超硬合金で錬成されており、決して折れないとされる。
電磁砲は補助装備としてそれぞれバックパックの左右に取り付けられているが、使用される事は殆ど無い。
また、アグニカが命を賭して戦う際には「■■■■・■■■」と「■■■■・■■■■」が装備される。
2機のエイハブ・リアクターと直結された超高出力のスラスターを持ち、大気圏内でも自由に飛び回る機動力を誇る。
名前の由来はソロモン王直属の使い魔「ソロモン七十二柱」に於ける序列第一位の悪魔「バエル(バアルとも)」から。
バエルは東方を支配し、66の軍団を率いる大いなる王だとされる。


次回より、アグニカの掘り下げに入って行きます。
皆様の中に有る「?」は、それで解決されるでしょう。

次回「天使を造りし科学者達」。
俗に言う、過去編ですね。
まあ、期待せず温かく慈悲深い目でご覧下さいm(__)m

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