鉄血絶無オルフェンズ   作:東雲兎

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カップリング要素があるかもです。お気をつけを……


プロローグ

「……また、汚しちゃった。アトラに……怒られるなぁ……。クーデリア……一緒に、謝ってくれるかな……」

 

そうして悪魔(バルバトス)を操り、戦場を駆けた人間。三日月・オーガスは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……?」

 

気がつくと、夕暮れの中でひとり立ち尽くしていた。

 

「どこ、ここ?」

 

先ほどまで自身は戦場にいたはずなのに、一体どういうことなのか。彼、三日月・オーガスは首を捻った。更に彼の首をかしげさせたのは彼の状態だった。

 

 

「……動ける?」

 

不随になっていた右半身が動くようになっており、そして阿頼耶識に繋がなければ、見えなかった片目も世界の色彩を写していた。

だが、いきなりのことに彼は驚くことや戸惑う様子を見せることなくただ首を傾げるだけだ。

 

「……まあ、生きてるから。オルガの命令を果たせる」

 

最終的に三日月は細かいことを置いておき、生きていることを重要視した。生きていれば進むことが出来る。彼の幼馴染にして、彼のリーダーだった男の最後の命令を実行することが出来る。その一点に尽きた。

 

ただ、彼がひとつ気がかりだったのは、

 

「みんな、逃げられたかな」

 

彼の家族のことだった。寝食を共にし、共に戦い、共に生きた者たちがどうなったのかを三日月は気にしていた。そして、色々考えた後で。

 

「……とりあえずここが何処なのかを知らないと、アトラやクーデリアに会いに行けないか」

 

なんて冷静に言い放つ。

周りを見渡しながら、ポケットに手を突っ込む。そこには数個残っている火星ヤシの実があった。それをおもむろに口に運んで、糖分を補給する。

なんとなく頭がすっきりしたような気がした。

そんな頭でここにいてもわからないと、移動することにする三日月。空を見上げると日が傾いているのが目に入った。そんな空を見上げながら、曲がり角に達する。

 

その時、何かが三日月にぶつかった。いつもの三日月ならば察して避けることが出来たのだろうが、今はこれまでと体の感覚にズレが生じていた為に反応に遅れたのだ。

 

「と」

「うわっ!」

 

三日月は半歩引くだけで済んだが、ぶつかってきた相手は派手に尻餅をついて、持っていた荷物を地面にぶちまけてしまった。

 

「え、あ、うっ」

 

相手は少女だった。そしてその少女は三日月を見るや否や顔を青白くした。それに、三日月はどうしたらいいかを考えて、とりあえずアトラの真似をしてみることにした。

 

「あんた、大丈夫?」

 

そう、三日月は手を差し伸べた。これが彼、三日月・オーガスと立花響の出会いだった。

 

 

 

 

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三日月は列車に揺られている。その片手には荷物が握られていた。そしてもう一方の手には紙があり、掲示板とそれとを目で往復しながらにらめっこしていた。

 

「……次の駅?」

 

日本語が読めない三日月は文字の形から次の駅が目的地であると判断して、取り敢えずその次の駅で列車を降りた。そして三日月は持たされたケータイというやつで支払いを済ませて駅を出る。とそこで聞きなれた声が聞こえた気がした。

 

「ミカー!やっほー!」

「ヒビキ」

 

天真爛漫な笑顔で三日月の元へと駆けてくる少女。その少女、響はその勢いで三日月に抱きついた。三日月はそれを真正面から受け止める。

 

「うー久しぶりだぁ……この感じ」

「おばちゃんから荷物預かってる」

「んー電話で聞いたよぉー。ありがとね!」

 

離れた響は、にぱーと笑顔を浮かべて喜びを全身で表す。それになんとなく三日月にはクッキーとクラッカが重なって見えた。

あのふたりは元気にしてるかな。なんてぼんやりと考えて、ポケットから火星ヤシの実に似たナツメヤシを口に頬張る。

 

「あ、ナツメヤシ?私にもちょうだい」

「いいよ」

「やったね!」

 

三日月からナツメヤシを受け取った響は躊躇わずに口へと運ぶ。そして、思いっきり顔をしかめた。

 

「外れた?」

「……うん。すっごくまずい。私って呪われてるかも……」

「用事、あるんじゃないの?」

 

がっくりと肩を落とす響に思い出したから、三日月はマイペースに問いかける。

 

「あ!そーだった!翼さんのCDを買いに来たんだよ!ミカも一緒に行こ?」

「いいよ。おばちゃんから頼まれてたし」

「よっしゃあ!ついでに遊ぼうね!」

「わかった」

 

三日月はポケットに突っ込んでいた手を出して響の手を握った。

 

「ふぇっ!?」

「アトラが人が多いときはこうすればはぐれないって言ってた」

「え、あ、そうなんだ!あはは〜」

 

いきなりのことで真っ赤になった響。その変化の意味がわからず三日月は首をかしげた。

 

「嫌?」

「ううん!そんなことないよ!びっくりしただけ!んじゃいこー!」

「そう、じゃあ先導して。俺この辺わかんないから」

「まっかせて!今日こそぎゃふんて言わせてやるんだから!」

「ぎゃふん。これでいい?」

「いやそういうことじゃなくてね?」

 

そうして彼らは人ごみの中に紛れていった。

その一時間後、彼らの運命は加速する。


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