短くて良いですね(面倒だったのでビスケットのお兄さん辺りを丸々カットした怠惰な人)
今回、アラズさんの長台詞が有ります。
話が長い、20文字以内で簡潔に纏めろ!
「フミタン! フミタン、どこ!?」
フミタンを追って、クーデリアはドルト3の大通りを走る。
すると、デモ隊に遭遇した。
「クーデリアさん!? クーデリアさんですよね! 発見しました、クーデリアさんです!」
「え!?」
案の定デモ隊に見つかり、クーデリアはその内の1人に捕まる。
「待って下さい、私はこのデモに参加するつもりは…!」
「早速巻き込まれてるんじゃねェよ、クーデリア! 毎回毎回面倒を増やしやがってポンコツ娘が!」
デモ隊の中心に引きずられかけたクーデリアに、バイクが突っ込んで来る。
言わずもがな、アラズの乗るバイクである。
「きゃっ!?」
「ああっ!?」
アラズは通りすがり様にクーデリアを回収し、路地裏に走り去る。
「クーデリアさんが…クーデリアさんが、拉致されました!」
「何!?」
「探せ! 会社側と交渉する為にも、絶対に連れ戻すんだ!!」
勝手に巻き込もうとしていたデモ隊は、全力でクーデリアの捜索に当たり始めた。
と、その時。
ドガアン、と爆発音が響き渡った。
爆発したのは、デモ隊が向かっていたドルト本社である。
「攻撃するな、と言ったハズです! 誰が…!?」
「こちらは何もしていません!」
想定外の事態に、デモ隊のメンバーは慌てふためく。
当然、これはギャラルホルンの「仕込み」だ。
『デモ隊からの攻撃を確認。事態窮迫の為、危害射撃を開始する! 世界平和を守る暴力装置として、暴徒を鎮圧せよ!』
「待て、我々では…!」
『射撃、始め!!』
流れるようなマッチポンプで、ギャラルホルンは虐殺を開始する。
ドルト本社に取って、反抗する労働者達がどうなろうと知った事ではない。
代わりなど、幾らでも効くのだから。
デモ隊も迎撃するが、訓練を受けたギャラルホルンと素人同然の労働者達では練度が段違いだ。
次々とデモ隊の者達は倒れて行き、周囲は硝煙と血の匂いに包まれる。
「--そんな、こんな事を…彼らはただ、正当な事を主張しているだけなのに…!」
路地裏に隠れたクーデリアは、その光景を目の当たりにする。
普通なら鼻を覆う程の悪臭が漂っているが、クーデリアにそんな事を気にする余裕は無い。
余りの凄惨さから、クーデリアは思わず目を背けるが。
「目を逸らすなよ、クーデリア・藍那・バーンスタイン」
アラズによって、顔を強引に向き直させられる。
「
アラズは唇を噛みつつ、続けてクーデリアに諭す。
「あのクーデター隊は、例えるならば火に飛び込む虫だ。ごく一部の富属層とギャラルホルンに取っては、奴らは虫程度の価値しか無い。いや、大人しく従わない分虫以下だと思っているやも知れん。 さっき言った、『支配体制への反逆者』そのものだ」
「…………!」
クーデリアは、拳を強く握り締める。
「…私は、このような惨劇が起こらない世界にしたいと願って活動して来ました。しかし、これは何なのですか…!? 私は無力です。目の前の行為を、止める事すら出来ません…!!」
「ああ、そうさ。誰にも止められない。個人の持つ力など、所詮そんなモノに過ぎん。俺とて、MSが無ければ射撃も料理も洗濯も出来ないただのダメ人間だ。だが兵器が人に戦闘力を与えるように、政治は人に支配力を与える。俺らは、前者の力に頼るしか無い。自らの我を通す為に、他人の命を犠牲にするクソ野郎だ。だが、
アラズはそっと手を放すが、クーデリアは真っ直ぐに惨劇を見る。
その光景を忘れぬよう、目に焼き付ける為に。
「だが、政治の力には欠点も有る。力を引き継ぐ事が出来ない点だ。兵器は、持ち主が死んでも次の持ち主が使う事が出来る。しかし、政治は誰かと代わる事が出来ない。政治家が死んだら、その政治家は権力を失う。そして、その次の政治家に権力を受け継がれる事は無い。だからこそ、政治家は自らの命を最優先に行動するべきなのだ。お前には自己犠牲の精神が見られるが、それは今ここで捨てろ。権力を失い傀儡政権と成り果てた政治家の代わりはいても、『革命の乙女』クーデリア・藍那・バーンスタインに代わりはいない。お前のような理想を掲げた者は、今までいなかったと断言しても良い」
アラズが長台詞を終えると、ギャラルホルンの銃撃は止んだ。
クーデター隊はギャラルホルンとドルト運営会社のシナリオ通りに無事鎮圧され、華やかな大通りは肉塊が転がり血にまみれていた。
「さて、と」
アラズはバイクの荷台からヘルメットを取り出し、クーデリアに被せる。
「後ろに乗れ。
「待って下さい! フミタンを、フミタンを置いては行けません!」
「ああ、分かっている。フミタンは何が何でも引きずって連れ帰ってやるから、お前は安全な所で待ってろって言ってるんだ。話したい事が有るなら、コロニーを出てからたっぷり話せ」
アラズは戸惑いながらもヘルメットを固定したクーデリアをバイクに乗せ、自分もその前に乗ってハンドルを握る。
「
狭い路地裏であるにも関わらず、アラズは最高速度で走り出した。
「きゃああああああああああああああ!?」
「口を閉じろ、舌噛むzッつああああああああああああああああああああああああああああ!! 舌噛んだッ!!」
舌を噛みながらも、アラズは絶妙なハンドル捌きで路地裏を安全運転で脱出。
反対側の大通りに出て、そのままオルガ達の待つホテルへと向かうのだった。
◇
「…終わったか」
スレイプニルのブリッジでTVの報道を見ていたガエリオは、思わずそう呟く。
統制局と警務局による掃討作戦は、何の滞りも無く成功した。
「マッチポンプの模範回答みたいな作戦だな。全く…」
「ええ。しかし、秩序を守る者としては仕方の無い事です」
淡々と、艦長は答える。
彼とてギャラルホルンのやり口が非道だとは承知しているが、上の決定に逆らう事は出来ない。
「鉄華団が出て来れば、我々の出番も有ります。こらえて下さい」
「何度も言うな、それくらい分かっている」
「いいえ、何度でも言います。若き日の特務三佐殿が何度座学をサボったか、忘れはしません」
「若き日の、って言うな! 俺がもう若くないみたいじゃないか! せめて子供の頃の、と言ってk…って、忘れてくれ! あれは不可抗力だ!」
「いいえ忘れません、何で有ろうと抜け出した事実は揺らぎません! そも、そんな言い訳が通じるとお思いですか!?」
「ぐぬぬ…!」
艦長に返す言葉が無く唸るガエリオを、アインは端から見てこう思った。
ボードウィン特務三佐殿は、実は不真面目なお方なのでは無いか、と。
◇
クーデリア暗殺失敗の報告を受け、ノブリスはとりあえず葉巻を取り出して火を付ける。
「全く、今回のクーデターは意味が無かったな…んん?」
通信が入ったので、ノブリスはそれを開く。
そして、先立って挨拶をする。
「おや、これはこれは。お久しぶりですな、マクマード・パリストン殿。テイワズの代表が、私めに一体何のようで?」
『GNトレーディングからのあれは、無事労働者達に届けさせたぜ』
「ああ。それはご苦労でしたな」
通信の相手は、テイワズの代表マクマード・パリストンだ。
クーデター用の武器を用意したのはノブリスで、届けたのはテイワズの傘下である鉄華団。
彼らは初めから、全てを知っていた。
『そっちの狙いは分かってる。ウチの身内である鉄華団とクーデリア・藍那・バーンスタイン。反体制派のシンボルとなったあの娘を殺す事で、火種を作る』
「--その通りだ。して、こちらの目論みを見抜いてどうする?」
『駆け引きだ。金の成る木の芽を摘み取るのは惜しいだろう? あの娘は、小さな火種程度で終わるようなタマじゃねえ。あの娘がこの騒ぎから上手く抜け出す事が出来たなら、その時は手を組んでみるってのはどうだ?』
◇
「…暴動は収まりましたか」
静まり返った街で、私は独りそう呟く。
クーデリアお嬢様にスパイであった事を明かし見捨てておきながら、ノブリスの指令には逆らった。
私には、行くあてが無い。
このまま野垂れ死ぬのみである事も、充分に理解している。
いっそ、あの戦場に飛び込んで死んでおけば良かったとも思える。
そう思いながら行くあても無いのに歩いていた私の近くに、1台のバイクが止まった。
「よう、フミタンさん。随分とシケた面をしてんなあ」
乗っているのは、アラズ・アフトル。
鉄華団のメンバーである。
「…貴方、何故? 私はお嬢様を裏切り、貴方達鉄華団も裏切りました。そんな私に何の御用で?」
「加えてふてくされていやがる。全く、面倒だな」
頭を掻いた後、アラズさんは私の頭にヘルメットを被せる。
「ほら、乗れ。戻るぞ」
「待って下さい。貴方は、私の話を聞いていたのですか? 私は--」
「ノブリスのスパイで、裏切り者だって言うんだろう? クーデリアから全部聞いてる。解せないのも無理は無いだろうが、それを知ってなお、クーデリアが何て言ったかは想像出来るだろう?」
私は俯き、それを想像する。
想像の中のお嬢様は、微笑んでいて。
何であれ、フミタンは私の家族です。
そう、世迷い言を言っていた。
「クーデリアからの伝言だ。『何であれ、フミタンは私の家族です。また、私を守って色々教えて下さい。話したい事も、いっぱい有ります』だとさ」
お嬢様の本質は、全く変わっていない。
いつまで経っても希望を捨てない、私の嫌いな箱入り娘だ。
けれど、お嬢様はそれで良い。
そうでなければ、人々を導く希望にはなれないだろうから。
「とまあ、こんなに言った後で何だが…アンタに拒否権は無い。クーデリアと、『何としても連れて帰る』と約束しちまったからな」
「…何故、それを許したのですか? 貴方なら、私がまた裏切る事を考慮しているでしょう?」
「ああ、考えてるし対応もシミュレートしてる。昔なら、この場で有無を言わさず射殺しているさ。だが、今はそこまで緊迫した世界でもないのでね。少しばかり、甘くなってもバチは当たらないだろうと思ったんだよ。それに、アンタはもうノブリスからも当てにされていないだろう。自分を裏切った女をスパイとして使い続ける程、ノブリス・ゴルドンと言う男はバカではない」
先程私に拒否権は無いと言ったのだから、彼はいざとなれば私を気絶させてでも連れて行くつもりだろう。
私はバイクの後ろに跨がり、アラズさんに掴まった。
「…行って下さい」
「ほう、随分ノリノリだな?」
「貴方が考えを変えるとも思えません。それに、私はクーデリアお嬢様の従者ですから。長く主人の下を離れたお詫びをしなければ」
「律儀な事で」
アラズさんは、私が掴まった事を確認してからバイクを走らせ始めた。
私は、お嬢様にどう詫びるかを頭の中で考え始める。
あのお人好しなお嬢様が、咎める訳が無いとは分かっていたが。
謝っておかねば、私の気が収まりませんから。
フミタン、生存ルート突入。
彼女はずっと、クーデリアの従者であり続ける事でしょう。
原作ではフミタンの死がクーデリアの成長を促す事となっていますが、出来なくなったのでアラズの説法で代わりとします。
アラズ、便利過ぎだって?
--ハハハハハ、勘弁して下さい。
アラズ「20文字以内で纏めろ? 『理想だけで無く、現状も見据えろ』とか」
次回、久々(?)のMS戦です。