鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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遅れてしまい、誠に申し訳有りません!!m(__)m
次回はもっと早く投稿…出来る…かなあ…。

…善処しますが、期待はしないで下さい。


テイワズ編
#09 会議


「無理せず休んでいろ、ガエリオ」

「掠り傷だと言っただろう、マクギリス」

 

火星の衛星軌道を飛ぶギャラルホルンの戦艦。

そのブリッジで、マクギリスとガエリオは話をしていた。

 

「追撃するぞ、マクギリス。ああもコケにされて、黙っている訳にも行k」

「そうしたいのはやまやまだが、そうは出来ない。コーラルが死んだお陰で、今の我々には仕事が山積みだ」

 

火星支部司令官コーラル・コンラッドの戦死。

それにより、新たな司令官を斡旋しなければならないのだが…その候補であったクランク・ゼントも戦死した。

 

新たな候補の斡旋と、それに伴う火星支部組織の一新。

この仕事を片付けなければ、マクギリス達は自由に動けない。

 

「しばらくはそれに忙殺される事になる。連中から届いた荷物から、クーデリア・藍那・バーンスタインがあの船に乗っている事は確認出来た。彼らはいずれ、地球に行く。であらば、再び会い(まみ)える機会も有るだろう」

 

マクギリスとて、雪辱を受けた。

2人とも専用のシュヴァルベ・グレイズを小破させられ、敵の離脱を許してしまった。

加えて、グレイズを1機鹵獲され、武器の幾つかも奪われた。

 

これはもう、むさむざ相手に物資を渡しに行ったようなモノだ。

 

(…しかし、俺とガエリオを同時に相手取ってなおここまでやってのけるとは。あの「ガンダム・バルバトス」のパイロットは、少なくとも俺とガエリオの倍以上の実力を持っている。そんな凄腕のパイロットが、未だ在野にいたとはな…何者だ?)

 

マクギリスはふと考えたが、それは部下の報告に打ち切られるのだった。

 

 

 

 

イサリビの格納庫では、バルバトスの修復と鹵獲したグレイズの改修が行われていた。

 

「MSの装甲の補強って、MWと同じ要領で良いんですか?」

「MSは装甲にナノラミネートアーマーを使ってるんだ、MWとは別モンだと思え」

 

整備兵の質問に、雪之丞はそう返す。

 

「じゃあどうすりゃ良いんですか、おやっさん」

「ちょっと待ってろよ…ったく、ロクな記録が残ってねえなあ」

 

雪之丞は手元のタブレットの画面を叩くが、イマイチ分からないらしい。

 

「おやっさん、鹵獲したグレイズの整備は終わったぜ。何か、手伝う事は有るか?」

 

と、そこにアラズが合流する。

 

「ああ~じゃあ、リアクター回りの整備を頼む。2機のリアクター並列型なんて、俺にはさっぱりだ」

「了解。あ、装甲の補強はこうだな」

 

雪之丞が持つタブレットに幾つかのデータを入力してから、アラズはバルバトスの背面に回る。

 

「おやっさん、俺のグレイズは色塗り替えるけど良いか?」

「構わねえが、何色にする気だ? 紫とかは高えからダメだぞ」

「安心しろ、白と青の2色しか使わないから」

 

ナノラミネートアーマーに蒸着される特殊金属塗料は、色によって塗料の価格は異なる。

最も安価な色が白、逆に最も高価な色が紫だ。

 

ただ、その差は戦場での被視認性の差から来る為、価格による防御性能の差は殆ど無い。

 

「あの、アラズさん?」

「ん? 何だ、ヤマギ?」

 

リアクター回りをチェックしつつ、アラズはヤマギに反応する。

 

「この『ガンダム』って、大昔に造られたんですよね?」

「ああ。昔と言っても約300年前、『厄祭戦』の際に造られた骨董品だ。まあ、ギャラルホルン以外の保有するMSは大半が骨董品だが」

 

ギャラルホルンは、エイハブ・リアクターの建造技術を独占している。

その為、それ以外の組織が保有するMSはサルベージされた骨董品や鹵獲したギャラルホルンMSの改良型が殆どだ。

 

「『厄祭戦』?」

「300年前に有った、地球圏と火星圏を巻き込んだ大戦争の事だ。何千機ものMSが建造されて、天使達との戦いが繰り広げられた。当時の人類総人口の約4分の3が殺された、血と殺戮にまみれた戦争。その弊害はとても大きく、地球の衛星である『月』が霞んだ程だ。この『ガンダム・フレーム』は、その大戦の末期に造られた。時代に名を馳せる伝説の機体『ガンダム』の名を冠した、天使を狩る悪魔」

 

ガンダムの総数は、全72機。

それで100機を大幅に上回る数の天使を潰して回ったのだから、どれ程規格外の存在かは想像に難くないだろう。

 

と、アラズが話していた時。

 

「すいません、アラズさん!」

「今度は何だ?」

「団長達からの呼び出しです! 至急、ブリッジにとの事です!」

 

 

 

 

アラズがブリッジに入ると、そこにはオルガ、ユージン、ビスケット、クーデリア、フミタンなどが揃っていた。

 

「遅れてすまんな。しかし、MSに乗るしか能の無い俺を呼び出すとはどう言う事だ?」

「アラズさん、謙遜し過ぎですよ。とにかく、これからの方針を練らないと」

 

と言う事で、作戦会議の時間だ。

 

ギャラルホルンにあそこまで喧嘩を売ってしまったので、地球への案内はただの案内役では不可能。

ギャラルホルンと肩を並べるくらいの、巨大な後ろ盾が必要になって来る。

 

そして、そんな存在は1つしか無い。

 

「テイワズか」

「テイワズだな」

「テイワズですね」

 

テイワズ。

木星圏を中心に、主に小惑星帯の開発や運送を担う企業複合体だ。

マクマード・パリストンを代表(ボス)とする、実態はマフィアとまで呼ばれる組織。

大型惑星間巡航船「歳星」を拠点として、輸送部門を担当する「タービンズ」や工業部門を担う「エウロ・エレクトロニクス」など、様々な事業に特化した下部組織を複数束ねている。 

一方で、治安の悪い圏外圏という環境で成長を遂げた関係上荒事とは無縁とは言い難い。

宇宙海賊等に対する自衛戦力の拡充を行った結果、マフィアとしての性格を強めている。 

戦力拡大の一環として、独自に入手した厄祭戦時代の設計図からMSの開発や生産を行っており、その技術力と工業力はギャラルホルンにも次ぐ程だ。 

また、開発したMSやその付属部品は複数の企業や組織に対して販売も行われており、組織の資金源の1つとなっている。

 

要するに、ギャラルホルンに一目置かれる程の巨大組織である。

 

「つってもなー。あんなクソデケぇ組織が、俺達なんかの後ろ盾になってくれんのか?」

「そのクソデカい組織を後ろ盾にでもしないと達成出来ないのが、今回の依頼なのだよユージン君。きっちり申請とかして、『筋』を通せば問題無いハズだ。まあ、それが難しいと言えば難しいのだg」

「うおお!? スゲェなアンタ!」

 

アラズの説明は、オペレーター席に座るチャド・チャダーンの声に遮られた。

 

「どうした、チャド?」

「火星の連中と連絡取れねえかと思ってたら、この人が簡単に繋げてくれたんだ」

 

チャドの近くには、クーデリアの従者であるフミタン・アドモスがいる。

 

「まさかの有能な人発掘案件か? で、どうやったんだフミタンさん…だったか?」

「はい、フミタン・アドモスです。方法としては、ギャラルホルンの管理する『アリアドネ』を利用しました」

 

アリアドネ。

レーダーが機能しないエイハブ・ウェーブの影響下で、惑星間航行を可能とする管制システム及びその中継器によって形成される航宙路の総称だ。 

エイハブ・リアクターを搭載した「コクーン」と呼ばれる自律型の宇宙灯台を、約100万キロ間隔で配置し、それらを辿る事で航路を形成する。

厄祭戦時代に設置され、厄祭戦終了後はギャラルホルンが管理している。

 

「それを構成する『コクーン』を中継ポイントとして利用する事で、長距離の通信が可能になります」

「成る程、分からねえ。って言うか、そんな事したらギャラルホルンにバレちまうんじゃねえか?」

 

ユージン、思考放棄。

かろうじて、ギャラルホルンについて考えている。

 

「ユージン君、思考放棄をするな。後、通信は暗号化されてるから問題無し。大体は、な。フミタンさん、アンタ有能じゃないか? オペレーターとして働いて欲しいくらいだ」

「私は構いません。お嬢様のお許しを頂ければ、ですが」

「え? ええ、勿論」

 

クーデリアの許しを受けて、フミタンは軽く一礼する。

 

「決まりだな。じゃあこれから、通信オペレーターとしてよろしく頼む」

「承知しました」

 

オルガの言葉を受け、フミタンは通信機に向き直った。

 

 

 

 

「君がアイン・ダルトン三尉か」

 

アインは、マクギリスの部屋に呼び出されていた。

椅子に座るマクギリスの後ろには、ガエリオが控えている。

 

「君のいた中隊は、圧倒的な戦力で敵を制圧する予定だった。だが、その予定は狂った。それは敵のMSによるモノか?」

「は、間違い有りません。あのMSの出現により、我が方は司令官を失い後退を余儀無くされました」

「率直な印象が聞きたい。奴の戦いぶりは、君に取ってどうだった?」

 

マクギリスの質問に若干戸惑いつつも、アインは思い起こしながら報告する。

 

「最初は、民間組織がMSを持っていた事に動揺しました。しかし戦闘が始まると、すぐに別の驚きに変わりました」

「それは?」

「訓練では体験した事の無い、機動性や反応速度です。それらを駆使した戦法に翻弄され、我々は…」

 

そこで、アインは歯噛みする。

 

「…自分が不甲斐ないばかりに、上官を続けざまに失いました。ぜひとも自分を、追撃部隊の一員に加えて頂きたく」

 

その申し出に、マクギリスは一考する。

 

「君の気持ちは分かった。考慮しよう」

「ああ」

「ありがとうございます!」

 

敬礼し、アインは部屋を去るのだった。

 

 

 

 

イサリビの食堂では、クーデリア先生の文字教室が開かれていた。

三日月を始めとした読み書き出来ないグループが、クーデリア先生に文字を教わっている。

 

「読み書きか…ふむ、良い傾向だ」

 

そこに、文字読めるグループ筆頭のアラズが顔を出した。

 

「貴方は…ええと…」

「ああ、そう言えばまだ自己紹介をしてなかったか? 俺はアラズ・アフトルだ。よろしく、『革命の乙女』さん」

「そ、その呼び方はやめて下さい!」

 

クーデリアの異議を、アラズは笑いながら流す。

 

「ははははは、冗談さ。クーデリア、と呼び捨てにしても良いか?」

「え? ええと…はい、大丈夫です」

「どうも。改めてよろしくと言わせて貰うよ、クーデリア」

 

クーデリアの了承を得てから、アラズは三日月の画面を覗き込む。

 

「? 教官、何の用?」

「だから、もう教官じゃないと何度言えば…まあ良いや、好きに呼べ。後、文字が反対だぞ」

「あっ」

 

アラズの指摘を受けて、三日月は間違いに気付いた。

書き写していた文字が、裏返ってしまっている。

 

「書き直しかあ…教官、ちょっと書いてみてよ」

「いや、俺かよ? まあ良いけど」

 

と良いながら、三日月の持つタブレットで文字をすらすらと書き写すアラズ。

三日月が10分程格闘していた文字を、1秒足らずで流暢に書き写した。

 

「早いけど…これ、書き写したって言えるの?」

「ああ、字体の問題か? これは『筆記体』…普通の文字を崩して早く書けるようにした奴だな」

「筆記体まで書けるんですか…アラズさん、貴方は何者なんですか?」

 

クーデリアの質問を、アラズは。

 

「さあ」

 

とはぐらかした。

その後、アラズがその場にいた全員の追及をはぐらかし続けていると。

 

艦内に、警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

「何が有った?」

「他船からの停止信号です」

 

オルガの問いに、フミタンが返す。

 

「何だ、ギャラルホルンか!?」

 

食堂から直行して来たアラズが、ブリッジに飛び込んで来た。

 

「通信です。モニターに出しても?」

「ああ」

 

と、オルガが承認すると。

 

 

『オイガキども、俺の船を返せ!!』

 

 

どこかで見た気がする、やたらムカつく顔が映った。

 

「あれ? あれ、クソ社長!? マルバ、生きとったんかワレェ!!」

『黙れ泥棒ネズミが!! 俺のウィル・オー・ザ・ウィスプを、今すぐ返せえええええええええ!!!』

 

アラズの驚愕の後、マルバは叫ぶ。

また、面倒を持って来やがったようだ。




公式だと、厄祭戦で死んだのは総人口の4分の1だとされています。
ただ、本作では4分の3が死んだとしました。
4分の1は少ない気がしたので(爆)

また、公式より明言されていなかったので、本作では厄祭戦時代の総人口は約120億人とします。
厄祭戦では、約90億人が死んだと言う事で。


と言う事で、説明回でした。
マルバ、生きとったんかワレェ!!

タービンズの皆様は次回でした…すいませんm(__)m

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