「いやー、すみません。私の早とちりで……でも意外でした。翼さんってなんでもそつなくこなしちゃいそうなイメージなので。はい、掃除は終わりましたよ」
「ごめんなさいね。私、戦うこと以外全くダメなの」
自嘲するように笑う翼。響はなんというか、親近感が湧いてくるような気がした。
なにせ高嶺の花とばかり思っていた存在が自分の目の前に降りてきてくれたように思えたからだ。
「いえいえ!翼さんも人間なんだから弱点の一つや二つ、あってもいいと思います!」
心からの言葉だ。響には身近になかなか人間らしい弱点を晒してくれない人がいるので、その慰めには説得力があった。
「あ、そうだ。お土産食べましょう?私、このお菓子結構好きなんですよ」
「なぜ、東京バナナ……」
湯のみを借りて、お茶を注ぐ。緑茶と洋菓子って合うのだろうか?なんて適当に考えながら、綺麗にしたテーブルの前に座る翼に渡した。
そしてその翼は、困惑しながらお土産の包装を不器用に破っていた。
響は自身が持ってきたお土産にもかかわらず、いの一番にそのお土産を頬張った。
それに翼は苦笑して、それに続く……前に、響に向き直った。
「立花響」
「ほぇ?はい、なんですか?」
いきなりのことで、少々面食らった響に構わず翼は続ける。
「今までのことを謝罪しよう。私はあなたに奏……私の大切な人を奪われたのだと思っていた」
「……私は奏さんに救われました。でも見方を変えれば確かに、奏さんの命を奪った事になるのかもしれません」
「いや、それは違う。そう考えるのは精一杯生きた奏への押し付けだと気づいた。そう気づけたのは、同じように私の考えを押し付けてしまった三日月・オーガスのおかげだ」
そう、あの日翼は奏と重ねていた三日月に否定された。だからこそ、冷静に考える機会を与えられたのだろう。そしてその言葉に、響は三日月の姿を思い浮かべる。
「……翼さん。貴女から見て、ミカはどうですか?」
「?どういう意図かは知らないけど、戦士としては完成してるように思える。なにせあちらは、一撃一撃全く迷いがなかった。彼がどうかしたの?」
「……ミカは、いつも私を守ってくれるんです。でも、その度にミカは危険なことをして、なのに、私はなにも出来なくて……この前だって翼さんと戦うミカを止められなくて……私はミカの隣にいていいのかなってずっと疑問に思ってて」
泣きそうな顔で響は俯く。三日月が響に何かをすることはあれど、響が三日月になにかをすることはなかったのだと彼女はいうのだ。
翼は、それにどう答えるべきか迷い。そして
響を押し倒した。
「ほえっ!?」
「——Imyuteus amenohabakiri tron——」
直後、外にいた全身装甲のモビルスーツからグレネードランチャーが放たれた。