太陽のような君へ   作:こやひで

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新学期の苦悩

『眠いなあ・・・』

 

皆が久しぶりに友達と再会し盛り上がっているのを眺めながら欠伸をする。

長かった夏休みが終わり学校生活が再び始まった。

色々とやることがあるといって胡桃と維織は先に行ってしまったので、いつも通り登校時間ぎりぎりに学校に着いた。

特に喋るような友達もいないので(授業中に少し隣の人と喋ることはあるが)朝礼が始まるまで机に突っ伏して待つことにする。

しばらくしてチャイムが鳴り、同時に先生も入ってくる。

 

「ほら、皆席に着け。寝ている者も起きるんだ」

 

その声でもぞもぞと顔を上げる。

 

「みんな今日は久しぶりの登校だ。全員が来てくれていて嬉しいがちゃんと宿題はやってきたか?」

 

もちろんと言う人や挙動不審になる人など反応は人それぞれだ。

俺は維織に言われ、さっさと終わらせたため特に問題はない。

みんながざわざわとし始めたのを見て先生は手をパンパンと叩く。

 

「ほら皆落ち着け。実は今日は朝礼の前に皆に紹介したい奴がいるんだ。入ってくれ!!」

 

その声を合図に扉が開き維織が入ってくる。

その顔は付き合いの長い俺から見ると珍しく少し緊張しているみたいだ。

しかし、周りのクラスメイトはそんなことよりも、この学校でトップクラスの美貌を持っている維織にさっきよりも大きなざわめきが男女問わず起こっている。

 

「可愛すぎ!!」

「ヤバい!!」

「綺麗!!」

 

その声を尻目に維織はチョークを手に取り、黒板に自分の名前を書き始める。

皆が静かになりチョークと黒板がぶつかる音が教室に響く。

そしてチョークを置き、こちらに正面を向く。

 

「転校してきました白瀬維織です。中途半端な時期ではありますがよろしくお願いします」

 

深々とお辞儀する維織にクラスメイトの大きな拍手が起こる。

 

「というわけで新しくクラスの一員に加わった白瀬だ。皆仲良くしてやってくれ。白瀬の席はあそこの空いている場所だ」

「分かりました」

 

維織は鞄を持ち指定された机へと歩いて行き、椅子に座る。

その一挙一動をクラスの皆が見つめる。

 

「よろしく」

 

あの維織が隣の席の人にちゃんと挨拶をする。

・・・・まあ俺なんだけど。

 

「・・・おう」

「何よその気の抜けたような返事は」

「いや、なんか新鮮だと思ってな」

「確かにこうして同じ制服を着て博人と話すのは久しぶりね」

 

そう言って笑う。

その笑顔を見て周りの男子達からおおっと言う声が聞こえてくる。

しかし、先生が仕切り直し、今日の予定などを言った後朝礼が終わる。

先生が教室から出て行ったとたんに維織の周りに人が集まる。

色々な人の様々な質問攻めに流石の維織も顔に焦りの色が見える。

 

「ご、ごめんなさい。私少し行かなくちゃいけない場所があるので」

「そうなんだ。ごめんね、引き留めちゃって」

「いえ、大丈夫です。博人行くわよ」

 

急に手を引っ張られ、前につんのめりながら維織について行く。

 

「お、おい!!どこ行くんだよ」

 

人が少ないところに着くとすぐに手は離され、維織は立ち止まる。

 

「どうしたんだ。急に」

「・・・ごめんなさい。色々な人に囲まれて少し動揺してしまって」

「前の学校の時もそうだったんじゃないのか?」

「そうだけど・・・。あそこまでじゃなかったわよ」

「テンション高い奴多いからなあ」

「でも博人がいてくれて助かったわ。・・・ありがとう」

「どういたしまして。とりあえず教室戻ろう。授業がもうすぐ始まる」

「ええ」

 

授業はいつもと変わらず滞りなく進む。

維織はまだ教科書を持っていないので俺の教科書を見ながら授業を受けている。

そしてやっと昼休みになった。

 

「やっと昼休みか」

「そうね。少し疲れたわ・・・」

「慣れない環境ってのもあるだろうけど、、、維織退屈そうだったからな」

「・・・しょうがないじゃない」

 

学校のレベルが違うので授業の進むスピードも違うらしく、今日やった範囲はもうすでに前の学校で習ったらしい。

 

「さてご飯でも買ってくるか」

「お弁当作ってないの?」

「学校で買えるからな。作るのもめんどくさいし・・・」

「そんなことだろうと思ったわ」

 

そう言うと維織は鞄からお弁当を二つ取り出す。

 

「胡桃のか?」

「胡桃にはもう渡してあるわ。あなたの分よ」

「えっ?ありがとう。わざわざ悪いな」

「いいのよ。二つ作るのも三つ作るのも変わらないわ。それに買ったものばかり食べていても栄養が偏るでしょ」

 

ありがたく弁当を受け取る。

維織の料理の味は昔から知っているので楽しみだ。

 

「じゃあ胡桃の様子でも一回見に行くか。久しぶりの学校だから緊張してるだろうから」

「しているでしょうね。行ってみましょうか」

 

胡桃は二年間眠っていたため、高一からのスタートになってしまった。

一年のクラスは一つ下にあるので弁当を持って階段を下りる。

歩いているとさっきからずっと周りの人達の視線が凄いなと感じる。

 

「ここだな一年三組。胡桃いるかな」

「どうかしら」

 

ドアについている窓から中を覗いてみる。

すると一番後ろの席でポツンと座っている胡桃が見える。

維織と顔を見合わせ、教室のドアを開ける。

その音にクラスにいた人達がこちらを向く。

胡桃も同様にこちらを向き、眼を大きく開く。

 

「よっ。大丈夫かっ!!とと」

 

急に胡桃が抱き着いてくるのを受け止めた衝撃で少し後ろに下がる。

 

「ど、どうしたんだ?」

「・・・もう、、、嫌だ」

「えっ?」

 

胡桃はぎゅーと制服を掴んで、顔をうずめてくる。

胡桃の背中をゆっくりと摩りながらもう一度維織と顔を見合わせた。


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