ここで切るのがベストだったんです、許して下さいm(__)m
#31 叛乱
火星でのMA討伐作戦から、およそ1ヶ月後。
ヴィーンゴールヴには、今回のMA騒動について議論すべくセブンスターズが集まっていた。
ようやく意識を取り戻したカルタ・イシューは、車椅子に乗って会議に参加している。
カルタが昏睡して2年の間に、情勢は一変した。
急いで勉強して、会議に臨んでいるようだ。
「報告書にある通り、私が火星に向かった目的はあくまでもMAの視察。手を出そうなどと、自殺行為を行うつもりは毛頭有りませんでした。ですがそれを邪推したクジャン公の介入が、MAを目覚めさせる事となってしまった。我がファリド家が現地の組織と協力してMAを撃破した事で事なきを得ましたが、一歩間違えれば火星の大都市クリュセは蹂躙されて火星は大惨事となっていた事でしょう」
つまり、全てイオク様が悪い。
「黙れ! 今回の件は全て、貴様が仕組んだ事ではないか!!」
「私が? 何の為に?」
「七星勲章の獲得による、席次の繰り上げ!」
「そんな事に興味は有りません」
イオクの推測を、マクギリスは真っ向から切り捨てる。
「シラを切っても無駄だ! そうですね、エリオン公!!」
イオクがラスタルに助けを求めたが、ラスタルはこう言った。
「MA討伐の手際、お見事だった」
「――え? ラスタル様、何を…!?」
「今後も、地球外縁軌道統制統合艦隊の活躍に期待していますよ」
イオクを全無視し、ラスタルは話題を切った。
「何故ですか、ラスタル様! マクギリス・ファリドに野心有りと、何故あの場で糾弾なさらなかったのですか!?」
会議が終わってから、イオクはそうラスタルに聞いた。
「ひとまず落ち着け、イオク。野心の正体を掴めていないと言うのに糾弾した所で、ただの戯れ言にしかならん。我々ギャラルホルンは、世界秩序を維持する者。物事の順序を乱せば、必ずや足元をすくわれる」
「しかし…!」
食い下がるイオクを、ラスタルは睨み付ける。
憤怒の業火に燃えた、イオクが見た事の無い目で。
「ひ…!?」
「ギャラルホルンの在るべき姿を忘れ、目的を見誤る。そのような家門と手を組む事は、セブンスターズの一角を預かる者として一考せねばなるまい。頭を冷やせ、イオク・クジャン。これ以上の失態、見過ごせんぞ」
そして、ラスタルはジュリエッタを侍らせて去って行った。
イオクは、しばらく一歩も動く事が出来なかった。
◇
セブンスターズ会議場を後にしたマクギリスは、アグニ会専用の会議室へ入った。
「お待ちしておりました、会長!」
『アグニカ万歳!!』
全員が声を揃えて、アグニカを讃える。
今日は、会長マッキーの呼び掛けによる臨時アグニ会会合の日だ。
「皆、良く集まってくれた。今日のアグニ会は?」
「全員出席です」
石動が、出欠確認をしてマクギリスに伝えた。
「では、本題に入ろう。まず――君達。今の世界に、失望した事は無いか?」
「失望…ですか?」
「そうだ。現在の世界では、ギャラルホルンは腐敗しアグニカの思想を忘れた。最盛期にはギャラルホルン士官の殆どが所属していたこのアグニ会も衰退の一途を辿り、今となっては会員数は1000人を切った。人類はかつての厄祭を忘れ、醜い権力抗争を繰り広げている。そんな世界に失望した者は、何人だ?」
マクギリスの問い掛けに、全員が手を上げる。
「――そうか。では、アグニカの時代に憧れた事のある者は?」
続いての問い掛けでも、手を下げる者はいない。
「最後だ。世界を変えたい、そう思った事がある者は?」
最後の質問。
アグニ会の会員に、手を下げる者はいなかった。
「よく分かった。では、
マクギリスは、アグニカなりきりセットに付属するバエル・ソードのレプリカを掲げる。
「我らに敗北は無い!! アグニカを信じ、アグニカを拝し、アグニカを讃え、アグニカを心より尊敬する者達、アグニ会の会員達よ!! 今一度、世界にアグニカ・カイエルの威光を示す時だ!!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
全員がバエル・ソードのレプリカを掲げ、叫ぶ。
会議室に、アグニ会の勝ち鬨が響き渡った。
勝ってないのに。
◇
アグニ会が会議をした後、火星の鉄華団にはマクギリスから依頼が入った。
何でも、地球に来て欲しいとの事だ。
それに当たり、団長室でメンバー選定をするオルガの下にアラズがやって来た。
「オルガ。この仕事、俺も参加させて欲しい。そして、地球へ行ったら完全な私事を達成する為に三日月の手を借りたい」
「アラズさん? いつも世話になってるし、構わないですけど…何、する気です?」
首を傾げるオルガに、アラズはこう返した。
「ちょっと、世界を変える」
目を見開くオルガに、アラズはふてぶてしい笑顔を向けた。
◇
それより、約1ヶ月。
満を持して、アグニ会は行動を起こした。
まずセブンスターズを召集し、ヴィーンゴールヴを制圧。
アリアドネを通じて、アグニ会は声明を発表した。
『アグニカ・カイエルを拝する者である我々アグニ会は、遂に立ち上がった! 革命の時は来たのだ! 厄祭戦の時代より300年、今一度風を起こしてギャラルホルンに蔓延する腐敗を一掃する! 我々は、1人1人の力でこの腐った世界を変革しなければならない! 平和と秩序の番人で在るべくしてアグニカ・カイエルによって創設されたギャラルホルンは、今やセブンスターズの面々が特権を享受する為の武装組織に成り果てた! 地球で起きた、アーブラウとSAUの国境紛争。それをコントロールしていたとされるガラン・モッサなる傭兵が、月外縁軌道統制統合艦隊司令官ラスタル・エリオンと繋がっていた事が我々の内偵により明らかになった! セブンスターズの甘言に惑わされるな!! 目を覚まし、共に立ち上がる時だ!!!』
「全く」
ラスタルは、バカバカしいとばかりに通信を切る。
このタイミングでマクギリスが出したセブンスターズ集合要請は、アグニ会がセブンスターズの命を握る為のモノ。
要請を蹴ったラスタルの判断は、実に正しかった。
『俺に、地球へ行く許可をくれ』
側で通信を聞いていたヴィダールは、ラスタルにそう告げた。
「フッ、やはりな。そう言って来ると思って、既に用意をさせている。ケジメを付けて来い、ヴィダール。フェンリルを狩る者よ」
『感謝する、ラスタル・エリオン』
ヴィダールは、地球へと旅立った。
◇
「現在、地上部隊がヴィーンゴールヴのおよそ7割を占拠。会議場のセブンスターズメンバーは拘束した他、通信施設の制圧も完了。アグニ会会合で立てた予定通り、ライザ・エンザが声明を全世界に向けて発表中です」
石動は淡々と、マクギリスに報告する。
「MSは?」
「依頼した鉄華団の手を借り、制圧しました」
依頼を受けた鉄華団は、ガンダム・バルバトスルプスレクスと三日月、アラズをヴィーンゴールヴに派遣した。
なお、そのギャラはとんでもなく高い。
高いので、名瀬も何とか目を瞑ったようだ。
「流石は鉄華団だ。これはまた、報酬を弾まねばなるまいな。
「放送を終えたライザ・エンザが、そのまま地球軌道上にて対アリアンロッド艦隊への防衛網を構築中です」
「――そうか、もう二度と引き返せんな。では、私も果たすべき事を果たすとしよう。後は任せるぞ、石動」
石動が頷いたのを確認し、マクギリスはとある場所へ向かう。
「マクギリス」
その道中、マクギリスはカルタ・イシューに呼び止められた。
「カルタか」
「どう言うつもりなの、マクギリス。こんな叛乱、アリアンロッドが黙っていないわよ」
「だろうな。その為に、
それだけを話して、マクギリスは足を進め始める。
「止めないわ。私にそんな力は無いし、貴方に嫌われかねない事が出来る程の度胸も無い。けどね、マクギリス。これだけは言わせて」
マクギリスは、ふと足を止める。
そんなマクギリスの背中を見据えて、カルタはこう言った。
「帰って来たら、話をさせて欲しい。私は、貴方と一度…じっくり話し合いたい」
マクギリスは強く頷き、再び足を前へ進め始めた。
「――本当、バカね私。そんな事をしたって、マクギリスが振り向いてくれる訳でも無いのに」
カルタは手を顔の前で組み、祈るような姿勢を取った。
(死なないでね、マクギリス――)
◇
マクギリスから貰ったチョコをほうばりながら、三日月は石動と通信する。
「チョコは?」
『マクギリス・ファリド准将は、最後の仕上げに取りかかっている。変な名前で呼ぶな』
石動は、そう忠告してから通信を切った。
「普通に『チョコ』で通じてるのは、一体どう言う事なんだろうな…まあ、良いや」
「教官。教官の目的って…」
「ああ。マクギリス・ファリドの行う『最後の仕上げ』を阻止する事だ。もうちょっと経ったら、俺をバルバトスの右手に乗せてサブアームでヴァルキュリア・ブレードを持って、『バエル宮殿』へ連れて行ってくれ。俺の頼みはそれだけだ」
「分かった」
そして、三日月は頷きながら2つ目のチョコを口に入れるのだった。
◇
地球付近の宇宙で、アリアンロッド艦隊は全艦を集合させていた。
「アグニ会のクーデター鎮圧なら、集合を待たず一刻も早く地球へ向かった方がよろしいのでは?」
「確かに、『兵は拙速を尊ぶ』と言うがな。今は、状況を見極める必要が有るのだ」
ラスタルは、地球へ向かったヴィダールの答えを聞くつもりでいる。
「エリオン公! この度のクーデター鎮圧作戦、何とぞイオク様の任務参加をお許し下さい!!」
ラスタルにそう頭を下げて来たのは、謹慎中のイオク・クジャンの部下達だ。
「また、その話か。嘆願に来たのは、これで何人目だ?」
「は。これで、ちょうど40人になります」
「全く、羨ましい話だな。あれだけの失敗をしてなお、これだけ慕ってくれる部下達がいるとは。イオクが謹慎中の今、残されたクジャン家の艦隊を率いるのはお前達だ。主人の名誉は、貴様らで守れ。イオクの戻る場所が残るよう、懸命に働く事だ」
ラスタルがそう告げると、部下達は大きい声で返事をして去って行く。
「艦隊は、あの何日で揃う?」
「は。後、3日と言った所です」
◇
その施設に入れる唯一の扉の前に立ったマクギリスは、扉の近くに備えられた指紋認証パネルに手を触れる。
貯め込んだアグニカポイントを500消費して、その硬き扉は開かれた。
バエル宮殿。
ギャラルホルンの所有するガンダムが全て置かれている、ヴィーンゴールヴ…いや、ギャラルホルンの最重要施設だ。
マクギリスはその中に踏み込み、白と青に染め上げられたガンダム・フレームを見上げる。
「やっと、出逢えたな。新しい時代を築く為、変革を始めよう。目を覚ませ、バエル――いや、アグニカ・カイエルよ」
その時。
バエル宮殿の天井が破られ、煙が宮殿の中に蔓延した。
その煙の中から1機のMS…ガンダム・ヴィダールが現れ、バエルの側に着地する。
ガンダム・ヴィダールのコクピットハッチが開かれ、中から仮面の男…ヴィダールが出て来た。
『やはり、ここに来たか』
ヴィダールが仮面に手を当てると、カチカチカチキイン! と言う音が宮殿内に響く。
ヴィダールは、そっとロックの外れた仮面を外す。
その仮面の下には、マクギリスが唯一友人だとした人物の顔が有った。
「――ガエリオ・ボードウィン…!!」
ガエリオ・ボードウィン。
それが、仮面の男ヴィダールの正体だった。
「久し振りだな、マクギリス」
再開した2人は、互いに睨み合った。
アグニカポイント新規取得
三日月・オーガス 90AP
ヴィダーr…ガエリオ・ボードウィン 60AP
アグニ会、ギャラルホルン乗っ取りの為クーデターを引き起こす。
酷いなあ、動機がw
そして、衝撃です!
ヴィダールの正体は…ガエリオ・ボードウィンだったのですよ!!
いやー、放送時はビビッタナア。
ガエリオハシンダトオモッテタカラナア。
アンナトコロデガエリオガデテクルナンテ、ソウゾウシテナカッタカラナア。
次回「伝説の英雄」。
遂に、あの男の正体が判明?