鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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今回から、原作で言う1期の2クール目に突入です。
OPが「Raise your flag」から「survivor」になったと言う事ですね。
よーし、これで一応物語の4分の1にまで来た計算だぜ。
そんな感じで、今回からコロニー編スタート。

まあ、オリジナル展開になってからがクソ長そうですけれども。
許して下さい、プロットの時点でクソ長いんですよとにかく。


コロニー編
#15 クーデター


ドルトコロニー群に到着した鉄華団とタービンズは、各自別行動を取る事になった。

 

オルガ達は、テイワズから預かった荷物を届ける為ドルト2へ。

クーデリアやフミタン、アトラなどはドルト3へ。

タービンズは、テイワズの支部に顔を出すべくドルト6へそれぞれ向かう事になった。

 

一番気を付けなければならないのは、ギャラルホルンの動向だ。

この辺りは、月外縁軌道統制統合艦隊…通称「アリアンロッド」の管轄地域となっている。

 

セブンスターズ第4席エリオン家の当主ラスタル・エリオンが指揮する、ギャラルホルン内でもトップクラスに練度が高い最強艦隊。

それが現在、コロニーの治安悪化に対応すべく出て来ているらしい。

 

更に風の噂に依れば、セブンスターズ第3席ボードウィン家が個人所有する戦艦「スレイプニル」がドルトコロニーのどこかにいるとも。

 

「そんな訳だから、くれぐれも騒ぎを起こすな…と名瀬さんは言ってたが、そんな口頭での忠告で全てが丸く治まるならギャラルホルンは要らねェんだよなあ」

「--アラズさん、とんでもない事言わないで下さい。何やらかすつもりですか?」

 

ドルト3に向かうシャトルの中でそう言ったアラズに、ビスケットはちょっと震えながら聞く。

 

「何もやらかさねェよ。ただ、こっちにその気が無くても暴動ってのは起きる場合が有る。特に、コロニーの労働者達には気を付けろ。不満が溜まりまくってるから、そろそろ爆発する頃合だ」

「爆発、って…クーデター、ですか!?」

「クーデターと言うか革命と言うか無謀と言うか…とにかく、俺の勘と経験則からして暴動が起きる可能性は極めて高い。あのテイワズからの荷物が、重火器でないと言う保証も無いしな。それはともかく、ショッピングはお前らに任せる。俺は後ろに積まれてるオークを魚屋ジェイソ●に引き渡すついでに、適当にコロニーを回って来るから」

「ああ、はい…オルガ達、大丈夫かな?」

 

途端に不安になって来たらしいビスケットが、そんな事を言う。

 

「大丈夫だよ、オルガなら」

 

隣で話を聞いていた三日月が、確信したようにそう返した。

 

 

 

 

「アンタらが鉄華団か、話には聞いてるよ。しっかし、本当に若いんだなあ」

 

テイワズから預かった荷物を渡しに来た鉄華団は、ドルト2の労働者達から熱烈な歓迎を受けていた。

それこそ、異常な程に熱烈な歓迎を。

 

「だから何だ? ガキだからって、嘗めてんのか?」

「いや、そう言う訳じゃないんだ。俺達は皆、アンタ達が来るのを楽しみに待ってたんだよ。『革命の乙女』クーデリア・藍那・バーンスタインと、それを守る若き騎士団! アンタ達は、俺達労働者の希望の星なんだ!」

「なあユージン、『キシダン』ってなんだ?」

「俺が知るかよ。帰ったら、アラズさんにでも聞けよ」

「おう、そうだな!」

 

「騎士団」を解せない鉄華団の団員達。

この事件の後アラズに聞いた所、「遥か昔、『西暦』と呼ばれた時代に存在した軍隊だ。何でも、『十字軍』の時に設立された騎士修道会。及び、それを模して各国の王や貴族が作った騎士とその附属員から構成される団体の事らしい。俺も、詳しくは知らねェけどな」と帰って来たそうだ。

 

結局、シノとユージンは首を傾げる羽目になる。

 

「コロニーの労働環境は最悪だ。低賃金のクセに、重労働を長時間やらなきゃならない。それを、俺達は今まで何十年と耐えて来た。『反抗しても殺されるんだから、大人しく働くしか無い』って。でも、そこに現れたのがクーデリア・藍那・バーンスタインなんだ! 若い子が火星独立運動の矢面に立って、革命家達とアーヴラウの首長を動かした! こんな痛快な話、今まで無かった! しかも、そのクーデリア・藍那・バーンスタインを護衛して地球に送り届けるのが、10代の元宇宙ネズミの子供達と来た! アンタ達はこの状況の打破を願う俺達に取って、まさしく希望の星そのものだ!!」

 

などと、労働者は熱弁を振るった。

要するに、この流れに乗ってコロニーも独立したいと言う事だ。

 

すると、労働者達は早速荷物を開け始める。

 

 

そこには、戦闘用のMWが。

 

 

「MW…!?」

 

他のコンテナには、大量の重火器がどっさり詰まっている。

 

「ちょっと待ってくれ! アンタ達、何を…!?」

「? 聞いてないのか? アンタらは俺達の支援者に頼まれて、コイツを届けてくれたんだろ?」

「俺らは、テイワズに頼まれただけだ! アンタらの支援者は、一体何者なんだ!?」

「名前なんか知らない。ただ、クーデリアさんの代理を名乗ってたぞ。火星に続いて他の場所でも地球への反抗の狼煙を上げよう、とクーデリアさんが呼びかけてるって。その為の武器弾薬を、鉄華団の手を通してクーデリアさんが俺達に無償提供してくれるってな」

 

重火器をコンテナから取り出しながら、彼らはそんな事を言う。

 

「クーデリアは、そんな事絶対にしない! アンタらの支援者ってのは、本当に信用でk」

 

その時、爆音と共に何者かがハッチが破った。

そこから、組織の象徴たる 7つ星の旗が吊られた角笛を吹く馬が描かれた紋章を肩に付けた者達が侵入して来る。

 

「ギャラルホルン!?」

 

ギャラルホルンの警務局に所属する部隊である。

それに、労働者達は瞬く間に制圧されてしまった。

 

 

いや、されかけた。

 

 

「こうなりゃやるしかねえ、うおおおお!!」

 

労働者の1人が引き金を引いた事から、銃撃戦が始まった。

結果ギャラルホルンは撤退し、労働者達は仮初めの勝利を得てしまった。

 

オルガはイサリビにいたメリビットに連絡し、イサリビをコロニーから出すように指示。

これで、鉄華団が暴動の関係者とされる事は無いと思われる。

 

「…なあ。どうすんだ、オルガ?」

「…さて、どうするかな」

 

浮き足立つ労働者達…クーデターの首謀者達を遠目と見守りつつ、オルガは次の動きを考え始めるのだった。

 

 

 

 

ドルト3内の大通りを、1人の男が歩いて行く。

長い銀髪を持ち、黄金の仮面で素顔を隠し、スーツを着た男だ。

 

「大人には成り切れないモノだな。まさか、これ程までに胸が躍るとは」

 

男はそう呟き、雑踏の中に姿を消した。

 

 

 

 

「う゛ふぅぅあ~~」

 

全身に脂肪をくっつけたような男が、サウナの中でくつろいでいる。

このヌード、誰得でも無い。

 

『失礼します、ノブリス様。積み荷は無事、組合員の手に渡ったそうです。調査に来たギャラルホルンとも、さほど大きな争いにはならなかったようで』

 

サウナでくつろぐ脂肪男…もといノブリス・ゴルドンの下に、通信が入る。

 

「ふん。どんなモノかと思えば、地球圏のギャラルホルンも存外大した事がないな」

『それと、クーデリア・藍那・バーンスタインの姿がドルト3で確認されたとの報告が。監視役の女も一緒です』

「…命令違反とはな。あの女、一体何を考えて--まあ良い。実行場所が変わるだけだ、すぐに対応しろ」

『は』

 

通信が切れ、ノブリスはサウナでの至福の一時を再開した。

 

 

 

 

「ほうほう。成る程成る程、ハメられたな。上手く利用されたな、俺達は」

 

オークをクレイジーな魚屋に引き渡したので、適当にドルト3の郊外を歩いていたアラズ。

そこに、ドルト2に荷物引き渡しの為に向かったユージンから電話での連絡が入る。

状況を把握したアラズは、とりあえずそう述べた。

 

「それで、お前らは今どこで足止めを食らってるんだ?」

『クーデターの首謀者サマの自宅だ。目の前の机には飲み物が並んでて、シノはガキ共と遊んでる』

「アイツ、子供好きだったのか…いや、そうじゃない。何か、厄介事を持ちかけられたりしてないよな?」

 

アラズの問いに、ユージンは窓際で紅茶を飲みながら答える。

 

『オルガに、俺らの戦力を使ってクーデターに協力してくれないかって頼みに来てた』

「ほう。それで、オルガは?」

『断ったよ。タービンズにも迷惑がかかるからな』

 

名瀬からは、「絶対に騒ぎを起こすな」と言われている。

アラズにはフリにしか聞こえなかったのだが、切実で有った事は確か。

そして、オルガはそれを真面目に受け止めた。

 

「結構結構。100%、俺よりリーダー気質だなオルガは。そっちは何とかなりそうか?」

『ああ、問題n…なあッ!?』

「? 外野が騒がしいな、どうした?」

 

どうやら、向こうで何か起きたらしい。

10秒ほど経ってから、ユージンはこんな事を叫んで来た。

 

『クーデターしてる奴らの仲間が、そっちに行ってるらしい! そんで、ビスケットとアトラが捕まったって!!』

「! 場所はどこだ、三日月には連絡したか!?」

『今、オルガが連絡付けてる! 場所は分からねえが…!』

「分かった、こっちで探す!」

 

電話を切り、アラズは近くに置いてあったバイクに飛び乗る。

 

「あ゛あ゛ッ!? テメェ、何勝手に俺の愛馬に乗ってんだァ!?」

「返せたら後で返す、悪く思うな! こっちは急ぎなんでな!」

「待てええええ!! 頼むから返してくれ、ローンがまだ残ってるんだよおおおおお!!!」

 

バイクの持ち主である男の悲痛な叫びを背に、アラズは全速力で発進する。

とりあえず、バイクは返そうと心に決めた。

 

「コロニーも広いんだ、見つかるか…いや、見つけてやるよ!!」

 

煌びやかな商店街を横切りながら、アラズは捜索を開始した。

 

 

 

 

「コロニーへの入港許可、下りたのか?」

 

ドルトコロニー近くの宙域で足止めを食っているボードウィン家の戦艦「スレイプニル」。

そのブリッジで、ガエリオは艦長に問う。

 

「いえ、もう少しお待ち頂く事になりそうです。統制局と警務局が合同で行う、例の作戦が関わっているのではと」

「統制局と警務局による、不満分子の大規模鎮圧作戦か」

 

最近、この辺りのドルトコロニーでは労働者達の不満が高まっている。

それを抑えるべく、統制局と警務局は合同で鎮圧作戦を展開する。

 

その実態と言えば、ただの反乱分子の虐殺だが。

 

コロニーの活動家達が警戒する要因にもなる為、セブンスターズの庇護下にある戦艦が歓迎されるハズも無い。

 

「ここで統制局と警務局に花を持たせるのも、後々の為になるかと。こらえて下さい」

「…お前が『政治をしろ』と言うなら、聞き入れよう。家名に泥を塗っては、父上に合わせる顔が無いからな」

 

そう言って、ガエリオはブリッジから出ていった。

 

「MSデッキに打診しろ。ガエリオ特務三佐がキマリスで飛び出さないようにせよ、とな」

「は」

 

 

 

 

「お嬢様!」

「ふわあ!?」

 

ホテルで待っていろ、と言って三日月はアトラとビスケットの救出に向かった。

こっそり抜け出そうとしていたクーデリアを、フミタンは呼び止める。

 

「私が本物だ、と名乗り出れば…そうすれば、アトラさんは…!」

「いけませんお嬢様。アトラさんが偽物だとバレれば、そちらの方が危険かも知れません。彼らに、アトラさんを生かしておく理由が無くなりますから」

 

走って逃げられないよう、フミタンはクーデリアの腕を掴む。

 

「しかし…! 私は、大切な家族を…アトラさんや鉄華団の皆さん、それにフミタンを裏切るような真似はしたくないんです!」

「だからこそ、今は堪えて下さい! お嬢様は、アラズさんに言われたでしょう? 『他人がどうなろうと、自分は生き延びろ。そして、世界を変えろ。それは、お前にしか出来ない』と。ここでお嬢様が犠牲となっては、鉄華団の皆さんの今までの努力が無となります!」

 

フミタンの言葉を受けて、クーデリアは唇を噛み締める。

しかし、その時。

 

「その通り」

「!」

 

金の仮面を被りスーツを着た銀髪の男が、クーデリアとフミタンの前に現れた。

 

「お嬢様、お下がり下さい」

 

見るからに怪しい仮面の男を見るや、フミタンはクーデリアを自分の後ろに隠した。

 

「一度お目にかかりたいと思っていましたよ、『革命の乙女』クーデリア・藍那・バーンスタイン。彼女の言う通り、貴女はここで死すべき方ではない。すぐにこのコロニーを発った方が良い。じきに、ここは労働者達による武装蜂起で荒れる」

「…そんな、クーデターが起こると…!?」

「如何にも。その為の武器を鉄華団に運ばせたのは誰だと思う? 貴女の支援者である、ノブリス・ゴルドンだ。この意味が分からないほど、子供でもあるまい?」

 

仮面の男は粛々と、クーデリアに情報を渡す。

 

「あれは貴女を利用する為に、自らの手の者をすぐ側に潜り込ませているような男だ。己が、利益を得る為にな」

 

仮面の男の言葉を受け、クーデリアはすぐ側のフミタンを見る。

 

「--お嬢様、その男の言葉は真実です。昔から、貴女が嫌いでした。何も知らず、希望に満ち溢れて光輝く貴女の目が。だから現実を知って、濁ってしまえば良いとさえ思っていました」

「……ねえ、ウソよねフミタン。貴女は、私のk」

「ですが、変わったのは私の方でした。変わらなければ、このような思いを抱かずに済んだのに。どんな行為にも、責任は付きまとうものなのですね。貴女の目は変わらず、輝いたままだった。きっと、貴女はそれで良いのです」

 

フミタンは、クーデリアから離れるように歩き出した。

 

 

「さようなら、クーデリアお嬢様」

 

 

そう、言い残して。

 

「待って、フミタン!!」

 

それを追おうとしたクーデリアを、仮面の男は止める。

 

「『革命の乙女』たるその身を、大切にしたまえ。君は人々の希望になれる。それこそ、このようなクーデターが起きない世界を創れるかも知れない」

「--ッ!!」

 

制止を聞かず、クーデリアは走り出した。

 

「…忠告はした。後は任せるぞ、鉄華団」

 

仮面の男は、再びホテルのどこかへ消えていった。

 

 

 

 

バイクを止めて、アラズは近くに展開を始めたギャラルホルンの部隊の通信傍受を開始する。

 

「…ふむ、クーデター隊はドルト3へ進入。戦力はMW3機と銃で武装した労働者達。鎮圧の為、MW10機と一個大隊を配置する--まさか、全員を虐殺するつもりか? この労働環境を継続し、限界まで利益を引き出そうと言うのか? --クズが」

 

通信の傍受を終え、アラズはクーデター隊と共にドルト3に移って来たであろうオルガ達に連絡する。

 

「こちらアラズ、クーデター隊とギャラルホルンの動きは把握出来た。そっちは?」

『アトラとビスケットは救出したが、クーデリアとフミタンさんがいねェ』

「…了解、その2人はこっちで回収する。クーデター隊とギャラルホルンの動きが分かれば、場所の特定は容易だ。必ず連れて帰る。そちらも気を付けろよ」

 

電話を切り、アラズは再びバイクに乗って走り出した。

 

クーデター隊は、大通りを真っ直ぐ演説しながら進んでいる。

ギャラルホルンの掃討作戦が開始される前に、クーデリアとフミタンを回収してオルガ達と合流しなければならない。

 

クーデター隊については、逃げろと言っても聞き入れないだろう。

残念だが、見捨てるしか無い。

最優先事項はクーデリアとフミタンの回収であり、クーデター隊の救出でも支援でもない。

 

「ああクソ、何でこうなる…! ギャラルホルン、腐敗するにも限度があるだろ!? どこでミスったんだ、世襲制が元凶か…!?」

 

そう愚痴りつつ、アラズはクーデリアとフミタンの捜索を開始した。




アニメでノブリスのヌードを見て「やったぜ」と思った方は、感想欄の方へご出頭下さい。
いない事を祈っております。

フミタン裏切り&仮面の男登場。
いやはや、仮面の男。
一体、何ギリス・ファリドなんですかねえ…?

次回、クーデター鎮圧です。

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