ごちゃまぜ詰め込み録   作:puc119

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大老殿へ行った時のお話となります




振り向きへホームラン【番外編】
第閑話~とりあえず前へ~


 

 

 俺たちが急にこの世界へ戻ってしまったこともあり、バタバタしてしまったけれど、崩竜――ウカムルバスを倒すことができてから暫く、ようやっとG級クエストの待つ大老殿へ行くことの許可が下りた。

 

「あぅ……本当にとんでもないことになっちゃったね。正直今の自分の状況がよくわかんないです……」

 

 ドンドルマにある大老殿へと続く階段を上りながら、もう何度目になるのか分からないほど聞いた言葉を、相棒さんがまた落とした。

 

 この相棒と一緒に狩りをするようになってから、もうどれくらいの時間が経っただろうか。

 最初は明らかな地雷ハンターだと思っていたし、実際アルセルタス相手にコロコロされている姿だって見た。そんな相棒がハンターの頂点であるG級ハンターになろうとしている。ビビるなっていう方が無理な話なのかもしれない。

 

「……貴女なら大丈夫だと思うけど」

 

 そんな相棒さんを励ますように言葉を落とした笛の彼女。

 うん、俺もそう思います。相棒が使っている武器はMH4Gにおいて最強といっても過言ではない操虫棍。しかも、昔じゃ想像もできないほど上手くなっている。

 そんな相棒なら例えG級だろうが何の問題もないだろうさ。ホント、成長したよなぁ。

 

「此処まで来てしまったのですし、後は迷わず進みましょう」

 

 そして、弓使いの少女が続けて言葉を落とした。

 

 ……ダラを倒し、俺と彼女が消えてしまってからこの相棒がどんな生活を送ってきたのか。その詳しい話は知らない。

 けれども、決して平坦な道のりだけじゃなかったことは分かる。今までずっとパーティーで戦ってきたのに、いきなりソロとなってしまうのは楽なことじゃないのだから。身体的にも、精神的にも。

 そんな時、きっとこの少女が相棒を助けてあげていたのだろう。

 

 正直にいうと、俺とこの弓使いの少女の関係性は薄い。前回のウカム戦を抜かせば、HR2になるためのレイアを一緒に倒したくらいだ。そんなこともあり、この少女がどんな人物なのか良く分かっていなかったり……

 まぁ、相棒が選んだのだし、悪い子ではないんだろうけどさ。

 

「……さて、そんじゃ行くとしますかっ!」

 

 まだ見ぬG級クエストはもう目の前。

 相棒の様子が気にならないといったら嘘になってしまうけれど、今はG級モンスターと戦うことのできるワクワク感がそれに勝っている。

 

 行ける範囲が、見える世界が一気に広がっていくこの感覚。止まっている時間なんてない。今くらいはただひたすらに、我武者羅に進んでやろう。

 

 

 

 

 長い階段を上り終え、大老殿の中へ。

 ゲーム中はちょっと薄暗いし埃っぽいかな。なんて思っていたけれど、実際に見る大老殿は明るく、澄んだ空気が流れていた。

 

 そして、大老殿に入って直ぐ視界に映ったのは、人間にしては大きすぎる巨体。それは大老殿の頂点である大長老の姿だった。

 ゲームをやっている時も威圧感のようなものを覚えたけれど、実際に見るとその数倍すごい。マジでっかい。大老殿の入口がやたらと大きいのもこの大長老のためなんだろう。

 確か、若い頃はラオの頭を一刀両断した。なんて伝説があるらしいけれど……なるほどこの人ならそれもできそうだ。

 

「ムォッホン! 待っていたぞ、若き狩人よ」

 

 手に持っていた薙刀のような武器で床を叩きつけてから、大長老はそんな言葉を落とした。

 

 また長い話を聞かされるんかねぇ。なんて思いもしたけれど、有り難いことに大長老の話を其処まで長くなく、予想以上にあっさりとG1の許可証ももらうことができた。

 これで俺たちも晴れてG級ハンターに。思い起こせば随分と高い場所まで来てしまったものだ。

 とはいえ、此処はまだスタート地点。ゴールなんて見えないけれど、まだまだ上を目指すことができる。

 

 それが嬉しかった。

 

 

 大長老の話を聞いた後は、大臣やG級クエストの受付嬢の話を聞き、とりあえず飯を食べることに。

 そもそもハンターの数が少ないってこともあるのだろうけれど、大老殿の中はバルバレの集会所と比べ閑散としている。幾人かのハンターの姿を見ることができるけれど、張り詰めた空気のせいか話しかけられる雰囲気じゃない。

 ま、他人を気にしていても仕様が無い。俺たちは俺たちのできることをやるだけだ。

 

「き、緊張しました……」

 

 テーブルについて直ぐ、ぐったりと倒れ込んだ相棒さん。相変わらず、余計なことを考えてしまうらしい。それがこの相棒の良いところではあるけれど……俺はもっと堂々としていて良いと思う。

 

「……私たちもこれでG級ハンターですもんね。そんな実感は……あれ? 笛さんは何処に?」

 

 そういえば、あの彼女の姿が見当たらない。ちゃんと聞いていたのかは知らないけれど、大長老や大臣の話を聞いていた時は確かにいたはず。ん~……どこ行っちゃったんだろう。トイレとかかな?

 

 そんなことを思いながら、彼女を探すため周囲を確認していると、大長老の傍にいる彼女を見つけることができた。

 

 ああ、うん。何をやっているのか分かりました。あの彼女も相変わらずというか、何というか……今くらいはその自由っぷりを抑えてもらいたい。

 いや、まぁ、それが彼女の良いところなんだろうけどさ。

 

「あっ、見つけ……いや、何やってんだろ」

 

 そして、相棒さんも彼女を見つけたらしい。

 

「多分だけど、ドスプーギーで遊んでいるだけだよ」

 

 ゲーム中じゃ大老殿にいるドスプーギーに触ることができなかったけれど、今はできるもんね。お願いだから連れて帰るとかはやめてください。あの大長老も彼女の行動には困惑気味だ。

 

 どうせ暫くの間はプーギーで遊んでいるだろう彼女は置いておいて、料理を注文することに。流石にビールは我慢しました。

 

「それで、これからはどうやって行くの?」

 

 相棒がまずそんな言葉を落とした。注文した料理が運ばれてくるまで、笛さんを抜かした皆で作戦会議です。

 

「できればG級用の武器防具を全員分揃えちゃいたいけど……まぁ、とりあえずG級に慣れないとだから、最初はクリアできそうなクエストに行けば良いんじゃないかな」

 

 複合にしている関係もあり、俺と彼女が身につけている防具には下位のものがある。それで発動するスキルは魅力的だけど、流石に防御力が足りなそうだ。

 ただ、じゃあ何の防具を作るかって聞かれると……どうしようね? ゲーム中は武器だけG級の物を用意して上位防具でゴリ押した。それもそれで良い気がするけれど、どうせなら色々な素材を集めたいし、防具を作りたい。G級序盤で良い装備ってあったかなぁ。俺にはランポスX複合くらいしか思いつきません。一応、G1でもラージャンと戦うことはできるけど……まぁ、流石に倒すのは無理だろう。いくら慣れている相手とはいえレベルが違う。戦ってみたい気持ちはあったりしますが。

 今回も最終的には複合装備にする予定だ。ただ、欲しい素材は全て終盤にならないと手に入らない。やはりモンハンは上位やG級に上がりたてが一番苦労しそうですね。

 

「またそんな適当な……」

 

 それくらいで良いのさ。焦ったって仕様が無いのだから。

 それに今くらいは苦労しておきたいんだ。ボッコボコにされようぜ。装備やスキルが整ってしまうとそんなこともなくなってしまう。そうだというのなら、今を楽しむのが一番だと思う。

 今しかできないことを全力で。それが面白いんだ。

 

 

 そんな感じでG級ハンターとしての俺たちの物語は始まった。本当に行き当たりばったりで、計画性なんてほとんどなかったと思う。

 それから、俺たちが伝説のパーティーと言われるようになるまで、何の苦労もなかったわけじゃない。

 それでも……胸張って楽しかったって言えるくらいの大切な思い出だ。

 

 一度終わったはずの物語。

 何の因果か続いてしまった物語。そうだというのなら、もう楽しんだ者勝ち。

 

 そんな物語をもう一度始めさせてもらうとしよう。

 

 

 


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