今回は申し訳程度の百合要素とお色気要素です。
それでもいいという方は第七話をお楽しみください。
咲夜がベットに横たわっている私から目を離し霊夢に尋ねた。
「それで、魔理沙に何があったんですか?霊夢」
「…さあね、私もなんだかわからないのよね…魔理沙が妖夢とチルノの二人を相手にして戦ってたけど、どうも様子がおかしくてね……血まみれだった魔理沙の体をさっき拭いていたら後頭部にも結構多い量の血がついてたから、頭を殴られたことは確実なのよね」
霊夢が胸を掴むためではなく、私の後頭部の今はない傷があった場所を優しく撫でながら咲夜に言った。
「…そうですか……わかりました。とりあえず対策は明日練るとして、今日はできるだけ安静にしていましょう」
「そうね、魔理沙も怪我とかして疲れてそうだし」
霊夢が私を見てから咲夜に視線を戻してうなづく。
「それと魔理沙と霊夢、食事はどうします?」
ドアを開けて外に出ようとしていた咲夜が、思い出したようにこちらを振り返って私たちに言った。
「…すまないが…私はいらないぜ…食欲がないんだ」
「私もいらないわ、さっき少しだけ食べちゃったからお腹はすいてないわ」
霊夢と私が外の暗い景色的に夕食を断ると、わかりました。とだけ言ってすぐに部屋を出て行こうとしたが、ドアを開けて外に出たところで振り返り、咲夜はこちらを向いて少し呆れたような表情を見せながら言う。
「霊夢…魔理沙は一応は病み上がりですので、ほどほどにしておいてあげてくださいよ」
「え?…どういうことだ?」
私が聞き返すが咲夜は答えずにドアを閉めて廊下を歩いて行ってしまう。
「なあ、霊夢…咲夜が言ってたのはどういう事なんだ?」
私が聞くが、霊夢は答えずに私に質問をしてくる。
「それよりも魔理沙、頭とかの傷は大丈夫なのかしら?」
「…え?ああ、…まあ大丈夫だ…だいたい全快したぜ」
頭痛もないし、体を動かして何か痛みがあるわけでもない。上体を起こした私はグルグルと腕を回しながら霊夢に言うと、彼女は口角を少しだけ上げて笑う。
「霊夢?」
首をかしげている私の首に霊夢が腕を回し、顔をぐっと寄せてくる。
「ねぇ、魔理沙」
ほんの少し顔を前に傾けるだけで唇が触れてしまうぐらいの至近距離にいる霊夢が、私に静かに囁いた。
「へ…?…な…なんでございましょうか?」
顔を赤らめて様子のおかしい霊夢に抱きしめられて離れることのできない私は、敬語になりつつも答えると、彼女はさらに私に顔を近づけてくる。
「れ…霊夢…!?」
「魔理沙は今……記憶がないんでしょう?」
霊夢が頬の色を朱色にわずかに変え、色っぽい顔が視界いっぱいに広がり、私の心臓の鼓動の感覚が急激に狭くなっていく。
「…た……確かに…そうだが……」
「いつもみたいにしてみたら、脳の中の何かを刺激して…もしかしたら記憶が戻るかもしれないわ」
霊夢の言わんとしていることを、私は何となく察する。
確かに、私は霊夢のことがライク的な意味ではなく。ラブ的な意味で好きだ。でも、目の前にいる霊夢は私が好きな霊夢ではない。だから、大人の階段を上るようなことは私が知っている霊夢としたいわけだ。だがそんな私の願いも届かず、彼女は私の唇に自らの唇をほんの少しだけくっつけた。
上半身を起こした私の太ももの上に座っていて、すでに出来上がっている霊夢の吐息が私の唇を撫で、気分が高揚していくのがわかる。
「霊夢……ちょっと…ま……」
私はなんとか自分の理性に言い聞かせ、抱きしめようとしている霊夢の腕を外させようとした。しかし、霊夢の方が一歩早く、私に体重を傾けて押し倒しながら私の唇に自分の唇を押し当ててきた。
「んぐ…!」
マシュマロのように柔らかくてぷっくりと膨らんでいる霊夢の唇は、触れるとしっとりと濡れていて、私の中から理性などを吹っ飛ばしてしまう威力がある。
何もできずに体を硬直させている私の唇の隙間に、霊夢はさかさず舌を滑り込ませてきた。
自慢ではないが、生まれてから恋愛などしたことがない。そうなれば当然キスなどもしたことがないということになる。そんな私には彼女のキスは刺激が強すぎるわけで、残り少なくなっていた理性ではこの気持ちいいという初めての感覚にあらがうというができなかった。
霊夢は唾液で濡れた舌で私の口の中をかき混ぜてきても、なんだか体に力が入らずにぐったりとしてしまってされるがままとなってしまう。
快楽が脳の許容量を超えたのか、何も考えることのできない私は次から次へと湯水のように溢れてくる快楽を貪る。
五分ほどそうしていたのだろうか。時計がこの部屋にはないため時間は定かではないが、霊夢がようやく私から口を放した。
お互いの混ざり合った唾液が離れた私と霊夢の唇を線でつなぎ、次第に細くなってゆく線はあるときにぷっつりと切れて無くなってしまう。
「魔理沙…」
霊夢が興奮することによって血圧が上がり、彼女の白い肌が顔だけではなくほっそりとしたうなじのあたりまで少し赤らんでいる。
初めてのことでどうしたらいいのかわからず、キスをしていた間息をほとんど止めていたに等しかった私は、何百メートルも全力でダッシュしたかのように息を切らいているせいで、霊夢に声をかけられても答える余裕がなかった。
「…もっとしましょう……もっと、いっぱい…」
大人っぽくて官能的な声で霊夢が私の耳元でささやくと、脳が麻痺でもしたかのように痺れて何も考えることができなくなってしまう。
霊夢が私の服に手をかけ、とても丁寧に来ている魔女の服を脱がした。
痺れる脳でも羞恥心をわずかに感じ、胸元や股間の周りを手や布団などを使って隠そうとしたが、服を脱いで裸になった霊夢が私の腰の上に乗り、片手では隠し切れない私の大きな胸に片手を伸ばして優しく触れる。
「魔理沙…へこたれるのはまだ早いわよ…夜はまだ始まったばかりなんだから…」
霊夢はそう言いながら私の下半身に手を伸ばし、自分の上体を前に傾けて私に顔を近づけてくる。
霊夢はさっきよりも激しく、私に濃厚なキスをした。
「……あの、うるさいんですけど」
朝、腰が抜けて歩けなくなった私を、霊夢が結局記憶が戻らなかったと残念がりながらもおぶって食堂に連れて行ってくれた時、咲夜が目の下に薄く隈を作った状態で、呆れた顔つきで私と霊夢に言い放つ。
「うるさいわね…仕方ないじゃない」
霊夢は小さくため息をついて呟き、席に着きながら咲夜に言った。
「何がしかたないっていうんですか?…私は霊夢に言いましたよね?ほどほどにしておけと」
まるでやくざの様な目つきで霊夢となぜか私を睨みながら、二人分の朝食を椅子に座っている私たちの前に出して言う。
「仕方ないじゃない……いっつも凛としてて余裕を醸し出してたのに、昨日は初々しいし…ずっとビクビク震えてて可愛かったんだもの……テンション上がっちゃうでしょ!」
「ぶふっ!?」
霊夢がいきなりそんなことを口走り始め、咲夜が出してくれた朝食を口に運んで咀嚼していた私は、食べ物をのどに詰まらせて咳き込んでしまう。
そんな私の背中をすぐ隣に座っている霊夢がさすってくれる。
「いや…知らないですよ」
少し顔を赤面させた咲夜が言いながら私が咳き込んで汚してしまった机の上を、持ってきたタオルで拭いていく。
「まあ、いいです……それで、今日はどう動く予定なんですか?霊夢」
咲夜が私の背中をさすっている霊夢に話しかけた。
「そうねぇ、魔理沙は今の現状を理解していないから、まずはそこから説明しないといけないわね…面倒くさいけど」
咳がようやく止まった私から手を放した霊夢が、咲夜が出した朝食のみそ汁に手を伸ばし、一口啜る。
「…最後の一言は余計だぜ、霊夢」
私は温かいお茶を持ち上げながら言って熱いお茶を一口飲んで、お茶の熱が私の口の中に熱を伝えていく心地よい感覚を楽しんでから飲み込み、湯飲み椀を机に置いた。
「…とりあえず、朝食だけでも食べちゃいましょうか。…現状の説明はそれからにしましょう」
「…わかったぜ、それと咲夜聞きたいことがあるんだが」
私が食べ終わった野菜などが入っていた皿を片付ける咲夜にとあることが聞きたくて、部屋から出て行ってしまう前に話しかけた。
「ん…?なんですか?」
「トイレってどこだっけ?用を足したいんだけど…紅魔館って広くて場所がわからないんだよな」
私が言うと、咲夜は皿を持ったまま廊下に私と一緒に出て、トイレへの行き方を説明してくれる。
「トイレはこの廊下を突き当りまでまっすぐ行ってから、右に曲がってまっすぐに行った突き当りにありますよ」
咲夜が指を指す方向に顔を向けると、三十メートル程度先で壁に視界を遮られて見えないが、行けばわかるだろう。
「わかったぜ、サンキュー咲夜」
私は軽くお礼を言って咲夜から離れると、時を止めて動いたのか一瞬で姿が消えて見えなくなる。
まっすぐ廊下を歩き、咲夜に言われたとおりに右に曲がると、廊下の突き当りにトイレの立て札が見えた。
それに向かって歩きながら、私は窓から祖をと眺めた。とても殺し合いの異変が起きているとは思えないほどに、いい天気で、雲一つない青空が広がっている。
庭に植えてある木が風に揺られて葉っぱを揺らし、手入れの行き届いている花壇の花も花びらを広げて花を咲かせている。
「……ん?」
私が向けた視線の先に何かがいて、宙に浮いているのが見えた。
何かが宙に浮いていること自体は珍しくもなんともない。だが、よく目を凝らしてみるとそれが人型であるのに気が付き、さらにこちらに向かって飛んできているのがわかる。
察しの悪い私は、それでも気が付くことができずにその人物を眺め続ける。
「……っ!?」
殺気だった敵の顔を見て、攻撃の直前でようやく敵の奇襲なのだと私は気が付いた。
たぶん明日も投稿すると思います。