太陽のような君へ   作:こやひで

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修学旅行~1日目~(2)

目的地に到着した。

周りが森に囲まれアトラクションや今夜泊まるところも森の中にある。

この後の予定はアトラクションをして夕食を食べ、入浴し、集会があって寝るだけだ。

 

「今年も森林なのね・・・」

「虫が多いから嫌なんだよな~」

「でも空気きれいだよ」

 

去年の合宿も森に囲まれたところに宿泊した。

しかし一つ違うのは去年は普通の宿舎だったのに対し今年はテントでの就寝となっていることだ。

 

「なんで今年はテントなんだよ。普通の宿舎でいいじゃないか」

「最後の遠足だからじゃないかしら。その方が親密度が上がりやすいとか」

「親密度なんて俺達二人は地の底だろ」

「まあそうでしょうね」

「そんなことないよ」

「胡桃以外はそうは思ってないよ」

「まあとりあえず集会場に荷物を置きに行きましょう。そのあとアトラクションみたいなのをしに行くんでしょ」

「何があるんだろな」

「どうせ私はできないけどね」

 

胡桃が少し不貞腐れたように言う。

 

「しょうがないだろ。一時的な楽しみより身体の方が大切だよ」

「分かってるけど、、、やっぱりみんなと一緒に楽しみたいよ」

「我慢してちょうだい。今無理して胡桃が倒れるようなことになった方が私達は悲しいわ」

「・・・分かった。二人のことちゃんと見てるから」

 

集会場に荷物を置きに行き、アトラクションの場所まで移動する。

そのアトラクションは山の地形を利用し空中に設置されているものが多い。

空中に設置されているということは・・・言わずもがなだ。

 

「・・・維織ちゃん大丈夫?」

「・・・」

「胡桃と一緒に見学してたら?」

「・・・どうしようかしら」

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「思ったより楽しかったな」

「ひーくん楽しそうだったね」

「よかったじゃない」

 

胡桃といつもより余裕がある維織が出迎えてくれる。

 

「お前はやってないからな」

 

維織は結局胡桃と見ていることにしたらしい。

 

「私もやりたかったな~」

「胡桃の身体が治ったらまた来ようよ」

「それだったら一生来れないよ」

「そんなことないよ。いつか来よう三人で」

「うん!!」

「その時までには高いところに慣れるようにしておくわ」

「多分無理だと思うけどな~」

「・・・頑張れば多分大丈夫よ、、、多分、、、きっと・・・」

 

維織の声がだんだん小さくなっていく。

維織の高所恐怖症が治る日はこないだろう。

みんながアトラクションを終えた頃、日も暮れ始め夕食の時間が近付いてくる。

夕食は定番のカレーをグループで作る。

 

「料理か~。俺は母さんの手伝いでちょっとしたことあるくらいなんだよな」

「よく言うわよ。手伝っているのはほとんど私でしょ」

「ちゃ、ちゃんと手伝ってるから。胡桃はどうなんだ?包丁とか使える?」

「私もお手伝いするよ。だから包丁も少しだけ使えるよ」

「なら分担するか。俺は火をつけておくから維織と胡桃で材料を切っておいてくれないか?」

「そうね。その方が効率はよさそう」

「分かった。いーちゃんのお手伝いしてくる」

「頼んだよ」

 

ここからは別々の作業に入る。

俺は火の付け方の説明を聞く。

薪のくべ方にも色々あるらしいが今回は井桁型という方法でするらしい。

言われた通り薪をくべ安定するように小石を脇に置く。

後は長い小枝と新聞紙を敷き詰め火をつけちゃんと燃えるのを待つだけだ。

 

「ふう。後は待つだけか。維織と胡桃の様子でも見に行こうかな」

 

タオルを首にかけ、軍手を外しながら二人を探す。

みんなが野菜や肉を切っている調理場で二人を探すとみんなが和気藹々と調理している中で黙々と作業をしている二人を見つける。

 

「もう少し楽しそうにやったらどうだ?」

 

そう言いながら近付くと二人が同時に振り向く。

維織は少し疲れたような顔、胡桃は安心したような顔をしている。

 

「ひーくん!!」

「別に静かにしたくてしてるわけじゃないのよ」

「あっ、そうなのか?」

 

何故か維織の声が小さい。

 

「・・・居心地が悪いのよ」

 

そう言われて隣のテーブルを見ると花園と仲が良かった女子達のグループがいる。

 

『これは・・・気まずいな』

 

「ま、まあ気にするなって。ところで作業の方はどうだ?」

「順調よ。もう終わるわ」

「いーちゃん凄いんだよ。切るのとかすごく速いし、手際とかもすごくいいの!!」

「いつもうちで母さんの手伝いしてくれてるからな。元々手先も器用だし」

「手際よくしないと時間がなくなるじゃない。それに胡桃もお米を洗ってくれたのよ」

「私洗うだけだったんだよ。包丁は危ないっていーちゃんが・・・」

「維織は心配性だからな。胡桃には特に」

「だ、だって少し危なっかしかったから」

 

確かに胡桃が器用だとはあまり思わないけど。

 

「でも私がやってたらすごく時間がかかってたと思うから良かったんだけどね」

「心配しなくてもこの班が一番速いよ」

「悠長に話しているけどあなたの方は出来てるの?出来てないなら持ち場に戻りなさい」

「全部終わってるよ。俺がやることはちゃんとやるの知ってるだろ?」

「知ってるわよ。その代わりやるべきこと以上のことは全くやらないこともね」

 

さすがは小さい時からの付き合いだ。

 

「・・・よく知ってるな。とりあえず準備はできてるから後は米炊いてカレー煮こむだけだよ」

「そう。じゃあさっさと取り掛かりましょうか」

 

切った肉と野菜を鍋に入れる。

 

「そうだね。じゃあ私お米持っていくよ」

「じゃあ俺は鍋運ぼうかな」

「私も運ぶわ」

「いいよ。頑張って切ってくれたんだろ?今は休憩しとけよ」

「うん。休憩してて」

「・・・分かった、今は言葉に甘えさせてもらうわ。その前に・・・」

 

維織は俺が首にかけているタオルで俺の鼻を擦る。

 

「な、なんだよ」

「鼻に炭が付いてるわよ」

「そう言えばさっきから気になってた」

「まじで?ありがと」

 

『さっき作業してる時に付いたのかな?』

 

火のところまで運び、鍋を火にかける。

胡桃も洗った米を三つの飯盒に分けて火にかける。

 

「後は様子見ながら待つだけかな」

「そうね」

「うん」

 

他のグループも続々と煮込み始めている。

 

「でもキャンプでカレーって定番だよな」

「そうなんだ。やったことないから分かんないや」

「まあ定番と言えば定番ね。でもそこまで手間も時間もかかる料理でもないしみんなで協力しながらできるからもってこいなんでしょ」

「なるほどな」

 

煮込み始めて二十分くらい経ってからカレーの素を入れしばらくかき混ぜる。

その間に調理場の片づけに行っていた維織と胡桃が戻ってくる。

 

「いい匂い、おいしそう」

「もう少しかしら」

「そうだな。ご飯の方はどうだ?」

「見てみるよ」

「熱いから気を付けてね」

 

維織にそう言われ胡桃は慎重に飯盒の蓋を開けると大量の湯気が出る。

 

「できてるみたいだよ。凄い湯気だなあ」

「じゃあ皿によそうか。鍋運ぶよ」

 

カレーの入った鍋をテーブルまで運ぶ。

そしてご飯の盛られた皿にカレーを注いでいく。

 

「出来上がりだな」

「おいしそう!!」

「食べましょうか」

 

席に着き三人で手を合わせ食べ始める。

 

「おいしい!!」

「うん、おいしいな」

「なかなかね」

 

元々料理が上手い維織の手にかかるとカレーくらいは余裕なのだろう。

 

「ご飯もおいしいな。こういうの結構ご飯がべちゃべちゃになったりするんだけど」

「それは胡桃のおかげよ。水の量もきちんと量ってくれたから」

「それも全部いーちゃんが教えてくれたんだよ。いーちゃんって本当に色んなこと知ってるよね」

「普段から料理に関しては美由紀さんに教えてもらっているから」

「私もママに料理教わろうかな」

「料理は覚えておいて損はないからな」

 

食べ終わって皿と鍋を洗う。

 

「この後は風呂入って寝るだけか」

「寝る前に集会があるけどね」

「テントで寝るんでしょ?私初めてだからちょっと楽しみだな」

「俺達も初めてだよ。・・・嫌だな~。他の人みんな普段喋らないんだよな」

「仕方ないじゃない。それはどうしようもないわ」

「分かってるけどさ。・・・憂鬱だよ」

 

気分が落ちていく中すべての食器と鍋を洗い終わる。

みんな食べ終わったらしく風呂に入るようにと先生から指示が出る。

 

「はあ・・・。お風呂入らなくちゃな」

 

クラスごとに入るのだが入る順番はクラス順だ。

俺達は一組なので最初に入る。

集会場に置いていた荷物の中から入浴セットと歯ブラシ、歯磨き粉を持って風呂場の途中まで二人と向かう。

しかし胡桃だけなぜか表情が硬い。

 

「胡桃どうしたんだ?なんか様子が変だけど」

「わ、私同じ年の人とお風呂に入るのって初めてだからき、緊張する」

「緊張って。お風呂入るだけじゃないか」

「他の人と一緒に入るのって緊張する気持ちは少しわかるわ。他人に裸を見られるって恥ずかしいもの」

「そんなもんなのかな?俺にはよく分かんないけど」

「男には分からないのよ」

「花も恥じらう乙女ってやつか」

「意味は違うけどね」

 

そんなことを言っていてもお風呂に入らないわけにはいかないので別れてお風呂場に向かう。

基本俺は一人になると誰とも喋らず自分の世界に入るのでさっさと服を脱ぎ、大浴場に入る。

周りの人達は大浴槽の中ではしゃいだりしているがそれを横目で見ながら頭を洗い身体を洗いちょっと浴槽に浸かってからすぐに大浴場から出る。

寝巻きに着替えドライヤーで髪の毛を乾かして歯を磨いてから集会場に戻る。

まだ人は少なく俺と同じようにさっさとお風呂から上がってきた人が二、三人いるだけだ。

全員がお風呂から戻ってから集会が始まるのでとりあえず維織と胡桃が戻ってくるまで鞄を枕に寝転びながらしおりを見る。

十分くらい経ってやっと二人が戻ってくる。

 

「遅かったな」

「あなたが早いだけよ。それに私達は髪を乾かすのに時間がかかるんだからしょうがないでしょ」

 

二人共髪が長いので確かにドライヤーは大変そうだ。

 

「それにしてはまだ髪の毛湿ってないか?」

「みんないたからすぐに代わらないといけなかったんだ。だからまだ乾ききってないの」

「少し寒くなってきたから風邪ひかないように気を付けろよ」

「うん、ありがと」

 

クラスは五組まであるのでまだ少し時間がかかる。

 

「全員集まるまで結構時間あるな」

「何してましょうか」

「私UNOとトランプ持ってきたよ」

「あっそうなの?じゃあUNOでもしようか」

「そうね」

「分かった。準備するね」

 

そこから時間まで三人でUNOをする。

意外にも胡桃が強く結果終わってみれば胡桃が俺達より少し勝ち越す結果に終わった。

全員が集会場に集まったらしく先生から集合がかかる

 

「胡桃、なかなか強かったな」

「そうね。少し意外だったわ」

「いつもママとやってるから。少しだけ自信あったんだ」

 

胡桃が得意げな笑顔を作る。

 

「またやろうな」

「うん!!」

「そうね」

 

明日の予定とこれから寝るテントのことを聞いて一日目はもう終わりだ。

これから自分の寝るテントに移動する。

 

「はあ、今日ももう終わりか。・・・テント行くか」

 

足取りが重い。

 

「ひーくん頑張ってね」

「・・・うん、頑張るよ」

「寝るだけよ。すぐ終わるわ」

「そうだよな。今更言っても何もならないし大人しく寝てくるよ。おやすみ」

「うん、おやすみ」

「おやすみなさい」

 

二人と別れて自分が寝るテントに向かう。

既に二、三人はテントに居た。

総員八人で寝ることになるので相当狭くなりそうだ。

次第にメンバーが集まり全員が集まったところで寝る場所を決める。

みんな俺のことを目の上のたんこぶみたいな目で見てくるので一番入り口に近い端っこで寝ると言い了承を得たので寝袋を準備して一人先に床に就く。

 

『明日で修学旅行も終わりか。二泊三日じゃなくてよかった。もう一回ここで寝るなんて地獄だよ。・・・そんなこと考えてても仕方ないか。寝よ』

 

十分程眼をつむっていると段々と眠くなってくる。

そして静かに眠りについた。

 


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