太陽のような君へ   作:こやひで

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異変

「あれ?き、教科書がない」

 

異変は突然現れた。

 

「忘れたのか?」

「き、昨日の夜ちゃんとランドセルに入れたはずなのに」

「うっかりしたんじゃないの?」

「う~ん、、、そうなのかな」

 

するとその様子を見ていた花園がこっちに寄ってくる。

 

「胡桃ちゃん教科書忘れたの?私が見せてあげるよ」

「えっ?花園さんありがとう」

「麗香でいいよ。友達なんだから」

「う、うん。れ、麗香ちゃん」

「嬉しいな~」

 

楽しそうな会話をしながら席に戻っていく。

そんな二人の様子をぼお~っと見ていると横から維織の呟きが聞こえてくる。

 

「・・・胡桃ちゃん?もうそんな仲になったのね・・・」

「そこかよ・・・。気にすんなって」

「・・・だって私は白瀬さんなのに」

「栗山に呼んでって言えばいいじゃん。呼んでくれるよ、維織ちゃんって」

「そ、それは、、、恥ずかしいから」

「・・・なら我慢しとけ」

 

しかし栗山の教科書が無くなることがこの日から頻繁に起こるようになった。

嫌がらせはそれだけには留まらない。

 

それから数日経った朝・・・

維織と一緒に登校してきた俺は渡り廊下を歩いていた。

 

「栗山の教科書盗ってるやつ誰なんだろな」

「分からないけれど・・・」

「けれど?」

 

維織は少し言いにくそうに言う。

 

「・・・いじめかしら」

「う~ん・・・。熱狂的な栗山のファンとかならいいんだけど。まあ、とりあえず俺たちが目を光らせとこうぜ」

「そうね・・・あら?どうしたのかしら、教室が騒がしいわ」

 

維織と顔を見合わせる。

確かに教室からいつもとは違うざわめきが聞こえていた。

急いで教室に行き中に入る。

 

「!! うわぁ・・・」

 

教室にいる人の目線の先にはペンキをぶちまけられた机があった。

唖然とその場の状況を見ていると栗山が走り寄ってくる。

 

「こ、駒井君、白瀬さん」

「これ栗山の机か?どうなってるんだ、いったい」

「ひどいわね・・・」

「朝来たらもうこうなってて・・・。周りの人の机にまでペンキがかかっちゃってて」

 

見ると確かに栗山の周りの机にもペンキがとんでいる。

花園達も心配そうに栗山の机を見ている。

 

「ごめんなさい、みんなにまで迷惑かけちゃって」

「そんな、気にしないで胡桃ちゃん」

「そうだよ。胡桃ちゃんは悪くなよ」

「そうそう。こんな酷いことをした人が悪いんだよ」

 

花園達は本気で栗山のことを心配しているようだ。

その後騒ぎを聞きつけた先生が来て騒ぎはなんとか収集した。

その日に緊急クラス会が開かれ犯人探しが始まったが結局最後まで見つかることはなかった。

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「誰がやったのかしら」

「一番初めに教室に入ったやつが既になってたって言ってたからな。他のクラスのやつの可能性もあるな」

「候補は多いわね」

 

栗山と別れた後、家に帰り維織と話し合う。

 

「そんなこと言ったら全校生徒が怪しいからな。候補を絞らなきゃ」

「・・・ちなみに博人は誰だと思う?」

 

俺はそう言われ可能性があるやつを考えてみる。

 

「う~ん・・・。まず一人目は教室に最初に来たやつ、つまり第一発見者だな。第一発見者が実は犯人ってことはよくあることだからな」

「推理小説だけじゃないかしら」

「だから可能性だよ。二人目は高田かな?栗山に振られた逆恨みでやったのかも。でも、、、話してみた感じからその可能性は薄いかな?」

「・・・私はその男子の方が怪しいと思うわ」

「あとは・・・周りにいる女子達かな?」

 

それを聞いた維織は失望の目を向けてくる。

 

「あなた・・・あの人たちは違うでしょ。あれだけ栗山さんのことも心配していて、クラス会の時にも犯人探しに一番積極的だったじゃない」

「人は疑ってかかれがモットーの維織がそんなこと言うなんて珍しいな」

「・・・私はそんなモットー言ったことないのだけれど。でもどこを見て思ったの?」

「いや、確かに心配はしてたんだけどなんだかな~。これは俺の勘だな」

「考えすぎじゃないの?」

「だといいんだけど。まあ、俺達で色々調べてみるか」

「そうね」

 

それからも栗山に対しての嫌がらせは止まることはなく、その頻度も頻繁になっていた。

そしてそれは意外な形で俺たちにも影響を及ぼしてくる。

 

「どうしたんだ?こんなところまで連れてきて」

 

ある日の放課後に俺たちは栗山に呼び出され人気の少ないところに連れてこられた。

 

「・・・駒井君と白瀬さんは私に嫌がらせをしている人を探してくれてるんだよね」

 

栗山は昔から悪かった顔色がさらに悪くなっていた。

精神的なダメージがたまっているようだ。

 

「ああ、まだ誰か分からないけどな」

「必ず見つけ出してみせるわ」

 

しかし、俺たちの言葉に栗山は首を横に振る。

 

「もういいよ、探さなくてもいい」

 

栗山の言葉に耳を疑う。

 

「えっ?」

「ど、どうして?」

「ごめんね、一生懸命探してくれてるのに。でも、、、もう大丈夫だから」

「大丈夫って誰がやってたのか分かったのか?」

「・・・ううん。でももういいの」

「ど、どういうことなの?ちゃんと言ってくれないと分からないわ」

 

維織も混乱しているようで珍しく焦っているようだ。

それでも栗山は言葉を濁す。

 

「・・・ごめん」

「どうしたのよ、栗山さん。何かあったの?」

 

栗山は一度もこちらを見ようとはしない。

ずっと下を見ながら言葉を続ける。

 

「・・・私はもう二人とは一緒に居れない」

「えっ?な、何を言っているの?」

「私は花園さんと一緒に居るから。だから、、、だから私は一緒には居れない。・・・居ちゃいけないから」

「そ、そんな。わ、私たちが何かしたの?」

「ううん、二人は何もしてないよ。・・・でも、ごめんね」

 

さっきから栗山の言ってることは支離滅裂だ。

多分、言いたくて言ってるわけじゃないんだろうな・・・。

 

「誰かに何か言われたのか?」

「・・・何も言われてないよ。これは私が決めたことだから」

 

栗山の目から涙がこぼれる。

 

「ごめんね、白瀬さん、駒井君。・・・バイバイ」

 

栗山が走っていく。

 

「ま、待って栗山さん!!」

 

追いかけようとする維織の肩をつかむ。

 

「な、何するの!?早く追いかけないと」

「落ち着け。今追いかけて何か言っても無駄だよ」

 

『さっきの栗山の言葉から大体分かってきたな。後はちゃんとした証拠が必要か・・・』

 

「・・・じゃあどうするのよ」

「とりあえず家に帰ろう。話はそれからだ」

 

さて、ここからだな。


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