鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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今回の話の裏では、ガエr…ヴィダールが頑張っております。
カットですけどね。

そして、厄祭編開始です。(訳:MA戦開始です)


厄祭編
#29 目覚めし厄祭


地球支部閉鎖より約1ヶ月後。

鉄華団は、ハーフメタル発掘場でとある物を発見した。

 

「で、そのとある物を俺に見て欲しいと。俺が見て分かるのか?」

「いえ…アラズさんに見せれば、大体何とかなるって団長とビスケットさんが」

 

アラズにそう言ったは、新人らしいザック・ロウだ。

 

「あの野郎共め…まあいいや、否定は出来ないからな」

「…自分で言うんすか?」

「言うよ」

 

ザックは呆れたような顔をした後、「流石、ぶっ壊れって言われてる教官…」などと呟いている。

 

「オイ、それを言った奴について詳しく」

「ええっとですね、シノさんと副団長っす」

「よし、後でシバく」

 

そんな感じで、現地へ到着した。

 

「さて、例のブツは?」

「えっとですね、3つです。1つはあっちのMSで」

 

アラズがハッシュが指差した方を見ると、そこには白いMSが横たわっている。

 

「『ASW-G-64 ガンダム・フラウロス』--アイツらは死んだ、か…そりゃ、そうだよな」

「フラウロス? フラウロス、っと」

 

コクピットは、潰されていた為か外されている。

アラズは一瞬物思いに耽るような表情をしたが、すぐに機体名を書き留めるザックに向き直る。

 

「んじゃあ、次は?」

「コイツです」

 

ザックが指差した、その先には。

 

 

黒い、MWのような()()がいた。

 

 

「--バカ、な……そんな、そんなハズ--」

 

アラズは目を見開き、呆然と「それ」を見つめる。

そして、一歩後ずさった。

 

「--? あの…アラズさん? コイツが何か?」

「…ザック、とか言ったな。これは、どこから見つかった?」

「はい? えーとですね、フラウロスの近くから出て来たって聞いてます」

 

アラズは、もう一歩後ずさる。

それで、ザックは何となく察した。

 

 

これはヤバい奴だ、と。

 

 

「--壊すぞ」

「はい?」

「コイツをブッ壊すぞ!! コイツは、()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

「はい!?」

 

アラズの叫びを、ザックは理解出来なかった。

 

「ちょ、ちょっと待って下さいよ! コイツが、このMWみたいな奴が何だって言うんですか!? 落ち着いて下さい!!」

「! --すまん、少しばかり焦ってしまった。コイツはな、『プルーマ』って奴だ」

「プルーマ?」

 

そんな機体、ザックは見た事も聞いた事も無い。

 

「コイツは単体で動く奴じゃない、必ず群体で動く奴だ。恐らく、周囲に同じ奴が何個か埋まっているだろう。そして、コイツらを率いる奴もな」

「率いる奴? そりゃ、一体どんな奴で?」

 

ザックの質問に、アラズはこう告げた。 

 

 

「『()()()()()()()』だ」

 

 

「--モビル…アーマー……?」

「かつて厄祭戦が起こる要因となった、禁忌の存在。300年前の天才科学者プラージャ・カイエルとエイハブ・バーラエナによって造られた、人間を狩る天使。人類の約4分の3を抹殺した、大量殺戮破壊巨大兵器だよ」

 

その解説を聞いてそれを理解した時、ザックの顔は途端に青く染まった。

 

「そ、それヤバい奴じゃないすか!?」

 

恐怖のまま、ザックは数十歩後退する。

それに続いて、アラズもその「プルーマ」から離れる。

 

「その通り。正真正銘、本物の化け物だ。たかだか3年で、コイツらはそれだけの大虐殺をやってのけた。コンピューターによる完全な自動操縦である以上、話し合いすら行えない。猛威を振るった天使達を狩るべくスリーヤ・カイエルとヴィヴァト・クニギンの手で造られた物こそが、『ガンダム・フレーム』--人間の身体を借り人間に供物を捧げられ、その対価として天使を狩る悪魔と言う訳だ」

 

ザックは恐れおののきつつも、アラズの言葉を一句違わず書き留めて行く。

 

「--お前、『アグニカ叙事詩』を読んだ事は?」

「はあ、あれっすか? いや、読んだ事は無いっすね」

「そうか。アグニカ叙事詩には、その様子が綴られている。天使を狩りまくり英雄となったギャラルホルンの祖、アグニカ・カイエルの監修の下書かれた厄祭戦の記録だ。一般向けにされているモノだが、事実はねじ曲がっていないらしい。少しはこれのヤバさが分かるだろうよ」

「ははあ…帰ったら読んでみます。しかし、どうします? ぶっ壊しますか?」

 

ザックの提案を受けて、アラズは少し考え込む。

 

「いや、止めておこう。プルーマが有ると言う事は、近くにMA本体が埋まっている可能性が高い。MSを持ち出しては、そのエイハブ・ウェーブに反応してMAが起動するかも知れん」

「は、はい分かりました。じゃあ、爆破でもしますか?」

「そんな簡単に済むなら、人類は4分の3も殺されてねェよ。MAを壊したかったら、核爆弾でも持ち出さないとな。そもそも、禁止兵器としてギャラルホルンに管理されてるけど」

 

核爆弾でしか壊せない時点で、MAの頑強さは語るまでも無い。

同じく禁止兵器の1つであるダインスレイヴを以てしても、MAの装甲を貫く事が出来るか出来ないかなのだ。

 

「とりあえず戻って、オルガに報告。その後ギャラルホルンにも連絡して、対応を求めよう。鉄華団だけでは、到底手に負えない奴だ」

「了解っす!」

 

そうなれば、善は急げだ。

ザックとアラズは車に飛び乗り、急いで本部施設へ戻るのだった。

 

 

 

 

オルガはアラズとザックの報告を聞き、すぐさまマクギリスに連絡した。

それを聞いたマクギリスは目を見開き狼狽したが、すぐに発掘作業を止める事とすぐに行く事をオルガに伝えた。

 

300年前の遺物を処理するに当たり、オルガはクーデリアから「アグニカ叙事詩」を借りて来て対処方法を探った。

 

しかし、まるでフィクションであるかのようなデタラメなノンフィクションに頭を抱えるばかりだ。

 

「--どうすりゃ良いんだよ…対抗策が思いつかない訳じゃねえが、成功する気がしねえ……」

「思いつくだけまだマシだ。『四大天使』ミカエルや『天使王』ルシフェルに至っては、倒す糸口が見えないからな。ああ、埋まってる奴は『天使長』ハシュマルって事で間違い無い」

 

MAには、強さや脅威の度合いによる位階が設定されている。

これは天使、天使長、四大天使、天使王の順で高く強くなって行く。

 

天使は、およそガンダム・フレーム2機分の強さ。

最も数が多く、1種類につき5機が存在していた。

1機討伐で1つの七星勲章が獲得出来る。

 

天使長は、およそガンダム・フレーム3機分の強さ。

天使ほど数は多くなく、全2種類で1種類につき3機が存在していた。

1機討伐で2つの七星勲章が獲得出来る。

 

四大天使はおよそガンダム・フレーム10機分の強さとされるが、個体差が大きい。

最強の四大天使は、およそガンダム・フレーム30機分とも言われるのだ。

これは全4種類で、全てがワンオフの機体となっている。

1機討伐につき、5つの七星勲章が獲得出来る。

 

最後の天使王は、およそガンダム・フレーム50機分とも100機分の戦闘力とも言われる。

確認されたのは僅か2回で、いずれも撃破には至っていない。

これは1機しか存在しておらず、討伐すれば10もの七星勲章が獲得出来る。

 

まあ、最下位の天使(有象無象?)でも倒すのは至難の技だったのだが。

 

「本当に、アグニカ・カイエルとやらはどうやってこんな化け物を…」

「知るか。とりあえず、その化け物を何とかしないと鉄華団…ついでにクリュセも終わりだ。作戦に失敗は許されんぞ」

 

 

 

 

「マクギリスが、火星に?」

 

そのような報告を受けたラスタルは、首を傾げた。

何故このタイミングでマクギリスが秘密裏に火星へ向かうのか、本気で理解出来ないからだ。

 

「火星の監視衛星が、奇妙な物を捉えたそうです。鉄華団の管理区域なのですが、深くまで掘り起こされてまして…写真からは、何かが埋まっているのが確認出来ます」

 

ラスタルは、そう説明する副官からタブレットを受け取った。

 

「--まさか、コイツは…!?」

「…信じたくは有りませんが、間違い無いかと。これ程の巨大兵器となれば、まずMAです」

「MA?」

 

初耳らしいイオクが、呆然とする。

 

「イオク様。MAは、かつて厄祭戦を引き起こした巨大兵器です」

「厄祭戦を!?」

「…まさか、知らなかったのですか? 入隊時に問答無用で『アグニカ叙事詩』を貰って読まされるギャラルホルン士官ならば、知っていて当然ですが」

 

ジュリエッタのジト目を受け、イオクは腕を組む。

 

「も、勿論知っているさ!」

「これ程しっかりした残骸が、火星に残っているとはな。まだ破壊されていない…とは、思いたくないが」

『破壊されていなかった場合、討伐した者には七星勲章が授与される。そう考えた場合、マクギリス・ファリドの狙いは七星十字勲章だろうな』

 

ヴィダールが、そう推測する。

 

七星十字勲章。

MAを倒した数とMAの種類によって与えられる、英雄の称号だ。

トドメを刺した者にのみ与えられた七星勲章の獲得数により、現在のセブンスターズの席次は決定された。

 

『現在、第一席イシュー家当主のカルタ・イシューは昏睡中。セブンスターズが獲得した七星勲章の数は不明瞭だが、マクギリス・ファリドが七星勲章を手にすれば300年振りに席次が変わる可能性が出て来る』

「300年の時を越えた七星勲章と、戦後体制の破壊--それが、奴の変革か」

 

ラスタルは、ヴィダールの言葉からそう推測した。

 

「そのような事、断じて許してはなりません! ラスタル様、マクギリス・ファリド追跡の任を是非この私に!!」

 

 

 

 

マクギリスは地球外縁軌道統制統合艦隊の持つ艦艇では無く、ファリド家が個人所有するハーフビーク級戦艦「フェンリル」で火星へ向かっていた。

 

「全く、数奇な巡り合わせは有るモノだな。かつて世界から一掃されたハズの、厄祭の天使。だがあの赤い星、鉄華団の住む火星にそれは残っていた。やはり、彼らは持っているのだ。あの厄祭戦の風を、もう一度吹かせる宿命をな」

 

そして、マクギリスは笑みを浮かべた。

 

 

 

 

オルガとビスケット、アラズと三日月、マクギリスと石動は掘り当てられたMAの視察に来ていた。

 

「やっぱり、MSも有った方が良かったんじゃ?」

「いや、要らん。MAに取ってはMS…特に、ガンダム・フレームは宿敵と言える。下手に刺激せず、遠目の観察に留めるべきだ。それを言ったら、俺が来る事自体が大分危険なんだが

「? 教官、何か言った?」

「いや、何も」

 

アラズは双眼鏡を構え、MAを観察する。

 

「--電源は、生きてる可能性が高いな。やはり、MSは持って来なくて正解だった」

「それは、まだ動くと言う事ですか?」

「そうなるな。多分、人間かMSかが近付いたら目覚めるんじゃないか?」

 

などと、アラズが言っていた時。

 

 

空から、何機かのMSが飛来した。

 

 

それらは大気圏突入用ボードを放棄し、MAの近くに着地する。

 

「--は?」

『ふっ。動くな、マクギリス・ファリド!』

 

指揮官機らしい黄色と黒の機体が、通信を垂れ流し始めた。

 

「アイツ、あの時の…」

「? 知り合いか、三日月」

「全然攻撃を当てて来ない人」

「成る程、つまりザコか」

 

三日月の言葉を受けて、アラズはそう結論した。

事実なので、全く持って否定出来ないのだが。

 

『貴様にギャラルホルンへの謀反の気有り、との情報を受けた! 貴様がMAを倒して七星勲章を手にし、セブンスターズ第一席の座を狙っている事は分かっている!』

「七星勲章? ほほう、ラスタル・エリオンがそのような勘違いをしていたとは」

『ギャラルホルン全軍で対処すべきMAの情報を隠匿し、ファリド家の私有戦艦まで使ってこうして貴様が火星へ来た事が何よりの証拠だ! 貴様を拘束する!』

 

全く話を聞かないイオクが、マクギリスに向かってMSを進める。

 

「な、あのアホクソバカたわけ野郎が!!」

「酷いね、教官」

「MSを止めろ、イオク・クジャン! それ以上、MAにMSを近付けるな!!」

 

アラズとマクギリスが叫ぶが、イオクが人の話を聞くハズも無く。

 

『問答無用!! マクギリス・ファリド、覚悟!』

 

更に、イオク機は一歩を踏み出す。

すると。

 

 

MAに、赤い光が点った。

 

 

「--全員、伏せろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

アラズの必死な叫びに反応し、その場にいた鉄華団とマクギリス、石動は地面に伏せた。

 

その瞬間。

 

 

赤い土が舞い上がり、周囲を覆い隠した。

 

 

『なあッ!?』

 

MAは浮上し、ビームを吐き出しながら翼を展開した。

それは純白で有りながら、穢れ血に染まった印象を受ける。

 

天使の吐き出す光が、火星の空を裂いた。




アグニカポイント新規取得
イオク・クジャン 10AP
イオク親衛隊の皆様 10AP


MAに関しての設定は、ハシュマルの存在以外は殆どオリジナルです。
位階とかも、私が勝手に考えたモノです。
それから、ガンダム・フレームの造られた経緯についてもオリジナル設定となっています。
また、核爆弾が禁止兵器になっていると言うのもオリジナルです。

オリジナル、多すぎィ!

とりあえず、MAに関する情報と位階を整理して置きます。


※MAはアグニカの祖父プラージャ・カイエルとエイハブ・リアクターの開発者エイハブ・バーラエナによって造られた。

※MAには、位階が存在する。
天使:一般的なMA。ガンダムに換算すると、およそ2機分の戦闘力を持つ。種類が多く、1種類につき5機が存在していた。

天使長:天使より、少し力の強いMA。およそガンダム3機分の戦闘力を持つ。2種類が有り、1種類につき3機が存在していた。
ハシュマルの他、もう1機の名前は不明。(アグニカ叙事詩には記載有り)

四大天使:天使長より、かなり強いMA。およそガンダム10~30機分(個体差有り)の戦闘力を持つ。4種類が有り、1種類につき1機しか存在しない。
その中でも最強とされるのは「ミカエル」。後3機の名前は不明。(アグニカ叙事詩には、ミカエルを含めた3機の名前が記載されている)

天使王:四大天使を遥かに上回る強大なMA。ガンダムに換算すると、50機分とも100機分とも言われる。1種類が1機しか存在しない。
名前は「ルシフェル」。(アグニカ叙事詩によると、僅か二度しか確認されていない)

※七星勲章はトドメを刺した者にのみ与えられ、その過程は考慮しない。天使1機で1個、天使長1機で2個、四大天使1機で5個、天使王で10個が付与される。

※ガンダム・フレームは、MAに対抗するべくアグニカの父スリーヤ・カイエルとその同志によって造られた。


面倒臭ェ!(オイ)
まあ、これからも地の文とかで説明します。


次回「天使を狩る者」。

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